ウクライナ戦況

マリウポリの戦いは現在も継続中、ウクライナ軍は東部方面で反撃を宣言

マリウポリで抵抗を続けるウクライナ軍に対してロシア軍による容赦ない攻撃が続く中、ウクライナ軍のザルジュニー総司令官は5日「ハルキウ方面とイジューム方面で反撃を開始した」と発表した。

参考:ВСУ перешли в контрнаступление на Харьковском и Изюмском направлениях, – Залужный

5月9日までに何かしらの軍事的勝利を得るにはアゾフスタル製鉄所の制圧しか残されていないのだろう

ウクライナ軍が立て籠もるマリウポリのアゾフスタル製鉄所には適切な治療を受けられない負傷した500人以上の兵士と200人以上の民間人が閉じ込められており、ロシア側は何度も「攻撃を停止して民間人を脱出を認める」と発表するものの製鉄所への砲撃はノンストップで続き、アゾフスタルの従業員から聞き出した製鉄所の地下へ繋がるトンネルを通じて製鉄所敷地内への侵入にも成功、現在も非常に激しい戦いが続いている。

プーチンはウクライナ北部地域から撤退してドンバス解放に集中することで5月9日の戦勝記念日に「何かしらの軍事的勝利」を国民に提供しようと考えていたが、ドネツィク州は半分程度しか掌握できておらず、ルハーンシク州はセベロドネツクを中心する付近をウクライナ側が保持し続け、イジュームやスラビャンスクでは突出部の拡大に成功したものの前進速度は非常に遅く、ドンバス地域に布陣するウクライナ軍を包囲して殲滅する試みは遅々として進んでいない。

つまりプーチン自ら「封鎖するだけで良い」と指示したアゾフスタル製鉄所への攻撃が激しさを増しているのは「5月9日までに何かしらの軍事的勝利を得るため」であり、もはやコレ以外に身近な戦果が期待出来ないのだろう。

出典:GoogleMap 大まかなハルキウ方面の状況/管理人加工

因みにウクライナ軍のザルジュニー総司令官は5日「ハルキウ方面とイジューム方面で反撃を開始した」と発表しており、マリウポリの犠牲と引き換えにウクライナ東部で軍事的攻勢に出たと指摘されているが、具体的な攻勢内容は不明だ。

追記:ロシアは戦勝記念日にマリウポリで何らかのイベントを行うことを予定しており、現地のロシア軍は食料と引き換えに街の瓦礫や遺体を片付けることを住民に要求しているらしい。

追記:マリウポリを包囲していたロシア軍の大部分がドネツィク州の前線に移動、市内に駐留していたロシア軍もアゾフスタル製鉄所を包囲する以外の部隊が移動を開始したと報じられている。

関連記事:ハルキウで前進するウクライナ軍、スラビャンスクで前進するロシア軍
関連記事:マリウポリの製鉄所を巡る戦い、ロシア軍はトンネル経由で敷地内に侵入か

 

※アイキャッチ画像の出典:АЗОВ Маріуполь

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

訪英中の岸田首相とジョンソン首相、両国が円滑化協定に合意したと発表前のページ

英国防相、粛清を避けるためロシア軍は責任のなすり合いに必死次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ゼレンスキー大統領、ポーランドから追加の自走砲KRABを受け取った

    キーウを訪問したブラスザック国防相と会談したゼレンスキー大統領は12日…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ国防省情報総局、黒海艦隊のセルゲイ・コトフをMAGURA V5で撃沈

    ウクライナ国防省情報総局は5日「GUR特殊部隊のグループ13が黒海艦隊…

  3. ウクライナ戦況

    ロシア軍がノボミハイリフカ集落内に侵入、ヘオリフカ方向でも1.5km前進

    ドネツク西郊外方面についてウクライナ人が運営するDEEP STATE、…

  4. ウクライナ戦況

    ドンバスを巡る戦い、ウクライナ軍の増援として第128山岳強襲旅団が到着

    ウクライナ北部からのロシア軍撤退が完了、ルハーンシク州のセベロドネツク…

  5. ウクライナ戦況

    ロシア軍は反攻準備が整う前に押し切りたい、ウクライナ軍は阻止したい

    ポパスナ周辺のロシア軍は突出部を徐々に拡大してセベロドネツク包囲を完成…

  6. ウクライナ戦況

    勢いが落ちないロシア軍の攻勢、オチェレティネ方向で支配地域を大きく拡大

    DEEP STATEはアウディーイウカ方面について「ロシア軍はノヴォオ…

コメント

    • すき焼き
    • 2022年 5月 06日

    ロシアは5月9日に宣戦布告することを否定したけど、どうなんかな…どちらにせよ戦争が終結しない限り世界情勢が見通せないしウクライナには頑張ってほしいです。

    あと記事に関係ないがウクライナは半導体に使われてるネオンを多く生産しているし、もう一つの原料のパラジウムもロシア産が多い、PC機器は値上がりが止まらないので頑張ってほしいなぁ…

