ロシア軍が過去1年間に連邦領上空で撃墜した無人機は約12,000機で、10月の撃墜ペースも6日段階で500機を超えており、さらにチュメニ州当局は6日「アンチピノ地区上空で無人機を3機撃墜した」と発表し、国境から2,000km離れた地域にもウクライナ軍の無人機が姿を見せた。
参考:Минобороны России
参考:“Фламинго” уже бьют по России? Зеленский намекнул на удары украинскими ракетами
参考:Новый массированный налет
ロシアが一方的にウクライナの後方地域を攻撃できるボーナスタイムは過ぎ去ったと解釈するのが妥当だろう
ウクライナはイラン製無人機=Shahed-136が効果的だと認めると直ぐに類似品の開発を開始し、ウクロボロンプロムは2023年6月「1,000km飛行できる自爆型無人機が攻撃に使用された」と発表したが、ウクライナ軍の長距離攻撃は散発的で規模が小さく、これは関連技術や運用ノウハウの成熟、大規量産に不可欠な製造拠点の整備、構成部品を調達するためのサプライチェーン構築に時間を要したためで、さらにウクライナ企業が製造する自爆型無人機の調達費用をどこから調達するのかという問題も攻撃規模の拡大を妨げていた。

出典:Efrem Lukatsky
基本的にウクライナへの軍事支援は現物供給、つまり支援に必要な資金を出しても「最大の受益者は(支援国の)自国産業界であるべき」という考え方が一般的なため、ウクライナが自国企業から自爆型無人機を調達する資金は手持ちの資金から捻出する必要があり、この問題を解決したのがデンマークモデルと呼ばれるウクライナ企業への直接投資で「資金さえあればウクライナ産業界は自軍への武器供給を行える」と証明されたため、多くの欧州諸国がデンマークモデルに類似した支援を開始。
kyiv Independentの取材に応じたFIRE POINTのテレク氏は「我々もデンマークモデルを通じてドローン生産のための資金を受け取っている」「5月に発表されたドイツとの協定からも資金を受け取っている」「AP通信の取材に『FP-1を1日100機生産している』と話したのは同社の生産上限のことだ」「今年のドローン総生産数は約9,000機を見込んでいる」「この数字に最近公開したフラミンゴミサイルは含まれていない」と述べ、自爆型無人機の生産量と使用は徐々に拡大してきた。
| ロシア国防省が2024年10月から2025年9月までに発表した自爆型無人機(固定翼のみ)の撃墜数 | |||
| 2024年 | 10月 | 731機 | |
| 11月 | 727機 | ||
| 12月 | 670機 | ||
| 2025年 | 1月 | 814機 | |
| 2月 | 758機 | ||
| 3月 | 1,284機 | 10日夜~11日未明に337機を撃墜 | |
| 4月 | 811機 | ||
| 5月 | 858機 | ||
| 6月 | 669機 | ||
| 7月 | 1,824機 | ||
| 8月 | 1,495機 | ||
| 9月 | 1,308機 | ||
| 計11,949機 | |||
ロシア軍がクリミアを含む連邦領内で撃墜した自爆型無人機の数は2024月10月から2025年6月までの8ヶ月間(2025年3月を除く)は800機後半以下で推移し、2025年3月のみ1,284機の迎撃を、3月10日夜~11日未明に337機の迎撃を記録したが、2025年7月以降になると明確に自爆型無人機の使用量と攻撃規模が拡大し、ロシア軍が2024年10月から2025年9月の1年間で迎撃した自爆型無人機の数は11,949機となり、防空シールドをすり抜けて目標に到達した分を加味すれば12,000機以上の自爆型無人機がロシア連邦領内に向けて発射されたことになる。
さらにロシア国防省は10月1日から6日までに「連邦領内で計505機の自爆型無人機を撃墜した」と発表しているため、ウクライナ軍が現在のペースを維持できれば10月の発射数も1,500機後半、もしかすると2,000機台に突入する可能性があり、FIRE POINTがFP-1を1日100機生産しているという話は事実に近いのかもしれない。
