国防総省のラプランテ国防次官は24日「空対地兵器を地上発射型の長距離攻撃兵器に変換してウクライナに送ったが上手く機能しなかった」「ウクライナ人は何度か試したのち諦めた」と述べ、ウクライナに送ったGLSDBは期待外れだったと示唆した。
参考:Have Ground Launched Small Diameter Bombs Been ‘Thrown Aside’ By Ukraine?
当該兵器の効果が完全に失われたわけではないものの、必要な時に目標を確実に破壊できる信頼性は低下しているだろう
バイデン政権はウクライナが要請した「長距離攻撃能力」に対応するためGLSDB(地上発射型小口径爆弾)提供を決定し、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)の資金を活用してBoeingと生産契約を締結、ロシアメディアは2024年2月にルハンシク州クレミンナ付近で発見されたGLSDBの残骸を公開したが、国防総省で調達を担当するラプランテ国防次官は24日「(SDBとM26弾のロケットモーターを組み合わせるGLSDBは)素晴らしいアイデアだが全く機能しなかった」と明かした。
It looks like that the newly to Ukraine delivered GLSDB missiles are already in use. Russian channels share this video which apparently show a tail section.
The operational range of these missiles is 150 km (90 miles).
Source: Telegram / Ratnik2nd#Ukraine pic.twitter.com/PxqGdyy5wb
— (((Tendar))) (@Tendar) February 14, 2024
戦略国際問題研究所が主催するパネルディスカッションに出席したラプランテ国防次官は「誰とは言わないが、ある企業が空対地兵器を地上発射型の長距離攻撃兵器にするというクールなアイデアを思いついた。このシステムを出来るだけ早くウクライナに届けるため、我々は主要なテスト要件を切り捨て『安全性のテストのみ行え』と命じ、これを直ぐ送り届けたが電磁干渉、戦術、技術、手順、教義、組織、訓練、資材など複数の理由で上手く機能しなかった」「命がけ戦っている人々に何かを送っても上手くいかないと直ぐ諦めてしまうことがあり、このシステムにもそれが起こった」と言及。
上記の特徴はGLSDBと一致しているため「ウクライナに送ったGLSDBは期待外れだった」「ウクライナ人はGLSDBを諦めた」と解釈されているが、ディフェンスメディアは「SDBがGPS信号の妨害に脆弱だと証明されたのであれば大きな影響を及ぼす」「米軍は大量のSDBが備蓄し、かなりの数の同盟国もSDBを使用している」「米国は特定地域で暗号化されたGPS信号の出力を高めることが出来るものの今回の問題を克服できるかは不明だ」「少なくとも幾つかの長距離攻撃兵器はウクライナの戦場で通用しないことが分かっている」と指摘したのが興味深い。

出典:Boeing
幾つかの長距離攻撃兵器とはHIMARSで使用するGMLRS弾、155mm榴弾砲で使用するエクスカリバー砲弾、戦闘機で使用するJDAM-ERのことで、The Economist紙は昨年11月「ウクライナ軍のザルジニー総司令官によれば侵攻当初の戦場でEWの影響は限定的だったものの、静的な接触線が出現したことでロシア軍は強力なEWシステムを効果的な場所に配置できるようになった。ウクライナ軍は2023年3月にエクスカリバー砲弾が目標を外し始めことに気づき、JDAM-ERもGMLRS弾も目標を外し始めた。一部の地域ではGMLRSの大半が間違った方向に飛んでいく」と報じたことがある。
全てに共通するのはGPSが誘導に使用されていることで、米軍や企業は影響軽減の調整に取り組んでいるため当該兵器の効果が完全に失われたわけではないものの、同様の努力はロシア側でも行われているため「必要な時に目標を確実に破壊できる信頼性」は低下しているだろう。
関連記事:ロシア軍のEW能力が効果を発揮、GPS誘導兵器は目標を外しドローンも制圧
関連記事:150km先を攻撃可能なGLSDBがテストをパス、まもなくウクライナに到着
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関連記事:米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表
