New York Timesは30日「ウクライナの動員ペース(月3万人)がロシアと同じなった」と報じたが、ウクライナが動員の次に直面している問題は国防予算の不足で、5,000億フリヴニャ=120億ドルの資金を集めるため増税を検討しているものの産業界は猛反発している。
参考:Ukraine Is Conscripting Thousands More Troops. But Are They Ready?
参考:Сергій Марченко: Можемо дискутувати щодо підвищення податків, але ситуація вже критична
参考:Ukraine Business Roundup — Business goes to war with proposed tax hike
ウクライナが動員の次に直面している問題は「資金不足」だ
ロシア軍の人員構成は契約軍人と義務的徴兵(年2回/1年半~2年)で招集された兵士で構成され、ウクライナ侵攻のような国外作戦に義務的徴兵で招集された兵士の動員は禁じられており、プーチン大統領は不足する侵攻戦力を補充するため2022年9月に部分的動員(義務的徴兵を終えた予備役30万人の強制動員)を実施したが、余りも不評だったため契約軍人の動員(直接契約に基づく義務的徴兵を終えた予備役の動員)に切り替えた。

出典:Минобороны России
メドヴェージェフ元大統領は昨年10月「1月1日から10月25日までに約38.5万人(契約軍人30.5万人+ストームZのような志願兵8万人)が軍に入隊した」「毎日1,600人以上が軍との契約に署名している」と、今年7月には「2024年も大統領が設定した契約軍人の確保が目標を達成しつつある」「1日あたりの平均契約数は約1,000人だ」「これまでに約19万人のロシア国民が国防省との契約に署名した」と明かしたことがあり、ロシアの人的資源供給量は月3万人という意味だが、New York Timesは「ウクライナの動員ペースがロシアと同じなった」と報じている。
ウクライナでは改正動員法が5月に発効し、安全保障委員会に所属するコステンコ議員は6月「参謀本部は予想を上回る動員ペースに満足している」と言及していたが、New York Timesは30日の記事の中で「ウクライナ当局は機密事項という理由で動員に関する数字の公開を拒否している」「この数字に詳しい3人のアナリストによれば5月以降の動員数は月3万人でロシアとほぼ同じだと明かした」「第65旅団の報道官も深刻な人手不足だった2023年末に比べると状況は若干改善しているが、我々のニーズは受け入れている補充兵の数をまだ上回っていると述べた」と指摘。

出典:43 окрема механізована бригада
同時に「ウクライナにとって兵士の動員は大きな問題の一部でしかない」「兵士やアナリストは部隊が適切に訓練され、十分な武器や弾薬が供給されるようにすることが重要だ」「第33旅団の報道官も『やって来た補充兵は基礎訓練のみしか受けておらず、正直に言って戦う準備が出来ていない』と語った」と述べているものの、ウクライナが動員の次に直面している問題は資金不足だ。
西側諸国の軍事支援は「資金提供」ではなく「装備や物資などの現物支給」で、経済支援の資金援助も「非軍事分野の用途」に使用が制限されているためウクライナは軍の維持費用を自力で捻出(税収の全てを国防予算に回している状態)しなければならず、2024年の国家予算は既に5,000億フリヴニャ=120億ドルの資金不足に陥っている。

出典:Олег Гороховский
この資金不足の大半は国防予算に関連するもので、マルチェンコ財務相は大幅な増税(個人や企業への戦争税、輸入品に対する追加の課税、贅沢税の引き上げなど)を検討中だが、産業界は「さらなる増税は企業の経済活動を闇経済に追いやるだけ」「増税を検討する前に違法企業を取り締まれ」と猛反発。
モノバンクのCEOも「政府と企業には共通の目標があり、戦力を維持するため経済を維持しなければならない。我々は異なる見解を持っているかもしれないが対話を通じて解決策を見つける必要がある。我々は裏切りではなく協力について話している」と述べ、ゴッドファーザーのセリフをもじってFacebookに「よく聞け、戦争中の国で増税を提案してくる奴は裏切り者だ」と投稿している。

