ドイツが要請した35mm弾薬のウクライナ移転をスイス政府は拒否して注目を集めたが、今度はデンマークが要請したピラーニャIIICのウクライナ移転を拒否した。
参考:Швейцария не разрешила Дании поставить Украине бронированные машины Piranha III – СМИ
非常事態時の融通性に難のあるスイス製装備は今後市場で評価を落とす可能性がある
ゲパルトが使用する35mm機関砲の弾薬はスイス国内のエリコン社(現在はラインメタル傘下)で製造されドイツへ輸出されたものなので最終使用者証明は「ドイツ」になっており、これをゲパルトと共にウクライナへ移転するためには最終使用者証明をドイツからウクライナへ変更する法的な手続きが必要なのだが、スイス当局は「戦争状態にある国へ武器・弾薬の輸出を禁止する国内法に抵触」するという理由でこれを拒否している。

出典:Hans-Hermann Bühling / CC BY-SA 3.0
デンマークがウクライナに提供を検討していた装甲兵員輸送車「ピラーニャIIIC」もスイスのモワク社(現在はGDELSの傘下)が製造したものなので、これをウクライナへ移転するためには最終使用者証明をデンマークからウクライナへ変更する必要があり、デンマークはスイスに最終使用者証明の変更を承認してくれるよう要請していたのが、35mm機関砲の弾薬と同じように要請を拒否したらしい。
戦争状態にある国へ武器・弾薬の輸出を禁止する国内法はスイスの中立に関係するものであり、これを曲げてくれと無理を言っているのはドイツやデンマークの方なのでスイスが悪い訳では無いが、非常事態時の融通性に難のあるスイス製装備は今後市場で評価を落とす可能性がある。
因みにドイツはスイスの国内法が制定される前に輸出されたものや国内法の適応外になる弾薬(スイスで製造されても最終的に海外で完成した弾薬)をかき集めて、何とか6万発の35mm弾薬を確保したらしい。
関連記事:ドイツ、7月中に15輌のゲパルトと弾薬約6万発をウクライナに引き渡す
関連記事:ドイツがウクライナに提供するゲパルト、スイスが使用弾薬の移転を拒否
※アイキャッチ画像の出典:Outisnn / CC BY-SA 3.0 スペイン軍のピラーニャIIIC
お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。 |
その一方でスイスはNATOに接近を図りたいと最近報じられていたのですが、これではNATO諸国の方から「お前はお呼びじゃない」と言われる公算が大ですね。
因みに、防衛装備移転三原則の改定を検討している我が国にとってもこの問題は他人事では無いと思います。
兵器産業は別にして、国としてスイス自体の評判は落ちないと思いますよ。
安全保障問題で国内法をどの程度遵守するのかについて、自国や同盟国、周辺国の危機であれば超法規的な対応も必要ですが、ウクライナ問題とスイスとは殆ど関係ないですからね。
寧ろこの程度で安易に国内法を無視してしまう方が、法治主義的な相互理解の対象から外れますし、主権国家らしい対応でしょう。
まぁ安全保障環境は日本と違い超イージーモードな国なので、スイスを余り日本の参考にはしない方が良いでしょう。
ロシアに対する制裁に加担した時点で中立国の仮面は剥がれ、立派なコウモリ国になったと思うけどスイス
スイスがやった経済制裁は、スイスとロシアによる、あくまでも一対一の制裁関係だから。
中立国だからといっても、他者への制裁をやってはいけないというルールはない
軍事援助は、一国で行うことは事実上不可能。輸送だけで他国の援助は絶対に受けることになる。
今回はドイツとの共同による行動になることになるのでアウト
それは無いね。あくまで国際法に沿った対応だから。スイスの中立性は崩れていない。
スイスは永世中立国、つまり国際法によって「中立の義務」が課せられている。
武器供与はその義務に違反することになる。
スイス一国の意思だけでは、中立をやめることはできない。
だから断るのは当然というか、断らないといけない。
法と秩序を重視するなら尚更。
ロシアによる侵略を認めないのも国際秩序に違反しているから、そしてそれと同じようにスイスの武器供与は国際秩序に違反する行為。
相反するものではない
>非常事態時の融通性に難のあるスイス製装備は今後市場で評価を落とす可能性がある。
これは、まだ輸出に関してヨチヨチ歩きである本邦においても、重要な問題ですね。
実際問題、ここらへんを考えているのか心配です?