    12
      • WC
      • 2022年 5月 06日

      露助がホントの事言った事なんて今まであったっけ?
      これからもないと断言できる。

      31
      • makumaku
      • 2022年 5月 06日

      ロシアは戦争宣言などしないでしょう。
      軍事作戦のままなら、ロシアの都合でいつでも中止することもできますが、
      戦争になれば、勝つか負けるか、ロシアは決着をつけなければならなくなります。
      停戦するにもウクライナの同意が必要になりますし、ロシアが一方的に引き揚げれば、
      それは誰から見てもロシアの退却(負け)になるでしょう。
      ロシアの政治的リスクが膨らみます。

      4
    • クローム
    • 2022年 5月 06日

    ロシアが部分的に勝利したとしても、失った代償に対して得るものが小さすぎる。
    この戦争、総合的にはロシアの敗北が避けられない気が…

    34
      • えっくす
      • 2022年 5月 06日

      たとえウクライナを屈服させて勝ったとしても制裁はずっと継続するし欧州のロシアエネルギー依存も低減されるし中国の経済的植民地になるしか…。

      17
    • だいぶ溜まってんじゃん
    • 2022年 5月 06日

    正に「挨拶はいい、いつになったらマリウポルは落ちる!?出来ませんでは良心がない」という状態でしょうね、ええ
    現場の将校・兵士からすればたまったもんじゃないが

    ここまで散々粘ってるマリウポルがあと3日で陥ちますかね?
    万が一パレードに間に合わなかった場合「陥ちろ!、陥ちたな(大嘘)」で貫き通すんですかね?

    なんにしても今年の戦勝記念日はソビエト・ロシア以来最低の重い雰囲気に包まれるでしょうね

    プーチンの周囲の将軍の心中を考えるとアーハキソ

    31
    • 成層圏
    • 2022年 5月 06日

    >追記:マリウポリを包囲していたロシア軍の大部分がドネツィク州の前線に移動、市内に駐留していたロシア軍もアゾフスタル製鉄所を包囲する以外の部隊が移動を開始したと報じられている。

    これ、反撃のチャンスじゃない?
    ウクライナ軍の各国供給の重装備は西から東に向かうんだから、途中でマリウポリ(アゾフ製鉄所)奪還作戦できるんじゃない?

    1
      • や、やめろー
      • 2022年 5月 06日

      マリウポリのアゾフ連隊や、第36海軍歩兵旅団などがゲリラ戦を、長くするほど奪還はしやすくなる。ただまあ、ロシア軍もそれはわかっているわけで。奪還できたらここ数十年で1番でかい作戦になるでしょうね。

      6
    • 無題
    • 2022年 5月 06日

    プーチンの政治的目的のために戦略的にあまり価値のない所に特攻しないといけないってのは不毛だな

    12
      • 2022年 5月 06日

      あれ…これ80年前のどこかで見たことあるやつだな…
      スタ…スタ…スターリングr…

      19
        • や、やめろー
        • 2022年 5月 06日

        スタ…や、やめろー、シニタクナーイ、シニタクナーイ、ウワァァァーーーー!

        10
    • K(大文字)
    • 2022年 5月 06日

    >現地のロシア軍は食料と引き換えに街の瓦礫や遺体を片付けることを住民に要求しているらしい

    これってどういう事なのかな…単に食糧を報酬として片付けを依頼しているのか、はたまた食糧供給が滞っている状況で「片付けなきゃ食糧渡さないぞ」と強要しているのか。
    これまでのロシアの所業を考えると、後者の可能性が否定出来ない…まぁ現地住民としても特に亡くなった人の埋葬はやぶさかではないだろうけど、「戦勝記念イベントのため」なんてロシア側の都合は知ったこっちゃないよなぁ。

