インド太平洋関連

SFかファンタジー? 韓国「F-35B搭載空母」建造計画と北極航路への「空母艦隊」派遣構想

韓国海軍が準備を進めるF-35Bを搭載した独島級揚陸艦「3番艦」建造計画が、現在どこまで進捗しているのか、今後の展望と合わせて紹介する。

空母保有の必要性に欠ける韓国がぶち上げた摩訶不思議な構想

昨年、済州島で開催された韓国海軍創設100周年を記念する国際観艦式で発表された「海軍ビジョン2045」の中で、韓国海軍も、F-35BのようなSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)機の運用が可能な多目的・多任務に対応できる次期上陸艦を確保すると宣言している。

出典:public domain F-35B

F-35Bを運用可能な艦艇を確保するためには、独島級揚陸艦の独島や馬羅島を改造する案と、F-35Bの運用に対応した艦艇を新しく建造する案の2つの選択肢があるが、韓国は後者の案を選択した。

それこそが独島級揚陸艦「3番艦」建造計画だが、全く新しい計画かと言えばそうでもない。

独島級揚陸艦「3番艦(仮称:白翎島)」建造計画とは、元々、盧武鉉政権(2003年~2008年)に計画されたもので、周辺国との紛争時、米国の支援なしで独自に行動が可能な海軍を建設することを目標に、独島級揚陸艦「3番艦」建造を決定したが、その後の李明博政権が計画を中止した。

しかし、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、この葬られた「3番艦」建造計画を墓場から再び掘り起こした。

文在寅政権の前国防部長官、宋永武(ソン・ヨンム)氏は海軍参謀総長出身で、独島級揚陸艦「3番艦」建造計画の見直しを指示し、韓国国防部傘下の防衛事業庁で先行研究が行われ、現在、韓進重工業で概念研究を行っている段階だ。

出典:public domain 独島艦に着艦している米国海軍のMH-60S

独島級揚陸艦「3番艦」は、1番艦の独島、2番艦の馬羅島とは異なり、3万トン程度の多目的輸送艦として建造され予定だ。

航空機と戦車・装甲車を格納するためのスペースが1層しかなく、あまりにも収容能力が不足している独島級揚陸艦の欠点にについても、F-35Bの搭載を前提に設計される独島級揚陸艦「3番艦」では、格納スペースを1層増やして2層式にし、飛行甲板と格納庫を繋ぐエレベーターを、既存のインボード式から最低1基は「デッキサイド式」に変更する可能性が高い。

設計変更で確保した格納スペースには、F-35Bを12機程度は格納することが出来るようになり、飛行甲板上に露天繋止して搭載するF-35Bと合わせれば、20機程度のF-35Bが搭載できるだろう。

問題は、F-35Bを搭載した独島級揚陸艦「3番艦」を何に使うのかだ。

独島級揚陸艦「3番艦」建造は、日本のいずも型護衛艦の空母化に対抗するためのは明らかだが、日本は、中国との対立が懸念されている広大な南西諸島地域にエアーカバーを提供するための航空基地が那覇基地しかなく、この地域のエアーカバーを増強する意味で、いずも型護衛艦を空母化しF-35Bの運用を行う。

出典:public domain 南西諸島

韓国に、F-35Bを搭載した独島級揚陸艦「3番艦」を投入してまで、守らなければならない領海や排他的経済水域はなく、韓国本土や済州島からのエアーカバーで十分事足りる。

一応、韓国の説明では、北朝鮮が南侵を再開した場合、休戦ラインに近い航空基地は一撃目で破壊される可能性が高く、これをカバーするための存在が、海上からF-35Bを出撃させられる独島級揚陸艦「3番艦」の存在意義だといっているが、北朝鮮の首都「平壌」まで一番離れた、慶尚南道にある泗川空軍基地からでも直線距離で400km前後しかなく非常に説得力に欠ける。

そもそも休戦ラインに近い航空基地が全滅した場合、空白になった空域を20機前後のF-35Bで提供できるエアーカバーで補う事ができるのか謎だ。

このように韓国の空母保有は有効性や必要性に欠けるため、それを補うための構想が披露された。

韓国海軍は2045年までに、海軍の作戦範囲をオホーツク海やベーリング海まで拡大し、新たな貿易ルートとして浮上する北極航路の安全を確保するとぶち上げ、そのためにオホーツク海やベーリング海へ、F-35Bを搭載した空母を中心とする韓国空母艦隊を派遣するという。

Attribution: Republic of Korea Armed Forces / CC BY-SA 2.0 世宗大王級駆逐艦

もはや小学生が書いたSFかファンタジーのような構想だ。

ロシアの内海ともいえるオホーツク海に艦隊を常時派遣するというのは、ロシアと軍事的にやり合うという事を意味する。

さらに言えば、この構想の最も大きな欠陥は、広大な北極航路の中で「オホーツク海」と「ベーリング海」しか航路の安全を確保しないという中途半端で、東シベリア海から欧州までの長い北極航路の安全についての安全を運や成り行きに任せるなら、「オホーツク海」や「ベーリング海」での安全も同じ方法でいいのではないか?

必要性から生まれる需要ではなく、無理矢理作った需要を成立させるために必要性を後付しているから、このような摩訶不思議な構想が生まれるのだろうか?

とにかく、韓国は2023年頃にF-35Bを発注し、2025年頃にはF-35Bを搭載した独島級揚陸艦「3番艦」の運用を開始することを目標に、無謀な計画が今日も着々と進行している。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

 

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 7月 13日

    その時まで韓国経済が現在のレベルを維持できるかな?
    タレス(フランス)の設計と言われる独島艦には舷側のエレベーターは無い、甲板の中央だけ。 新設計になるでしょう。
     韓国の国会予算のルールでは金額が30%以上変化する、設計変更の範囲が広いなら「3番艦」扱いにはならない、新規予算としての申請だから基礎研究、応用研究の評価から始まるから予算の上程には最低でも3年は必要。

    >新たな貿易ルートとして浮上する北極航路
    >海軍の作戦範囲をオホーツク海やベーリング海まで拡大し
    合ってるちゃあ合ってる、初段からコケてるけど。
     最初の目標はロシアの北極海沿岸での資源開発がらみで広げるってことだったはず。
    ロシア中央部の北海沿岸のヤマル半島でのLNG開発の入札(10%の供給分 3,000億円)の入札に’失敗した

    (記事抜粋)
    韓国の事業不参加を受け、ロシア側が発注する砕氷LNG運搬船の入札で韓国造船会社にマイナスの影響が出るという懸念もある。大統領直属の北方経済協力委員会の元関係者は「ノバテク側は韓国が北極LNG生産に寄与しなければ砕氷LNG船を受注するのは難しいとあらかじめ警告していた」とし「北極LNG-2事業に投資しなかったため不利益を与えようとするだろう」と述べた。
    link

    そういえば母港である済州島海軍基地って防空部隊が居ないのよね、空軍(F-15K/F-35/F-16)の基地からも遠い 割と近くにある空軍基地に配備されてるのはT-50/FA-50/F-5など

    • 匿名
    • 2019年 7月 13日

    相手に正面切って挑戦するのが彼の国のスタイル何でしょうか? 小型潜水艦なりミサイル挺なりCPの良い何かを増備するとか、電子船に特化した船を作るとか、金かけないで中国日本が嫌がるやり方はもっと色々あるでしょうに

    1
      • 匿名
      • 2019年 7月 13日

      ファンタジーやヒロイズムこそ、最上位概念なので優先順位が多少狂っていても精神科の主治医のように見守るだけしか、ありませんよ。

      間違った目標を基に邁進し続ける彼等は、所謂「最適化」を目指す人類から見ると、痛快で愉快な存在。

      2
    •  
    • 2019年 7月 13日

    3万トンで2層式? それもはや独島型と全く違う様な・・
    何を指すのかよく分からないが、同型艦は設計の30%?以上は変更してはならないという
    謎設定があったと思うが。まあそもそも政府は何も公式にアナウンスして無くて、
    メディアからしか案は出てないけど。色んな建造案がさみだれ式に出て来るから、
    まだ何も固まってないのだろう
    取り敢えず大言壮語な空母建造案を出せば、ムンムンの支持率回復の一助にはなるだろう