アメリカも戦争してる国へは売れないので国連加盟国である以上は似たような基準を設けるとは思います。
防衛装備品及び技術の移転(共同開発を含む)に際しては、対象国との間に二国間防衛装備品・技術移転協定を締約する前提です。当該協定では漏れなく、一方が移転した防衛装備品及び技術を他方が承諾無く第三国に二次移転することを禁じる旨、条文を設けています。
しかし、スイスのように国内で生産された防衛装備品を紛争中の第三国へ二次移転することを一律に禁じる国内法があるわけではありません。
防衛装備移転三原則とその運用指針はありますが法律で規制しているわけではないのが現状です。
南スーダンでのPKO活動において、弾薬不足に陥った韓国軍派遣部隊の要請により銃弾を無償譲渡(後に不要として返還)した一件がありましたが、緊急性・人道性を理由に三原則の例外措置として国家安全保障会議において提供を決定しています。
つまり前例があるわけで、(こじつけでも)類似ケースとみなせる場合に限りですが、第三国への二次移転も承諾可能かと。事後に国会等でもめる場合があるかもですが。
「中立国は、裏から見ると立派な敵。」という事実を、西側が目にしてる感じですね。(別に中立もいいと思う)
前の大戦で、中立なはずのスイスはナチス高官の資産隠蔽、スウェーデンはナチスへの資源輸出や対ソ連への軍事輸送協力で莫大な利益をあげている。だからロシアは今もスウェーデンを中立でなく実質敵と見なしている。それぞれ連合国側にも様々な便宜を図って帳消ししたつもりらしいが、まあ中立国と呼ぶよりも偽善者という呼び名こそふさわしい振る舞いだったなと冷笑してしまう
日本の中立化を目指す自称平和勢力は、その実態が友人のいないエゴイストなんだって判っていないだろね
それで偽善者呼ばわりはおかしいでしょう。冷笑とかカッコいいと思ってるんですか?
約束ならば仕方ないかもですね。
但しつき合いにくいので、次は別の会社の弾にしましょう。
VT信管があったり、射高がより高かったりします。
昔から、歩兵に対する制圧効果も絶大だったりもします。
断られてウクライナは助かったかもしれません。
「ピラーニャ」装甲兵員輸送車をwikipediaで見たシロウトの憶測ですが、重量からすると、ロシア軍の重機関銃や対物ライフルの12.7x108mm徹甲弾だと簡単に装甲を撃ち抜かれるように推測します。
少なくとも正面以外はスポスポだと思います。兵員輸送車というより「鉄の棺桶」か「乗り合い霊柩車」とも言うべきシロモノに思えてなりません。
装甲の弱い装甲兵員輸送車より、タリバンみたいにピックアップトラック改造して重機関銃とか無反動砲とか迫撃砲積んだ方が良いと思いますね。(ただし、冬は寒くて耐えられないかもしれませんが。)
ピックアップトラック改造車の方が気合入れて周囲を注意するし、すぐに降りて散開できる利点があります。逆に装甲の弱い装甲車に載ってる兵士は外が見にくく恐怖に怯えて臆病になると思います。新兵に戦場の臨場感に慣らせるにはピックアップトラック改造戦闘車の方が良いと思いますね。
戦車に歩兵をしがみつかせれば良いんじゃね?
ロシアの国技をパクらせるのか?
突っ込むべきところが多すぎるというか、突っ込んだところで間違いを理解できないレベルの話をしてるもんだから逆になにも言えない
こんな問題小学生でも分かる!っていいながらルートの足し算をルートの中だけ足してどや顔してる小学生みたい
ピラーニャ装甲兵員輸送車は重機関銃や対物ライフルの12.7x108mm徹甲弾を跳ね返すのですか?
前方向の正面は避弾経始とやらで12.7x108mm徹甲弾を跳ね返せれても、横方向の側面は無理だと思いますけど。
前方向正面だって、道に面した5階以上から対物ライフルの12.7x108mm徹甲弾で撃たれたら避弾経始の効果は無くて撃ち抜かれると思いますけどね。
そんな釣りなんていらないから。
装甲薄いのが問題ならウクライナが持つBMP-1とかBTR-4とかだって同じ事になると思うが、ウクライナがそれらを役に立たないと放置している情報でもあるの?提示してよ。
大体ピックアップなんて小銃弾でさえ怪しいし、榴弾砲の破片どうするの?12.7mmAP耐弾じゃなければ価値無しなら世の中の装甲車はかなり価値無しになると思うけど?
