RYBARはスームィ方面について13日「ウクライナ軍がキンドラティフカ集落に侵入した」と報告、さらに「クピャンスク方面におけるロシア国防省の嘘報告」を指摘、ロシア人ミルブロガーのДва майораも「成功の前借りが前線で戦う兵士を怒らせている」と批判した。
参考:Хроника специальной военной операции за 12-13 июля 2025 года
参考:Минобороны России
参考:Минобороны России
参考:Купянск дальше, чем кажется
参考:Два майора
スームィ方面は他の戦線と異なりロシア軍を部分的に押し戻し始めている
ゼレンスキー大統領はクルスク・スームィ方面について6月14日「ウクライナ軍がアンドリイフカを奪還した」と発表、RYBARも19日「ウクライナ軍が十分な予備戦力を用意して反撃を開始し、オレクシイウカとアンドリイフカの間にあるロシア軍陣地に割り込もうとしている」「この方向で激しい戦闘が続いているものの敵は成功していない」と報告したが、ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは22日「ウクライナ軍がアンドリイフカを奪還して左側面の安定化に成功した」と報告。
RYBARは7月9日「ウクライナ軍がコスティアンティ二フカ~アンドリイフカ~オレクシイウカ方向の安定化に努めている」「コスティアンティ二フカとアンドリイフカで激しい戦闘が続いている」「ウクライナ軍が大兵力を投入してコスティアンティ二フカとキンドラティフカの間の防衛ラインを突破した」と、9日夜には「ウクライナ軍がアンドリイフカ方向で反撃してロシア軍を集落から追い払った」と報告。
コスティアンティ二フカとキンドラティフカの間の突破、アンドリイフカ方向での反撃と合わせると「キンドラティフカのロシア軍は背後を脅かされている格好」となり、RYBARは13日夜「キンドラティフカ付近で激しい戦闘が続いている」「ウクライナ軍がキンドラティフカ集落内に侵入してきた」と報告し、スームィ方面は他の戦線と異なりロシア軍を部分的に押し戻し始めている。
クピャンスク包囲に関する言及は根本的にシヴェルシク方面やトレツク方面と同じで、自軍の兵士を怒らせる架空の成功に基づいた悪質なプロパガンダ
ロシア国防省による嘘報告(別名:美しい報告書)は1度や2度ではなく、クルスク州の完全解放、クピャンスク方面のシンキフカ占領、シヴェルシク方面のビロホリウカ、フリホリフカ、セレブリャンカ、イヴァノ・ダリウカ占領、トレツク方面のトレツク、ネリピフカ、レオニディフカ占領、ヘルソン方面のクリンキー占領など挙げ始めるとキリがなく、これをロシア人ミルブロガーらは何度も批判し、当該方面の司令官や指揮官が拘束・逮捕される事態にまで発展したケースもある。

出典:IZ.RU 以前の偽報道
RYBARはシヴェルシク方面について9日「ロシア軍がシヴェルシク東郊外に戦力を集結中でまもなくシヴェルシクを巡る市街戦が始まるという噂は真実ではない」「一部の情報源や関係者によるシヴェルシク攻撃開始発言は完全な嘘で現地部隊の努力を軽視するものだ」「シヴェルシク方面では現地部隊から上層部への嘘報告が廃止されたばかりだが、一部の部隊で再び嘘報告が行われ始めており、過去の嘘報告がもたらした悲惨な結果は十分でなかったようだ」と指摘していたが、今度はクピャンスク方面について興味深い認識を披露した。
ロシア国防省は6月20日「ロシア軍がモスコフカを占領した」と、7月6日「ロシア軍がソボリフカを占領した」と発表、国営メディアも国防省発表に基づいて「ロシア軍がクピャンスクから1km~2kmの距離まで前進した」と大きく報じたため、ロシア人コミュニティの間で「ロシア軍がオスキル川西岸からクピャンスクを包囲しようとしている」と噂が飛び交い、ロシア人ミルブロガーのВоин DVも12日「第43機械化旅団と第151機械化旅団は司令部の大部分をクピャンスクから撤退させた」と報告。
