米国関連

トランプ大統領とNATO主要国の対立、忠実な同盟者だったイタリアまで失う

イタリアのメローニ首相はトランプ大統領のレオ教皇批判や対イラン作戦への協力拒否批判を受けて「2006年に承認されたイスラエルとの防衛協力合意を自動更新しない」と発表し、米国の立場を支持して対立する欧州の指導者との仲介に尽力する忠実な同盟者を失った格好だ。

参考:Italy suspends defense agreement with Israel
参考:Trump al Corriere: «Giorgia Meloni non vuole aiutarci nella guerra, sono scioccato». Nuovo attacco al Papa: «Non ha idea di cosa sta succedendo in Iran»

トランプ大統領は良くも悪くも天才、ホワイトハウスに復帰してから約14ヶ月間で国際的な信頼と友人を失い続けるのは一種の才能

トランプ政権にとってイタリアのメローニ首相は「米国の立場を支持して対立する欧州の指導者との仲介に尽力する忠実な同盟者」であり、トランプ大統領自身もメローニ首相のことを「欧州の頼れる同盟者であり偉大な指導者だ」と称賛してきたが、フランスやスペインが対イラン戦=エピック・フューリー作戦に関与する米軍機に対して領空を閉鎖する中、イタリアも中東に向かうP-8Aのシチリア島基地立ち寄りを拒否し、米国出身のレオ14世教皇も「神はどんな紛争も祝福しない」「平和の君たるキリストの徒であれば、かつて剣を振るい、現代において爆弾を投下する者たちの側に立つことは決してない」と批判。

これに激怒したトランプ大統領はすぐに「レオ教皇は犯罪対策に弱腰で外交政策も最悪だ」「私は彼の弟のルイの方がずっと好きだ」「ルイは完全にMAGA支持者だからだ」「イランが核兵器を持つことを容認する教皇などいらない」「米国がベネズエラを攻撃したことをひどいと考える教皇などいらない」「米大統領を批判する教皇は望んでいない」「レオは教皇になれたことを私に感謝すべきだ」「私がホワイトハウスにいなければレオはバチカンにいなかった」などと激しく攻撃し、自身をキリストに見立てて病人を癒やす画像をTruth Socialに投稿。

これに対してレオ教皇は「私はトランプ政権を恐れていない」と表明、米国内の教会関係者もトランプ大統領のレオ教皇に対する侮辱を批判して謝罪を要求し、トランプ大統領は13日に大統領執務室前で開かれた緊急記者会見で「レオ教皇は間違ったことを言った」「彼はイランに関して行っていることに強く反対した」「問題の画像は自分を医師として描いただけだ」と釈明して謝罪を拒否したものの、Truth Socialに投稿した問題の画像は削除した。

出典:Truth Social

そしてトランプ大統領の矛先はメローニ首相に向かい、Corriere della Sera紙の電話取材に「イタリア国民は自国の首相が原油の確保において我々に一切の協力を行っていないという事実を歓迎しているのか?」「国民はそれを望んでいるのか?」「私には到底理解できない」「私は彼女に失望している」「彼女には決断力があると思っていたが私の見立て違いだった」「イタリアは中東から原油を調達し、イタリアの安全保障において米国が極めて重要な同盟国であるにもかかわらずだ」「彼女はレオ教皇に対する私の批判を容認できないと言ったが容認できないのは彼女の方だ」「彼女はイランが核兵器を保有することの重大性を意に介していない」と批判。

Corriere della Seraが「そうした安全保障上の懸念についてメローニ首相と事前に協議したのか?」と質問すると「してない」「イタリアとはかなり長期間協議を行っていない」「協議をしてないのは彼女がNATOの枠組みにおける米国への協力を拒み、イランの核の脅威を排除するための協力も拒んでいるからだ」「彼女は私が想定していた指導者とは大きく異なっていた」「彼女はもはやかつてと同じ指導者ではなく、イタリアもかつてと同じ国家ではなくなるだろう」「不法移民がイタリアそして欧州全体を死に追いやっている」と辛辣に批判し、メローニ首相も遂に行動を起こした。

出典:The White House

メローニ首相は14日「2006年に承認されたイスラエルとの防衛協力合意を自動更新しない」と発表、さらに「私はレオ教皇に連帯を表明する」「率直に言って宗教指導者が政治指導者の言うことに従うような社会はあまり心地よく感じない」とトランプ大統領を批判、イスラエル外務省は「我々はイタリアと安全保障協定を結んでいない」「何年も前に交わされた覚書は実質的な内容が一切含まれていない」「今回の件はイスラエルの安全保障に影響を与えるものではない」と対応したものの、野党指導者からは「政府は同盟国との関係を繋ぎ止めることに失敗しつつある」と批判している。