出典:Sergii Marchenko
この問題を増税以外の手段で解決するには資金援助の制限緩和=国防予算への転用容認しかないものの、マルチェンコ財務相は「この問題は非常に複雑だ。もし我々が欧州の安全保障システムの一員で、欧州に向けられた潜在的脅威を阻む重要な要素であれば話し合いの余地がある。我々がEUの正式加盟に近づけば可能性が出てくるものの、現時点で戦時中のウクライナ軍に資金を提供できる国は1つもないと思う」と語っており、増税が導入できなければロシアと同ペースの動員を維持出来なくなる恐れが、動員ペースが落ちれば再び深刻な人手不足に陥るかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
ウクライナは、まず自国民に増税、もっと自国民が戦時国債を購入するところからでしょうね。
(日本を含め)海外に資金援助を要求するばかりで、ウクライナ国内は増税反対では順番が逆です。
日本は非欧州なわけですから、ウクライナがそれでもお金が足りないとなった時に、(戦後復興以外で)初めて支援を検討するのが筋だったと感じます。
追記です。
資金支援
>支援
別にそこまでしなくて良い、アフガンとかのゲリラと同じで身の丈に合った戦い方すれば予算に余裕出るのは間違いない。小銃やロケットメインで戦う、ドローンやミサイルの迎撃を諦める、金食い虫の機甲部隊の使用を辞めるか控える。F-16を使わない。
それが許容出来ないならお金を払うしかないそれだけの話。
戦争を続けるのに動員が必要になる一方、戦況は悪化し続けそして、ロシアとの対話を拒否する方針は市民の生活をさらに税負担で厳しくしています。ウクライナ政府とゼレンスキー大統領は市民の負担を考慮し戦争そのものを継続していくのかが正しい選択なのかを再考するべきです。
増税以外の手段で解決する・・
はて?どこかにATMとして名高い国があったような無かったような・・
湾岸戦争のときみたいに、ポンと90億ドル
直接的な戦費だけは送ったらダメですよ
中銀で対処可能な領域を超えた以上、大幅な増税や紙幣増刷は避けられないというのは去年から言われ続けていることですね。
増税を快く受け入れる人々など元々少ないという前提はひとまず脇に置くとして、電力不足が深刻化して以降のウクライナでは、企業が無制限の電力供給を受けるには高価な輸入電力の使用率を全体の八割以上にする必要があります。
その他の要因も合わせると生産ライン等を止めた方がましな状況も生まれているため、産業界はこれ以上の負担増を望まないでしょう。
まあ、有権者に直接増税(の大部分)を叩きつけるより、ワンクッション置いて企業を絞った方が戦時においては何かと安全なので。
3万人というのは現在のウクライナの人口(キエフ政権が支配できている地域という意味です)と見られる2500万〜3000万人程度の0.1%以上に達します。分母を動員可能な25〜60歳男子とすれば実に0.4%(単純計算なので国外逃亡者の偏り等は考慮していません)で、1年間このペースで動員を続ければ5%が消費されます。
ここまででも大問題ですが、一番悪いのはウクライナ軍がこれまで動員を行っても(1、2ヶ月たっているので一部は訓練が終わっている筈)戦況改善の兆しも、動員による楽観的な見通しの予測も聞かない以上、新兵補充とあまり変わらないペースで損失(死傷に加え逃亡等も含んだ話です)が生じている可能性があることでしょう。
私がゼレンスキー大統領なら、領土奪還の見込みが薄いにも関わらず膨大な国民を死なせ続けるなどというのは絶対に嫌ですね。個人的には、このような場面で困難な決断を下し、石を投げられつつも国民を救うのが理想的な為政者だと思います。
前線での損失を抑えないと動員数が増えても底の抜けたバケツに水を注ぐようなものですわな
十分な動員に対して十分な訓練を行い、戦力の底上げを行う必要がありますが現実問題としては出来ないのでしょう
以前は何万人もの規模で支援国に滞在して訓練を行う事が出来ていましたが、最近はとんとそういった話を聞きません
どうなったんでしょうね?