| ロシア国防省が10月に発表したロシア連邦領内で迎撃した自爆型無人機(固定翼のみ)の数 | ||
| 月 | 日 | ロシア国防省の報告数 |
| 10月 | 30日夜~1日未明 | 20機 |
| 1日夜~2日未明 | 85機 | |
| 2日夜~3日未明 | 0機 | |
| 3日夜~4日未明 | 117機 | |
| 4日夜~5日未明 | 32機 | |
| 5日夜~6日未明 | 251機 | |
| 計505機 | ||
シルシキー総司令官は「ロシア軍が9月に発射した無人機は約6,900機だ」「内3,600機以上がShahedタイプの無人機(Geran2やGarpiya-A1)だった」と発表しているため、残りの3,000機以上は「弾頭を搭載していないGerberaを含む囮だった」という意味で、ロシア軍は依然として自爆型無人機の使用量と攻撃規模でウクライナ軍を圧倒しているものの、ウクライナの自爆型無人機の生産量と使用頻度も明確に増加し、既にロシア国内に問題を引き起こしているため、ロシアが一方的にウクライナの後方地域を攻撃できるボーナスタイムは過ぎ去ったと解釈するのが妥当だろう。
ゼレンスキー大統領も6日「重要なのは(ロシア連邦領への攻撃に)ウクライナ製兵器のみが使用されていると理解することだ」「人々はソーシャルメディアの投稿から自爆型無人機がどこで使用されたか理解できるだろう」「私は兵士だけでなく適切な措置を講じた企業にも感謝している」「私はこの能力をもっと拡大させたいと考えている」「そのために重要なのは資金を確保できるかどうかで、どこからこれを調達するかだ」「我々は有り難いことに30ヶ国と二ヶ国間協定を締結している」「この協定の多くに資金調達に関する事項が含まれている」「この分野において幾つかの欧州諸国は大きな支援を提供している」と述べている。

出典:Президент України
ゼレンスキー大統領が言及した「大きな支援を提供している欧州諸国」とはウクライナ向け長距離攻撃兵器への資金援助(総額50億ユーロ=8,700億円以上)を約束しているドイツのことを指し、ウクライナ企業への直接投資額が増加すれば「まだまだ自爆型無人機の調達量を引き上げられる」と示唆しており、デンマークモデル(類似した方式も含む)による支援にはデンマーク、ドイツ、アイスランド、スウェーデン、EUが含まれ、米国はウクライナ製ドローンを数百万機購入することでウクライナ企業に資金を供給する予定だ。
因みにウクライナは各国の支援を引き出す「最強の切り札」をもっており、これはウクライナ企業がもつ実用的なドローン技術ではなく「ドローンが撮影した数百万時間に及ぶ戦場の映像」で、この膨大な実戦映像はドローンのAIモデルをトレーニングするのに欠かすことが出来ない上、この宝の山を地球上で保有している国はウクライナとロシアしかないため、ウクライナのフェドロフ氏も「友好国との交渉でドローンが撮影した映像データの共有は切り札になる」と認めている。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Saige Steiber
恐らく中国、イラン、北朝鮮は支援の見返りとしてロシアから「ドローンが撮影した映像データ」を入手する可能性が高く、FPVドローンを自律制御するソフトウェアの優秀性は「両国のみが保有する宝の山へのアクセスできるかどうかにかかっている」と言っても過言ではないため、これに乗り遅れれば軍事用ドローンのソフトウェア開発で致命的な差を付けられるのだろう。
追記:RYBARは6日に行われたウクライナ軍の長距離攻撃について「非常に大規模なものだった」「ウクライナ軍はロシア領の奥深くにある目標に対して大規模な攻撃を継続的に行う能力を示した」「攻撃を受けた目標から判断するとロシアの燃料事情を悪化させるのに注力しているようだ」「既に問題の大きい地域(クリミア、ロストフ州、クラスノダール地方、スタヴロポリ地方、ニジニ・ノヴゴロド州、リペツク州、トゥーラ州のこと)で燃料不足を深刻化させようとしている」「発電所への攻撃は国境地域の事態悪化を狙っている」と指摘。