    • 匿名
    • 2019年 7月 13日

    半島国家は大変だな
    陸に海にと金がいくらあっても足りないわ

    • まーくん
    • 2019年 7月 13日

    こんなん我が国に対抗してるしかないやん。
    竹島巡って我が国を威嚇抑止するためやて。
    仮想敵国は中国、ロシア、北朝鮮だけでなく韓国を忘れたらアカンで。

  1. いつも思っているけどどコリアンってほんとバカ

    近代的価値観、論理的思考、目的合理的行動がなく
    儒教的価値観、結論ありき、循環論法、本質を無視して近視眼的な利益を第一にするからグタグタに

    まず国家の基本方針が間違っていて、本来は米韓同盟、日韓協力の強化が当然なのですが
    合衆国、本邦を裏切って共産主義国家にすり寄り、外交が日和見になり信頼を失い
    国防方針が矛盾しているので、防衛装備が見栄第一になっています

    独島級揚陸艦シリーズは韓国の現状を象徴していると言っていいでしょう。

    1
    • 匿名
    • 2019年 7月 13日

    軍事の面白さは、新聞等で報道される国際情勢を技術的な切り口で見ることで理解が深められる点にあると思うのですが、韓国の話に限っては常に歪んだ虚栄心と加虐心に満ちていて不愉快な気持ちにさせられますね。

    • 匿名
    • 2019年 7月 13日

    いつものポッケナイナイ案件。

    • oominoomi
    • 2019年 7月 13日

    韓国海軍の不思議なのは、運用構想に基づいて船を作るのではなくて、「こんな(海自みたいな)フネが欲しい」というのが先にあって、運用構造は後から考えてる様なとこですね。
    就役してから10年以上も搭載機が決まらなかったドクトとか「そもそも何の為に作ったの?」と首をかしげたくなります。
    F-35Bも「日本が買うならウチも買う!」というのが最大の動機としか思えません。
    いや、これが全然冗談に聞こえないんだから、本当に面白い国です。

    • 匿名
    • 2019年 7月 13日

    日本が持ってるからうちも欲しい!(ただし一隻だけ)という形だけ追随のいつものパターン
    3番艦1隻だけ持ってて訓練と修理のローテなんて考えてないのは本気で作戦運用するつもりはないから

    • 匿名
    • 2019年 7月 14日

    「お笑い韓国軍」の本質を既に見抜かれている皆様におかれましては、このまま生暖かく見守って頂き、三番艦の新たなチャレンジに「Kの法則」が発動がされるのを待ちましょう。

    (船体の設計について、既に鋭い指摘をされていると思いますが、何処で誰がこの記事やコメントを見ているか分かりませんので、失敗が発覚するまでは本質をついた指摘は暫く胸に秘めて頂くのも一つの楽しみかと存じます。)

    • 匿名
    • 2019年 7月 14日

    でっきるかな?でっきるかな?「韓国型名品フッ酸」 できるかな~
    でっきるかな?でっきるかな?「韓国型名品パワーパック」 できるかな~
    でっきるかな?でっきるかな?「韓国型名品揚陸型軽空母」 できるかな~

    でっき~まっせ~ん~ できません!!

    • 匿名
    • 2019年 7月 14日

    どうせぶち上げるなら、潜水戦闘空母とか空中亀甲船Xとか夢のある花火を上げてほしいもんだ

    • 匿名
    • 2019年 7月 14日

    皆さんすでにわかっている方々ばかりなので異論もありません
    でも、見てみたいなあ、韓国空母、どんなん造るのか?
    皆さんも見たいでしょ?

    • 匿名
    • 2019年 7月 14日

    かの国らしい・・・
    まず犯人有りきで、罪名は後で付与する(笑)

    どうせ独島と同じように自前の近接防御兵器で飛行甲板をぶち抜き、F35B壊滅がオチなんじゃ(;´Д`?

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 22日

    この記事だけではないんですが、引用元などきちんと書いて欲しいです

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