ウクライナ戦況

アウディーイウカの戦い、ロシア軍が防衛ラインを突破して市内に侵入

ウクライナ人が運営するDEEP STATE、 ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は共に「アウディーイウカの危機的状況」を訴えており、ロシア軍はウクライナ軍の防衛ラインを突破して南からアウディーイウカ市内に侵入したらしい。

参考:Погіршилася ситуація в східній частині Авдіївки на 19 січня 
参考:Критична ситуація в Авдіївці. 

DEEP STATEとブトゥソフ氏の訴えはもはや悲鳴に近く、何か良くないことが起きているのだろう

ウクライナ人が運営するDEEP STATEは19日「悪天候を利用してロシア軍がカムヤンカの南とツァルスカ・オホタを攻撃した。まだ前者の状況は制御されているものの、アウディーイウカ南郊外の状況は制御不能に陥っている。ロシア軍はツァルスカ・オホタからソボルナ通りに沿って市内に侵入した」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

この報告を噛み砕くと「カムヤンカの南西地点に前進してきたロシア軍はウクライナ軍が食い止めている」「アウディーイウカ南郊外のツァルスカ・オホタ(レストラン)に前進してきたロシア軍には守りを突破された」「ウクライナ軍はソボルナ通りに沿って市内に侵入してきた状況をコントロール出来ていない」という意味だ。

DEEP STATEは「市内に侵入したロシア軍は足場を固めようとしているため、この状況を無視したり軽視したりすることは出来ない。敵が定着する前に追い払わなければならないので今直ぐ増援が必要だ。(アウディーイウカを守る)第110機械化旅団は永遠でも鉄でもない。これ以上のことは明かせないが、今は正しい決断が下され敵を排除されることを祈るしかない」と付け加えたが、 ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏もアウディーイウカの危機的状況を訴えている。

“敵はアウディーイウカ郊外の建物に足場を築いた。ゼレンスキー大統領は現地の部隊に「持ち堪えろ」と命令するのではなく本物の援軍派遣を命じなければならない。私はアウディーイウカに追加の人員と武器を送る必要性を何度も訴えたし、多くの人々が今回のシナリオ(ツァルスカ・オホタ方向からの攻撃)について話し合っていた。アウディーイウカに存在する人員レベルでは奇跡は起こらなし、敵には防衛ラインを突破するチャンスがある”

“ゼレンスキー大統領はアウディーイウカを訪問して増援を約束したが、残念ながら必要最低限の増援させ提供されていない。今直ぐ必要なのは突破口を塞いで戦力密度を高めるための増援派遣で、これが実行されず市内に定着されるとバフムートの二の舞いだ。市街戦になれば現在の10倍に相当する人員を投入しなければならなくなり、そうなれば損失も桁違いに増えて手遅れになってしまう。この危機的状況の責任は同市を訪問して増援を約束したゼレンスキー大統領にある”

ロシア軍にツァルスカ・オホタ方向からどこまで侵入されたのかは不明だが、ロシア軍はペルヴォマイズケ方向にも前進しており、アウディーイウカに関するDEEP STATEとブトゥソフ氏の訴えはもはや悲鳴に近く、何か良くないことが起きているのだろう。

関連記事:シヴェルシク方面の戦い、ロシア軍がヴェセレを占領しウクライナ軍は後退
関連記事:アウディーイウカの戦い、ロシア軍が郊外のポンプ施設とダーチャで前進
関連記事:ウクライナ人ジャーナリスト、兵士の自己犠牲で前線が支えられている

 

※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России

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コメント

    • 愛国戦線
    • 2024年 1月 20日

    遂に来るべき時が来たか?
    ウクライナに反攻断念して降伏しろとは言わないが、東部南部に割り当てる兵力の根本的な見直しは迫られるだろうな。

    23
    •  
    • 2024年 1月 20日

    110旅団は時間稼ぎの捨て石。
    非情ではあるが合理的に考える司令官なら増援はしない。
    既に市内は補給の困難な離島のようなものだから増援送ってもガダルカナル化するだけ。

