米国関連

米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ドル

米陸軍が調達する装備・弾薬の取得コストは国防権限法(NDAA)の中で公開されており、2023年の調達単価はAMPV=1,080万ドル、MPF=1,250万ドル 、M-SHORAD=2,270万ドル、HIMARS=673万ドルになる。

参考:NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2023 

予想通り、FY23の迎撃弾や各種ミサイル類の調達数は劇的に増加していない

通常、防衛装備品のコストは関連費用が含まれている場合が多く純粋な単価が良くわからない仕組みになっているが、米国の国防予算に関する大枠を定めた国防権限法(NDAA)には米軍が2023会計年度に何を、幾つ、幾らで調達するのか明記されており、今年も各軍が2023年に何を、幾つ、幾らで取得するのか見ていくことにする。

調達する装備・弾薬調達コスト調達単価FY21 NDAAとの比較
AMPV×72輌7.8億ドル1,080万ドル32輌/1.3億ドル/406万ドル
MPF×28輌3.5億ドル1,250万ドル
パトリオットシステム×4基1.3億ドル3,120万ドル
M-SHORAD×18輌
4.1億ドル2,270万ドル50輌/3.7億ドル/740万ドル
HIMARS×23輌
1.6億ドル673万ドル 
M1074×6輌3,690万ドル615万ドル
M88A2×12輌1.4億ドル1,150万ドル
UH60M×27機
7.1億ドル2,620万ドル
UH60L×28機1.7億ドル607万ドル
CH-47×9機3.6億ドル4,060万ドル
   
M1A2改修×69輌12.9億ドル1,870万ドル89輌/10億ドル/1,120万ドル
ストライカー改修×102輌8.9億ドル873万ドル214輌/11.6億ドル/523万ドル
M109A6改修×67輌
6.5億ドル974万ドル 
AH–64E改修×35機
5.2億ドル1,490万ドル50機/7.9億ドル/1,580万ドル
赤外線脅威対策×125機分
2.9億ドル232万ドル 
    
PAC-3 MSE弾×252発
10.4億ドル412万ドル122発/6億ドル/490万ドル
PrSM×120発
2.1億ドル175万ドル30発/4,900万ドル/163万ドル
JAGM×713発
2.2億ドル31万ドル657発/2.1億ドル/32万ドル
ヘルファイア×752発1.1億ドル14万ドル428発/9,100万ドル/21万ドル
ジャベリン×582発2.6億ドル40万ドル773発/1.9億ドル/24万ドル
TOW2×893発1.1億ドル18万ドル1,405発/1.2億ドル/8.5万ドル
GMLRS弾×4,674発
7.5億ドル16万ドル5,384発/8.5億ドル/15万ドル
Switchblade300
1,1億ドル  
    
5.56mm弾5,940万ドル
7.62mm弾9,000万ドル
6.8mm弾1.3億ドル
20mm弾1,170万ドル
25mm弾1,020万ドル
30mm弾1.4億ドル
40mm弾
8,520万ドル
60mm迫撃砲弾3,330万ドル
81mm迫撃砲弾5,650万ドル 
120mm迫撃砲弾1.3億ドル 
戦車砲弾2.9億ドル 
155mm砲弾
1.7億ドル

FY23の予算で生産能力の拡張に着手したばかりなので、FY21と比較可能な迎撃弾や各種ミサイル類の調達数は劇的に増加しておらず、予想通り弾薬類の増産は2024年~2025年まで待つ必要があり、ウクライナとロシアの戦いが長引けば西側製弾薬の不足は2024年にピークを迎えるだろう。

米陸軍が新たに調達するAMPVはM113の後継で徐々に調達ペースが加速しており、FY23から調達が始まったMPFは歩兵旅団戦闘団(IBCT)向けの火力支援車輌だ。

出典:U.S. Army

メディアはMPFを「軽戦車」と表現することが多いが、攻撃力と機動力以外の性能(特に防御力)は戦車に及ばないため、米陸軍は戦闘教義上の混乱(対戦車を意図していない)を避ける意味合いでMPFを「軽戦車」と呼ぶのを避けている。

ATACMSの後継として低率初期生産が始まったPrSM(精密ストライクミサイル/Increment1)の調達ペースも増加しており、量産が進めば175万ドルから値下がりする可能性が高い。

出典:Lockheed Martin PrSM Increment4のデモンストレーター(Long Range Maneuverable Fires missile)

将来的にPrSMは「海上を移動する目標への攻撃能力」や「射程の延長=1,000km以上」が行われる予定で、開発に参加する英国とオーストラリアが導入を約束している。

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※アイキャッチ画像の出典:Public Domain AMPV

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コメント

    • 七面鳥
    • 2023年 4月 02日

     FY21より聖ジャベリンの数が減ってるのは、他国向けを優先してるのかな。
     対中国にシフトチェンジしてるところを探して安心したいのですが、PAC3の増加がそれでしょうか?

    • あああ
    • 2023年 4月 02日

    ブラットレの車体ベースでお安さ第一義のAMPVが派生型を含めての単価で14億円超ですか・・・。
    ストライカーのドラグン仕様へのリビルトも10億超・・・。しかし新型架橋戦車は8億とか意味が分からん数字だなと。
    というか欧州装輪IFVなんぞストライカーより高性能で車格で上でも精々円安の今でも7億円相当でしょう。そうまでしてGDLSのお古を買い続けるの誰得なんで?

    3
    • 匿名
    • 2023年 4月 02日

    調達数を増やせば単価は下がるのが世の常だと思うんだけど、AMPVは調達数が2倍で単価も2倍…
    派生型に乗っける特殊装備の分ですかね

    1
    • TA
    • 2023年 4月 02日

    調達価格を公表するのはいいね
    これぞ民主主義

    5
    • 戦略眼
    • 2023年 4月 02日

    M88A2は、M48の派生型だよね。
    未だ造るのか?
    M1 ARVを作った方が良くないか?
    MPFは、M1128 ストライカーMGSの代わりだけど正直要るかな?

      • AH-X
      • 2023年 4月 02日

      MPFは緊急展開軍向けでしょう。米陸軍は空挺部隊用の戦闘車両が中露に比べてかなり劣っていると長年指摘されてきたので結構重要な装備かなと。
      しかしAMPVってネットワーク装備はそれなりに充実してるんでしょうが機関砲もないのに戦車より高いとは!

    • hoge
    • 2023年 4月 03日

    MPF、アサルトガン/突撃砲の現代版であって、間違っても主力戦車ではないですね。

    • けい2020
    • 2023年 4月 03日

    M1A2改修×69輌 総額12.9億ドル 単価1,870万ドル
    これが理解できない価格なんだけど、1両24億円ってなんか計算を間違えてるんだろうか・・

    2
    • 58式素人
    • 2023年 4月 03日

    6.8mm弾に多額のお金が出ていますね。
    生産施設への投資でしょうか。
    7.62mmNATO弾はいつまで使えるのかな。
    世の中には、まだ30-06弾を使う軍隊もいるのだけど。
    こんな贅沢(?)をできるのは米軍だけかな。

    1
    • 山田さん
    • 2023年 4月 03日

    MPFが装輪車じゃなくて履帯なのが謎なんだよなぁ。
    砂漠地帯でストライカーが予想以上にスタックしたとか?
    或いは、アフリカやシベリアみたいな、インフラの進んでいない地域での運用を考慮してるんだろか?

    1
      • 58式素人
      • 2023年 4月 03日

      多分、そうなのでは。
      今度の想定戦場は、砂漠地帯ではないのでしょう。
      ひょっとすると、北極圏かなと思います。

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