戦場には迫撃砲弾や機関銃含めてあらゆる殺傷能力がある物が飛び交っているのにソフトスキンが良いとか正直、何を考えているのか分らない。
言っちゃなんだが視界が良いからと言って敵を見つけられるとは限らないし、車内に隠れているからと言って臆病になる訳でも無い。戦場での心理状態扱った本なんていくらでもあるし一度それらを読んで勉強してきた上で書いた方が良い。
被弾したBMP-1内にいたら命が無くなるからタンクデザントしているソ連兵はいたけど2次大戦で高い授業料払って、歩兵の装甲化を推し進める結果になったのに装甲化された中は嫌ってのは皮肉な話だが装甲車は犠牲の上に整備された物であってそんなに単純な話じゃ無い。
>大体ピックアップなんて小銃弾でさえ怪しいし、榴弾砲の破片どうするの?
小銃弾も防げませんけど、即応されるので意外と狙われにくいと思います。アフガンで装甲兵員輸送車のアメリカ兵がピックアップトラックのタリバンに負けたのですから。
榴弾砲攻撃については装甲車は直撃弾のみアウトでピックアップトラックは至近弾でも重傷を負うのでリスクは10倍はあるとは思いますがボディーアーマー着用で破片で死ぬ事は比較的少ないし、砲撃があれば物陰に隠れる事にすれば被害は軽減できると思います。もちろん、榴弾砲の破片はピックアップトラックの場合に脅威ですので砲撃戦で優勢なエリアのみでの活動を前提にせねばならないでしょう。
>装甲薄いのが問題ならウクライナが持つBMP-1とかBTR-4とかだって同じ事
BMP-1は前方向正面の避弾経始はピラーニャより良いと思います。BTR-4は重量がピラーニャより若干重いので若干ですが装甲も厚いでしょう。また、ウクライナでは兵員輸送車や歩兵戦闘車の上に歩兵が乗って移動してるので上に載ってる歩兵についてはピックアップトラックを改造した戦闘車でも同じでしょう。
>被弾したBMP-1内にいたら命が無くなるからタンクデザント
装甲兵員輸送車で12.7x108mm徹甲弾を一発貫通被弾すると跳弾して一発で何人も死傷するので戦車や歩兵戦闘車の上に乗る(タンクデサントする)のですよね。
でもピラーニャて上に乗りにくい(タンクデサントしにくい)形状だと思いますけどね。
APCとIFVの運用を混同しているかもしれません。
APCはあくまで輸送車です。重火器を備えた敵との交戦は想定していません。
前線まで兵員を敵の砲火から防護する事を主目的としています。
BMP-1が装甲が薄くて問題になったのは、あれがIFVだからです。
テクニカルについても、あれは装甲防護力のないIFVであり、APCと比較するのは不適当だと考えます。
APCよりIFVの方が好ましいという意見でしたら同感ですが、APCが不要ということにはならないでしょう。
>APCとIFVの運用を混同しているかもしれません。
>APCはあくまで輸送車です。重火器を備えた敵との交戦は想定していません。
>前線まで兵員を敵の砲火から防護する事を主目的としています。
言葉の定義にとらわれ過ぎです。ウクライナでの実際の戦闘ではAPCとIFVの定義の差異は無意味です。
また、特に最近はウクライナはNATOの支援により火力も互角になり砲兵レーダーも充実し、ロシア砲兵は連続砲撃できず、数発撃って移動せざるを得ず、砲撃は比較的少なく、ウクライナ人は危険と言われたT1302補給ルートですら一般の乗用車で移動しています。
リンク
また補給部隊を除けば前線・後方間の移動は1ヶ月に一回程度ですので「前線まで兵員を敵の砲火から防護」の重要性は低いのです。
今回のウクライナの戦闘は町の奪い合いで、危険なのはロシア軍の占領した町に入る時で、町の入り口に配備された重機関銃や対物ライフルで狙われます。その時、中途半端な装甲の車両は視界が狭く外を見る者が少ないので危険なのです。
>ウクライナでの実際の戦闘ではAPCとIFVの定義の差異は無意味です。
どのような戦闘であれ、装甲防護力と火力の差異が無意味ということはないのでは。
これらは想定された運用に基づき、必要と思われる能力を持たされています。
APCでの直接戦闘は大きな被害を出すことになるかと思います。
> 砲撃は比較的少なく、ウクライナ人は危険と言われたT1302補給ルートですら一般の乗用車で移動しています。
相対的に言えば重要度は確かに低いでしょうが、やはり一般車での移動はリスクを伴っているように見えます。これでは大規模な移動は難しいのでは。
> 今回のウクライナの戦闘は町の奪い合いで、危険なのはロシア軍の占領した町に入る時で、町の入り口に配備された重機関銃や対物ライフルで狙われます。その時、中途半端な装甲の車両は視界が狭く外を見る者が少ないので危険なのです。
おっしゃる通りです。おそらくデンマークのpiranha iiicには増加装甲は無く、市街戦に投入するのは厳しいと思います。
真っ当な判断であればそのまま最前線に投入される事は無いでしょう。ウクライナのAPCの損失数からみても、無謀な運用はされていないように感じます。
少なくとも、Piranhaが供与されたからといって、心配されているような損害は出さないだろうというのが私の考えです。
ウクライナに装備を供与した事でウクライナの被害が拡大するというのは、まあ無いのでは。
どうせ君が騒いだところで戦況には何ら影響がない。
だから、落ち着けって。そんな目くじら立てて怒る必要無いよ。
自衛隊が採用してるエリコンの弾薬は全部ライセンス生産してるんだっけ?
