米戦争研究所は今後のウクライナ軍とロシア軍の戦いについて「ドネツク州で戦いが激しくなる」と予測しており、本格的な冬が到来して気温が下がっても両軍の戦闘は収束するのではなく激化する可能性が高いと述べている。
参考:RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, NOVEMBER 13
参考:Оккупанты превратили Мелитополь в сплошную военную базу – мэр
ヘルソン戦線がドニエプル川によって事実上固定されたたため、流動的な戦線はザポリージャ州、ドネツク州、ルハンシク州の3つしかない
米シンクタンクのアトランティック・カウンシルは「ヘルソン市放棄をプーチン大統領に売り込むためスロビキン総司令官は『ドネツク州制圧』を確約した可能性が高く、ウクライナはドネツク州で始まるロシア軍の攻勢に備えなければならない」と指摘していたが、米戦争研究所(ISW)も13日のレポートで同様の指摘を行っており「ロシア軍はドニエプル川右岸から回収した戦力と新たに動員した戦力をドネツク州に投入、数的優位を作り出しある程度の成功を収めるだろう」と予測している。
ただしロシア軍の正規部隊、新たに動員された部隊、民間軍事会社のワグナー部隊、志願予備軍のBARS部隊、ドネツク・ルハンシク共和国の民兵、カディロフのチェチェン部隊で構成された奇妙な集合体は「通常の部隊の戦闘力より低い」と指摘しており、これを効果的な攻撃組織に作り変える時間的な余裕をスロビキン総司令官は与えられていないため「大規模で攻撃的な機動戦を実行するのは不可能に近い=数的優位と犠牲を顧みないシンプルな作戦しか実行できないという意味」と見ているのが興味深い。
ヘルソン市解放に成功したウクライナ軍についてもISWは「ドニエプル川を渡河して左岸に進むのは困難なためロシア軍の再渡河を阻止できる戦力を残し、あとの戦力は他の戦線に再配備する可能性が高い」と予測、ロシア軍が戦力を強化するドネツク州の防衛を強化する必要があるものの「余剰戦力をどこに配備するのか?」についてはルハンシクか「別の何処か」と曖昧だ。
ヘルソン戦線がドニエプル川によって事実上固定されたたため、流動的な戦線はザポリージャ州、ドネツク州、ルハンシク州の3つしかなく、ウクライナ軍にとってドネツクは「少ない戦力で大きな戦力を釘付けにする場所=防御に有利な地点で戦うという意味」であり、ここの部隊が踏ん張ってロシア軍の戦力をより多く拘束できれば他の地域で違いを作り出すことができる。
ザポリージャ州のメリトポリに向けて前線を50km~60kmほど押し返せばクリミア経由による兵站をHIMARSで妨害することができ、ドニエプル川左岸に展開するロシア軍の弱体化を狙うことができるが、この戦線は侵攻初期から圧倒的に動きが少なく、ロシア軍は長い時間をかけて防御陣地や地雷原の設営を行っており、右岸からの撤退後にメリトポリ周辺の要塞化を進めているという報告もあるためザポリージャ州で違いを作り出すのは簡単ではない。
一方のルハンシク州はクピャンスク、イジューム、リマンでの敗戦を受けて防衛ラインを急造しているため完璧ではなく、現在もウクライナ軍が限定的な前進を続けている場所なので、ここにヘルソン市解放で浮いた余剰戦力を配備するのが最も有望そうだが、ここはプーチン大統領が解放を約束したドンバス地域なのでロシア軍も必死に抵抗してくるだろう。
ISWの予測によると「スロビキン総司令官はヘルソン市放棄の代わりに確約した『ドネツク州制圧』を直ぐに実行へ移す可能性が高く、ウクライナ軍も進めている反撃を継続するため、本格的な冬が到来して気温が下がっても両軍の戦闘は収束するのではなく激化する可能性が高い」と見ているが、本当に何が起こるのかは誰にも分からない。
関連記事:ロシア軍、ドニエプル川右岸から持ち帰った戦力をどこに再配備するのか?
