ウクライナ戦況

ウクライナ軍はクルスクで後退、ロシア軍はポクロウシクで主要道路の遮断に成功

ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは11日「ウクライナ軍がクルスク方面で占領地域を失った」「ロシア軍が東部戦線で複数方向に前進した」と報告、特筆すべきはロシア軍がポクロウシクとコンスタンチノフカを結ぶT-0504を物理的に遮断したことだ。

参考:Мапу оновлено
参考:Збільшується активність ворога навколо Андріївки

ウクライナ軍がポクロウシク方面で占領された集落を奪還するのは恐らく初めて

DEEP STATEはクルスク州スジャ方面について「ロシア軍がスヴェルドリコヴォ集落に侵入した」「ロシア軍がダリノ周辺で支配地域を広げた」「ロシア軍が二コラエヴォ・ダリノ集落に侵入した」と報告、視覚的にもウクライナ軍がスヴェルドリコヴォ郊外=Ⓐと集落内=Ⓑでロシア軍を攻撃する様子が登場。

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ロシア軍の先端は38K-030に沿ってリカ・ロクニャ川を越えた地点に到達し、スジャとウクライナ領スームィ州を繋ぐ38K-004の物理的遮断まで約8kmしか残されておらず、ここを遮断されるとスジャ防衛や占領地維持に不可欠な補給が一気に苦しくなるため、クルスク州の占領地を交渉材料に使うつもりならスヴェルドリコヴォだけは絶対に抜かれてはならない。

DEEP STATEはポクロウシク・ディミトロフ方面東方向について「ロシア軍がT-0504のジャンクションに到達した」「ロシア軍がC-050907沿いで支配地域を広げた」「ロシア軍がバラ二フカの西で支配地域を広げた」と報告。

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まだロシア軍支配地域はジャンクション全体をカバーしていないものの、このまま定着されるとウクライナ軍に2つのリスクをもたらすことになる。1つ目はポクロウシクとディミトロフが両翼から包囲されるリスク、2つ目はコンスタンチノフカ、クラマトルスク、スラビャンスクに対する移動・補給ルートが制限され、これを監視・妨害するロシア軍のリソースが残りのルートに集中し、同方面のウクライナ軍をじわじわと苦しめるリスクだ。

T-0504が物理的に遮断されるとコンスタンチノフカ方面に向かう主要ルート=トラックによる重装備の移動などは「ポクロウシクからドブロピリアを経由するT-0514」と「ハルキウ州のイジュームを経由するM-03」の2本になり、これを叩かれるとシヴェルシク方面やリマン方面にも影響を及ぼすかもしれない。

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DEEP STATEはポクロウシク・ディミトロフ方面西方向について「ウクライナ軍がピシュチャネ方向の状況を改善した」と言及したが、更新された戦況では「ウクライナ軍がピシュチャネ集落の大部分をロシア軍から奪還した」と報告し、視覚的にもロシア軍がピシュチャネ集落の西端=でウクライナ軍を攻撃する様子が登場。

ウクライナ軍がポクロウシク方面で占領された集落を奪還するのは恐らく初めてで、本当に興味深い動きと言えるだろう。

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DEEP STATEはクラホヴェ方面について「ロシア軍がアンドリイフカ集落内で支配地域を広げた」「グレーゾーンがアンドリイフカ集落内の西方向に伸びた」「ロシア軍がペトロパヴリフカの南西で支配地域を広げた」「ロシア軍がダクネ南郊外で支配地域を広げた」と報告、視覚的にもウクライナ軍がアンドリイフカ集落内=でロシア軍を攻撃する様子が登場。

DEEP STATEはクラホヴェ方面の状況について「ロシア軍兵士がアンドリイフカ集落の至るところで目撃されているものの、その殆どが1回限りの攻撃でロシア人は目撃された場所で死んでいる」「ゼレ二フカ方向でも敵の活動が活発化している」「ロシア軍はアンドリイフカに圧力をかけるためウラクリー方向に前進するかもしれないが、この地域におけるロシア軍の成功を語るのは時期尚早だ」「現在のロシア軍にとってロズリヴ~コスティアンティノピル~アンドリイフカまで前線を押し上げるのが最優先事項で、同地域のウクライナ軍にとってはバハティルが兵站拠点になっている」と述べた。

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DEEP STATEはヴェリカノボシルカ方面について「ロシア軍がヴェリカ・ノボシルカ北西郊外で支配地域を広げた」「グレーゾーンがO-0510の北に広がった」と報告した。

因みにウクライナは現在もクラホヴェやヴェリカノボシルカの喪失を認めておらず、ロシアもトレツク解放(RYBAR曰く2回目の解放発表)を7日に発表したものの、未だに都市の制圧を誇示するセレモニー(都市の至る所で国旗を掲げる行為)を公開しておらず、きっとそういうことなのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:110 окрема механізована бригада імені генерал-хорунжого Марка Безручка

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コメント

    • 774
    • 2025年 2月 12日

    ここ最近ウクライナが押し返すも日をおかずロシアが大きく前進する動きが目立つ気がします
    ポクロウシク東側では先日ウクライナがヴェディアンドゥルーエを奪還しましたがロシアはジャンクションとエリザティフカを抑えるのを優先しているのであえて捨てた動きにも見える