Defense NewsはイタリアのLeonardoとトルコのBaykarが提携し、Leonardoのチンゴラーニ最高経営責任者が「イタリア軍がTB3、Akinci、Baykarの徘徊型弾薬や自爆型無人機を購入する可能性」に言及したことを受けて「イタリアは米国製無人機の忠実な購入者だったが、今回の合意はローマの方針転換を意味し、トランプがロシアに同調し、欧州に関税を課す中で米国製兵器への依存脱却の動きを反映したものだ。安全保障に結びつかないなら高価な米国製兵器を購入する動機は失われるだろう」と指摘したことがある。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. William Chockey

Wall Street Journalも14日「トランプ大統領はイタリアのメローニ氏を批判して(欧州における)主要同盟国との関係を断った」と報じ、これが政治的な対立で済まない場合は安全保障分野、特に米国製兵器の購入に大きな影響を及ぼす可能性が高く、イタリアまでもが米国製兵器への依存脱却を鮮明にしてくると欧州市場における米防衛産業の立場はますます苦しくなるだろう。

米国にとって忠実な同盟国であり、高価な米国製兵器を購入してくれるポーランドも表面的に政治的な対立を避けているだけで、国内世論はトランプ政権について「信頼できる同盟者でない」との意見が多数を占めており、イタリアのように政治的な衝突が起きれば米国製兵器への依存脱却に動くかもしれない。

出典:Orbán Viktor

とにかく、ホワイトハウスに復帰してから約14ヶ月間でNATO加盟国との関係をここまで破壊し、ベネズエラとイランに戦争を仕掛けて米軍の弾薬備蓄を危険なレベルまで消耗させ、ほぼ裏目にしか出ない露骨な選挙干渉も厭わず、国際的な信頼と友人を失い続けるのは一種の才能としか言いようがない。

関連記事:スペインとフランスが米軍機に対して領空を閉鎖、イタリアも国内基地への着陸を拒否
関連記事:米国とイランが2週間の暫定的な停戦とホルムズ海峡の開放で合意
関連記事:トランプ大統領、イランとの合意が成立しなければ一つの文明が滅びる

 

※アイキャッチ画像の出典:Giorgia Meloni

豪海軍が海洋自律システム部隊を創設、対潜戦対応の無人潜水艦や無人水上艇を配備前のページ

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コメント

  • コメント (17)

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    • 2026年 4月 15日

    一種の才能の塊のような人物に媚びねば生きていけない我が国の立場の無さに涙が出てくる。
    やっぱり元気だったバブルまでに色々独り立ちできる準備をしておくべきだった。

    後悔してもしょうがないが。

    14
      • 七志
      • 2026年 4月 15日

      それなりの国力がある国々が集まっていて、EUのような連合体を作れるレベルでは仲の良い国が集まっている欧州と、本邦では情勢が違うのが悲しい事態ですね。
      ちょっと遠いけども、オーストラリアとより親密になっていったり、最悪の場合はインドみたいな米露ちょうどいい具合を維持できるようになるのが良いかもしれませんね。

      こう言ってはアレですが、ウクライナ陥落が東欧のロシア直面に繋がる欧州とは本邦の立ち位置は違うでしょうし
      (とは言いつつ、ロシアによる現状変更を明確に否定しないと、中国の両シナ海進出に声を上げづらくなる問題はありますが)

      米国がある意味露骨にロシアとの関係修復を狙いそうな現状、対中という意味でロシアも敵対されると詰む本邦としては関係修復を始めるのも手ではあると思いますね。
      その効果があるかどうかはともかく……

      2
      • YF
      • 2026年 4月 15日

      日本が重要視してるのはトランプとの関係ではなくて、あくまでアメリカ合衆国との関係です。
      トランプの任期が終わった後も日米同盟、アメリカとの貿易、経済関係は続いていくわけで、そこは分けて考えないといけないのではないでしょうか。

      8
      • たむごん
      • 2026年 4月 15日

      仰る通りですが、核保有国3国が隣国という地政学的な厳しさを感じます…。

      日本1930年世界GDPに占める割合 約3%~4%
      日本1995年世界GDPに占める割合 約17%
      日本2026年世界GDPに占める割合 約3%

      バブル~平成初期、あまりにも上手くいきすぎてましたが、歴史的に本来の位置に戻った気もしています。
      日本の存在感が見る影もなくなっていく中で、このまま狡猾な外交を続けて、それなりにやって欲しいものですね…。

      1
    • 無印
    • 2026年 4月 15日

    教皇にまで矢を向けたのは、流石にアカンやろうなぁ…

    12
    • 大平洋
    • 2026年 4月 15日

    今まで「アメリカ合衆国」だから西側の盟主でいられたのであって、「トランプ国」じゃ離れていくのは当然なのよね・・・
    日本は上手く立ち回ってる方だわ、尤もトラ氏のヘイトの比重がNATOに向いてるのもあるけど