    25
      • 歴史と貧困
      • 2024年 1月 20日

      確かに。厳しい判断が求められますが、ことここに至っての増援は悪循環に嵌まるだけとなる可能性が高すぎる。

      既に市内に突入され、しかもアウディーイウカへの補給路から一番遠い南部である以上、段階的な撤兵と後退を進めるしかなさそうです。ただ、それでも後退支援のためにもどこかから一時的な予備を送る必要は生じるかと。コークス工場付近まで総崩れになるという最悪のケースは避けなければならないでしょうし。

      15
      • 名無し
      • 2024年 1月 20日

      合理性を考えるなら、110旅団のような熟練兵部隊を捨て石にする事自体間違っているのでは…
      動員された新兵が、肉体的にも精神的にも経験値的にも110旅団のベテランと同等のプロフェッショナルになれるのかというと厳しいような気が

      38
      • そもそも
      • 2024年 1月 20日

      今のウクライナにとって
      稼いだ時間で得られるもの等無い

      よって時間稼ぎとは言えず
      単なるヒトモノカネ時間の浪費

      14
      • 匿名さん
      • 2024年 1月 20日

      少し前に、増援が来ても、動員兵の新人じゃ役に立たないみたいな記事がありましたから、
      どの前線も押されている状況と合わさって、増援できる(熟練な)兵力が足りないのかな。

      6
    • とうとうでたね、、
    • 2024年 1月 20日

    結局ゼレンスキーは自撮り撮影しに行っただけでしたか。
    Xでは大統領が前線方面!!士気向上!!うおおお!!!とか言ってましたが。

    40
      • ぱんぱーす
      • 2024年 1月 20日

      ゼレンスキー大統領の本当に砲弾が飛んでくる恐れのある場所まで自ら行く勇敢さは称賛に値すると思います。
      しかし、バフムトへ慰問に訪れた時と非常に状況が良く似ています。
      あの時と同じであるならば、大統領の訪問は防衛のウ軍が相当苦しい状況である事と、撤退させる意志は無いという事の証左になりますね。
      ウクライナ兵からは死神のように見えているかもしれません。

      38
        • ak
        • 2024年 1月 20日

        「あいつがやって来ると、あいつだけを残して他は全滅する」とか、どっかの駆逐艦みたいな存在ですな。

        まあそれが双方共に現実になりそうなのが、ウクライナ側としてはまるで笑えないジョークな訳で

        23
        •  
        • 2024年 1月 20日

        今行ったら殺気立ったウクライナ兵に撃たれそうだな

        12
        • うくらいだ
        • 2024年 1月 20日

        どうせ来るなら綺麗なアイドルとか女性の方が嬉しい

        13
          • ( ゚Д゚)
          • 2024年 1月 20日

          それただの慰問ライブなんよ

          8
    •  
    • 2024年 1月 20日

    正直なところ、撤退も視野に入れるべきとは思う。ベテランを撤退させることすらできないことがウクライナにとっては何よりも痛手のはず。もちろん失うものは多いだろうが…少なくとも失敗を無かったことにしようと無理をして取り返しがつかなくなるくらいなら仕切り直す方がよほど価値がある。

    40
      • 正直不動産
      • 2024年 1月 20日

      正直戦力の逐次投入でベテランをすり潰したバフムートの二の舞になりそう。
      2年近く十分なローテーションもない110旅団は気の毒すぎ。

      39
    • Easy
    • 2024年 1月 20日

    双方とも、大型の装甲車や火砲では有意な差を作り出せず。FPVドローンと暗視装置による狙撃で互いの兵士を1人単位で削り合っている状況です。
    こうなると、結局のところ物量による力押しで勝敗の帰趨が決するという戦場となるので、現状のままではウクライナ側が不利でしょう。

    24
    • 名無し
    • 2024年 1月 20日

    撤退を認めてよいと思うがなあ

    22
    •  
    • 2024年 1月 20日

    年始の長期休暇のローテが終わって攻撃再開し始めたのかな

    21
    • 山田さん
    • 2024年 1月 20日

    西側の支援やロシアの内政状況次第で、反転できるタイミングが来るかもしれないんだし
    ここは撤退一択だと思うんだけどね。
    都市の失陥は内政的にはマイナスだろうけど、外交的にはプラスの要素もあるだろうし。

