ウクライナ戦況

ウクライナの自爆型無人機による月間攻撃量がロシアを上回る、1回1,000機超えも

ウクライナとロシアの長距離攻撃能力には絶対的な差が存在していたものの、ウクライナ製の自爆型無人機や巡航ミサイルの量産が軌道に乗り、2026年3月にウクライナの自爆型無人機による月間攻撃量がロシアを上回り、5月17日は1回の攻撃量が初めて1,000機を超えた。

参考:Russian air defense shoots down 1,054 Ukrainian drones, Flamingo, Neptune-MD missiles

ウクライナに対してShahed型無人機による数の暴力は通用しなくなってきている

ウクライナとロシアの長距離攻撃能力には当初「絶対的な差」が存在していたが、ウクライナ製の自爆型無人機(FP-1、FP-2、UJ-22、UJ-25、UJ-26、Lyutyi、パリアニツィアなど)や巡航ミサイル(FP-5や対地攻撃用のネプチューン)の量産が軌道に乗り始めるとロシア領内への長距離攻撃が徐々に増加し、2025年7月からは月間攻撃数が1,000機を下回ることがなくなり、2025年12月には月間攻撃数が5,000機を超えて長距離攻撃能力の格差が急速に縮まった。

2024年10月から2026年5月までロシアが迎撃したウクライナ軍の自爆型無人機(固定翼のみ)の数
2024年10月731機ロシア国防省発表を管理人が手動集計
11月727機
12月670機
2025年1月814機
2月758機
3月1,284機
4月811機
5月858機
6月669機
7月1,824機
8月1,495機
9月1,308機
10月2,674機
11月推定1,000機~2,000機攻撃が低調月
12月RIA Novosti報道 6,503機ABC報道 4,379機
2026年1月推定1,000機~2,000機攻撃が低調月
 2月推定1,500機~3,000機攻撃が低調月
 3月7,347機ウクライナの自爆型無人機による攻撃量がロシアを上回る(飛来数6,462機)
 4月9,372機ウクライナの自爆型無人機による攻撃量がロシアを上回る(飛来数6,583機)
 5月現時点4,000機以上17日は1回の攻撃量として初めて1,000機を超える

そして2026年3月に初めてウクライナの自爆型無人機による攻撃量がロシアを上回り、5月17日は自爆型無人機による1回の攻撃量として初めて1,000機を超えた。

ロシア国営通信のTASSは17日「ロシア国防省が過去24時間で固定翼無人航空機を1,054機、ネプチューンを1発、FP-5を1発、HIMARS用ロケット弾を1発、誘導爆弾を8発を撃墜したと発表した」と報じ、ロシア国防省発表はウクライナのような飛来数と迎撃数ではなく「迎撃数」のみしか発表しないため、実際にはより多くの自爆型無人機や巡航ミサイルがロシア領内に向けて発射された可能性がある。

出典:Минобороны России

ロシアが過去4年近く自爆型無人機、巡航ミサイル、弾道ミサイルでウクライナの後方地域を攻撃しても、ウクライナの軍事や経済が崩壊することはなかったため、ウクライナの自爆型無人機による攻撃量がロシアを上回ったとしても「ロシアの軍事や経済が崩壊する」というセンセーショナルな結果は起こらないが、これまでウクライナに強いてきた迎撃コストの負担を自らも強いられるようになるだろう。

ロシアのエネルギー関連の施設は広い国土に分散して点在し、自爆型無人機を安価に迎撃する手段の構築でも後手にまわっているため、当面は迎撃コストの負担に相当苦しめられる可能性が高く、ロシア人ミルブロガーが昨年夏頃から「ウクライナ軍の無人機攻撃に対する効果のない対策=モバイル通信の遮断が防空部隊からも通信手段を奪っている」「そもそも軍の指揮統制が商用メッセンジャーや民間向けアプリにどうして依存しているのか?」と指摘していた問題も相変わらずで、ウクライナ軍の長距離攻撃による被害拡大を食い止められているとは言い難い。

出典:Денис Шмигаль

どちらにしてもロシア軍のShahed型無人機による長距離攻撃は迎撃ドローンの量産と運用が本格化して大成功を収めているため、攻撃コストと迎撃コストの交換比は逆転している可能性が高く、ウクライナ企業の迎撃ドローン生産能力もウクライナ軍の需要を上回り、政府が許可さえすれば迎撃ドローンの海外輸出も可能なところまで来ている。

つまり「Shahed型無人機による数の暴力は通用しなくなってきている」という意味で、このままShahed型無人機による大規模攻撃はコスト交換比が悪化して効果を失うのだろうか?それとも戦術的工夫や新しい技術的アプローチで長距離攻撃能力の主役として生き残るのだろうか?