※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
逆を突いて「ノーバ・カホフカ上陸・突破作戦」あるかも。
というか、ATACMS供与しろ。
キンバーン半島方面から露軍の塹壕線の側面を衝けそうだが
まあ流石に重装備を持ち込めないだろうし補給も厳しいから
露軍の東部への戦力転用を掣肘できれば充分ってくらいかな
キンバーン半島を奪回すれば、オデーサ沿岸域にとって煩わしいロシア側の観測拠点を排除できますしね。
それにしても、保有艦艇皆無の側が水陸両用作戦を実行しているというのも、変わった現象です(笑)
両軍ともへルソンから転用した戦力を利用できる今、特に泥濘期の終わり~厳冬期までの時期はむしろ戦局が動きそうなタイミングではある
露軍がいま前線にいる捨て駒同然の動員兵とは別に冬~春の泥濘期の期間を使って後方の動員兵を訓練させるって見方もあるし
今のうちに、露骨に言えば肉の壁の向こうに隠れる前に露軍の正規兵を叩ければ理想的なんだが
ロシアは秋の徴兵で召集した新兵(約12万人)を来年の3月~4月を目処に訓練を行って春にウクライナ戦線に投入することで攻勢をかけようとする見方があります。動員兵と違い最低4ヶ月程度は訓練を受けるので(動員兵よりは)練度が高くなるのでウクライナ軍も油断できません。
ウクライナ軍としては装備が不十分な上に冬季戦装備も満足に持たない動員兵中心のロシア軍を冬季に打撃を与えて戦線を進める必要があるので着実にウクライナ軍の戦線は進むと思います。積雪すれば歩兵は地面との接地圧が小さく迅速に移動できるスキーも利用できますし、地の利で有利なウクライナ軍がフィンランドの冬戦争の様に戦闘を有利に進めることができる局面もあるでしょう。
徴集兵は実戦投入できない法律は改正されたんでしたっけ?
徴兵期間が終了した翌日に即動員するという、バグすれすれの技の予測ではないでしょうか。
予定の訓練期間が終わったら除隊、即再招集とか。
「ドネツク(併合済みの自称ロシア領)内での訓練」だからセーフ、とかいうんじゃないの?
ヤフコメ民が盛んに「ロシアを甘く見るな、ザポリージャやドネツクではロシアが盛り返しているんだ!」と叫んでいますが、実際どうなんでしょうね。
ウクライナも無傷ではないと思いますが、何が正しいのか分からない中で、このサイトは本当に貴重だと思う。
管理人さんも大変だと思いますが、倒れないように頑張って下さい。
今のロシアは、敵野戦軍を撃破していない(不可能)のに、その現実を無視してドネツク州全域占領の戡定作戦をやっているような有様ですね。当然、意味のある成果なぞ得られはしませんし、ロシアがドネツクでの非効率な攻撃に部隊を突っ込んで消耗してくれるならウクライナ的には良いニュースだとしか(笑)
祖国の大地に血を捧げたフィンランド冬戦争のごとき敢闘を祈る
ウクライナは我等の先を戦ってくれている、権威主義国家という怪物との。
>ここはプーチン大統領が解放を約束したドンバス地域なのでロシア軍も必死に抵抗してくるだろう。
憐れよなぁ。
アメリカでは今後のロシアの出方が分析・予想できているということですよね。こわ。
予測もできないでやみくもに関わるほうがよほど怖い
正確な予測が出来るのは能力の高さの象徴ですからね、
それでも不確定要素、予測不能の推移で戦争は動くんだから
たまに「本当の戦況を教えろ!ネット嘘ばかり!」とぶーたれるやつを見るけどじゃあ今から義勇兵に志願して最前線で見てこいやって話ではある。ネットユーザーに教えられることは限られてますよ
どうするんだろう
