米空軍は12月15日、商用航空機ベースの高性能無人機「Ultra Long Endurance Aircraft Platform(Ultra LEAP)」のテストを行ったと明らかにした。
参考:AFRL completes initial Ultra LEAP flight tests
商用航空機を改造して費用対効果の高い無人偵察機を開発
高高度を長時間飛行できる無人機は、偵察衛星の代わりになりうる存在でもあり、海上や陸上を監視するためのコストを大幅に削減する可能性を秘めているため、米軍は無人偵察機の開発を積極的に行っている。
問題は軍事用規格で開発される無人機は非常に高価で、米空軍が運用している「RQ-4 グローバルホーク」は1機200億円前後のコストが必要で、とても調達性が良いと言えない。そこで米空軍は、既存の商用航空機を改造し「Ultra LEAP」と呼ばれる無人機を開発した。
この無人機は商用航空機をベースに開発され、高速のデータ通信装置や妨害対策が施されたGPSを搭載し、衛星通信を介して世界中のどこ飛行していてもコントロールが効き、離陸、飛行、着陸の全てを自律的に行うことができるよう設計されている。
しかも、この無人機は無給油で2日間以上(約60時間)の飛行したと言われており、4日間以上の飛行できる水素駆動の「Phantom Eye」や、2週間の連続飛行に成功した「Zephyr」に比べると物足りないが、グローバルホークの連続飛行時間(34.3時間)よりも長く飛行することが可能と言う点で、魅力的な機体だと言える。
Ultra LEAPに使用された商用航空機は、市販されているスポーツクラス民間機(いわゆる軽飛行機のこと)だとだけ明かされ、それ以外の詳細はセキュリティの問題で伏せられているが、搭載される電子機器の価格を考慮しても、グローバルホークなどの軍用規格で開発された無人機に比べて、コストを節約できるという話は説得力がある。
しかも、全ての飛行工程を自律的に行うため運用コストも削減が可能だと言われており、このように費用対効果の高い無人機は、コストを削減しながらも軍のニーズを満たすことができるという点で、非常に革新的だと米空軍は評価している。
ただ、今回の話をシンプルに言えば、軍用規格は通信やコントロールといった部分だけに留め、それ以外は民間機をベースに最小限の改造に留めることで、トータルコストを下げただけという、以前から提案されていたアイデアだが、頑なに軍用規格にこだわる軍において、このアイデアが採用されることは少なく、そう言った意味では非常に革新的だと言える。
では、Ultra LEAPが米空軍に採用されるのかというと、話はそこまで単純ではない。
今回は、あくまでも軍の使用に耐えうるだけの「信頼性」と「保守性」を備えながら、商用航空機を活用しコストを削減できることを「実証」したに過ぎないが、高騰する兵器の調達コストに歯止めを掛ける手段として、今後は米軍でも、必要に応じて「民間規格」を取り入れていくことになるだろう。
日本も限られた防衛予算を有効活用するため「民間規格」を活用していく方針を打ち出しているが、軍用規格と民間規格の使い分けが上手くいなかければ絵に描いた餅に過ぎない。
過度な民間規格の採用は防衛装備品の信頼性を損ない、信頼性を重視しすぎれば民間規格の排除に繋がるため、この辺のバランスが上手く調整できるのかが防衛装備品のコスト削減を実現する「鍵」となるだろう。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force courtesy graphic by Air Force Research Laboratory
ファントムアイの機関はどういうしくみなのかな、水素を燃料として燃焼させ高圧の水蒸気で作動させる蒸気機関(外燃期間)のような構造なのかな?
新薬とジェネリック医薬品の関係に凄く似ていますね。どの分野にも起きうることなのでしょう。