※アイキャッチ画像の出典:SAAB GLSDB
片や滑空爆弾の脅威にさらされ片やGLSDBが機能しないというのもおかしな話だが
EWシステムにそこまで差があるということか
EW戦は古い分野ですから最近の西側ではあまり顧みられてきませんでしたが、それを抜きにしてもロシアにおける発展が想像をはるかに上回っていましたね
まさかあんな戦術レベルの車載型装置を全戦線に並べてくるとはロシア贔屓の私もさすがに思ってもいませんでした
流石は1㎞あたり野砲240門以上×100㎞を実現した国の後継だけのことはある
現代で縦深突破を実現するのに最低限何が必要かということを考え続けた結果というか
米軍と正面からぶつかることを考え続けてきた結果なのかも
第1次大戦や第2次大戦で、ドイツよりも無線が遅れていて、ボコボコにされた歴史を少しを反省しているのかな。 でも、開戦当初、暗号付き通信機が不足しているとか、煽られてなかったかなロシア軍。2年で整備したのか、報道が嘘だったのか。どっちだろう。
>米軍と正面からぶつかることを考え続けてきた結果なのかも
そこなんでしょうね。 敵を知り、己を知り、敵をバカにしない。
誘導にGPS使用している精密誘導兵器が、多すぎだからね。
他にも、民間通信衛星依存とか、早期警戒機依存とか。西側はゲリラ相手では問題にならないけど、変なボトルネックがある。 対策を実行できる大国相手だと、微妙だと解っただけでも成果は大きいけど。
今更、変更も大変だよな。どうするんだろう。
あの亀戦車も内にEW装置を載せているとか
戦車と同程度の火力に全周追加装甲で地雷対処もある嚮導駆逐戦車…これは強い
亀戦車を嘲笑してる界隈はGLSDBやそれに似た欠陥を抱える兵器しか供与できない現状にもっと危機感持った方がいいと思う
対戦車戦闘をFPVドローンに頼っているウクライナ軍の装備事情に対応されて現状榴弾砲直撃させるしか対策がなく、クラスノホリフカの工場とかそれで攻略されたのにこれからどうするつもりなんだか
話題の滑空誘導爆弾とGLSSDBだと威力が違うから求められる精度が違うとか
あと素人考えだけど、敵EWシステムの射程圏に入る前に慣性誘導に切り替えるとかやってそう
有翼の滑空爆弾方式の場合、距離を稼げるトレードオフとして風の影響を受けまくるんですよ。要は紙ヒコーキと同じ原理ですから。
ロシアのPole-21は半径20キロのGPSを阻害するそうなので、20キロの距離を紙ヒコーキが飛んで着弾する精度、がどの程度のものか。
そりゃウクライナ軍が「ダメだこりゃ」となるわけです。
>「命がけ戦っている人々に何かを送っても上手くいかないと直ぐ諦めてしまうことがあり、このシステムにもそれが起こった」
そりゃそうだ。彼らは実戦をしているのであって兵器の性能テストしてるわけじゃないんだから。
とにかく高い、生産能力も低い、そして期待された性能も発揮出来ない
こ れ は 酷 い
エイブラムス用亀戦車改修キット送ったほうが役に立つと思う。
ただアメリカがつくるとなるとひとつで数億円レベルになりそうだけど。
まあ元々は廃棄品の再利用ですし……
これは試作の24発でおしまいかな。
この手の兵器はクソ高い変わりに目標地点への誘導が可能で高価値目標を攻撃できるのが強みだったのに、その強み潰されたら採算最悪兵器の誕生だし何より西側の強みが消えてしまう
いや、GLSDBそのものはアメリカ製兵器にしては格安のはず
廃棄予定品の再利用だからね
欧米の分不相応なインフレと実体経済と乖離し過ぎている経済成長がこういう形で跳ね返ってくるとはね
モノ作れません、迅速な意思決定が出来ません、生活も庶民は大して豊かじゃありません
西側の強みis何?
そこに無理矢理押し付けるくらい素晴らしい民主主義と倫理と秩序の構築者という肩書きがあるじゃろ?
電子機器はめちゃ強い。
…が、規制が追いつかず敵にも使われまくってる。
民生用プロセッサは確かに強いかもしれないけどそれ使って兵器としてユニットコストがべらぼうに高くなって量産にも不向きになってしまってるのが現状だし軍事技術における強みと言えるのかどうかはちょっと怪しい気がする
アメリカの陸上部隊、ロシアと比べて電子戦能力は低いですからね。
ウクライナ軍も、戦争が佳境を迎える中で、対応するのは厳しいですね。
EWに関しては、ロシア陸軍の能力が、特別に高いという感じがします。
(2023.12.10 ロシアの電子戦に対抗へ、ウクライナが新たな取り組み CNN)
>>電磁干渉、戦術、技術、手順、教義、組織、訓練、資材など複数の理由で上手く機能しなかった
これ全部ダメだったってことじゃん!!