    30
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2025年 2月 12日

      あまり言いたくは無いですが、結局は反撃した勢い維持するだけの戦力が無いのでしょう。なのでここ半年ぐらいの「局所的に反撃してもいつの間にか押し戻される」パターンの繰り返しのなっているように思えます
      色々な所で無駄に死守しようとして損耗し、戦力の蓄積が中途半端なので反撃が出来ない・続かない
      あくまで岡目八目ですが、どうにもそういう風に見えて仕方ありません

      58
    • 名無し
    • 2025年 2月 12日

    既にアンドリイフカは事実上陥落しているという話も出始めていますし、どちらにせよダクネやウラクリーのウクライナ軍は一刻も早く撤退した方が良いでしょうね(これまでの戦いを踏まえると手遅れになるまでしないでしょうが…)

    トレツクも一部で国旗掲揚の映像が出始めていますが、まだ北側の鉱山やテリコンの一部でウクライナ軍が頑強に抵抗を続けているため、これらの掃討が終わり次第なのかなと

    それと最近はへルソン方面でロシア軍の動きが活発化しているようで、親ウクライナOSINTから中州や湿地帯で支配地域を拡大させているという報告が出てきていますが、ポジション改善でしょうか

    34
      • たむごん
      • 2025年 2月 12日

      情報ありがとうございます。
      政治的な理由で損害を許容しているのかもしれませんが、長期戦を考えれば、無理に粘るのはよくないでしょうね。

      ダクネ・ウラクリーを地図上で判別すると、重装備は今から持っていけないでしょうし、安定した補給も今では期待できないと思うんですよね。
      負傷者の後送も、どの程度できているのか少し疑問があります。

      17
    • 無名
    • 2025年 2月 12日

    ロシア軍は、ウクライナ軍が反撃してきたらひたすら砲撃とドローンで削って(ここはウクライナ軍も同じ)、無理に阻止しようとせず、後退も許可してる感じ(ここがウクライナ軍と決定的に違う)。

    42
      • 田舎者
      • 2025年 2月 12日

      日本で言うところの、”釣り野伏“に引っ掛かけているように見えます。双方が実行している戦術でしょうが、その巧みさに差があるということですね。

      34
    • col
    • 2025年 2月 12日

    スヴェルドリコヴォは小さな集落だし露側の方が確保しにくい。
    このまま確保されてしまうのだろうか。
    クルスクのウ軍参謀は兵站の事など考えてないのではないか。
    ここを放置してマラヤ周辺にこだわっても意味が無いだろう。

    9
    • nk
    • 2025年 2月 12日

    ダクネはいつの間にか陥落しアンドリイフカも時間の問題でしょうね、クラホヴェで稼いだ時間を有効に使えなかった模様でアンドリイフカ抜かれるとブフレダール陥落後の焼き直しで一気にロシアが進撃しそうな気がする。
    ポクロウシク南西のウクライナの攻勢は上手くいったのなら即日引き返すべきで陽動としては良い成果ということで満足すべきで守れるなど考えないほうが良い失敗からそろそろ学ぶべき。

    31
    • マダコ
    • 2025年 2月 12日

    この規模の戦闘においても、1万人前後の兵力は、かなり大きそうですね。
    ゼレンスキーが、北朝鮮兵復帰を言って間もなくロシアが優位になっているようですね。
    北朝鮮だからというよりは、純粋に兵が数千から一万少々補充されていると考えたほうがしっくりくる感じで、数の重要性を再認識する感じです。

    28
    • NIVEA万能論
    • 2025年 2月 12日

    ここ最近ウクライナ軍はポクロウシク方面にも積極的に増援を送っていて、その規模が大きいため反攻を企図しているのではないかという話が出てますね。
    停戦が近いと見て後先考えずに攻勢に出ようとしているのかも知れませんが。

    14
      • 名無し
      • 2025年 2月 12日

      充足率が良ければそれなりの規模なんでしょうけどウクライナ軍の状況見るに旅団名乗ってても兵員や装備が不足した状態で各旅団の寄せ集めをぶつけてきそうなんですよねえ

      16
      • ジャム
      • 2025年 2月 12日

      停戦は遠そうですけどねえ。
      トランプは何がしたいのかわからず、ロシアの譲れない要求にまだ真剣に答えてないみたいです。
      既に全力の制裁を行ったロシアにトランプができることはないですし、あったとしてやったらバイデンの二の舞ですから
      なんだか中途半端な状況で戦争は続きそうに思えます。

      26
    • 西か東か
    • 2025年 2月 12日

    ポクロウシク西方へのロシア軍の進軍はポクロウシク防衛、ドニプロ州防衛、そして戦後復興(炭鉱)の為にも宇軍として許しがたいのでしょう。しかしポクロウシク本体が陥落したら元も子もないので、コンスタティノフカとの連絡線も早い内に対処することになるでしょう。

    3
    • みるく
    • 2025年 2月 12日

    ウクライナが押し返してもロシアがさらに押し返すの繰り返し
    これは独ソ戦でもそうだけど現代戦は一度流れが大きく傾いたら元に戻らない。

    6
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