米空軍の運用するF-35Aのミッション達成率(Mission Capable Rate:MC率)は2019年と比較して10ポイント以上向上したと報じられている。
参考:Most USAF Fighter Mission Capable Rates Rise in Fiscal 2020, Led by F-35
参考:Early F-35As May Get Axed Even Though Overall Readiness Has Improved Significantly
これまでの経緯を考えるとにわかに信じがたいF-35AのMC率、米空軍が運用する戦闘機の中で最も準備状態が良いF-35A
米空軍の運用するF-35Aはスペアパーツの供給や保守を行うデポ施設の処理能力に問題を抱えており、ミッション達成率(Mission Capable Rate:MC率)やフルミッション達成率(Full Mission Capable Rate:FMC率)といった機体の準備状態を示す数値がF-15やF-16といった第4.5世代戦闘機よりも低く高額な運用コストと合わせて議会から問題視されている部分なのだが、昨年のMC率が2019年と比較して10ポイント以上向上したと米空軍協会が発行するAir Force Magazineが報じて注目を集めている。
補足:ミッション達成率(Mission Capable Rate)とは対応した複数の任務の内1つでも対応できる機体の準備状態を示す数値で、全ての任務に対応できる機体の準備状態を示す数値がフルミッション達成率(Full Mission Capable Rate)だ。
米空軍から提供された2020年のMC率の数値は新型コロナウイルスによる影響を受けたにも関わらず全体的に向上しており、特にF-35AのMC率は61.6%→76.07%へと大きく向上している。
2019年のMC率 | 2020年のMC率 | |
F-15C | 70.05% | 71.93% |
F-15D | 72.45% | 70.52% |
F-15E | 71.29% | 69.21% |
F-16C | 72.97% | 73.90% |
F-16D | 70.37% | 72.11% |
F-22A | 50.57% | 51.98% |
F-35A | 61.6% | 76.07% |
この数値が事実なら米空軍が運用する戦闘機の中で最も準備状態が良いのがF-35Aということになるので、これまでの経緯を考えるとにわかに信じがたい事実だ。
しかし2020年にF-35Aの準備状態が大きく改善したのはスペアパーツ供給に関する資金が追加供給されたこと、問題の少なく機体構成の新しいF-35Aの数が増加したこと、保守を行うデポ施設の数が増加したことがMC率を押し上げたとF-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)のエリック・フィック中将が下院軍事委員会に報告しており「初期ロットで製造されたF-35Aは多くの改修が必要で機体構成が最新のタイプに更新されればメンテナンスが容易になるので今後もF-35Aの稼働率は向上していくだろう」と主張している。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Mary Begy
米メディアも2020年のMC率について驚きの改善だと報じているが、高額な運用コストの問題は依然としてF-35Aの将来に暗い影を落としているので楽観視できないと慎重な姿勢を崩していない。
F-35Aの運用コスト(CPFH)に関する最新の数字は3万3,000ドル(2020年)で2019年と比較して10%削減できたとフィック中将が明かしているが目標の2万5,000ドルには程遠く、あと4年で8,000ドルの運用コスト削減が達成(ロッキード・マーティンが2025年までに達成すると主張している)できなければ、米空軍はF-16C/Dの更新をF-35Aではなく別の機体で行うと議会に提案するつもりなので2026年に報告されるCPFHがF-35Aの将来を左右すると言っても過言ではない。
余談だが全く機体の準備率が上がらず保有する約半数が作戦に使えないF-22Aを2030年から退役(NGADで更新予定)させる予定なのだが、同機は高額な運用維持コストが要求される割に50%台のMC率を彷徨いているので早く処分したいと空軍が主張するのも分かる気がする。
因みに以下の数値が2018年のMC率
保有数 | ミッション達成率 | |
B-1B | 62機 | 51.75% |
B-2A | 20機 | 60.70% |
B-52H | 75機 | 69.30% |
CV-22B | 50機 | 59.41% |
F-15C | 212機 | 71.47% |
F-15E | 218機 | 71.16% |
F-16C | 725機 | 70.03% |
F-22A | 186機 | 51.74% |
F-35A | 147機 | 49.55% |
C-5M | 50機 | 62.77% |
C-17A | 222機 | 82.57% |
C-130H | 177機 | 68.30% |
C-130J | 123機 | 76.68% |
MQ-1B | 93機 | 92.20% |
MQ-9A | 247機 | 90.24% |
RQ-4B | 34機 | 73.65% |
U-2 | 27機 | 76.90% |
T-1A | 178機 | 58.90% |
T-6A | 444機 | 66.00% |
関連記事:米空軍は次世代戦闘機の新しいプロトタイプを製造中、台湾での戦いにF-22は役に立たない
関連記事:ロッキード・マーティンに対する最後通告? 米空軍は今後5年間でF-35Aの調達数を10%削減予定
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Sam King
これは悪い話じゃないけれど、時間あたりのコストダウンは更に努力を重ねてくれよ
これからはだんだんと厳しい時代に入っていきそうなんだからね、いろんな意味で
米NGADと日F-3(仮)は双方予定通り順調に行けば同期になるのか
色々対極的な機体が出てきそうだな
日本はこう言う情報隠蔽しまくるよね
自衛隊や日本の体質って欧米より中露に近い
陸自や海自のヘリ選定や最近だとイージスアショア然り不透明なプロセスゆえに問題の原因が見えて来なくて失敗を拡大再生産してるよね
行政の透明化はお題目や美辞麗句じゃなくれっきとした「効率化」って意識が無いのはお国柄なのか国民性なのか…
こんなんでF3みたいなビックプロジェクト動かしてたらどこかで大きな失態を犯してもリカバリーできなくなるんじゃないかと心配になる
そう思うなら情報公開請求したら良いんじゃないですかね
ご存知ないのかもしれませんが、中露と違ってそういうルートも整備されてるんですよ日本って
日本の場合は情報を公開する手段が用意されてるといっても、それを一般人にヤレというのは酷だろ?