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※アイキャッチ画像の出典:Volodymyr Zelenskyy

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コメント

  • コメント (22)

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    • たむごん
    • 2026年 5月 18日

    大規模な国家間戦争、消耗戦は本当に負担が重いですね。

    戦争はお互いが適応していき、国家レベルが本気(経済合理性を無視)になれば、大抵の事は成し遂げられると言われます。

    ウクライナは穀物自給できるうえに、西側各国から武器支援・金融支援が継続しているため、犠牲はでるものの本当に粘り強いですね…。

    34
    • のー
    • 2026年 5月 18日

    本当にどうなるか分からないものですね。
    今度は迎撃ドローンが主役に躍り出てきましたか、しかも輸出する余裕まであるとは。
    しかしまた来年には状況が変わってそう。
    そろそろ米国でミサイル用ジェットエンジンの量産体制が整ってくるらしいから、
    今度は亜音速巡航ミサイルが猛威を振るうと勝手に予想
    なんとSpartanエンジン年間5万機製造!
    [Kratos Moves to New Engine Manufacturing Facility in Auburn Hills, MI to Support Demand for High-Rate Production of Spartan Engines]

    9
    • ふがふが
    • 2026年 5月 18日

    WW2の総力戦は民需を全て戦争に投入した上で負けた方が街を焼かれるというバランスだったけど、令和最新型の総力戦は双方街を焼かれながらリソースを全て戦争に投入すると言う更なるハードモードになりそうね

    35
    • SB
    • 2026年 5月 18日

    国力に劣るウクライナはともかく、アレだけ経済を軍需に傾けてるロシアでも無人機って月7000機程度なのか
    基本嫌がらせとしてしか考えないのか、それとも輸送やランチャーがボトルネックになってるのか

    23
      • Panzer
      • 2026年 5月 19日

      完全な個人の憶測に過ぎませんが、迎撃手段の確立以降、ロシアは急速に伸び続けていたGeranの生産拡張ペースを大幅に落としています。ついに攻撃/迎撃コスト交換比を逆転されたことを理解し、しかし持続的な後方地域への打撃の必要性はあるため現在のペースで定着させたのではないでしょうか。

      5
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2026年 5月 18日

    一時的なものに終わりそうに思えます
    迎撃ドローンが大成功を収めているというのであれば、ロシア軍が配備し始めている迎撃ドローンも効果を発揮する事になるからです
    お互いがお互いの真似をできる以上「どちらかが一方的に有利な事は続かない」が繰り返されるだけでしょう
    その上で自爆ドローン以外の部分でウクライナ軍が優位に立てるかというと疑問なので、対局としては変わらないと思います

    33
      • ルス
      • 2026年 5月 18日

      ロシアが再度有利になって何になるというのか、さっさとロシアは侵略をやめろ

      18
        • fill
        • 2026年 5月 18日

        ちょっと単純に考え過ぎでは
        ウクライナの迎撃ドローンが成功を収めているのは、低空監視レーダーや光学センサー、通信による警報網と連動した射点配置などがセットになっているからです
        管理人さんの記事にもある通り、ロシアは広い領土に多くのエネルギー施設が散在しているので、この全てに迎撃ドローンに必要なセットを配置して待機維持させるのはコストが重く、攻撃コストと迎撃コストの交換比という問題の対策として効果的とは言えない
        ロシアの迎撃ドローンはモスクワや大規模製油所等の重要目標への通過率軽減には寄与するものの、ロシアが一方的に安価な自爆型ドローンでウクライナを消耗させる側ではなくなり、同種の消耗圧力を本土側でも受け続ける、という構造は当面変わらないでしょう

