ウクライナメディアのMezha.Mediaは7日「ロシアに対する長距離攻撃の結果を語るのは時期尚早」「ロシアメディアが報じる数字を何処まで信用していいのか分からない」「露石油関連企業の収益データを検討して攻撃との因果関係が証明できるようになるまで何も断言できない」と報じた。
参考:Два місяці ударів по енергетиці РФ. Чи вдається Україні “виключати” російську нафтову галузь
まだウクライナ軍はエネルギーインフラへの攻撃を継続中なので成果を総括するには時期尚早だ
ウクライナメディアのMezha.Mediaは7日「ウクライナは2024年夏~2025年春までロシアのエネルギーインフラをほとんど攻撃してこなかった。その理由は様々(トランプ大統領の休戦努力や神話的なエネルギー休戦など)だが、ウクライナの長距離攻撃はロシアの軍需産業に集中していた」「ウクライナの長距離攻撃兵器は軍事産業の製造拠点に到達することもあったが、運搬できる弾頭が小さかったため攻撃効果は限定的で決定的な打撃を与えることは不可能だった」と指摘し、エネルギーインフラへの攻撃を再開した現状について以下のように述べている。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
“ロシアはウクライナのエネルギーインフラに対する攻撃や国民を標的にした攻撃を止めなかったため、一方的な自制は意味を失い、我々はロシアのエネルギーインフラに対する攻撃を再開した。ゼレンスキー大統領によればウクライナは1日100機~150機の無人機=自爆型無人機を含む固定翼式無人機を発射できる能力がある。この数はロシアに及ばないものの目に見える成果を挙げており、その成果はメディアを通じて毎日目撃することができる”
“今回の攻撃には明確で一貫した理論があり、最も重要なのは過去の作戦=燃料を貯蔵しているタンクではなく石油精製施設の設備を標的にしていることだ。ウクライナ軍は石油の一次精製に使用される真空蒸留装置の攻撃に9回成功しており、この部分の損傷は事実上製油所の操業を麻痺させ、石油製品の生産を低下させるか完全に停止させることができる。さらに施設間で石油や製品の移送に使用されている配管の破壊にも5回成功し、この部分は石油精製施設や石油貯蔵施設における脆弱な部分の1つで、この部分の如何なる損傷も生産に大きな影響を与える”

出典:ЦАПЛІЄНКО_UKRAINE FIGHTS
“液化ガスや石油化学製品の生産を支えているガス分離機やガス・コンデンセート処理装置への攻撃にも4回成功しており、この部分への攻撃はロシアの液化ガス市場と石油化学産業の安定的な運営能力を低下させる効果が期待できる。石油ポンプ場への攻撃も5回成功し、パイプラインを通じた原材料の出荷や移送が止まれば国内物流と輸出物流の双方に深刻な問題を引き起こすが、全ての攻撃が成功しているわけではない。攻撃効果を冷静に評価するためには質の高い検証作業が必要で、メディアで報じられている美しい映像は必ずしも手痛い敗北を意味するものではない”
“例えばメディアはサラトフ製油所への攻撃(2025年9月)を報じ、爆発を収めた映像まで公開したが、後の調査で自爆型無人機は製油所周辺の湖に着弾したことが判明している。さらに攻撃が成功しても成果が保証されるわけではない。例えばドルジバパイプラインへの被害はハンガリーへの燃料輸送を数日停止させただけだった。つまり長距離攻撃の成果は飛行距離や着弾といった事実だけではなく、生産停止期間、供給の混乱、物流への影響といった観点から検討することが重要で、1,700km先の目標に到達したという事実自体は作戦の成功とは見なされない”
“ロシアのエネルギーインフラに対する打撃は多くの点で効果を発揮し、生産と物流に大きな混乱を招いたが、まだ結論を下すには時期尚早だ。これらの個々の成功を持続可能な戦略的効果に繋げるためには体系的なアプローチが必要で、各事例を検証し、攻撃能力、精度、一貫性を向上させ続けることが重要だ。さらに敵への圧力を最大化するには外交的・経済的措置と連携した行動を取ることも同様に大切だ。それでも今回の長距離攻撃に現時点で言えることもある”