以前なら体力や気力のある者を外国で訓練できたであろうが、もうそういう人は軒並み動員したので今残ってる者は兵役に向かないようなボロボロの人ばかり。社会不適合者、虚弱体質、病気、アルコール、薬……
外国軍に受け入れてもらえない
ゼレンスキー大統領とマイダン政権は米英諜報工作で作られ英特殊部隊
が護衛している役者グループが正体、米英の意向に逆らうはずがない
ウクライナ戦争の停戦は米次期政権とプーチン政権が決定するだろう
何処かの現政権与党も米国追従しかできないがそこまで酷くはない
月に3万人とっ言っても、以前は5万人以上が動員されていたという話を目にしました。思うに数は少なくなっているのでしょう。だから、兵士不足は解消されず、戦況も全般に押されるようになっているのだと思います。砲爆撃の方は、もともとロシア軍が優勢ですからね。
しかし、ウクライナ軍の各旅団には補充兵は来てますね。全くないということはないと思います。隊の中でベテランが戦死してかなり入れ替わっているという話も聞きますからね。しかし、以前のように潤沢ではないし、数も回復もできていないということですね。
それと、ロシア軍の一昨年の30万の予備役動員は、日本で言うと予備自衛官みたいなものです。
イスラエルや韓国は国民皆兵ですから、兵役後の予備役と言っても全員なわけです。だから予備役の動員も新たな徴兵も同じようなものです。
しかし、ロシアの徴兵は年間で5万とか数万か10万以下だったと思います。ですから、予備役の登録も選択であり毎年の訓練にはお金も出ているはずです。
つまり、ロシアでは予備役の動員は、一般人の動員とは意味合いが違うわけです。でないと、特別軍事作戦の場合には徴兵した兵士を戦場に送れないという規定自体が、意味を失いますからね。
そもそも腐敗が一向に改善されない状況で予算を注ぎ込んだところで意味があるのか大いに疑問を感じます。
ボグダンさんの動画や日本人義勇兵の発信などでも度々言及されていますが、本来兵士にわたるべき給与や手当が隊長や上官によってピンハネされて生活にすら困窮する始末。
増税して予算手当をしたところで安全な後方で横領を繰り返す腐敗軍人や腐敗官僚をますます肥え太らせるだけになるのではないでしょうか。
以前こちらのサイトの記事でもはした金の罰金を支払えば過去の汚職も含めてチャラになる法案が通ったことが話題になっていましたが、汚職をゆるゆるにする一方で増税なんてメチャクチャすぎます。
公が腐敗している以上、担税力がある富裕層への増税にはならないと確定しているようなものですからね…
課税のダメージ大きいところに増税して、経済が更に弱り生活困窮するのが目に見えています
月3万というのが本当だとして、それでドンバスがあの状態なの?って話になる。
このまま戦い続ければ、ドンバス完全喪失は既定路線だろ。
書類の上では月あたり3万人と記載されているのは、本当なのでしょう。
問題は、拘束された彼らが戦力として全く期待できないこと、汚職により兵士の手当が減じていること、逃亡兵の実数をカウントできないこと、ローテーションを否定したため軍が古参兵からの信頼も失っていること、そのため死守命令を拒否したり部隊単位で勝手に持ち場を拒否してること、ですかね。
5月から3万人動員体制で、訓練と移動の時間を考えると、3万人のほとんどは前線に来てないと思うよ。
5月に囚人兵の法案が可決されて既に戦死者も出てるから、一般の動員兵も戦ってるでしょう。
ウクライナの新兵訓練は経験者2週間未経験者4週間。外国人義勇兵も同じ。
訓練所から配属された新兵が使えないので部隊が独自に追加訓練することもある。前線近くで訓練するからミサイルで吹っ飛ばされたりする
というか、新兵を訓練する時間も労力も無駄なので。到着した新兵はそのまま最前線の塹壕に押し込んで砲弾の餌にして、ちゃんとした部隊はそこから1-2キロほど離れた隠れ場所からドローンで攻撃というのがウクライナ軍の基本戦術ですよ。
なのでロシアが砲撃をかけても吹き飛ばせるのは素人のどうでもいい新兵ばかりで、主力の兵士をなかなか削れないんですね。
で、それを逆手に取ったのがロシアのバイク突撃で。ウクライナの前線には新兵しかいないし、後方のドローンが間に合う前に塹壕に乗り込んで乱戦に持ち込んでしまえば勝ち確、というシステムです。
移動はまだしも、今のウクライナに
新兵たちを訓練させる猶予と余裕はあるのだろうか。
ただでさえ、各地で敗走を続けてる中で
訓練なんて時間のかかることが
ウクライナの戦況悪化を招くか位は分かりそうな気はするが…
本当にウクライナは勝つ気があるのかと文句も言いたくなるような記事ですね。
どの国もこれほど大規模な戦争になったら大増税して予算を賄うのは当然のこと。
それを増税は嫌だ、もっと支援を、支援金を転用できないかなど当事者性の欠如も甚だしい。
仰るとおりです。
