自国民や協力関係にあったアフガニスタン人を国外退避させる輸送作戦について米軍と英仏軍の間で対立が生じており、もはや抜き差しならぬところまでカーブル国際空港周辺の事態は悪化している。

参考：As US military sticks to airport, British and French forces are rescuing their citizens in Kabul

米国はカーブル空港までの安全は保証しない、これに反対する英国やフランスなどは独自に空港外へ兵士を派遣して自国民の保護を開始

国防総省は米軍の任務をカーブル国際空港の保持に限定して国外退避を求める自国民や協力関係にあったアフガニスタン人は自力で空港に辿り着くことを要求しているのだが、タリバンはカーブル国際空港にアクセスするためのルート上にゲートを設け出国に必要なパスポートや必要書類だけでなく空港内で業務を続ける各国の大使館と連絡をとるための携帯電話まで取り上げようとしており、国外退避を望む外国人もアフガニスタン人も身動きが取れなくなっているらしい。

North Gate, Kabul airport. pic.twitter.com/flgNSHE2yg

— OSINTtechnical (@Osinttechnical) August 18, 2021

※カーブル空港の北ゲート付近の様子

そのためフランスは特殊部隊をカーブル市内＝つまり空港の外に派遣して身動きが取れなくなっている自国民の救出を開始、様子を伺っていた英国もフランスのやり方を真似て部隊を空港の外に派遣して身動きが取れなくなっていた200人以上の自国民を救出することに成功したのだが、米国は空港の敷地外での軍事行動はタリバンを刺激する可能性があるため英仏の作戦に批判的で「パスポートや必要書類を携帯している外国人やアフガニスタン人の通行を妨げないよう交渉を通じてタリバン側に要請すべきだ」と主張している。

米陸軍の情報将校としてアフガニスタン従軍経験をもち協力関係にあったアフガニスタン人の国外退避支援を行う団体で働いているマット･ゼラー氏は「カブール市内や空港周辺の混沌とした状況はサイゴンより酷い状況になりつつある、フランスは自国民の安全確保のためならどんな手段（特殊部隊による救出作戦のこと）でも行うつもりで米国も同じことをやるべきだ」と言っているが、オースティン国防長官は昨夜の会見で「米軍は空港の安全確保に集中しており、もし空港の安全を失えばどのような自体になるか分かっているはずだ」と語り米国の方針に従わない英仏を牽制した。

“Help! Taliban is coming. Taliban is coming.”

Young Afghan woman outside a gate at #Kabul airport pleading for U.S. soldiers to let her, and other civilians, in. pic.twitter.com/HfhMW5DS1F

— Frud Bezhan فرود بيژن (@FrudBezhan) August 18, 2021

※カーブル空港のゲート越しにタリバンの戦闘員が迫っているので助けてくれと空港内の米軍兵士に訴えるアフガニスタン人の女性

しかしゼラー氏は19日、タリバンはゲートの管理を逆に強化して空港周辺に集まった国外脱出希望者を銃撃で追い払おうとしているため「自国民や協力関係にあったアフガニスタン人を国外退避させるという希望は急速に小さくなりつつありバイデン大統領は今直ぐ行動を起こすべきだ」と米軍を動かすことを要請している。

米国の防衛メディア「Task&Purpose」の記者はアフガニスタン人から送られてきたカーブル空港周辺の映像をネットにアップして「この状況をどうやって乗り越えればいいのか？」と言っており、我々はタリバンが外国人やアフガニスタン人の国外脱出を静観するつもりは無いのだと認識しなければならない。

An Afghan man sent me this video which he said was raked outside Kabul airport today. How are Americans and Afghans supposed to get through this? pic.twitter.com/PjRTvof5p5

— Jeff Schogol (@JeffSchogol) August 19, 2021

因みにドイツやアイルランドといった国も兵士派遣を発表しており、タリバンの妨害によって身動きが取れない自国民を空港まで誘導すると言っている。

自民党外交部会で会長を務める佐藤正久議員は外務省に日本と協力関係にあったアフガニスタン人の退避支援を急ぐよう要求、外務省は国外退避や退避先の希望を確認して日本への受け入れも視野に対応を行うと言っているが、もはや希望を確認しているような余裕は残されておらず空港まで協力関係にあったアフガニスタン人を誘導してくれる国を見つけなければ国外退避など絵に書いた餅に終わるだろう。

米国はカーブル空港の外での作戦は行わない（タリバンと対立してリスクを負うのは米国や米軍の兵士なので批判はできない）ので英国かフランスに頼むしか無いのだが、両国とも自国民の救出を優先しているので果たして日本の要請に応じてくれるだろうか？

補足：どうやら米軍は自国民や協力関係にあったアフガニスタン人を国外退避させる輸送作戦に必要な航空燃料をタリバンから購入している可能性が高く、カーブル空港外で作戦を行いタリバンの戦闘員と衝突すれば輸送作戦自体が崩壊する可能性があるため身動きが取れないのだろう。
参考：Pentagon Does Not Deny that U.S. Military Is Buying Fuel From the Taliban to Evacuate People From Afghanistan

さらに言えば外務省は現地に日本人が若干残っていると言っており、もし彼らの救出が必要になったとき誰が空港までの安全を確保してくれるのだろうか？

関連記事：自民党は協力関係にあったアフガニスタン人の国外退避を急ぐよう要求、外務省も対応に乗り出す
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※アイキャッチ画像の出典：Department of Defense カーブル空港を守る米軍兵士