ウクライナのフマラ国防相は8日「パトリオット迎撃ミサイルについて約1000発の供給契約を締結している」「支援国が備蓄分を今すぐ提供してくれれば、発注した新しいパトリオット迎撃ミサイルで備蓄を補充する」と提案したが、この問題は「ロシアがNATO加盟国を攻撃するかもしれない」という欧米当局者の懸念を直撃するだろう。
参考:36-е засідання у форматі «Рамштайн»: Україна закликала партнерів збільшити фінансування оборонних потреб і посилити ППО
参考:Ukraine to sign contracts for around 1,000 Patriot missiles with partner support and EU loan funding, defense minister says
参考:Ukraine contracting around 1,000 Patriot missiles from allies, defense chief says
参考:Niemcy przekażą Ukrainie 600 pocisków do Patriotów. Zełeński potwierdza
参考:Press Briefing Transcript: Under Secretary of War Michael P. Duffey and Lockheed Martin CEO Jim Taiclet Discuss Landmark Acquisition Transformation Agreement to Accelerate PAC-3® MSE Production
PAC-3 MSEにしてもPAC-2 GEM-Tにしても長期的に供給量を増やすことが出来ても短期的には微増止まりだろう
ウクライナのイェウヘン・フマラ国防相は8日、ウクライナ国防連絡グループの会合で「パートナー国の支援とEUからの融資資金を活用して約1000発のパトリオット迎撃ミサイルの供給契約を締結している」「この将来調達する改良型ミサイルと引き換えに備蓄分からパトリオット迎撃ミサイルを引き渡してほしい」と要求し、将来調達する改良型ミサイルとは「ウクライナが発注した約1000発の新しく製造されるパトリオット迎撃ミサイル」のことで、要するに「ウクライナ国防連絡グループ参加国が備蓄している古いパトリオット迎撃ミサイルを今すぐ提供してくれれば、発注した新しいパトリオット迎撃ミサイルで備蓄を補充する」という意味だ。

出典:Lockheed Martin
ウクライナがパトリオット迎撃ミサイルの供給について正式な契約を締結しているのか、ウクライナが供給契約を締結したというパトリオット迎撃ミサイルはPAC-3 MSEなのか、それともPAC-2 GEM-Tなのか、新しいパトリオット迎撃ミサイルで備蓄を補充するまでにどのくらいかかるのかは一切不明で、判明しているのは欧州委員会が9月11日に今年最後の防衛・軍事援助の融資を承認する見込みで、ここに防衛・軍事援助の資金をパトリオット迎撃ミサイルを購入する承認が含まれている。
国防総省とロッキード・マーティンは「2030年までにPAC-3 MSEの年間生産量を3倍(ジム・タイクレット曰く2030年までに年2,000発達成)に引き上げる契約」を最大586億ドルで締結したが、最大586億ドルの初年度分や7年間の枠組みの財政的裏付けとなる2027会計年度の国防権限法案も予算案も成立しておらず、PAC-3 MSE増産に関する取り組みは資金待ちの状況で、11月の中間選挙結果が出るまでは予算全体が動くことはないだろう。

出典:Lockheed Martin
仮に奇跡が起こって財源が確保されても高度な兵器を生産するためのリードタイムは非常に長く、PAC-3 MSEは発注から納品まで平均42ヶ月間ほどかかり、さらに発注数が生産能力を大幅に超過している状態なのでサプライチェーン全体のパイプラインを太くすることから始めなければならず、数万点から数十万点に及ぶ特注の構成部品は市場に出回る汎用品で代用することもできないため、増産が始まった1年目=2027年にPAC-3 MSEの生産数が年700発から年1,000発に増えるということはまず起こらない。
現時点でのリードタイムがどれくらいなのは不明で、恐らく正式な契約締結は融資承認後になり、複雑な手続きをすっ飛ばして今すぐ契約を締結できても長い行列の最後尾に入るなら、ウクライナにPAC-3 MSEが届くのは3年後の話になるため、古いパトリオット迎撃ミサイルを提供した国は2029年以降にならないと補充分が届かず、この問題は「ロシアがNATO加盟国を攻撃するかもしれない」という欧米当局者の懸念を直撃する。

出典:Президента России
多くの人は「ロシアがNATO加盟国を攻撃するかもしれない」という懸念について「ウクライナと戦争中のロシアがNATOに侵攻するなんて馬鹿げてる」と考えるかもしれないが、欧米当局者が懸念しているのは「ロシアがNATO加盟国に侵攻している全面戦争」ではなく「NATOの基盤=第5条の有効性を試すための攻撃」で、ロシア人系住民の保護など曖昧な問題で特定地域の対立を煽り、判断や立場が分かれそうな小規模な衝突からエスカレーションを誘い、西欧と東欧の認識や危機感の違いを突いて加盟国間を分断し「第5条が役に立たない」と証明することだ。
もっと分かりやすく言えば「曖昧で判断や立場が分かれそうな部分を攻撃して団結されると厄介なNATOをバラバラにする」「欧州全体をロシアへの危機感が異なるグループ毎に安全保障体制を再編させる」「再編されたNATOよりも小さなグループは相対的に戦力と能力の規模が小さくなる」「結果的にロシアの影響が強くなり干渉しやすくなる世界が出来上がる」という意味で、ジョン・ラトクリフCIA長官が8月下旬にモスクワを訪問したのは「NATOの結束を試そうとするな」と警告するためだったと言われている。

出典:Bundeswehr
欧州は巨額の資金を投じた再軍備計画を進めている最中で、2030年代に入ると再軍備計画の効果=ロシアを圧倒する通常戦力増強が登場し始めるため、プーチンが付け込める「脆弱性の隙」は時間が経てば経つほど小さくなってしまうため、第5条の有効性を試すための攻撃リスクは2029年までが最も高く、ウクライナが提案した「備蓄している古いパトリオット迎撃ミサイルと新しいパトリオット迎撃ミサイルを交換する」というアプローチは欧州諸国の忍耐を試すことになるかもしれない。
一般的な道徳論で言えば「助けてやれよ」になるかもしれないが、欧州がウクライナを支援しているのは善意ではなく利害(再軍備計画は軌道に乗るまでロシアを拘束すること)が合致しているためで、もし備蓄している古いパトリオット迎撃ミサイルを手放すことで生じる空白が安全保障のリスクとして許容できない場合は容赦なく提案を断るだろう。

出典:Auterion
ウクライナとドイツは2026年4月「ドイツがパトリオットシステムで使用する迎撃ミサイル×数百発、IRIS-Tランチャー×36基、ウクライナ独自の長距離攻撃能力開発、AIを活用した中距離ドローンの共同生産に40億ユーロを供給することで合意した」と発表し、RTXも「ウクライナ向けGEM-T弾を供給する37億ドルの契約を締結した」「今回の直接販売契約(対外有償軍事援助ではない)はドイツのシュローベンハウゼンに新設された工場で生産される」と発表していたが、ゼレンスキー大統領は8月「ドイツと2027年から2028年にかけてPAC-2ミサイル600発を納入することで合意した」と述べたことがある。
RTXが新規生産するPAC-2 GEM-T(年240発/月20発)は同盟国やパートナー国のニーズに対応するもので、MBDAとRTXはまもなくPAC-2 GEM-Tのドイツ生産を開始し、2027年までにPAC-2 GEM-Tの生産能力を年420発まで引き上げる方針だが、NATO支援調達庁が2024年1月に加盟国分の発注を一本化して1,000発、ポーランドが2026年6月に9億8,800万ドル分(推定200発以上)を発注しているため、2028年までにウクライナへPAC-2 GEM-Tを600発引き渡すためには2027年と2028年に生産するPAC-2 GEM-Tの大部分(推定70%)を回さなければならない。

出典:RTX
2026年末にドイツで稼働を始めるPAC-2 GEM-T(年180発程度)のライセンス生産も「シーカーをドイツで生産する」という記述がないため、RTXがブラックボックスとしてMBDAとの合弁企業=COMLOGに供給する可能性が高く、いきなり2027年に年180発分のシーカーをドイツの生産ラインに供給できるかも不明で、PAC-3 MSEにしてもPAC-2 GEM-Tにしても長期的に供給量を増やすことが出来ても短期的には微増止まりだろう。
しかもRTXは四半期決算説明会で「200億ドル近い受注を獲得し、この中には50億ドルを超える海外顧客からのPAC-2 GEM-T発注と、30年ぶりとなる国内からのPAC-2 GEM-T発注が含まれる」と明かし、米陸軍は4月に対イラン作戦=エピック・フューリー作戦を支援するため4億4,160万ドルの契約をRTXと締結しており、この作業の完了は2026年9月30日を予定しているため「新規発注したPAC-2 GEM-Tを5ヶ月後に受け取る」というのは到底不可能で「現在の生産ラインに流れている同盟国やパートナー国向けのPAC-2 GEM-Tを米陸軍向けに振り替える」と解釈するのが妥当だ。

出典:Lockheed Martin
忖度なしで言えば米国は同盟国やパートナー国向けに生産しているPAC-2 GEM-Tを取り上げる可能性が高く、ウクライナが望んでいるほどパトリオット迎撃ミサイルは手に入らないので、限られているPAC-3 MSEで保護する対象をエネルギーインフラのみに絞り込み、軍需産業を含むあらゆる産業は分散と地下化、人間はシェルターへの避難で対応しながら、長距離攻撃能力で弾道ミサイルの製造に関連したサプライヤーを攻撃して生産を妨害し、イスカンデルM、KN-23、RM-48Uを発射するランチャーを直接破壊して発射を抑制するしかない。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin





















日本にしてもロシアだ中国だと懸念がある…
が、取り敢えず象徴的な意味と対露報復の意味を込めて数十発提供して欲しい
まず補充の目処も立たないのに自国使用分の装備(日本もパトリオットが足りている訳ではない)を外国に渡してどうするのかという話ですし、数十発といえば日本のパトリオット生産数の1年分くらいに相当しますが送ったところで彼らは半月かそこらで撃ち尽くすでしょう。
ゼレンスキーはその場では感謝の意を表するかも知れませんが、撃ち尽くした後はまた弾道ミサイル撃たれ放題、「足りない、足りない」に逆戻りするのは目に見えてます。
自分に言わせれば「そんなのは欧州にでもやらせておけ」です。
03式改(能力向上型)が年1000発くらい作れるようになったら有りかもね
中東でも使い切ったんで日本に回す分は最後の方じゃないかな…?正直トランプ政権にとっては対中国はそれこそカナダやグリーランドやEUなどへの脅迫も含めると優先度は限りなく低いし
ここに書いてあるけどPAC-2とPAC-3があるのにどっちを提供するって話なのか、それとも両方なのかで話が変ってくるのにどうしてハッキリさせないのかな。
数年後にランチャー変更して23式艦対空誘導弾の陸自転用でもするつもりならPAC-2を渡しても良いかもしれないがパトリオットは空自の管轄で03式系統は陸自管轄だから単純に補完出来る感じでもないと思う。トータルで統合運用するなら影響なしと判断するならPAC-2提供は有りだと思うが、PAC-3提供するのは変わりがない思うので無しとしか。
何が恐ろしいって
その数年後までウクライナの戦争続いてそうなのがね
ウクライナ軍がリマンで2回の機械化突撃を成功させてロシア軍突出部を消滅させたり、ロシア軍がハリコフ東北部で包囲を完遂したりオレホフ正面を電撃的に突破して市街地に流れ込んだり、昨今は戦場に機動の余地が回復しつつある兆候が見られるので良きにしろ悪きにしろ膠着は終わりを迎えつつある感があります
数年は続かないでしょう
ほぼ自国内で経済を完結させようとしない限り産業の分散と地下化には限界があるので仕方ないのですが、空襲警報の段階の細分化や外出禁止令の短縮、公共交通機関及び外出禁止令中の大型輸送車に対する制限緩和などを見る限り、政府の方針には特に変化は無さそうですね。
>要するに「ウクライナ国防連絡グループ参加国が備蓄している古いパトリオット迎撃ミサイルを今すぐ提供してくれれば、発注した新しいパトリオット迎撃ミサイルで備蓄を補充する」という意味だ。
これだって実際にその通りに譲り渡されるかというと…
発注したミサイルが届く頃まだロシアと戦争してそうなので
何だかんだ理由づけてウクライナで使うからやっぱり譲れないとなるでしょうし、
未来の話だから言うだけタダって感じですよね。
アメリカが韓国に圧力かけて天弓-Ⅱをウクライナに供与させようとしてるみたいな噂も聞きますし、
誰が火中の栗を拾うことになるんでしょうか。
EUが喜んで提供するとしたら、独自の弾道ミサイル迎撃ミサイルのテストかな。
兵器の有効性テスト場みたいにされている感がある。
ウクライナや欧州で、パトリオット代替の安価なミサイルが開発される方が早いかもしれない。
NATOがバラバラにされる懸念の対策として必要なのは指揮系統と介入基準の見直し=ソフトウェアの改善であって、ハードがいくら増えても根本的解決にはならないのでは?
本当に2030年にはこの懸念が払拭されてウクライナにドバドバ支援できるようになるのか
国防関係者というのは懸念を強調して予算を獲得することが評価される人種であるため、金になりそうな「懸念」があればいくらでも誇張する
日本は相変わらず何もしないんか
全世界のパトリオットミサイルの製造を日本が一気に奪えるチャンスなのに
あー、もったいない
作るヒトもモノもカネも無いです
需要がいつ途切れるかも分からないし在庫が余ったらそれこそ負債にしかならんので10年20年売上が見込めてITや金融より株価や利益率が上がらなきゃ誰も作らないよ
日本はライセンス生産許諾はされているんで、仏(ドンガラ)は作れるんですけど、魂(シーカー)はブラックボックスになってて日本での製造が禁止されているので、結局、日本が頑張ってもほとんど意味ないんですよねえ。今の状況。
「パトリオットをウクライナに送れ」はすべて詐欺です。👮♂️
グーグルAIに聞いてみたら。
湾岸戦争時のPAC-2の弾道ミサイル撃墜率は、最新の調査結果で、9%とのこと。
米軍も不足を感じてPAC-3を開発したのでしょうね。きっと。
仮に敵弾道弾迎撃にPAC-3を2撃てば、撃墜率は50%になるのかな?。
PAC-3が間に合わなければ、PAC-2を使うのだろうけど、PAC-3の数倍の数の
PAC-2ミサイルが必要になるのでしょうね。きっと。
RTXはPAC-2の改良は考えたりしないのかな?。運動性能を上げるとか?
仮に、PAC-3のサイドスラスタが使えなければ、ロケットの噴射口にベーン
を付けたりしたら、多少は変わらないかな?。判らないけれど。
数が必要なら、間に合えば、FP-7xの方が安価になるのかな?。
それはパトリオットの命中率が低いんじゃなく、PAC-2は調整破片弾頭なんで命中しても撃墜出来ないからの低い撃墜率なんじゃ……
PAC-3のメーカーが主張してる撃墜率は90%で、低めに見積もって80%でもサルボ発射なら撃墜率96%だ
よその記事の和訳を読んだのですが。
9月15日付けのディフェンスエクスプレスの記事の中で。
”PAC-2 GEM-T は弾道目標のキル確率が低く、約60%と
推定されており、PAC-3 MSE のように 80~90%では
ありません。” という内容がありました。
おっしゃる通りなのでしょうね。
別に迎撃できなくても戦争を遂行する上では問題有りませんしね。軍需工場はホーランドに疎開して避難民を雇えば良いんじゃないでしようか?
まぁ、私も仏印に進駐してもナニも起こらないと思います。
安全保障に関わるものは、簡単には他国に譲渡するのはリスクですからね。
パトリオットは世界中で、需要が爆増しているわけですから、各国で取り合いでしょう。
現在進行形で中東で使いまくっているし
ロシアが欧州に直接攻撃する構えを最近見せているから防空兵器の譲渡は難しのではなかろうか
もちろん日本はダメですよ、すでに米空母すら全部向こうにいっているんですから
>欧州がウクライナを支援しているのは善意ではなく利害(再軍備計画は軌道に乗るまでロシアを拘束すること)が合致しているため
日本からウクライナにパトリオット支援したがってる人はこの辺が理解できていないのかなと思う。
ロシア軍よりはるかに強大な人民解放軍を脅威として対峙しているのを認識しているのに、
有事になったらウクライナを支援した見返りとして何故か欧州から手厚い支援を受けられると思ってる。
ロシア軍を弱体化できるから日本にとってメリットという話も、
もともと極東ロシア軍なんて対して強力な戦力ではなかったし、ロシアの北朝鮮や中国への依存が高まって、
直接的な脅威の方が強化されている始末。