    17
      • ポン
      • 2022年 5月 06日

      その食物ですら現地から強奪してるので察するに余りあるところですねぇ…

      5
    • 折口
    • 2022年 5月 06日

    エスカレーション抑制という観点には逆光しますが、ここまで明瞭にロシアの挽回逆転勝利プランが見えてるなら逆に東部方面の小範囲でもロシア領に侵攻して「ウクライナの特別作戦が失敗して逆にロシア領が攻め込まれている」という畏怖をロシア側に与えるというのも長期的に見ればウクライナにとっては利益なのかもしれないですね。開戦当初こそ完全な侵略被害国というブランドで西側諸国の関心を引く戦略だったウクライナですが、既にウクライナ支援とロシア糾弾の流れが国際社会で定着している今、その縛りは以前ほどではないように見えます。
    今まで西側は常にプーチン政権に逃げ道を残す(彼の体面を最低限守る)ことで戦争の早期収束を狙ってきましたが、侵略戦争に打って出るまで独裁が進んだ指導者が一度や二度の停戦合意で今よりリベラルに戻ることはほぼ無いでしょう。然るに、少なくともロシアの矢面に立つウクライナにとっては、次の侵攻を防ぐためにはプーチン政権やそれを支持するロシア国民に対して何らかのトラウマを与えるより無いのでは。

    ソ連/ロシアのドクトリンでは攻勢局面でも核を使っていいことになっていたりする訳で、ましてや守勢に回ったら躊躇なく核攻撃を行う可能性もありますが、国土の広範囲が既に戦災で荒廃しているウクライナから見れば「需要可能な程度の核攻撃(全面核戦争が勃発しないラインをロシアは狙ってくるので全土を核で耕されるようなことはまずない)によって西側の参戦を誘発する」ことへのコストは相対的に低下し続けるんですよね。もちろんこれはロシアのレッドラインを越えられるだけの軍事力がウクライナの手元にあればの話ですし、兵力自体も日々目減りしているので忍耐と兵力どっちが先に尽きるかという話でもありますが。

    10
      • 四凶
      • 2022年 5月 06日

       それ出来るの西側支援のおかげでしょ?

       西側支援の勢いでにロシア領に攻めるなら自由だが、自己責任でやって欲しい。それでエスカレーションして世界に助け求めても蜂の巣つついたウクライナ見捨てても良いと思う。
       あくまで現状では西側供与の兵器を使ったロシア領攻撃はないし、ウクライナ側の攻撃と考えられる物に関しても公式で認めてはいない。あくまで被害者であり、それを覆すような行為をするなら不発弾処理のためにウクライナに行くモルドバ正規軍みたいな感じではなく直接戦闘のために西側正規軍がウクライナに行った時じゃないかな。もしくはMLRSと一緒にATACMSを供与している場合か。

       いくら国土が荒廃しようが核兵器による被害が受容可能なんて事はあり得ない。個人的には核汚染で受容出来るレベルは弾芯のDUかダーディボム位で極めて限られる被害でしかないと思う。

      2
      • くらうん
      • 2022年 5月 06日

      前に別の記事でも書きましたが、策源地をミサイルなどで攻撃する(個別的自衛権の範囲内)ことと、敵側領土を一時的にせよ占領統治することは、支払うリスクとコストが桁違いですし、そもそも攻められているとはいえ占領統治は他国民の生命と財産を自国のものにするという意味で国際法に抵触する可能性があります。たとえ「占領は一時的だ」と宣言してもそれは無意味であることは明らかですし。
      既存の国際秩序を守るという名目で支援している欧米の顔を潰すことになりかねません。

      3
    • ななし
    • 2022年 5月 06日

    「兵站がアレなので長引きます。」
    「西側諸国の支援が前提なのでクレクレ」

    1
    • ナニガシ
    • 2022年 5月 06日

    マリウポリでパレードやろうとしてる、なんて報道あったけど。
    たぶん無理だろうな。
    他の街でやって、合成画像をつくるかな?

    3
    • zerotester
    • 2022年 5月 06日

    ロシア軍は昨日も東部のあちこちで攻勢に出たのですが、何の成果もなくウクライナ軍に撃退されたようです。Lymanでは燃料気化爆弾まで使ったようですが防衛を突破できなかったと。
    少し前ならばまだ、十分な準備砲撃をしてから横と連携して前線を押し上げるという、力業ではあるが基本に忠実なことをやっていたのですが、それさえできなくなったようで。第4戦車師団と第106空挺師団が大きな損失を被ってロシア国内に撤退したとウクライナ軍は言っています。

    ウクライナ軍は以前から、まずは防御してロシアが疲弊したところで反転攻勢だと言っていましたが、そろそろロシアが攻勢限界に達したと見たのでしょうか。でもウクライナ軍も疲れていて交代が必要でしょうし、西側装備がある程度揃うのはもう少し先のはずなので本格的な攻勢は先ではないかと思えます。ただロシア軍が総崩れになるような兆候があれば、勝機と見て行くのでしょう。

    20
    • Mob
    • 2022年 5月 06日

    第一次大戦で英軍のヘイグが攻勢に失敗して大損害を被ったときに勝利宣言を出す為にパッシェンデール攻略にこだわったって話があったっけな

    6
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP