ウクライナ戦況

ウクライナ軍はポクロウシク方面で反撃、ロシア軍はポクロウシク包囲を発表

ウクライナ軍はポクロウシク方面ノヴォエコノミチネで国旗を掲げる映像を公開したが、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は「ポクロウシクを包囲して封鎖した」と発表し、公開した戦況マップに基づくロシア軍支配地域は「美しい報告書」というより「妄想」に近い。

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参考:Минобороны России
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ゲラシモフ参謀総長は「ポクロウシクとディミトロフは包囲され封鎖されている」と発表したが、ここまで来ると美しい報告書というより「妄想」に近い

ロシア軍の夏季攻勢は6月に「2025年最大の領土損失=556平方キロメートル」を、7月も6月と同等の攻勢ペースを維持したため「6月とほぼ同じ広さの領土損失=564平方キロメートル」をウクライナにもたらしたが、8月に入るとウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATE、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARが報告する「ロシアの前進」が減少し、DEEP STATEは1日「8月の攻勢ペースは領土損失ベースで18%減少した」「ロシア軍が2022年11月12日(ヘルソン西岸から撤退した日)以降に獲得した領土の広さはドニエプル川西岸で放棄したヘルソン州の広さとほぼ同じだ」と報告。

出典:DEEP STATE

夏季攻勢は8月末までに主要拠点の占領=クピャンスク、リマン、シヴェルシク、チャシブ・ヤール、ディミトロフ、ポクロウシクなどの占領を達成できなかったため「夏季攻勢は失敗に終わった」と見るジャーナリストもいるが、DEEP STATEは「ウクライナ軍が最も効果的にロシア軍の前進を阻止できたのはポクロウシク方面とスームィ方面で、この戦場でロシア軍が前進するためには最も多く戦力が必要になるだろう」「逆にロシア軍はドネツク南西・ドニプロペトロウシク南東方面とリマン方面で効果的に前進することが出来た」「8月の衝突回数は低下したものの9月には増加に転じるはずだ」と指摘し、この話を要約する以下のようになる。

“ロシア軍は砲兵部隊の火力と機械化部隊に基づく戦闘教義に4つの変更を加えてきた。1つ目は歩兵の問題を解決するため特定任務の無人化に注力している点だ。2024年までロシア軍は丸腰しの兵士が地雷を塹壕に投げ込んでいたが、現在はこの任務は無人化され突撃部隊(歩兵部隊のこと)の位置を暴露させなくなってきた。2つ目は大規模な戦力の集中運用を放棄した点で、もはや30人~60人規模の単一運用される部隊は存在しない。現在は2人~4人の突撃部隊が標準で、この構成の部隊はどんどん増えている”

出典:Минобороны России

“3つ目は防衛陣地に対する銃撃戦や正面攻撃、つまりロシア軍はお気に入りの戦術を放棄してきた点で、現在は伝統的な火力よりも少人数編成の部隊を支援するドローンの役割が強調されている。4つ目は防衛ライン上の主要拠点を包囲もしくは迂回、DRG=破壊・工作部隊による後方への浸透を重視し、レインコート(雨具ではなく赤外線センサーの検出を困難にさせる素材できたコートのこと)を着用して可能な限り後方に浸透し、ドローンオペレーターや迫撃砲が陣取る陣地を探し出して無力化することだ”

もうウクライナ軍の前線ラインは「ドローンによる戦場監視」と「ドローンによる敵突撃部隊の排除」で成り立っているため、ロシア軍は全面的に「大部隊を集結させて突破する」という戦術を放棄して「ドローンで支援された2人~4人の突撃部隊の運用」を増やし、分散した突撃部隊による主要防衛拠点の包囲もしくは迂回に加え、赤外線センサーの検出を困難にさせるコートを着用したDRGで後方撹乱を狙っているが、それでも積極的な攻撃を好むロシア軍の海兵隊は従来の戦術に拘っているらしい。

出典:DEEP STATE

DEEP STATEは1日「ロシア軍が複数の装甲車輌を投入しノヴォエコノミチネ経由でディミトロフへの侵入を試みたが阻止された」「最低でもカピタルナ鉱山の第3立坑付近で1輌、シナ川の貯水湖付近で1輌、ラジン付近で4輌、ヴォズドヴィジェンカ付近で4輌破壊され、マリニフカまで前進した装甲車輌の運命は不明だ」「この様な動きはロシア軍海軍歩兵がポクロウシク方面に到着したに関係がある」「海軍歩兵は車輌を使用した積極的な攻撃を好んでいるが、まもなくドンバスでの現実を受け入れて戦いの変更を余儀なくされるだろう」と指摘している。

但し、海軍歩兵投入は目前に迫っているポクロウシクでの成功を実現する「戦力集中」であり、DEEP STATEは「この動きが近い将来『長年の大目標実現』に向けた圧力になるだろう」と警戒しており「夏季攻勢は失敗に終わった」という認識など微塵もない。

出典:Минобороны России

そもそも「ロシア軍は◯◯までに◯◯を占領するよう命じられている」という話はウクライナ側の情報戦である可能性が高く、この種の情報に基づいて「攻勢の成否」を判断するのは大きな間違いで、ドローン戦争において「前進の原動力が何なのか」を理解せず、未だに戦車や砲身の数を数えて「まもなくロシア軍は攻勢を維持できなくなる」と言っているようなものだ。

因みにDEEP STATEはポクロウシク方面について30日「ロシア軍がフロディフカを占領した」と、9月1日「ロシア軍がノボウクラインカ集落内に前進した」と報告、視覚的にもウクライナ軍兵士がノヴォエコノミチネ集落内の建物=Ⓐに国旗を掲げた様子、ウクライナ軍兵士がノヴォエコノミチネ集落内=Ⓑを移動する様子が登場した。

出典:管理人作成

さらにロシア軍のゲラシモフ参謀総長は8月30日「ポクロウシクとディミトロフは包囲され封鎖されている」と発表し、公開されたポクロウシク方向の戦況マップに基づくとロシア軍支配地域はノヴォレクサンドリヴカまで到達し、ゾロティ・コロディアズ、フルズケ、ヴェセレ、ステピー、ルビジュネ付近まで到達していることになる。

つまりポクロウシク方面のロシア軍は「ロディンスケ付近で物理的にT-0515を遮断し、ノヴォレクサンドリヴカ付近に安定的な足場を確保してフリシネ経由の移動ルートを遮断している=ポクロウシクとディミトロフは包囲され封鎖されている」という意味だが、RYBARを含むロシア人ミルブロガーらは何も触れておらず、ここまで来ると美しい報告書というより「妄想」に近い。

追記:ウクライナ軍参謀本部は「ノヴォエコノミチネを解放した」と発表したが、DEEP STATEはノヴォエコノミチネの評価をグレーゾーンにままにしている。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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