“ロシアの消費市場における燃料不足は局地的問題から全国規模に拡大し、ロシアの公開情報に基づけばロシア連邦を構成する83地域の内33地域で燃料不足が報告されている。Українська правдаは「ロシアの製油所に対する攻撃は燃料消費のピーク時を狙って行われている」と指摘している。つまりウクライナ軍は作戦実行にベストな時期を選んだといえるだろう。同時にロシア軍への軽油供給に何らかの影響を及ぼすと期待するのは止めておいたほうが良い。ロシアは民間人と輸出業者が燃料不足を痛感することになっても軍への軽油供給を優先するだろう”
“それでもエネルギーインフラに対する攻撃はロシア経済に圧力をかける良い方法だ。なぜならロシアにとって石油と石油製品の収入は国家予算の約30%を占めており、この資金で武器を購入し、契約兵士に給料を支払っているからだ。その一方でロシアが失った石油精製能力の割合を計算するには時間がかかるし、この分野の数値は誤解を招きやすい。例えば2024年初頭に「ウクライナがロシアの石油精製能力を一瞬で14%奪うことに成功した」という報道があったが、ロシアは2024年末までに損傷を復旧させ、既存施設の処理能力を強化し、石油供給量の年間減少率を3%まで緩和させた”
“もちろんロシアの石油供給量を3%減少させたことは成果の1つだが、報道された14%という数字に比べれば控えめな結果と言えるだろう。現在も様々なメディアが異なる数字や相反する予想を展開しており、例えばロシアメディアのРБКは「石油精製能力の38%を失った」と、Комерсантは「国内向けガソリン供給量に対する不足分が20%に達した」と報じているが、このような状況でロシアメディアの言うことをどの程度信用すべきだろうか? これが事実でもロシアの石油精製能力減少がどこまで続くだろうか?”

出典:Крымский ветер
“結局は露石油関連企業の収益データを検討し、エネルギーインフラに対する攻撃との明確な因果関係を証明できるようになるまで何も断言できないし、まだウクライナ軍はエネルギーインフラへの攻撃を継続中なので成果を総括するには時期尚早だ”
ウクライナ軍が現在実施している長距離攻撃の規模と頻度は今年6月までのものとは大きく異なり、ウクライナ企業から自爆型無人機や巡航ミサイルを調達する上で最大のネックだった資金問題もデンマークモデルによって解決しつつあるが、戦いは相対的なものなのでロシア軍もウクライナ軍の長距離攻撃に適応して来る可能性が非常に高く、現在の攻撃効果が今後も維持される保証は何処にもない。
そのためエネルギーインフラを巡る殴り合いの結果は蓋を開けてみるまで何も断言できないが、昨年と1つだけ異なるは「ロシアが一方的にウクライナを殴る構図から本格的に脱却した」という点だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:ЦАПЛІЄНКО_UKRAINE FIGHTS























何とも冷静で残酷な記事だ
一言で言えば手を休めるなということか
このまま減少した精油能力を維持、更に追い込めればロシア内にも多大な変化を見込めるだろう
その攻撃が維持出来ればもしかしたら…いけるかも知れない。ただロシア側も似たような攻撃をいずれはかましてくるだろうから油断は出来ない
ロシア側にも言える事ですし、ずっと言われている事です
空爆だけでは何かを決定的にする事は難しく、よほどクリティカルな事が起きない限りは継続して攻撃し続けられる事が重要なのです
だからこそ、お互いに対空兵器を重要しし、対空兵器・レーダーを潰す事に血道を上げているのですから
仰る通り、冷静な内容ですね。
ロシア世論が、『厭戦気分・徹底抗戦』どちらに傾くのか見守りたいと思います。
ここ最近はロシア軍の進撃が目立っていたから、今はウクライナ軍の攻撃ターンかな?
冷静な良記事ですね。
確かに無人機の攻撃で一時的に石油施設を麻痺させられるでしょうけどロシアも当然復旧させますし、攻撃を受けた場所や重要施設の守りを固くするでしょう。継続的にロシアの物流にダメージを与える方法を考え続けないといけませんね。
今のロシアに攻撃を受けた重要施設の守りを固くする余力なんてあるんですかね?
