防衛省は、空母に改造した「いずも型護衛艦」で運用する短距離離陸・垂直着陸型の戦闘機として、米海兵隊向け「F-35B」を選定したことを発表した。
日本はF-35Bを1機約139億円で導入予定だが、今後は価格が下がる見込み
8月16日、防衛省は空母に改造した「いずも型護衛艦」で運用するための短距離離陸・垂直着陸型(STOVL)戦闘機として、米国政府が提案した海兵隊向け「F-35B」を採用することに決定したと発表した。
防衛省は、今回のF-35Bを採用した理由として「必要な要求事項を全て満たしている」と説明したが、現在、購入可能なSTOVLタイプの戦闘機は、F-35シリーズの「B型」しかなく、事実上、F-35B以外の選択肢がなかったというのが正しく、今回の機種選定は形式上の手続きに過ぎない。
導入機種の正式決定により今後、2020年度予算から順次、F-35B取得のための予算が計上される見込みだが、朝日新聞のによれば42機導入するF-35Bの内、2023年度までに18機分の予算を計上予定だが、残りの24機についての予算計上は「未定」だと報じている。
F-35Bの導入費用については、朝日新聞とNHK(NHK WORLD-JAPAN)のみが触れており、1機あたり約1億3,000万ドル(約139億円)と報じているが、これが純粋な機体単価なのかは不明(恐らく違う)だ。

出典:Public Domain F-35B
現在生産されているF-35B(ロット11)の機体単価は、1億1,550万ドル(約127億円)なので、日本がF-35BをFMS方式(対外有償軍事援助)で調達する場合、、FMSの契約手数料や、開発メーカーによるサポート費用、保守部品などがセットになるため、契約総額を導入機数で割った場合、純粋な機体単価よりも高くなので、約139億円と価格は妥当なラインかもしれない。
しかし、ロッキード・マーティンは6月に米国防省とロット12~14まで、478機のF-35生産に関する契約を、340億ドル(約3兆6,960億円)で結んだと発表した。
この契約によれば、ロット12~14までに生産されるF-35の機体単価は、大幅に価格が引き下げられる事になっている。
海兵隊向けSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)タイプのF-35Bは、ロット11の単価1億1,550万ドル(約127億円)から、最終的に15%のコスト削減が行われ、ロット14時には、9,760万ドル(約106億円)まで単価が下がり、ついに1億ドルの大台を切ることが予定されている。
恐らくだが、日本が導入するF-35Bの価格(約139億円)も、2023年度以降は下がっていくものと思われ、単純に計算すれば、ロット14の頃に調達されるF-35Bなら、約118億円程度ということになる。

出典:航空自衛隊 F-35A
日本が現在導入を進めているF-35Aのロット11の単価は8920万ドル(約97億円)で、日本は約116億円で導入していると防衛省が明らかにしている。
参考ページ:防衛省 中期防別表装備品の単価について
以上のことから、F-35をFMS方式で購入する日本は、1機あたり12億から20億程度が、FMSの契約手数料や、開発メーカーによるサポート費用、保守部品購入費用ということになる。
補足:FMSの契約手数料は、非常に曖昧で謎に満ちた部分で、名目上は、米国政府がメーカーに代わって保証するための手数料ということになり、これにはメーカーから兵器の引渡しを受けて、確実に作動するかチェックし、購入国に輸送し、購入国の軍隊へ引き渡すまで米国政府が責任を持つと言う意味だ。最近で言えば、日本が購入した早期警戒機E-2Dが米国から空輸されて来た際、米国の国籍マークを付けていたのは、日本に引き渡すまでは米軍機として扱っているためだ。とにかく、FMSの契約手数料の数字の根拠について明らかにされることがないため、噂によれば機体開発費の回収名目で、上乗せが入っているとも言われている。
【速報】
岩国基地
航空自衛隊向けE-2D上がりました pic.twitter.com/cpkJ0r38Pu— Yushi🇺🇸AMC🤙 (@ejdk1002) March 27, 2019
これを高いと見るか、安いと見るかは人それぞれだが、F-35の開発費を負担していない日本は、多少高額になっても致し方ないと管理人は考える。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. A. J. Van Fredenberg
高稼働率を誇る航空自衛隊であるが、F35Bは本当に稼働率を維持できるのだろうか
本国アメリカを越えるのか注視している
如何に空自の匠が優秀でも、パーツが無ければその能力を発揮する事は不可能でしょうから、パーツの供給次第ということになるのでしょうね
そもそもF-35の様な段階的アップデートが前提の機種の場合、常に1個飛行隊分は予備機を確保して迅速にアップデートを適用出来る体制を整えておくべきで、その意味ではあまり稼働率(≒作戦行動中)が高くても困ると言うか
注目すべきは機体の値段よりも、いずも・かがをF-35Bの運用艦にするに当たっての改造費だと思いますね
ソナーの関係上艦首の大幅な改修ができない(スキージャンプできない?)という話もありますし、甲板の耐熱性向上の要不要もよく分からない
いっそ、隣国よろしく強襲揚陸艦を追加で建造するという手も……まあ、予算的に無理ですよねー
いずも級の滑走距離は既にB型を運用しているアメリカ級と大差無いし、スキージャンプ無しでも運用出来ると思うけどね。そりゃまぁ、あった方が搭載量が増やせて良いだろうけど。
オスプレイがおおすみ型に着艦、離艦する際は耐熱マットを敷いていましたが、ひゅうがだとそれも無いので、甲板の耐熱性は充分なのでしょう。
しかしなぜ米国はスキージャンプを採用していないのでしょうね?
アメリカの揚陸艦のメインのお仕事は揚陸支援ですよ。ヘリを甲板に大量に並べて一気に海岸等へ展開、その為には広大な甲板が必要でスキージャンプは邪魔。
一方、イタリア等の揚陸艦は揚陸支援と同じくらいエアカバーを重視。何故ならアメリカのようなエアカバー専門艦=空母がいないですからね。だから少しでもペイロードと航続距離を稼ぐためにスキージャンプ有り。
じゃあスキージャンプ付かつカタパルト付の空母がいても良さそうなものですが、今度は艦載機のハンドリングに邪魔になります(着艦重量の問題や技術的な問題もあるのかも)。そう考えるとスキージャンプ付、カタパルト無しの空母が中途半端な存在と言うことが分かりますね。
オスプレイが摂氏190度、F-35Bが摂氏927度に耐えられる耐熱甲板が必要なので、ひゅうが型、いずも型はオスプレイはOKでもF-35BまでOKかは要確認ですね。
ワスプ級、アメリカ級強襲揚陸艦はF-35B対応で飛行甲板の耐熱コーティングを強化しています。
F-35Bを運用する英国クイーンエリザベス級空母や米国正規空母のようにジェット・ブラスト・ディフレクター(JBD)も付けるかどうかはわかりませんが、将来の空母運用検証のために地上設置のJBDは用意するかもしれません。