    4
      • 歴史と貧困
      • 2024年 1月 20日

      >外交的にはプラスの要素もあるだろうし
      アメリカが完全に選挙モードになってしまっているのが痛いところかと。
      経済、移民、トランプ疑惑、ガザなどが主な争点になり、ウクライナ問題はもうアメリカ国民の関心から遠く離れてしまった。

      23
    • 774
    • 2024年 1月 20日

    こんな戦況でも保持し続けている浄水施設とかいう謎のエリア

    6
      •  
      • 2024年 1月 20日

      ロシアもここは無傷で手に入れたいから攻撃しないんだよ。
      ドネツクの戦いは土地の取り合いだけでなく水の取り合いでもある。

      27
    • gepard
    • 2024年 1月 20日

    年末年始にかけてドネツク周辺の気温は-20℃になるような寒波に見舞われ、冬季訓練を受けた部隊でも攻撃作戦を実行しにくい状況が続いた。現在は-10℃から0℃の間の比較的温暖かつ路面が凍結するのに十分な気温であり、休息を済ませたロシア軍が攻勢を再開した可能性が高い。

    27
    • Artillery
    • 2024年 1月 20日

    都市に侵入されたら撤退するべきでしょうね。
    記事にある通り、市街戦に付き合うのはウクライナにとって悪手すぎます。

    ここに至ってはもはや重要度は大きくありませんが、南東の浄水施設は未だウクライナ軍のコントロール下にあるそうです。
    戦争が始まって約2年(もっと言えば約10年)耐えきった事になります。
    他のラインが突破されつつあるので放棄することになりそうですが、本当にこの浄水施設はなんなんでしょう…。

    4
    • もへもへ
    • 2024年 1月 20日

    公式発表では人命を顧みない無謀な突撃を繰り返すロシア軍を削るキルゾーンではなかったのか?
    アウディーイウカは。

    この前もブラッドレーが至近距離でT-90Mを倒したと大盛り上がりしてるんだから、撤退なんてもっての外でしょ。

    24
    • NHG
    • 2024年 1月 20日

    年100万発の砲弾だけでもはやく提供したげて・・

    6
      • 歴史と貧困
      • 2024年 1月 20日

      そう言えばEU諸国だったかがそんな約束もしてましたね。
      今となっては、前の約束物資も新しい援助もほとんど届かず、極寒の前線で備蓄が減るのを眺めるだけというのは絶望すぎる。

      11
        • 匿名
        • 2024年 1月 20日

        聞こえのいい政治的目標を立てても、EU以外での調達を認めず、防衛産業はEU外への砲弾輸出を優先、と全く噛み合っていませんからね。

        こればかりはウクライナ支援国の大衆紙に嘲笑されようが、形振り構わずアフリカ、イラン、北朝鮮等から軍需物資をかき集め、平行して増産体制を強化しているロシアよりも下手を打ったと言う他ないでしょう

        18
    • 名無し
    • 2024年 1月 20日

    陥落が現実的になって来たな
    ここを抜かれるとかなり厳しいと聞いたがどうなることやら

    12
    • らっく
    • 2024年 1月 20日

    ロシア軍は突破口を作ってもそこに戦力を集中することはせず、その両脇をさらに攻撃すると聞きました。
    あちらが与えてくれる猶予の間に賢明な決断を期待します。

    7
    • つぐみ
    • 2024年 1月 20日

    アメリカもEUも表向きは引き続きウクライナを支援するって言ってるけど、実際はそれも中身の伴わない空約束でどんどんロシアに押し込まれてる印象よね

    13
    • ななしびと
    • 2024年 1月 20日

    12月末ごろにザルジニーが「2~3か月以内に陥落する可能性がある」と言及してたけど、現実味が出てきたな

    6
    •  
    • 2024年 1月 20日

    管理人にお願いなんだが記事、コメントに時間を表示してもらえないだろうか。
    他のサイトと見比べると管理人が最新の状況を説明しているのか判断できない。

    6
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