米軍が関心を示さなかったJDAM ERに小型のジェットエンジンをプラスした「Powered JDAM」は、ステルス巡航ミサイル「AGM-158A JASSM」に匹敵する射程距離を備えているらしい。
※本記事は2020年3月17日に公開した記事の再掲載です。
参考:Boeing resurrects effort to turn JDAM bomb into cheap cruise missile
ボーイング、安価な無誘導爆弾を巡航ミサイルへ変身させる「Powered JDAM」構想を披露
Powered JDAMとは元々、安価な無誘導爆弾(自由落下爆弾とも言う)Mark 80シリーズを精密誘導爆弾に仕立てる変換キット「JDAM」から派生した範囲拡張タイプの「JDAM Extended Range(JDAM ER)」をベースに開発された変換キットだ。
JDAMキットを取り付けたMark 80シリーズは航空機から投下後、INS(慣性航法装置)やGPSを使用した誘導装置が制御翼をコントロールしながら落下するため指定した座標近くに着弾するという仕組みで、レーザー目標指示装置によって座標を指定すれば標的から1m以内(平均)に着弾させることもできるが、あくまで落下コースの制御であるため標的の上空近くを通過するよう飛行しなければならない。

出典:public domain JDAMキットを取り付けた爆弾
そこでオーストラリアとボーイングが共同で開発したのが範囲拡張タイプの「JDAM Extended Range(JDAM ER)」だ。
このJDAM ERキットを取り付けたMark 80シリーズは航空機から切り離された後、折り畳み式の翼を展開し滑空しながら標的の座標に誘導されるため50km~70km程度離れた場所から標的を狙う事ができるようになったが、残念ながら米軍が関心を示さなかったためオーストラリア空軍のみの導入で終わってしまった。

引用:ボーイング
補足:米軍がJDAM ERに関心を示さなかったのは、恐らく折り畳み式の翼を取り付けてみても攻撃範囲が50km~70km程度しか拡張できなかったためだろう。通常のJDAMでも投下する高度が高ければ25km程度の攻撃範囲が確保されていたため、たった50km攻撃範囲を拡張するためだけにJDAM ERを導入するのは意味がないと考えたのかもしれない。
そこでボーイングは米軍の関心を引くためJDAM ERにジェットエンジンを追加すれば遠距離から標的を狙う事ができるようになると提案したが、結局米軍は興味を示さなかったためJDAM ER+ジェットエンジンというアイデアはボーイングの社内でも半ば放置されていた。しかし最近になって米空軍がもっと射程の長い攻撃兵器が必要だと考えるようになったため、このアイデアが再び脚光を浴びることになる。
今年2月、ボーイングはMark 80シリーズを安価な巡航ミサイルに仕立てる「Powered JDAM」のコンセプトを明らかにした。
ボーイングよればPowered JDAMは基本的に折り畳み式の翼を持つJDAM ERに小型で低価格のジェットエンジンを追加したものになり具体的な数値こそ明らかにしなかったが、米空軍とロッキード・マーティンが新たに開発したステルス巡航ミサイル「AGM-158A JASSM」に匹敵する射程距離(370km)を備えているらしい。

出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Joel Pfiester ステルス巡航ミサイル「AGM-158A JASSM」
Powered JDAMキットの価格が幾らになるのかは分からないが米軍が採用しているJDAMキットの調達価格が約2万ドル(約230万円)程度なので、折り畳み式の翼と小型のジェットエンジンを加えることで調達コストが10倍になったとしても20万ドル(約2,200万円)なので、1発120万ドル(約1億3,000万円)のAGM-158Aよりも安価な巡航ミサイルだと言える。
しかしPowered JDAMキットはMark 80シリーズに後付で取り付けるため、AGM-158Aのようなステルス性能も低空飛行能力もないため敵に察知されやすく、お世辞にも生存性が高い攻撃手段とは言えないが、ボーイングによればPowered JDAMは他の攻撃手段とネットーワークで繋がり、自律的に群れを形成して標的に襲いかかることで弱点をカバーできるらしい。
要するにPowered JDAMは価格が安いため、数で圧倒して敵の対処能力を飽和させてしまえば良いという意味だ。
果たして米軍が興味を示すか不明だがAGM-158は現在射程が900km以上に延長されたB型を調達中で、更に射程を延長したD型の調達を来年から行う予定なので、幾ら安価でも370km程度の射程距離では関心を引くことは難しいかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:public domain ステルス巡航ミサイル「AGM-158A JASSM」
Mk.80シリーズすべてに対応させようとしたら
737Maxみたいに重心ズレで墜落したりして
落ち目のときは何をやっても駄目
大人しく既存技術の見直しに専念すればいいのにって経営的に死にそうでしたね
ロッキードマーティン「戦闘機メーカーの座はもらった!」
>>JDAM ERに小型で低価格のジェットエンジンを追加したもの
ここでボーイングが言うお安いジェットエンジンて具体的になんやろ
ウィリアムズF107とかかな、値段わかんないけど
既存のトマホークの方が安くて、有用な気がするんだけど。
旧式在庫の爆弾を一掃出来る手段の一つ。
スマート爆弾を再利用した、あんまりスマートじゃない感のある攻撃兵器という印象ですが
どこの戦場を想定した武器なんでしょうかね?
レーダーや対空火器があんまり強力じゃない敵と戦う戦場かな?
それだと従来の爆弾でも十分だからわざわざ採用する必要もないか。
巡航ミサイルが1億以上で通常爆弾に小型ジェットを付けて改造したのが2000万円、だったら最初から設計して3000万円で作れば?
迎撃されないよう10個単位で投下してもお財布に優しいですね。
射程をもっと伸ばせれば・・・
ラジコン用のジェットエンジンを少し大きくすればいいのかな
目的地近くまで数百キロを飛べばそこからは自由落下で良いわけだから
もしくはゆっくり燃焼する固体ロケットエンジンはないものか
しかし安価な1000万程度の兵器に対空ミサイルは非経済的だ
兵器単体は安いけど飽和攻撃する為に何機の戦術機を投入すれば良いのかな?運用コスト加味したら採用は無いでしようね。ボーイングはこんな中途半端な物にもすがる位ヤバいのか…。
これ、B-52からの投下でも十分使えません?
であればコスト同等で射程の伸長ができればかなり良い感じになる気がします。
370kmで使えるというと、朝鮮半島有事か台湾有事くらいですか …アレ?
どう考えても値段次第で十分使えるでしょ。