欧州関連

英国、時代遅れの戦車「チャレンジャー2」のアップグレード2年延期

英国は、主力戦車「チャレンジャー2」のアップグレードを延期することを決定した。

参考:UK tank upgrade decision delayed

時代遅れの戦車「チャレンジャー2」のアップグレードを2年延期

英国防大臣のペニー・モーダント氏は、6月に行われた会議で、英国軍の主要な装甲戦闘車両について、同盟国や、潜在的な敵対国に遅れをとっていると認め、問題を解決しなければならないと話した。

特に、英国陸軍の主力戦車であるチャレンジャー2について、「1998年に登場して以来、一度もメジャーアップグレードなしに稼働を続けている。この間に、米国やドイツ、デンマークは、2回のメジャーアップグレードを行い、ロシアでは、新しい戦車が登場した。チャレンジャー2は既に時代遅れで、主要同盟国で運用されている主力戦車よりも20年以上古い」と、モーダント氏は問題点を指摘した。

モーダント氏が「時代遅れ」と指摘したチャレンジャー2の主な問題点は、走行中に主砲による攻撃ができない「旧式化した攻撃システム」と、現在、英国以外に採用例がない伝統的な「弾薬分離式」の装填方式のことだ。

このような時代遅れの性能では、潜在的な敵対国であるロシアを、震え上がらせることは不可能だ。

出典:Attribution: Fiorellino / CC BY-SA 3.0 チャレンジャー2

チャレンジャー2のアップグレードに関して、チャレンジャー2を開発・製造したBAEが提出した案と、レオパルド2を開発したドイツのラインメタルが提出した案の評価テストは、既に終了しており、どちらのアップグレード案を採用するのか判断待ちの状況だった。

しかし、英国防省は最近、チャレンジャー2のアップグレード「Challenger 2 Life Extension Project」の判断を2年間延期することにした。

これは、英国のBAEシステムズと、ドイツのラインメタルが、英国に陸上防衛装備品を開発・生産する合弁企業「ラインメタル・BAEシステムズ・ランド(RBSL)」を設立したことを受け、チャレンジャー2のアップグレード「Challenger 2 Life Extension Project」について協力して行うことになった為だ。

今回の英国防省の決定は、2社の技術やアイデアを持ち寄り、より良いアップグレード案をまとめるための猶予期間をRBSLに与えると言う意味で悪くない決定だ。

しかし、英国の戦車を取り巻く環境は、良い話ばかりではない。

英国陸軍は、経済的な問題のため、現在保有している「チャレンジャー2」戦車227輌のうち、148輌にだけ改良を行う事を決定し、残りの79輌は部品取りとして活用する予定だという報道が出ている。

Attribution: Boevaya mashina / CC BY-SA 4.0 T-14戦車 プロトタイプ

現在、各国の主力戦車保有量は、1位のロシアが12,950輌、2位の米国が6,333輌、3位の中国が5,800輌、4位のインドが4,665輌を保有し、冷戦終結直後、800輌近く戦車を保有していた英国が、報道通り148輌まで戦車を削減すれば、ロシアの1/87にまで戦車保有量が減少する。

NATO主要国の戦車保有量、フランス(ルクレール戦車 400輌)、イタリア(アリエテ戦車200両、レオパルト1A5戦車 120輌)、スペイン(レオパルト2戦車 320輌)、ドイツ(レオパルト2戦車 225輌)、ギリシャ(レオパルト2戦車 350輌)、ポーランド(レオパルト2戦車 249輌、PT-91戦車 232輌)と比較しても、英国の148輌と言う数字は、あまりに少ない。

英国メディアは、これが事実なら、英国陸軍は装甲車両の面で、カンボジア、セルビア、ミャンマーに劣り、戦車保有ランキングでも48位から56位に急落することになり、英国の国際的地位の低下は、軍の士気喪失に繋がると指摘している。

果たして2年後の2021年まで、一体何輌のチャレンジャー2が、予算との戦いの中、生き残る事ができるだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:Attribution: Simon Q / CC BY 2.0 チャレンジャー2

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 7月 05日

    1/87ってHOスケールじゃないんだから…

    • 匿名
    • 2019年 7月 05日

    ロシアの戦車は全部稼動状態にあるのか?
    とても信じられない

      • 匿名
      • 2019年 7月 06日

      ロシアは気象条件が良くモスボール状態でも速やかに復帰できる
      グルジア紛争で使用したT-62Mがシリアに輸出されている ウクライナでも冷戦時代のT-64が使われた
      しかも寒冷地用のT-80の近代化も進行中

        • 匿名
        • 2019年 7月 06日

        お友だち価格でいいから日本の戦車買ってくんないかなぁ。調達数上がって価格下がってラインが維持出来ればそれだけでも万々歳なんだけど。

          • 匿名
          • 2019年 7月 06日

          戦略環境はある程度似ていますけど、技術格差とプライドがね。日本に美味しい話にはならんと思うよ。
          島国用にアメリカ・ロシアの重戦車路線とは違った方向があると思うんだけどね。台湾なんてM1買ったけど運用できるんかいな。

          • 匿名
          • 2019年 7月 06日

          じゃあイギリス向けに車内に紅茶用の湯沸し器を付けよう

      • 名無し
      • 2019年 7月 08日

      イギリスはまだマシやん。
      島国だから空海の防衛の後の揚陸戦力だけを相手にすりゃいいんだから。
      それよりロシアと地続きでまともにやりあわないといけないドイツとフランスの少なさがやばすぎる。

      2
    • 匿名
    • 2019年 7月 06日

    日本も見習って戦車ゼロを目指そう!
    どうせ無駄金にしかならないんだし日々の生活に戦車なんていらない

    1
      • 匿名
      • 2019年 7月 15日

      戦車は生活必需品なんだが?

      3
    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    分離装薬はロシアも採用してるんですがそれは

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