ドイツのメルツ首相は「ウクライナに供給された英仏独米の武器から射程制限がなくなった」と発表、ロシア大統領の報道官は「非常に危険な決定だ」と非難したものの、ドイツ外相はロシア側の非難を「我々は常に『このような行為は必ず何らかの結果を招く』と明言してきた」と一蹴した。
参考:Merz: Reichweitenbeschränkung für Waffen für Kiew aufgehoben
参考:Merz lifts range limits on Ukraine weapons to hit targets inside Russia
参考:Trump Weighs Sanctions Against Russia as Relationship With Putin Sours
仮にKEPD350がウクライナに引き渡されても「実戦の結果」でしか判断がつかないはずだ
ロシア軍は17日夕方から18日未明にかけて273機のShahedを発射、さらに24日夜から25日朝にかけて弾道ミサイル、巡航ミサイル、誘導ミサイル、無人機を計367発も発射し、トランプ大統領は民間人に多数の被害が出たことを受けて「プーチン大統領と良好な関係を築いてきたが、彼に何かが起こった。彼は完全に狂ってしまった。彼は必要のない多くの人々を殺している。これは兵士同士の戦闘のことを言っているのではない。何の理由もなくミサイルやドローンがウクライナの都市に撃ち込まれているのだ」と批判。

出典:Truth Details
ドイツのメルツ首相もWDR Europaforumで「我々は軍事的支援を含めてウクライナ支援継続に全力尽くす」「もうウクライナに供給されてる英国、フランス、ドイツ、米国の武器に射程制限はない」「ウクライナは供給された武器を使用してロシアの軍事目標をどこでも攻撃可能だ」「ロシアは容赦なく民間人を攻撃し、都市を爆撃しているがウクライナはそんなことをしていなし、今後もそうあるべきだ」「しかし、自国領内でしか侵略者に対抗できない国は十分な自衛ができない」と発言。
ロシアのペスコフ報道官はメルツ首相の発言に「非常に危険な決定だ」「政治的解決を模索する我々の努力と真っ向から矛盾する」と非難したが、ドイツのワーデフール外相は「これまでロシア大統領に交渉テーブルへ着くよう何度も呼びかけたが、それを拒否したのはプーチンだ。我々は常に『このような行為は必ず何らかの結果を招く』と明言してきた」と述べ、KEPD350のウクライナ提供についても「個別の兵器システムについて何も発言しない」「我々はロシアに何を行うのか知る機会を与えない」「ドイツはウクライナを軍事的に支援し続け、ウクライナが自国を防衛し、ロシアが侵略戦争を継続できなくするようにする」と述べた。

出典:Philipp Hayer/CC BY-SA 3.0
メルツ首相はKEPD350のウクライナ提供を支持してきたが、首相就任直後「もう個別の兵器提供について公には議論しない」「国民への情報公開を中止するわけではないがロシアに情報を与えたくない」と述べ、これはマクロン大統領の「戦略的曖昧さ」を真似たものと見られており、緑の党は「射程制限の撤廃は理にかなっているが遅きに失した」「それでも首相の発言は具体的な能力によって裏付けられる必要がある」「首相は約束を守ってKEPD350を出来るだけ早く引き渡さなければならない」と即時行動を促し、多くのメディアも「ドイツが巡航ミサイルの提供に踏み切るのではないか」と期待している。
因みにPoliticoは「選挙期間中にメルツ首相は『同盟国間での連携が確保されればKEPD350のウクライナ配備を受け入れる』と発言している」「その条件は現在満たされているかもしれない」「メルツ政権は前政権と異なりウクライナ支援の透明性についても方針を転換している」「今後の武器引き渡しは大半が秘密扱いになる」と報じており、仮にKEPD350がウクライナに引き渡されても「実戦の結果」でしか判断がつかないはずだ。
追記:トランプ大統領はロシアに対する新たな制裁を否定し続けてきたが、Wall Street Journalは26日「ロシアによるウクライナへの継続的な攻撃と和平交渉の進展のなさに苛立ち、トランプ大統領はロシアの新たな制裁を検討している」と報じ、制裁の内容によっては「射程制限の解除」や「KEPD350のウクライナ提供」よりも効果を上げるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:ДСНС України
KEPD350の供与や射程制限の解除はウクライナにとっては朗報でロシアにとっては頭の痛い問題でしょうけど、ドイツも事だから戦局に大きな変化を与えられるだけの数量をドイツ自体が保有していないだろうから、供与の数量はアピール程度の数しかなのではないか?