ロシア人ミルブロガーのДва майора(Two Majors)は「地元当局がチュメニ市アンチピノ地区上空=Ⓔで3機の無人機を撃墜したと発表した」「緊急サービスが出動したものの撃墜した無人機による爆発や火災は発生しなかった」「無人機の標的は戦略拠点のアンチピノ製油所だった可能性が高い」「ここはウクライナ国境から約2,000kmも離れている」と報告し、ここまでウクライナ軍の固定翼無人機(恐らく自爆型無人機)が到達したのは初めてのことだ。
ウクライナ軍の自爆型無人機は不明な点が多いため2,000kmも離れた地点に到達可能なのかどうかは何とも言えないが、弾頭を取り外して燃料タンクを追加したFP-1ならウクライナ国境からアンチピノ地区上空まで届かくかもしれない。
さらにTwo Majorsは「敵はロシア軍の防空システムを無力化するためクリミア方面で囮機の使用を開始した」「ウクライナはロシア軍の囮機=Gerberaの成功例を取り入れている」と報告している。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ






















日本目線で見れば、非常に大きな脅威ですね。
ウクライナ戦争特需により、北朝鮮は莫大な資金も得ましたから、極東情勢への影響が総合的にどうなるのか見守りたいと思います。
>恐らく中国、イラン、北朝鮮は支援の見返りとしてロシアから「ドローンが撮影した映像データ」を入手する可能性が高く…
追記です。
ロシア発表の自爆ドローン撃墜数、月次推移が増えているのは非常に興味深いですね。
重要インフラの防衛に、(前線から2000km以内となれば)ロシアの防空リソース非常に大きな負担になりそうですから、どういった影響がでるのか・既にでているのか気になります。
以前なら、敵の攻撃兵器の撃墜数は誇るべき内容だったのでしょうけど、今や、それだけ撃墜するのに多数の対空兵器リソースを消費せしめたという「戦果」に変化したのがなんとも。
仰る通りです。
コストパフォーマンスが合わなったり、最前線の兵器が引き抜かれれば元も子もないなと。
ゲパルトのように、自走式対空砲が有効だとしても、短射程のため大量配備する必要があるわけで。
後方インフラの守備に資源を回せば、最前線の防空コンプレックスが崩れるリスクも生まれるでしょうし…
ドローンの大量使用は、ほんと防衛が難しくなりましたよね。
<ドローンカメラの映像
これは確かに切り札でしょうね。下手したらトランプ大統領が欲しがっている鉱物資源より重要では?
追記:メキシコのカルテル構成員が光ファイバードローンを保有している画像が出ました。常にドンパチしている連中なので技術のアップデートには余念がないのでしょうね。
最近の長距離ドローンの大戦果を見てると、在りし日の2023年のウクライナ大反抗前の高揚感が蘇りますね。
例え陸戦が劣勢であっても長距離ドローン攻撃があれば勝利できるのではないかという希望を持たせてくれる。
ウクライナの男性も俺達が徴兵されて地獄の塹壕に放り込まれなくても、ドローンがあれば勝てるという希望を持てたのではないだろうか。
えーと、アナタの中では年単位で以前から同様にウクライナがボコボコにやられていた事実が無かったことになっているのですか?
日本も出資したほうがいいんじゃないの。
自爆型無人機だけで既に戦前の世界で想定されていた一国が持つ巡航ミサイルの保有量を遥かに凌駕してない…?
日本もパトリオットの一つ、せめて日本版ゲパルトなどウクライナが求めたものを提供してたら大手を振って要求できただろうに・・
民間向けの復興支援などでは評価されてるようだけど軍事的見返りという面では立場がない
用廃のVADSとか、どうしちゃったんでしょうね。
大分前に解体事業の入札公告とかされてたからもう殆ど解体済みなんじゃないですかね?