ロシア軍の戦力の多くが東部やサボリージャに吸い上げられるなら、ヘルソンから川を渡っていきそうな気もするが・・
ロシア軍の出方しだいかな
まあロシア軍、スロービキン大将の立場に立って考えるならば、ドネツク州のアウディイウカあたりに、ドニエプル川西岸から引き揚げた精鋭部隊を投入し、突破、あるいは迂回して、ドニプロ州まで突っ込ませることができれば、ザポロジェ州のウクライナ軍は、後方の補給路を遮断、包囲される脅威を受けて、メリトポリや、マリウポリに対する反撃、奪回作戦を中止させることができるかもしれません。
逆にウクライナ軍、ザルジニ大将の立場に立って考えるならば、ドネツク州ではロシア軍を阻止し、ザポロジェから南下して、まずはメリトポリを奪回したいとこでしょう。
もちろん口で言うのは簡単ですが、それが実行できるかは、ウクライナ軍の武器、弾薬の補給がどうなるか、ロシア軍の予備役部隊の編成や訓練がどうなるか、士気や戦意はどうか、ウクライナ軍を支援する外国の政治や経済の状況がどうなるかにかかってきます。
もちろんロシア軍としては、バフムトもさっさと陥落させてケリをつけたいでしょう。ロシア軍が優勢であれば、ザポロジェよりも先にドニプロの方に行けば、ザポロジェのウクライナ軍を北から包囲することもできます。
もともと主戦場はヘルソンやムイコラウではなく、ドネツク州やザポロジェ州の方面であり、スロービキン大将は政治的な印象が悪くなるのを承知の上でロシア軍をヘルソン市から撤退させたのでしょう。
まぁ、ロシア軍にそういう雄渾な企図を実現する量と質と回復力があるなら、
こうなってはいませんが。
もう半年以上戦い続けてるんだから
ロシア人だって幾らかは成長するし楽観論は危険が危ない
実際ヘルソンでも前よりは上手く撤退出来たみたいやし
戦争初期の云十キロの車列で進軍!みたいなバカバカしい事はしなくなった
お互いにヘルソン方面の戦力を他地域へ配備していくと思いますが、
戦闘激化はすれど、膠着しそうな感じもします。
ドニエプル川渡河は困難と喧伝しつつ、
将来的にドニエプル川左岸が手薄になる時を待って、
何かしらの仕掛けを用意してそうか気もします。
独ソ戦の第三次ハリコフ攻防戦なども冬に激戦してますからね。ウクライナ東部が戦場で。
ロシアは例によって砲兵火力に頼ってじりじり前進する作戦でしょう。ウクライナ軍はそれに耐えつつ、準備が整ったら機動戦で大きく前進するということがまた起こると熱いです。地面が凍結していれば重装備も動けるでしょう。
ロシアが防戦に専念していれば難しいですが、政治的にロシア側も攻めなければならないのがつけ入る隙になると思えます。
スロービキン大将の目論見をひっくり返すなら。
ドネツク州から兵力を転用せざるを得ない状況を作ればですね。
例えば、クリミアの何処かに奇襲上陸してドネツクならぬクリミアの危機を作れば、
ロシア政府はたまらずに、スロービキン大将を無視して対応するのでは。
黒海艦隊が水上襲撃艇で動けないならば、ウクライナ側は別に上陸用舟艇
だけで良いと思うので。飛行場襲撃等、一撃離脱でさっさと撤収する形で。
結果としてロシアは無駄に兵力を動かし、他方面の弱体化を招くのでは。
そもそも、ロシア軍にまともな冬期装備(衣服・野営装備)とかあるのか?
3月の時点ですら無かったのに、いまになって揃えられるとか考えにくいんだが
指揮連絡系統も、自前で構築できたなんて話も噂ですら出てきてない
通信網もやはり同じ
これでウクライナの厳冬期に戦闘が出来るんだろうか?
ドネツク正面が要と思えるが攻略は楽ではないよなぁ