というか思い付きで作ったもんテストもせず人に押し付けんな
搬入はちゃんとしてるだろいい加減にしろ!
なんだと!?こっちは命張ってんだよ!!
ちゃんと当たるもん持ってこいや!!
口先ばっかりの○○○○が!!そっちこそいい加減にしろ!!
(多分前線でありそうな悶着、一部コンプラに配慮して伏字)
・・・どこもこんな感じになってそうだなあ
GLSDBがうまく作動したかそもそもうまくいってないかはわからないが、それらを誘導するGPSシステム自体がジャミングされやすい脆弱なものとなってしまっている
もはや無誘導で数撃ったほうが命中率は高いだろ。もしくはジャイロによって目標地点を誘導させるか……
ベルゴロド市街地への嫌がらせ攻撃に使うしかないな
それだと精度なんか必要ないし
自分からテロ国家になっていくのか…(困惑
SDBはF35などでの運用もあるので、日本もSDBの脆弱性については影響を受けるでしょう。
ただ、AARGMなど対レーダーミサイル(現状でGPS妨害波探知能力の有無はわからないが)で、将来的には一元的に敵EW装置の撃破も担うでしょうから、
次の戦争に備える、効果的な組み合わせと適切な投入タイミングの模索中というところでしょうか。
HOJ能力あったとして結局妨害波が停止してPRH誘導が機能しなくなったらGPS-INS誘導に頼って突っ込むしかないから難しいね
日本の場合、そもそも保有する爆弾の数が全部合わせてロシアの2日分くらいですから。もはや基本的な「物量」数に差があり過ぎて対策以前の問題のような気がします。
仰る通りです。
北方領土奪還、ロシアに攻め込めと言う方を、よく見かけたんですよね。
彼らが、最前線に行ってどうやって戦うのか、気になるものです。
日本は、スコップですら、足りないわけですし(スコップの備蓄すら聞かないですよね)
>>スコップですら、足りない
ニトリででも買うつもりだったんでしょう
お値段以上ですね…
その対レーダーミサイルを攪乱、無駄撃ちさせる目的で、SAM誘導レーダー波に似せた電波を放出する囮ドローンとか作られそう。安物ドローンで敵の精密誘導兵器を浪費させる戦法が流行するだろう。
hogehogeさんへの返答でした。
そんなにダメダメだったのですか…
この問題は米軍の兵器開発もともかく、支援を兵器開発に充てることの限界ですね
ロシア軍の新兵器やウクライナ国産の新無人機などは成果を上げてますが、それは戦場の逐一の実践データとニーズを収集して改善しているからであって、結局他国の支援だと機能開発の更新も遅くニーズに合わないのでしょうね
山下元将軍が、日米共同訓練の逸話を話されているので、ご興味があれば(21:10~)。
支援を兵器にあてる限界、まさに仰る通りと思います。
アメリカは通常火力が圧倒的に強いため、電子戦による陸上戦闘をそもそも想定しておらず、2014年のクリミアで驚いた。
アメリカ軍が、(陸上の)電子戦装備を持っていなかったため、日本側が共同訓練で指導したという逸話が興味深いんですよね。
(記事中の)長距離攻撃兵器は開発が古く、クリミア危機の前に開発していますから、電子戦は当然のようにほぼ想定されていない兵器だろうなと。
( 2023/11/22 【山下裕貴×佐々木孝博】ロシア軍が優位に立つ電子戦…電波妨害の実態…ウクライナ前線部隊を独自取材…最新装備は【深層NEWS】 Youtube)
空軍も海軍から借りてるしな
GLSDBに限らずGPSを利用するものが全てダメにされているわけですね。
その種の兵器の生産されたストックは膨大でしょう。使わない訳には行かないのでは。
何らかの付加設備で再度有効にしないとですね。
当面は、INSの併用でしょうが、これだけでは精度が不足でしょう。
軍用のGPS信号を暗号化しないといけないのでしょうか。
それとも、大まかな目標座標で撃ち出して、最終誘導は全く別の物にするか。
それも、安価に。素人には、どうすれば良いのか良くは分かりませんが。