開示請求した資料の大半は黒塗りだし、国防問題を追求するメディアも少ないから一般人まで情報が回ってこないんだよね。
良くも悪くも米軍は情報がオープンで航空機が事故なんて起こせば当該基地や所属部隊のHPやSNSで直ぐに事故が起きたと発表して刻々と状況を更新し続ける、それに比べて空自なんて事故やトラブルが起きてもだんまりだし、そもそも各基地や所属部隊のHPなんて情報を発信する気があるのか怪しいレベルの作りで更新頻度も酷いもんだよ。
日本は情報を公開する手段が用意されてても、自ら率先して情報を主権者に伝えることは放棄しているといっていんじゃない?
それはマスコミの問題では?
それ資料がある場合に限った話なんだよね
そもそもそんな情報ねンだわ
一般と言うと語弊が少々あるけど、単なるマニアでそういう事をしてTwitterとかで成果を展開してたりする人はいるし、
世間一般だと﹙ニュースとかで報じられると瞬間的には憤慨するかもだけど﹚普段は気にも留めないだろうし、
現行のシステムで恒久的に不満を抱えてるのは、労力を惜しむけど日頃から自衛隊関連の情報を欲しがる、一部の人に限られるのでないかな?
世間一般の感心が高くなれば、自ずと体制も変わると思いますが。
不満なら、一々個別対応する方が面倒と先方に思わせる程、賛同者を募り要望を上げてみては如何でしょうか?
ごめんなさい。
一つ前の人に対する返信でした。
え?したことあるの?
おそらく公開されても、のり弁当の如くほぼ見られないと思うよ。
モノに由るのでは?
迫撃砲の射程、潜水艦ハッチすら隠されるのに?
隙あらば足を引っ張ろうとしている中露の手先みたいな政治家やマスコミがいるから警戒して秘密主義になっちゃうんだよな
原発もそうだけど普通どういうものかという情報を全く与えずに
たまに事故ると針小棒大に騒ぎ立てるんで結局隠すようになっちゃうんだよね
トラブルが発生しても大事故にならなきゃ検証と改善すりゃ問題ないのに
その機会すら奪ってるのが最大の問題だわ
ワクチンもまさにそれ
針小棒大にもならない、洒落にならない部分はマスコミも触れないから
それがこの国の馴れ合い体制
あいつらがマジで触れないのは身内の闇だぞ
現状は必ずしもそうではないですが、米軍の場合冷戦構造崩壊後暫くは唯一の超大国だったんで、余裕があってその名残じゃないですかね。
仮想敵に対し明らかな劣勢を忍ばざるを得なかった自衛隊は、例えば主要装備可動率など詳細に明かしたくないですよ。
優勢な相手に己を知り敵を知られたら百戦百敗です。
圧倒的な武力のあるアメリカしか無理でしょうこんなの。少ない資金で切り盛りしてる日本の防衛で同じことしたら、直ぐに弱点突かれますよ。
ドイツやフランスも公開してるよ…
ドイツやフランスって何かにつけて侵略しようとしてくる軍事大国が周りにいくつもあったりするの?
B52爺ちゃんが相変わらず元気でなにより。
F-35の整備システムは目論見通りに稼動するなら従来のそれより優れているとも解釈できますね。
まあ、それを狙ってシステム構築に頭を捻ったんでしょうから当然かもですが。
理想的稼動ができた場合MC率がどれほどになるのかは興味があるところです。
それと、運用コスト削減がLMの言う満額の何十%ほど達成できるのかは人事じゃないので注視していきたいです。
米空軍「やったか!?」
空自「勝ったな、風呂入ってくる」
フラグ建てるのはホドホドに。
ミッション達成率は今開発中の装備が一通り揃わないと永久に上がらないんだよな
F-35やF-22を絶対認めたくないマンが米にもたくさんいるんだな
日本でF-2にいちゃもんつけまくった輩と変わらんな
そりゃF-35のRCSは鳥並みだし、F-22は虫やドローンと変わらんからな
特にF-22はドローンと変わらないところがミソで、対策が非常に立てにくい。エンジンの排熱対策もやってるし。
とにかくこの2機じゃ中国が困るからな。
開示情報の数字を弄るのは役人裁量で何とでも。軍事関連なら尚のこと透明性は二の次では。前政権より軍事的威嚇を強める現政権の政策転換に呼応して、このF35の数字に関しては対外向けのブラフでしょ。今まで低く見せてたのか、今回底上げしてるのかは知りませんが。いずれにせよ優先されるのは事実より政治。