また結局は長距離ミサイルがいくら供与されようとも陸軍が戦果を出さないとどうにもならないので、ウクライナ陸軍には今年の夏の反転攻勢を期待しております。
流石に今年反転攻勢を成功させないと来年こそはは流石に厳しい。
>>ウクライナ陸軍には今年の夏の反転攻勢を期待しております。流石に今年反転攻勢を成功させないと来年こそはは流石に厳しい。
クルスクで余力ほぼ全部使い切ったウクライナ軍にそれは流石に酷ではなかろうか…。超絶親ウクライナの私ですら中々厳しいと思ってしまう。
反転攻勢するにしても、劇的な突破を果たしたいなら敵のドローン監視網を何らかの手段で掻い潜るか無力化する必要があり、現状それを可能とする手段が
①高高度核爆発によるEMP
②制空権を奪って大型電子戦機を飛ばし敵の通信網をズタズタにしてドローン-砲兵間の連絡を絶つ
くらいしかないんですが、こんなんNATOの本格参戦でも無ければ実現不能な訳です。
となるとロシア軍がやっているように、砲弾数の優越と、損耗人員を補充できる豊富な徴兵練兵体制で堅実に殴るってことになるんですが、ロシアの砲弾量を上回る増産は今の西側諸国の生産体制ではほぼ無理で、ウクライナにも人員の余裕がそんなに無いわけです。
NATO各国がGDP比5%の大規模軍事投資をホントに行うとして、その効果が出始める時期くらいまでは何とか耐えてもらうとして、西側が準備してる間に、ウクライナには総動員でも何でもやってもらって兵員を確保してもろて、せめて前線のローテーションが回せるくらいには改善してもらわないと、大規模反攻は難しい…かも
抑止力としては最新兵器は役に立つのかもしれませんが、結局のところ「ゲームチェンジャー」というものは無く、一旦始まったら後は「戦いは数だよ…」になるんですよね。
おっしゃる通り、ウクライナとヨーロッパには、もうその数を揃えるのは難しいと思います…。
とにかく亡くなられた人が多過ぎます
KEPD350を考えると供給されるからと言って雑に何でも使う訳にも行かないし、ATACMSみたいにここぞと言う時に司令部とか頑丈な建造物相手に使用するべき兵器でそこまで困る事があるのかって気はする。
それに夏の反転攻勢って必要かな?だらだらとクルスク侵攻までしたのに去年から肝心要の自国内の領土は減らして、これで反転構成して息切れしましたしっぺ返し食らいますじゃ、ただただ戦力の無駄な消耗でしかない。
やるならちゃんと国土を奪還して維持出来ますじゃないと全く意味が無い。何十キロや何百キロ押し返したとて榴弾砲とか歩兵の陸上兵力の脅威は減らせるけどロシア領内からのロングレンジ攻撃には全く効果が無い。
一戦線で大きな前進したけど別の戦線では押し込まれましたじゃ意味が無いし、余裕が無いなら自分達が損をしないレベルでやるべき価値が有る作戦をするべきだと思うし、その自信があるなら全力投球もアリだけどどうだろうね。
開戦以前から「ロシア側の視点からもモノを見ている」私から言えば、
「このような行為は必ず何らかの結果を招く」という言葉がそっくりそのまま自分に返って来る、としか感じません。
戦争当事国でもない、さらには自分が直接参戦する訳でも無いドイツが、ほぼ勝敗が決しているような戦争をいたずらにエスカレートさせ続ける行為(しかも軍事的有効性はほとんど疑問符が付くレベルで、政治的対立のみを激化させる)を行うのは、回りまわって自分の不利益にしかならないと思うんですがねぇ。
不可逆性な対立を好き好んで拡大させているのはどっちだ?と考えてしまいます。
ルビコン川を渡ってしまったのだから後は自国民を殺し続けるような戦争状態に至る道しか残って無い、と悲惨な覚悟を決めたようにも思えないんですが。
今の欧州は一部の国を除いて理性と冷静さを失っていると思います。
問題は、『数』でしょうね。
交渉に関わる事ですから、少しずつラダーを上げていくのでしょうが、『生産数』『備蓄数』『引き渡し数』しばらく注目したいと思います。
なんの理由もなく都市部へ攻撃と言うけども、そもそも都市を一つの要塞として運用する以上、全く都市攻撃をせずに攻略するなんて不可能でしょう。戦争を仕掛けた事を非難するのと戦争に勝つための手段の是非を問うのは話が別なような気もするが。
先月辺りのスムィ州への爆撃もウクライナ側のスムィ州知事自身がウクライナ軍の会合が実際に行われていたと暴露して解任させられていた件からもロシア軍が攻撃した場所にウクライナ軍が全くいないという訳でもなく、民間人に紛れて行動している=盾にしてるとも考えられる。
そもそも停戦しろ!という意見は確かではあるが、軍がいると分かれば民間人がいようがロシア軍は攻撃してくると分かっているのなら、後方へ移動させるべきなのでは?