        35
      • のー
      • 2026年 5月 18日

      書いてあるとおり、ロシアの方が守る範囲がはるかに大きいのでコストは大きいので。
      この戦争はプーチンがもう割に合わないと思ったら止まる戦争なので、
      そう思うまでエスカレートさせていくしか無いでしょう。

      22
      • NHG
      • 2026年 5月 18日

      ロシアは一周回って国土広すぎ問題が・・
      去年あたりまでは国の反対側(ウクライナと面してないほう)を手薄にして、ウクライナ国境を固めれるロシア有利すぎると思ってたら、今は広い国土に対して装備が少なすぎて困ってるみたい
      あとは運用効率の面でロシアはウクライナの後塵を拝してるもよう
      記事中のこれ↓
      「ウクライナ軍の無人機攻撃に対する効果のない対策=モバイル通信の遮断が防空部隊からも通信手段を奪っている」「そもそも軍の指揮統制が商用メッセンジャーや民間向けアプリにどうして依存しているのか?」

      14
    • レプタリアン
    • 2026年 5月 18日

    通常戦力で有意差が無くなって仮に逆転したら核使うんじゃないかなって心配する

    19
      • 名無し3
      • 2026年 5月 19日

      使っちまえよ
      もうNPTとかいう欺瞞と既得権益にまみれた体制なんぞとはオサラバだ

        • 特盛
        • 2026年 5月 22日

        自暴自棄になって世界の終わりを望むのは早計だぞ

    • paxai
    • 2026年 5月 18日

    ロシア軍はウクライナの戦争能力破壊の為に何をするのか?ってのがあまりにもグダグダな気がするなあ。
    エネルギー施設を叩く時期もあれば電力施設を叩く時期もあり空軍基地への打撃を優先したかと思えばドローン工場への打撃に切り替わる。
    前線でも深部打撃でも中途半端なまま次々と目標が切り替わる。ただゲラシモフの誇張塗れの戦果報告だけが続いてる。

    12
    • せい
    • 2026年 5月 18日

    ドローンがゲームチェンジャーになり、更なるゲームチェンジャーが産まれてドローンが陳腐化しそう
    どこかで大戦時のアメリカの空爆のように都市を耕すほどの重爆撃や、一気に数百km押し返すようなことが起きないと、双方出血が増えるだけで何も終わらないのかもな
    ロシアにそんな底力があるか、ウクライナも攻め返せるかは疑問なのが残酷な話だけど

    2
    • 投石器
    • 2026年 5月 19日

    自爆無人機で逆転したとは言っても、ロシア軍側は滑空爆弾がありますから総合的な爆撃力ではまだまだロシア軍優位でしょうね
    無人機攻撃の数の推移などなかなか情報を集め纏めてくれる所はないので、いつもながら管理人さんには感謝しかないです

    14
      •  
      • 2026年 5月 19日

      AMRAAM装備のF-16が飛び回るようになってからSu-34やSu-35が滑空爆弾の射程で飛び回るのは大変危険なのでは?

      7
    • 中村
    • 2026年 5月 19日

     1000機空襲とはいえ、昔のドイツ本土爆撃と比べれば弾量は1/40なんですから地味な嫌がらせ以上の意味は無いでしよう。

     前線で戦場航空阻止に使った方が効率的だと思うんですがね。

    9
      •  
      • 2026年 5月 19日

      ロシアは国土が広すぎるのと防空が弱体でスカスカなので受けるダメージはより大きいようですがね

      11
    • nednir
    • 2026年 5月 19日

    広くもないくせに長くて守りにくいどっかの島国はどうすりゃいいのという

    5
    • 慕華館
    • 2026年 5月 20日

    「ロシア国民にとって戦争のコスト負担が日に日に増している」
    かといって仮に停戦して戦時経済を止めたら止めたでロシア経済はリセッション不可避なのがまた(-_-;)

    1
    • よん
    • 2026年 5月 21日

    偵察機が戦闘機に駆逐されてる
    WW1の有人機を繰り返してて感慨深い

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