“FPVドローンの継続的な使用によってクピャンスク市内での移動は完全に封じられ、物流ルートの大半も砲兵部隊と航空戦力の支配下にあるためウクライナ軍の防衛ライン崩壊は不可避だ。第43機械化旅団の旅団長と司令部スッタフは自らの撤退時間を稼ぐため一般兵を置き去りにし、第151機械化旅団の旅団長も厳しい状況を考慮して逃走を決意した。兵士たちは自身が置き去りされたことを理解し、絶望的な状況から脱出するため司令部と共に逃げようしたが、賢い指揮官らは全ての道を地雷で封鎖した。彼らは不幸な運命を背負っているが、残りに力を振り絞って脱出ルートを探し出さなければならない”
RYBARは「ロシア軍がモスコフカやソボリフカを占領した形跡が見られない」と何度も指摘してきたが、13日「ロシア軍はクピャンスクに接近しているが様々な問題で攻撃は始まっていない」「主な原因は補給の困難さでオスキル川西岸に大規模な戦力を送り込めないためだ」「さらに地形の複雑さ、敵ドローンによる空中支配、ウクライナ軍司令部がクピャンスク方面における防衛ラインの重要さを認識し、新たな増援を送り込み続けているためオスキル川東岸からクピャンスクに接近することも不可能だ」と指摘。
“我々はオスキル川西岸で橋頭堡を拡大させているのは事実だ。1月から7月の間に6つ拠点も占領できた。クピャンスクの南でもクルフリャフカを占領することでオスキル川東岸のウクライナ軍を2つに分断することにも成功したが、軍関係者のコメントはジャーナリストの要望に合わせて改変されものなので、戦場における実際の状況とは無関係だ。この手の報道は一時的な話題作りを目的にしたもので、国民に正確な情報を伝えることに重きを置いていない”
“クピャンスクの本格的な攻略について議論し始めるのはオスキル川西岸の陣地を完全に固めた後であり、現在はそのための努力が続けられている最中だ。少なくともクピャンスク攻撃やウクライナ軍部隊が包囲されるリスクについて言及するのは時期尚早で、これはクピャンスク攻撃の条件を作り出そうとしている兵士に敬意を欠いた発言だ”
ロシア人ミルブロガーのДва майораも13日「ロシア軍によるモスコフカやソボリフカの占領は事実と異なるとRYBARは指摘した」「我々も両拠点にロシア軍が存在する証拠を見つけられずにいる」「前線で戦う兵士も国防省の公式発表後に強い不満を述べた」「実際に戦っている兵士の間で『戦場における成功の前借り』は受け入れがたく士気を低下させるだけだ」「これはショイグ国防相時代のクリンキー報告書(2024年2月20日の発表が事実ではなかった問題)から続く問題だ」「この手の問題を現地司令部が主導しているのか、上層部が美しい報告書を強要しているのかは未だに不明だ」と述べている。

出典:Минобороны России
Воин DVの言及(ロシア軍がクピャンスクに対する移動と物流ルートをFPVドローン、砲兵部隊、航空戦力で遮断し、第43・第151旅団司令部がクピャンスクから逃げ出した)は「ロシア人に向けた状況説明」ではなく「クピャンスク方面で戦うウクライナ人兵士に対する情報戦」と解釈していたが、根本的にはシヴェルシク方面やトレツク方面と同じ「自軍の兵士を怒らせる架空の成功に基づいた悪質なプロパガンダ」だ。
ロシア軍の夏季攻勢は確実に結果を残しているにも関わらず、なぜ国防省やメディアは「成功の前借り」までして戦果を誇張するのか謎だが、プロパガンダをやり過ぎると「実際の状況」と一致しなくなって「期待が失望に変わるだけ」で、ウクライナ軍も「都合の良くない拠点喪失の発表」に時間がかかるものの、公式発表による「成功の前借り」はほぼ見たことがないため、この問題はロシア特有のものだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ























このブログの管理人は一体どっちの味方なん?
物事をなんでも「敵か味方か」に切り分けようとするの、早く卒業した方がいいですよ。
こういうのって「二分化思考」と言って、「認知の歪み」の一種なんですよね。
なんで、どっちかの味方しないといけない前提なんだ?
日本の報道機関が取り上げないような両国の軍事声明や、色々なミルブロガー達の情報を照らし合せて解説してくれる親切なブログって思います。
“かき氷”さんの困惑は管理人様への最高のエールと言えるかも知れません。
どちらの陣営にもつかず事実のみを淡々と伝える管理人さんはすごい人だと思いますよ
なんですぐ「どっちの味方」とか言いたがるんだろうか。
君みたいな、SNS上で自身が気に入っている情報源と食い違えば「◯◯支持者」とレッテルを貼って攻撃し、伝統的なメディアの情報も「オールドメディアは信じられない」と言うくせに、支持する陣営にとって有利は情報は「正しい」と受け入れる、極度にどちらかを支持する人は、管理人さんが嫌がっているから来ないでほしい。
>自身が気に入っている情報源と食い違えば「◯◯支持者」とレッテルを貼って攻撃
その手の人って無駄な喧嘩を生むばかりで傍から見れば迷惑でしかないんですよね…()
管理人さんも内心どちら側支持というのはあるかも知れませんし、自分は中立ではないと常々仰られてますが、ここまで客観的にどちら側の良い部分も悪い部分も忖度なく紹介するのは我々凡人にはなかなか出来ない事だと思いますよ。
定期的に提起される管理人はどちらの味方問題からのいつもの流れはもはやここの風物詩になりつつありますね。
最近は親露の自分が気分悪いので露に都合の悪いことは乗せるの辞めての変化球も来てましたが管理人さん本当大変だわ。
ウクライナ軍のスーミィ反撃はロシア軍が薄くて押してるのかウクライナ側が増援を送り込んで押しているのかで見方が変わりますね。前者なら良いですが後者なら激戦の3都市の防衛に回したほうが良い気がします。
ロシアは確実に前進しているのに何故嘘報告をする必要があるのか?
論理的に考えて可能性は一つでしょ、ロシアは焦ってる。
今の損失と前進のペースに問題を感じていないなら成功の前借りなんて
いらない訳で、ただ戦い続けるだけでいいし、事実を報告するだけで最高の
プロパガンダになる(なんせ事実だからね)。
そう出来ない理由があるとしたら今のペースには問題アリとロシア軍の
上層部は考えているとしか考えられない…
まあロシアの損害がナントカカントカって欧州が言い続けて今や狼少年みたいな
扱いだけど、流石に限界が見えてきたんじゃないか?
他の戦線で味方が前進して、自分が受け持つ戦線だけ前進できないから焦ってたのがシベルスク戦線。
クピャンスクは嘘というか今のところは情報戦の感じがします。
1個軍ごとに担当する戦域は別だからね。問題なのは西部軍とかかな。軍司令部が上げてる報告をそのままロシア国防省が発表するからおかしなことになるんだろう。
アウディウカとヴレダール以来進軍を続けている中央軍と東部軍は嘘報告がほぼ無い。
シヴェルシク方面なんてそれこそずっと以前から嘘報告が蔓延していたのですが、今更嘘報告の事例が一つ出てきただけで焦っていると主張するのは説得力に欠けますね。
ロシアの前進を1箇所でも食い止められるのなら、素晴らしいことだ。ウクライナにはまだまだ広大な領土と産業拠点がある。あらゆるモノを消費してでも徹底抗戦を続けて、出来れば2030年くらいまで戦争して、NATO再武装までの時間を稼いでくれ。自ら戦端のきっかけを作った上、尻拭いのための莫大な軍事支援を無償で受け取ったんだから、ウクライナはそれくらい貢献すべし。
問題は2030年までにNATOの軍備が整うのかだな…
今のペースではとてもじゃないけど間に合わんとしか
むむむ…たしかに難しいですか…
なら、ウクライナに2035くらいまで戦ってもらうしかないです。遅滞に遅滞を繰り返してリヴィウまで退いてれば、ギリギリそれくらいは稼げるはずです
不足する兵員は、撤退時に都市への残留を許さず軍に徴発したり、開戦初頭に欧州諸国に逃亡したウクライナ人を送り返すなりすれば、なんとか揃うに違いありません。
嘘報告をあげる側にも問題あるけどそれを国防相が公式発表として報道に乗せちゃうのも深刻な問題だと思うんですよ。
現場猫トリプルチェックじゃねえんだから。
そもそもの動機がよくわからなくて困惑する
情報を発信する側にも受け取る側にも、戦線の位置がプラスマイナス10kmくらいは許容範囲くらいの適当さがあるんですかね……
シヴェルシクを主とするロシア軍の嘘報告はかなり深刻な問題ですね。クピャンスクは情報戦の可能性もあると静観してますが、シヴェルシクは現地指揮官の嘘報告→そのまま国防省公式発表 のプロセスを改善しない限りどうにもならないでしょう。現地のロシア軍兵士にとっても政府にとってもデメリットしかない筈です。
前世紀後半の感覚なら毎年キーウが陥落して然るべき戦力比です。その感覚ならこの夏季攻勢は失敗ですよ。ウ軍の後退もそりゃするでしょうってレベルですし。
問題はこの異常な防御側優位が反撃にも適用されてしまうって事で下がりたくは無いとは思います。
嘘報告も現場は実行不可能な命令と認識してるんじゃないかなあ。