紛争当事者への最終使用者証明の変更が出来ないって事は、有事の際に米軍から補給を受けられない可能性のある弾薬があるって事になるんか?
「うちはこうします」とハッキリ言葉と態度で示しているなら、それでスイスを責めるのはお門違いだわな。制裁や武力をチラつかせて無理矢理やらせたらロシアと同じことしてることになるし。
むしろ態度が曖昧だったり、した筈の約束を守らず日和る方がダメでしょ
永世中立は言葉だけで容易く出来るものではないですからね
頑固に見えるかもしれませんが、日和見的な態度を示さない
からこそ、あの国は信念を曲げないと信頼を得られる場合も
あるのです。
スイス政府は厳然としてある国内法を尊守する姿勢を示しているだけかと。
ドイツやデンマーク政府はウクライナ提供を強行してかまわないと思いますよ。
当然スイス政府は両国に抗議しますが、国民による政府批判が沸騰でもしない限り、制裁実行を強要する国内法が無ければそこで終わり。
抗議に対しては、両国も謝罪的ニュアンスの外交辞令がせいぜいでしょう。
逆に、ロシアによる武力侵攻に対し独立と民主政治を死守しようと戦っているウクライナには、本邦同様に共感するスイス国民が多いんじゃないでしょうか。
最終的にうやむやになると思います。
大戦中のエリコン20ミリ機銃の事を思うとアレ?となる。
近年だと香港警察はHK416が欲しかったけど、H&Kの販売基準(NATO加盟国か準じる国なら販売)を満たさないからSG516やMPXを買ってる話もあるし。
厳しい中立原則がありながらスイスの軍需企業が多国籍コングロマリットの傘下になっているのが面白い。
(実際に実行するかは別として)アメリカ軍が使っているストライカー装甲車も、元になったのはピラーニャIIIだし、同じハードルにぶつかりそう。
上述のように軍事的にはピラーニャIIICに疑問はありますが、法的にはデンマークがウクライナにピラーニャIIICを供与可能かもしれないかもしれません。
法的理由は二つあります。
一つ目の法的理由は、武器の最終使用者証明は武器が悪用されないようにするためのもので、名義貸しによる迂回輸出を防止するためのシステムですが、デンマークがピラーニャIIIC購入したのはウクライナで内戦が起きた2014年より前で、その時点では金さえあればウクライナもスイスから直接購入可能だった事です。
二つ目の理由は、デンマークがスイスから購入してから20年以上経っていて法的拘束の時効が成立していると主張しうる可能性です。
ともかく、デンマークが上記の法的理由を根拠にウクライナにピラーニャIIICを供与してしまえば、スイスは違約金請求や今後の売却拒否等の強行対応までしない可能性が高いでしょう。ロシアの手前、一応は反対したし、上記のようにデンマークにも法的に供与を可とする法的根拠があるので、それ以上の強行対応を採らずともロシアに恨まれないからです。
尚、デンマークも新型のピラーニャⅤをウクライナに提供はしないでしょうが、軍事的には効果的な新型のピラーニャⅤはウクライナ内線勃発後の購入なので上記の主張は不可能です。ちなみに、新型のピラーニャⅤは重量がピラーニャIIICの二倍程度で正面だけでなく側面も14.5mm弾防御可能です。
コメントできないんですが…