今後トマホークも供与される可能性高いし施設復旧しても再攻撃されるだけでしょう
できるのは、他の地域からの輸送経路の確立程度なのでは。
まあ、逆に言えば、それができれば、局所的なガソリン不足は解消できる余力があるということですが。
トマホークはともかく無人機はゼロ戦よりも鈍足・紙装甲だから簡易な対空砲でも迎撃率は高められると思います。
ロシアの問題は損害を無かった事にして対策すら疎かにする事かと・・・
前回の爆撃機への攻撃後に急激に掩体壕を建築し始めたように動き始めたら早いけどとにかく腰が重い。
ポクロウシクで動きが有るみたいですね、ロシアの侵攻は止まらないみたいです
ウクライナも石油精製所の攻撃でロシア軍が止まると思って無いと思いますが
ロシアの報復攻撃は酷くゼレンスキー氏が部分的に停戦を望む声も上げて
結局は前線の不味い状態から世論の目を背ける為にやってる様な物で
前線のウクライナ兵には酷な状態が続いてますね
クピャンスクでも数十名のウクライナ兵が包囲されてると言ってましたが
前線の希望になるか解りませんがトマホークの認可が降りたとのことです
このままロシアへのドロンを中心に各種巡航ミサイルの長距離攻撃を規模を拡大し継続していけばロシア軍は燃料もない、火薬もないにっちもさっちも行かなくなって急速に弱体化する。
つまりロシアにとって長期戦は不可能と言うことが証明されつつある。
対してウクライナには資金を始め資材等も西側からの無尽蔵の援助がありいくらでも長期戦が可能である。
懸念だった人的資源も長距離攻撃によりロシア軍の能力の弱体化による攻撃能力低下でこれから損害は少なくなるであろうから、問題なくなる。
腰を据えた長期戦こそウクライナが完全勝利する唯一の方法ではないだろうか。
長期戦はロシアに有利と言われていた世論を見事に覆した素晴らしい出来事。
ウクライナがうまくいっていること自体は結構なことだと思いますが、防空を重視してきたロシアでさえこれなら、今後各国の対ドローン対策に大きな影響が出てくるでしょうね。
大国に偏っていたパワーバランスが少し揺らいでくる可能性がありますね。もちろん、これからドローン対策が進めばこういった攻撃も無力化できるかもしれませんが、飽和攻撃されたら終わりということは変わらないので、結構対策は難しそうです。
欧米諸国はウクライナのためインフラ攻撃を黙認してしまいましたが、その結果は今後欧米諸国にも跳ね返ってくるでしょうね。
日本もインフラ防衛はかなり大きな課題になりますね。
とてもいいニュースと受け止める人も多いと思いますが、戦争で大きな成果が上がる=日本にとっての課題が増えるという図式になっていることも気にしてほしいです。
ロシアのゴリ押しはあまり気にしなくてもいいんですけどね。真似できる国ほとんどないので。
でも、ウクライナのマネはできる国少なくないんですよね。なんならテロ組織だって規模を小さくすればマネできます。ほんとドローンはやばいです。
市販されているドローンはともかくShahed/Geranのような大型どろーん
↑間違えました。再渇します。
市販されている小型ドローンはともかく、Shahed/Geranのような大型ドローンをテロ組織が大規模に製造できるとは思えません。なので現実的には、数発の散発的なテロ攻撃に備えるぐらいだと思いますね。
シャヘドのような大型のものは必要ないでしょう。
テロの場合は可能な限り近づいて防御の薄いところに攻撃するでしょうし。
いつどこで発生するかわからないということがテロ対策を困難にする一番の要因ですから。
クールダウン記事
これからハイローミックスの殴り合いするならウクライナ国内にあるであろうデンマークモデルの投資を受けて多額の前払金(商品はは未納入でしょうし)を抱えてるであろう企業の工場を守りきれるかが殴り合いを続けられるかどうかを分ける鍵になるんすかね
きのう、防衛省が、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の手段となる長射程ミサイルに関し「潜水艦発射型誘導弾」と「12式地対艦誘導弾能力向上型」の艦艇発射型の量産に着手したと発表して、三菱重工と契約したことも、敷衍して考えると、間接的に影響するかもしれないね。
