中国関連

キネティックキルに取り組む中国、弾道ミサイルの中間段階迎撃を想定したテストに成功

中国は4日、弾道ミサイルをミッドコース・フェイズ(中間段階)で迎撃するための迎撃技術実証実験に成功したと発表した。

参考:China conducts mid-course antiballistic missile test, system ‘becomes more mature, reliable’
参考:China Claims It Has Conducted A New Midcourse Intercept Anti-Ballistic Missile Test

中国が開発に取り組むミッドコース・フェイズでの弾道ミサイル迎撃技術

中国が今回実施したのは弾道ミサイル迎撃で最も重要だと言われているミッドコース・フェイズ(中間段階)での迎撃に必要な技術要素を確立するための実証実験で、過去に4回(2010年、2013年、2014年、2018年)実施されており今回で計5回目となる。

出典:Toshi Aoki / CC BY-SA 3.0 RC-135S コブラボール

詳しい情報は一切明かされていないが中国の主要な弾道ミサイル追跡施設が山西省(太原衛星発射センター)にあるという事実、今月5日に中国北部で発射されたと推定されれる未確認のミサイル発射動画が登場、さらに米空軍の弾道ミサイル情報収集機「RC-135S コブラボール」が今週初めに黄海を飛行していたという事実を総合すると今回の実証実験は山西省の太原衛星発射センターから黄海に向かって行われた可能性が非常に高いらしい。

さらに中国が開発している迎撃技術とはキネティックキル=つまり米国の弾道弾迎撃ミサイル「SM-3」にも採用されているキネティック弾頭を開発しているという意味で、軍事評論家の宋忠平氏も「中国が開発中の弾道弾迎撃ミサイル技術は中距離弾頭ミサイル以上の目標を迎撃するためのものだ」と語っており、中国は複数回の実証実験を通じてキネティックキルに関する技術が成熟して「迎撃の成功率と信頼性が大幅に向上している」と主張している。

出典:米ミサイル防衛局 キネティック弾頭

米メディアは中国がミッドコース・フェイズでの弾道弾迎撃技術の開発に取り組んでいるのは米国やインドが保有している弾道ミサイル、日本や韓国で新たに開発される可能性が高い弾道ミサイルや弾道ミサイルベースの極超音速兵器を警戒しているからだと指摘しており、中国が多層式のミサイル防衛網を近い将来保有するだろう予測した。

果たして中国が開発している弾道弾のミッドコース・フェイズに対応した迎撃システムがいつ実用化されるのかは不明だが、すでに10年以上研究開発が行われているのでいつ実用化されても不思議ではないのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain イージス巡洋艦「レイク・エリー」から発射されるRIM-161スタンダード・ミサイル

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 2月 05日

    作れば何でも成功する中国
    失敗は無い

    6
      • 匿名
      • 2021年 2月 05日

      失敗は公表しない、成功するまでやる。
      彼の国の強みだね

      37
      • 匿名
      • 2021年 2月 05日

      それはどこの国にも言えること。
      時間と資金、あとは意思ね。

      7
    • ソソソナス
    • 2021年 2月 05日

    中国はイージスアショアの時さんざん文句を言って日本国内の工作員に計画を潰されたのだから日本は今回の実験に関して中国へ抗議をして国内外のユニクロとソフトバンクの営業を停止させてはどうだろう?

    12
      • 匿名
      • 2021年 2月 05日

      イージスアショアの地上配備失敗は、防衛省と政治家の調査・説明・不安解消能力の不足の結果によるもので
      中国工作員が考えていたのは現地施工会社なんかに入り込んで情報入手することだな。
      潰すんじゃなくていかに情報収集に利用するかが基本だから
      スパイ禁止法のない日本での地上配備がなくなった分、他国で情報収集するのが面倒になっただけと思う。

      12
      • 匿名
      • 2021年 2月 05日

      なぜユニクロ?

      5
      • 匿名
      • 2021年 2月 05日

      河野元防衛大臣は中国の工作員だった…?

      8
      • 匿名
      • 2021年 2月 06日

      イージスアショア失敗の件、あれは代替案がイージス艦2隻追加となった時点で中国にとっては最悪の結末だったんだがな(地上配備のイージスアショアでは日本本土しか防衛出来ないが、イージス艦追加となると南シナ海方面の対中国との艦隊戦闘や米空母を狙った弾道ミサイル迎撃にも使えるので、中国にとっては軍事的なマイナス面が多い)

      3
    • 匿名
    • 2021年 2月 05日

    中国が厳しいのは本土まで地理的な空間が第一列島線くらいしか無い、つまり艦隊から本土までしかミッドコースで対処できるスペースがない
    仮に米本土からicbmが来た場合、上海が目標なら海制圏が無ければターミナル段階で対処せざるを得ない

    2
    • 匿名
    • 2021年 2月 05日

    技術情報が流出してないかちょっとチェックしてみ

    4
    • 匿名
    • 2021年 2月 05日

    2014年の弾道ミサイル迎撃実験は、実はASAT(衛星攻撃)実験だったらしいから、今回もASAT(衛星攻撃)実験の可能性がありそうね。

    • 匿名
    • 2021年 2月 05日

    こうやって、各国が弾道弾迎撃が出来る様になると、
    核兵器の有効性が失われて、核廃絶に近付くのではないかな?

    1
      • 匿名
      • 2021年 2月 05日

      弾道ミサイルの更なる進化と別の運搬方を探るだけになるでしょう
      軍事バランスによる恒久平和なぞ石原莞爾の妄想です

      5
      • 匿名
      • 2021年 2月 06日

      核兵器の廃絶がされるのはもっとコストが安くて効果も高い大量破壊兵器が出来た時だけだよ

      4
        • 匿名
        • 2021年 2月 06日

        これ。これが真理。
        放射能や毒物などの残留物がない、核並みの破壊兵器が出来たらすぐに核廃絶は成る。全部「安全爆弾」に置き換えて、核兵器など埋めてしまうだろう。
        そして「安全な核」ならば、すぐに使っちゃう、かな?
        指導者たちの理性と損得勘定の確かさに期待するしかないのがもどかしい。

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