GLSDBそのものの考え方は良いと思います。
CAPの成立しない場面では、代替手段たり得ると思いますし。
別の記事では、早速、ロシアが同種のものを作ったとも。
また別の記事では、イスラエルが報復のために戦闘機から売ったのは、
イスラエル製の同種の兵器を航空機から放ったのだ、とも。
> その種の兵器の生産されたストックは膨大でしょう。使わない訳には行かないのでは。
ですので,ウクライナに押し付けるという方法で有効活用しております!全部額面の新品調達価格で支援実績に計上して、同じ金額を支援資金から国防費に付け替えるという会計マジック♪
他所の記事で、英国はペイブウェイIVを提供するとか。
これの誘導はGPS/INS+レーザーでしたね。
多分、こっちの方向に行くのでは。そんな気がします。
ただSALHシーカーを搭載するとなるとコストがうなぎ登りですからね
ペイブウェイにしてもレーザー照射角の問題を抜きにしたとしても重要目標に使うものでJDAMのように気軽に使えるものではありませんでしたし
「冷戦終結以降30年間西側が投資し続けてきた精密誘導兵器の大部分はGPSがなければ全く役に立たない」と証明されてしまった事実には震えますね
だって今回の戦争ではロシアがお上品に電子戦でGPS信号を妨害してくれているわけですが、手段を選ばなければGPSなんてもっと簡単に機能不全に陥らせられますもの
そしてその方法の研究を最も進めているのが他でもない中国とかいう国ですし
つまり仮に米中全面戦争になったとして、衛星を標的にされたらもう為す術なしで白旗振るしかありませんよこれ
ロシア側の妨害が有効になっているGPS測位システムが軍用Mコード対応品なのか否かが焦点ですね。
Mコードの運用開始は2022年からで、これまでウクライナに提供されてきた誘導兵器に適用されていた可能性は高くないと想像します。
もし運用間もないMコードが妨害されたのなら大問題で、国防総省の反応はこんなものでは済まないと思います。
ボーイングだし色々ありそうすぎてわからんやつ
貧者の誘導兵器みたいな扱いで期待されてた感もありましたがやっぱり採用されなかったのは理由があると言う事ですかね
有線式FPVドローンのレーザー誘導+jdamが誘導するつもりなら一番良さげだったりする?
ドローンが無線式ですがロシアのクラスノポールがそれで猛威ふるってるから、今のところの正解はそれじゃないでしょうか
将来的にはドローンからのカメラ映像による誘導とかもあるかも?
ドローンから送られてくる画像の落ちてほしいところに画面上で丸付けたらそこに落ちていくと
これだとドローンの向いてる方向と目標地点との距離、爆弾とドローンの位置関係と進行方向の情報だけでGPSデータもいらないですし
>「空対地兵器を地上発射型の長距離攻撃兵器に変換してウクライナに送ったが上手く機能しなかった」
>「ウクライナ人は何度か試したのち諦めた」
あれだろ
【過ぎたるは猶及ばざるが如し】
《「論語」先進から》何事でもやりすぎることはやり足りないことと同じようによくない。
トップガン・マーヴェリックでも「今のF-35CではGPS誘導兵器しか使えないので敵の電波妨害に弱い。レーザー誘導装置が使えるF/A-18E/F使う」とF-35で撮影できない理由を後付けしてました。
(実際はF-35が単座で役者を乗せて実機撮影ができない、最新鋭機でコックピット内の撮影に制限がある、ことが大きいのですが)
実際にGPS誘導兵器が機能しない状態が再現でき、レーザー誘導装置が外付けでステルス性を悪化させる状況になるとGPS以外の方法で誘導でき、かつ機体から誘導する場合はステルス性も維持できる必要があるのでなかなか難しい課題かもしれません。
「空飛ぶ兵器庫」になるステルス性の高い無人戦闘機を随伴するにしても電波妨害でどの程度生存性と確実性を高められるかも難しいですし
むしろ早いうちに欠陥が分かって良かったんじゃない?
対応改修型が出来るでしょそこらへんなら使えるかも知れない