合成開口レーダー衛星の画像へのアクセスをウクライナに提供してる件では
結構な軍事的見返り期待できるのでは?「画像分析の答え合わせ」情報とか。
いけね、衛星持ってるQPS研究所はガセだって否定したんだった。
10年ほど前「巡航ミサイル2000発あれば国防は万全」(うろ覚え)といった趣旨の著書があった気がするが、今聞くと鼻で笑われそうだな…
「ドローンが撮影した映像データ」を学習したAIドローンによる自動戦争・・・まさしくSF。こんな戦争が現実的に予想されているという事のか?ついてゆけない。
ロシアの国土そのものが広いからロシア領奥深くへの攻撃は出来ないんじゃないかと思ってたが、ロシア側の撃墜情報から察するに、ウクライナは既に1500km以上離れた戦略拠点を安定して攻撃出来るという事か
ロシアは製油所をあれだけ壊されて、これからの厳冬期は本当に大丈夫なんかね…(まぁそれでもモスクワとサンクトペテルブルクには優先して供給するだろうから都市部の人間が凍える事はなさそうだが)
1500kmの進出距離とは、恐れ入りますね。
ウラジオストクから発すれば日本本土は丸っと収まり。廈門からなら沖縄本島の先、大隅半島位まで狙えると…
国土が広く戦略拠点が点在していることは昔は強みでしたけど、どこにでも安価な自爆ドローンが届く状況になると、防衛対象が散らばり過ぎていて守れないと言う弱点に変わるという典型的な例となったようですね。同じように自爆ドローンに襲われてもほぼ完封したイスラエルの国土の小ささと比べるとほんと対照的です。
ロシアの後方攻撃は都市部を狙った雑なハラスメントアタックなのにしていて、ウクライナのソレは点在する戦略拠点への攻撃ですから、今後、国全体へのダメージはロシアの方が悪化していくでしょう。前線にまで影響が出てくるのはまだ暫く先でしょうけど、前線にまで影響が出るようになればもうロシアは終わりです。
どうだろう? ロシアが終わる前にウクライナが力尽きなければ良いんだけど…
これから少子化が進むと益々国土が広いのはデメリットになるでしょうね
ロシアは今後国境警備もまともに出来なくなって勝手に入り放題とかなりそう
トランプ大統領がついにトマホークの許与を決定したようですね。
これでモスクワに電力を送る発電所などへの攻撃が現実になればロシア市民は暴動を起こすでしょう。
いよいよプーチン政権の終わりの始まりです。
その前に自動報復が発動して地球が終わりですわな。
いまだにゲーム感覚の御仁が多すぎ、危機感なさ過ぎて呆れる。
というかトマホークの発射装置はどこ置くわけ?
バイデンの時からずっと米のリップサービスなのか知らんけど進展してない模様。
不穏な含みが少し気になるが、とりあえず様子見だな
日本は法律的に軍事的な支援出来る出来ない以前にこのデータの重要性を理解してるかどうかも怪しくて困る
デジタル庁にひろゆきを迎えよう、とか言い出した件があったからもうそこら辺は期待してない
そんなにデータは貴重なんですかね?
ウクライナの地形では有効だろうけど地形が変わったら別のデータセットがいるでしょう。
結局の所、戦争で重要なのは適応力であって自分ちの地形に如何に適応するか
じゃないんですか。
「FPVドローンは自動で敵に直撃してくれる鉄の鳥ではない」という警告が
ウのオペレーターからあったと思います。
彼が言いたいのは、実戦では変化する状況に柔軟に対応する必要があり、
例えば敵が道路にネットを張ったからその下をくぐるとか、コープケージの同じ箇所に
ヒットさせ続けて穴を開けるとか、決して機械任せには出来ないことが求められる
ということでしょう。
俺達オペレーターの努力あってこそだぞ、ドローンに夢見んな、ということです。
AIが本当に人類にとってかわる今のところ想像しようがない事態が来るまでは
この警告を重く受け止めるべきだと思いますけどね。
自律式の長距離ドローンと短距離のFPVドローンを混同してるのでは
未来の戦場に2025年のドローンで挑まないためにも研究は必要だし、AIが人類にとって代わるかどうかって議論も5年前と今では全く違うわけで。なんなら、兵隊を載せてた神風なんかとっくにとって代わられてるじゃないですか。
ウクライナは市民が見つけた無人機の情報を投稿するアプリなども開発し、官民一体で無人機対策を進めてきました。
レーダーでの感知が難しい無人機を見つけるのには人の目が意外にも有効だったわけですが、市民の情報へのアクセスをなるべく遮断したいロシアでは真似するのがかなり難しそうですね。
政府側からすれば「撮るより落とせ」と言いたいのだろうがそれは贅沢過ぎるか。
ロシアもなんでもかんでも遮断してる訳じゃないからそのうちロシア側も同じことをするかもしれないね
この戦争、同じアラブ諸国でも
エジプト辺りは食糧難で「早く終わってくれ!」
と思ってそうで、
逆にUAEやサウジアラビア辺りは原油のシェア伸ばせるチャンスとか思ってそう。
にわかながら思うんだがいっそ防空兵器を前線に集中させる方が守りやすかったりするのでは?
BUKやストレラなんかは割りと前線近くに進出しているようですよ。たまに徘徊弾薬に突っ込まれて撃破される車両が報告されています