    10
    • ななし
    • 2026年 4月 15日

    会社は失敗しても債務整理して別会社立ち上げればいいけど、
    国家はそういうわけにはいかないからね。。。

    8
    • SB
    • 2026年 4月 15日

    トランプ大統領がやらかす度に一番頭を抱えてるのは多分欧州側だよね

    欧州は独自路線を取りつつ大統領選まで耐える戦法なんだろうけど、米国右派勢力は基本的に欧州から手を引きたがってるし、左派勢力もアジア太平洋地域を優先したがってる
    仮にトランプ政権が瓦解して民主党政権になって関税戦争が緩和されても、米国が欧州にペコペコ頭下げに来るのはあり得ないだろうし、結局欧州が独自で防衛をやって行くのはほぼ既定路線

    威勢よく防衛産業の拡大をしてるのはいいけど、核抑止は仏英除いて米国依存だしC4ISR-Tもそう
    何より中核国とか北欧の経済は軍拡に耐えられても南欧は無理だろ

    7
    • 田中太郎
    • 2026年 4月 15日

    はぁ〜・・・こんな時に安倍さんがいればなぁ。
    まぁ故人に泣きついても仕方ないか。

    7
      • たむごん
      • 2026年 4月 15日

      ほんと仰る通りです。

      『ホワイトハウスに安倍さんの写真飾ってた』くらいですから、今でも何とかなってた可能性ありそうですね…。

      1
    • 名無し
    • 2026年 4月 15日

    トランプに口撃されたローマ教皇をイラン大統領が庇うという皮肉

    5
      • 名無し
      • 2026年 4月 15日

      宗教方面での権威同士という意味では、むしろ連帯できるお仲間なんではないかという可能性。

    • 中村
    • 2026年 4月 15日

     トランプと言うよりトランプ政権としては確信犯な気もする。本当にNATOから手を引きたいし、本音を言えば台湾も日本も韓国も守りたくない。

     第一次政権と違う点は南北アメリカ大陸と言うか西半球って概念が出てきた事で、「カナダ国境にも壁を」とは言わなくなったし、南米の反米政権は積極的に潰す様に成った。

     イギリスに北海油田の増産を迫ってるらしいが、米国内のシェールオイル投資手控え、精油施設投資手控えの風潮も本音では忌々しいと思ってるのでは?

     って考えるとホルムズ海峡を自分達で封鎖も理屈が通る。1バレル100ドルも困るが60ドルでも困る。トランプの個人的な資質のせいにして、全部をぶちこわしたい派が居るのでは?

    3
    • ponta
    • 2026年 4月 15日

    冷戦後の拡大NATOはロシア包囲と中東への戦力投射をホンネの目的としていた。後者は存在意義を模索するなかで湾岸戦争をヒントしたのだろう。中東への戦力投射はもちろんホルムズ海峡を押さえ、石油を支配するため。しかし、イランよりホルムズ海峡の支配権か奪われた。いくらNATO経由で戦力投射しても奪い返せない。ならばNATOの意義は半分失われた。

    2
    • たむごん
    • 2026年 4月 15日

    アメリカ=西欧は、EU・ユーロが拡大し始めた時から、厳しくなる流れだったと思いますよ。

    ウクライナ戦争前を振り返れば分かりやすいのですが、『欧州は中国・ロシアに接近する流れ』もありました。
    日米=欧州が、対中国におけるスタンスが全然違うとしてG7の話しが漏れ出たり、欧州首脳の中国詣も分かりやすかったです。

    日本の安全保障環境は、西欧のように気楽な安全保障環境ではない、これが何よりも厳しいわけです。
    アメリカを『支持したっぽいのに協力していないと批判』されつつ『アメリカから原油・ナフサ・ヘリウムなどは確保』、イラン政府側とは首脳会談・外相会談をしている、こんな狡猾な外交を続けて欲しいですね…。

    3
    • リンゴ
    • 2026年 4月 15日

    最後まで読んだけどもまたまさはる(政治)の話か
    という愚痴は置いといて、別にアメリカはアメリカ以外を大して必要として無いんだろうなとは思った
    必要な土地や欲しい土地は必ず自分達の支配下におくけど、それ以外は勝手にしろよってスタンスが凄い露骨になって来た
    トランプ個人というより、もうアメリカ人そのもののスタンスとしてそこは感じる
    自力救済的なスタンスも押し付け、というよりは彼らの日常そのものなんだろうな、と

    3
      • たむごん
      • 2026年 4月 15日

      仰る通りです。
      アメリカ目線で見て、NATOの負担による経済的メリットが何か(?)この疑問かなりありまして。

      EUはユーロ作ったわけですが、ロシアとのガス取引は、ユーロ建ても選べるようにしてたんですよね。
      EU=ロシアの石油ガス取引、ウクライナ戦争前からNATOあったわけですが、英独仏の天下り含めズブズブでしたし。

      日本は、NATO非加盟ですが欧州市場に参入・嫌がらせもあるわけですが、アメリカ企業も数千億円~1兆円単位の制裁かけられてるのを見るとNATOのメリット特に見えないんですよね…。

      1

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