一次蒸留装置や配管を破壊しているのは、非常に興味深いですね。
原油は、ガソリン~航空燃料~船舶用重油など、輸送関連だけでも蒸留しなければ使い物になりません。
配管も破壊されれば、石油化学コンビナート=石油関連産業は、血管のように石油生成物が行き来して効率化しているため機能停止することになります。
人間に例えれば、胃(精製施設)や血管(配管)が破壊されているようなものですね。
これを他山の石として、我が国はまず防備防空を固める事を厳にしなければならないでしょう。
有事の劈頭、間違いなく狙ってくるでしょうから。
「ロシアも対応する」といっても石油関連施設だけでも規模も範囲も膨大だからなぁ。しかもウクライナ側の攻撃対象は石油だけにこだわる必要もなく、エネルギー関連の様々な選択肢がある。
というか石油は生産から輸送経て使用までリードタイムがあるし貯蔵もできるから、破壊にしても修復にしても影響が出るまでに多少のラグが出るから冬のエネルギー需要のピークに向けてどこかのタイミングで即効性のある電力インフラ重視にシフトしてくと思うんだよね。
とはいえどのタイミングでどれくらいシフトしてくかは分からないし、何ならロシアの対応を見極めて逆をつくことだってできるので「守りを堅くする」というのは簡単だけど実際にはなかなか難しいかと。
楽観視するのは良いけど 前線が悲惨なんですよね
クピャンスク市が包囲されてて おそらく早くて今月 遅くて今年までには クピャンスク北西部は制圧されると予想
トマホークはゲームチェンジャーになるとは ゼレンスキーは思ってないと思うよ
結局のところ前線の状況ですよね。ドローンをインフラ攻撃に使う量を増やすということは、前線へのドローンが不足するか、供給が遅れるかの影響はあります。
前線の疲弊は溜まり続けるわけで、そこを解決せず空中戦を継続するのは結果的にデメリットも生まれるかと。
前線で使用する「FPVドローン」のような小型ドローンと「一方通行型無人機」と呼ばれることも多くなってきたShahedタイプの自爆型無人機は完全に別ものです。
FP-1のような自爆型無人機とFPVドローンのサプライヤーは重複しないため、その見識はこじつけに近いかと。
ロシア経済に影響出るレベルに破壊するほど手数があるかといえば疑問符がつくし
最近はこの手の施設破壊報道ばかりなので話半分
今更だけどミサイルにコンフォーマルタンクをつけるのってすごいレアじゃない?
たしかに。
燃料を増やしたいなら素直に本体長を延伸した方が、簡単そうですよね。
バランスもそっちの方が取りやすいでしょうし。
改めて見てみると、旧日本軍と神風特攻とアメリカ軍の戦略爆撃の中間みたいな作戦だな……
なんとも評価が難しい
人命を弾にしないだけ、上等な作戦だとは思うが……
圧倒的に安く、リスクも低く、人命も消費しない兵器によって、こうして現代戦は地獄の消耗戦になるのだった
ひたすらびんぼになるだけの戦争
長距離攻撃と言っても実態はドローンでしょ
去年からロシアの製油施設やら破壊しても、ドローンじゃミサイル程の破壊力無いので順次復旧されてるから同じ施設の名前出てくるわけだし、ベラルーシや中国で精製されたり備蓄されてるんだから致命的なダメージにはならんでしょ(ガソリン価格安定してるし、給油制限も一時的で次々と解除されてるし)
そんなことより自国守る事にリソース使えよ、分散してもクルスクの二の舞じゃん
国外から輸入しなければいけないとは資源大国とはなんだったのか。
ロシアは大日本帝国の二の舞になっていないか?
独ソ戦の有名なネタ「二人で一丁の銃」を思い出した。あれは現実の出来事ではなく窮状をオーバーな表現で訴えたに過ぎなかったらしいな。まあ、今回の件は現実になっているようだけど似たようなことを言っている可能性には留意した方がいいかもしれないね。
今あるものを変更はできないだろうが、今後は保管場所を地下にしたらいいんじゃね