仰る件は、本当に大きな失言でしたよね。
州政府高官(軍行政長官)により、都市部での軍の活動を、堂々と裏付けてしまったわけですから…(両軍ともに再三固まるなという話しでしたが浸透しにくいのでしょうかね)
そもそも最近のロシアは交渉の席には居ますし
メルツさんの「ロシアは容赦なく民間人を攻撃し、都市を爆撃しているがウクライナはそんなことをしていないし、今後もそうあるべきだ」
とか何いってんだこいつとか読みながら思いましたね
テロ紛いの爆弾で何人か殺して紛争時の頃も街に攻撃してたりしたのは変わらんやろっていう
こういう対外パフォーマンスが交渉の難易度を上げるんですよね
支持者向けのパフォーマンスだったりもあるんだろうけど、それにしても効果あるのかという……
「光熱費を下げる事に努力します!」の方が余程ウケが良いような気がするが
テロなどの後方撹乱ならロシアもたくさんやっていますのでウクライナはそれに対する報復と考えれば相殺されるものと考えて差し支えありません。
ウクライナが軍事的に優位に立つためにはロシア軍需産業を麻痺させる必要があり、そのために様々なオプションがありますが、原則として今までロシアがウクライナにやった事はすべて選択肢となるものです。
よってウクライナが数少ないリソースで効果的に実施するとしたら、ロシアの水力および火力発電所と変電所の破壊が第一に挙げられます。もちろん石油精製プラントの大規模かつ徹底的な破壊も効果的でしょう。
軍需工場の破壊や鉄道網の寸断も当然の選択肢です
議論の余地は多少あるものの、実態として去年ウクライナ軍がロシア領スジャを攻撃するまでロシア領内への攻撃は禁止されてましたよ
その少し前からウクライナ国産のドローンによるガスプラントへの攻撃は行ってましたが、質的にも量的にもロシアと比べれるような都市攻撃は行ってないかと
ロシアは、ウクライナ軍がいなくても攻撃してくるので
それはあまり関係ないですね
日本で言う制服組と背広組みたいな性格の違いもあるし、交通・通信インフラを考えると民間人の住む都市を避けるのは不可能では
>そもそも都市を一つの要塞として運用する以上、全く都市攻撃をせずに攻略するなんて不可能でしょう。戦争を仕掛けた事を非難するのと戦争に勝つための手段の是非を問うのは話が別なような気もするが。
これはそのとおりだと思いますが、攻略のために都市を攻撃して民間人に被害がでたなら、それは非難されて当たり前なのでは?
この要塞化された都市だから民間人を巻き込んでもOKな、を突き詰めるならイスラエルのガザ攻略だって非難できなくなります
まだ戦争は続く(むしろ激化?)と両方が明言した形ですか。
しかし、この戦争の航空攻撃では継戦能力への打撃に両勢力とも欠けているように思えるので、やはり地上戦で雌雄を決することになりますね。今は地味な陣地戦の最中ですが。
ただ、夏になるとドネツクでロシア軍の陣地戦が進展するのはどういうわけか。
「停戦に応じなければ制裁」と言ったもののアメリカが消極的で、ヨーロッパに残された数少ない切り札の長距離兵器のロシア国内使用解禁を使うしかなかったと思われるが。この手札を使ってしまうとあとは凍結資産の没収ぐらいしか交渉カードが残らないことになる
トルコに自ら赴きすらしないプーチンにここまでコケにされても「飛び道具」の名前振りかざしてピギャるしかできてない時点で、腰は不等号のごとく引けてますわな…
< ←こんな感じで
先週のトルコでの会談ならロシアは代表団を送ったからプーチン大統領が行く必要なくない?
プーチン大統領も「交渉する用意はある」とは言ったけど首脳会談をやるとは一言も言ってないよ
ドローンの長距離都市爆撃って物理的にはほとんど意味ないけどね。
ドローンよりはるかにペイロードがある爆撃機ですら単発の都市爆撃なんか意味ない
っていうのがWW2の結論なわけで。
爆撃を効果的にするには国力のアキレス腱となる施設を狙いすまして毎日爆撃するべきで
要するに戦略爆撃をする必要がある。
シャヘドはソースによって4万ドルとか17万ドルとかって言われてるが
弾頭50kg4万ドルでも戦略爆撃のレベルには全く達してない。
もちろんウクライナがやってるのもほとんど意味ない。
相手のインフラを攻撃してやったぞっていう嫌がらせ以上のものではないわ。