総力戦なのですから、増税はもちろん戦時国債の強制購入に預金封鎖など出来ることは何でもやらないといけません。
対外債務の踏み倒しも始まったし
もう無担保で金を貸す国も無いわな
国民に対して、兵役逃れの免罪符を
高値で売るくらいしか手はなさそう
人員損耗圧倒的有利らしいウクライナ軍の人員どこに神隠しに遭ってるんだろうか、兵員足りないとか嘘だと言ってくれよゼレンスキー。実際の所は負傷、戦死、逃亡、投降、実はロシアで生活している、すでにロシア軍在籍中ということだと思うけど、ロシアと同規模で動員しても国力差凄いんだから話にならないしゼレンスキーも本音ではロシアには勝てないのは理解しているが国民や西側の手前もう引っ込みも付かない現状ということなんでしょうかね西側も終戦望んで無いだろうし、まさかのそんなの興味無いという可能性もあるか、ただ一応建前では民主主義の防衛みたいな感じなのだろうから国民にこれ以上の血は流させる事は出来ないでロシア終戦案飲んで自分が腹切れば一応の決着は見えそうだけど、そんなことする様な人間では無いか。結局はまだまだ血が全然足りないということなんでしょうね。
外債を支援国に引き受けてもらうのではだめなんですかね。国債なら用途紐付きにできますし、ウクライナに現ナマ渡すことに抵抗ある国々にも提案しやすいと思うのですが。
1.8兆円くらいだとするとウクライナからしても補正予算として組むならそれほど大きいというか致命的ではない数字だと思うのですが、戦時下において 増税で民間市場から調達しようとするのは結構冒険だと思うんですよね。徴兵ぶん労働人口が減ってますし、何より東部の重工業メーカーが軒並み操業停止を強いられてる中で法人にしろ国民にしろねらって絞るとしたら、無理ではないけど1回きりにしておいたほうがいい気がします。
国民
「動員は嫌だ」
「増税も嫌だ」
「停戦も嫌だ」
ゼレンスキー
「じゃあどうすりゃいいんだよ…」
どこの国でもあるあるですね。
日本でも、増税反対だ減税しろ、福祉削減反対、電気代ガソリン代下げろ、でも原発反対など。色々とあります。
そういう矛盾した国民の声を纏めて、うまく政策を進めていくのが政治ですから。。。
プーチン(どうすればいいか本当に分かっていないわけではあるまいに…)
結局、増税で決着がつくのでしょう。
しかしこういう揉め方をするということは、実はまだウクライナは(ロシアも)総力戦までには至ってない。
本気を出してないという事なのか?
冷静に見てみると、過去2階の大戦に比べて、2年間超えのそこそこ長い戦争の割に死者はあまり多くは無いです。
開戦、勝手に個人的に予想してたより、1/10ぐらいです。
例えば第二次大戦の独ソの戦死者では、だいたい独600万人、ソ連1000万人。
2桁ぐらい違います。
後で歴史を振り返ると、実はこの戦争、まだ小競り合いレベルだったということなのかもしれない。。。
イスラエルはガザ地区すら制圧できてないのに、ヒスボラやイランを戦いに巻き込もうとしてる。
戦争にヒスボラやイランを巻き込んで、アメリカも介入するしかない状態にしたいのかな。
中東で大規模戦争になればアメリカはもちろんヨーロッパもウクライナ支援どころではなくなってしまう。
ロシアの日に1,600人も契約軍人として雇用してるのですね。先日の記事で一時金を20倍に報酬上げる記事もあったので、更に増えますそうです。日本も自衛隊の人数や年齢層、予備役の極端な少なさは問題ですし、こうも集まるのであればいざというときの活用と法整備は整えてよいのかもしれませんね。
貧困国が中心のようでので、やはり命の値段の差を感じてしまいますが
もう少し早く話題になればNATOの会議で議題になったのかな?
5月から動員が始まって2ヶ月にしてようやく新兵の補充がされるようになってきた。新兵の練度は基礎レベルだと言う。歩兵の基礎レベルに必要な期間は最短で6週間程度なので、記事に出てきた第33旅団のケースは5月上旬に動員された兵士がこの10日ぐらいでやってきたものと推察されますね。このレベルだと塹壕の守備をするのが精一杯ですが、火力支援があればなんとか使えます。後は米から再開された装備を補充して守備限定の歩兵旅団を構成して絶賛崩壊中の前線を埋めていくわけです。この効果とロシア軍の損耗によってロシア軍の2024年夏季攻勢は8月末で攻勢限界となり戦線は膠着状態となるわけですね
ウクライナ軍は5月から動員を始めたのではないのです。動員自体は途切れることなくずっと続いているのです。ウクライナ軍はその強力な動員力により、兵力は優位だったのです。
ところが、昨年末くらいから、その動員力が落ちたのです。それで、色々な方策がされて動員法の改正もその1つです。
しかし、以前の動員数には回復していないのが現状です。各旅団は兵力が少なくなっています。それが全般的に押されている原因の1つです。