軍事的報道

米空軍、攻撃機「A-10」や早期警戒機「E-3」など8機種を2023年までに廃止?

米空軍は今後5年間の予算から約300億ドル(約3兆2,000億円)を削減し、将来の新しいプログラムへ投資する予定だ。

参考:What Aircraft May Die To Fund Goldfein’s Future?

5年間で約300億ドルを削減するということは、1年あたり約60億ドル(約6,500億円)づつ削減する必要があり、これを実現させるためには旧式化した航空機を廃止するのが最も簡単な方法だが、米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は、米空軍が廃止を検討している8つの航空機を特定し警告を発している。

空中給油機 KC-10 エクステンダー

1981年に運用が開始されたKC-10は米空軍が保有する空中給油機の中で最も大型な機体で、2011年に近代化改修を施したばかりで機体寿命にも余裕があり、現在、KC-135を更新するため最新型のKC-46を調達中だが、KC-10はKC-46で更新する予定はなく、もう暫くは運用を続けると見られていた。

出典:Public Domain 空中給油機 KC-10 エクステンダー

KC-10を2022年までに全機を廃止することで、米空軍は約20億ドル(約2,170億円)を節約することが出来る。

爆撃機 B-1B ランサー

1986年に運用が開始されたB-1Bは、可変翼を採用した大型の爆撃機で核兵器や大型の巡航ミサイル運搬用として設計された航空機だが、ソ連の崩壊、冷戦終結など、当初想定された任務の必要性が低下したため、通常兵器が搭載出来るよう改造され、約20年間、本来の任務からかけ離れた長距離近接航空支援任務へ投入され、アフガニスタン、イラクで酷使を続けた結果、機体の構造的寿命の大半を使い果たしてしまった。

出典:public domain 爆撃機 B-1B ランサー

そのためB-1Bに大規模な保守プログラムを実施し、機体寿命を20年ほど延長すると言われてい。

B-1Bを2023年までに全機を廃止することで、米空軍は約48億ドル(約5,200億円)を節約することが出来る。

爆撃機 B-2 スピリット

1997年に運用を開始したB-2はステルスに有利な全翼機を採用した大型爆撃機だが、あまりに調達価格が高価で当初132機の調達を予定していたが、たった21機を製造しただけで調達が打ち切られてしまった。比較的新しいとも言えるB-2だが、特にステルス塗料の維持の手間と費用が大きな負担になっているため、現在開発されているB-21レイダーに置き換えられる(B-2だけでなくB-1Bも)運命だった。

出典:Public Domain B-2が47発のMark 82を投下しているシーン

B-2Bを2023年までに全機を廃止することで、米空軍は約29億ドル(約3,150億円)を節約することが出来る。

攻撃機 A-10 サンダーボルトII

1977年に運用が開始されたA-10は近接航空支援に特化した航空機で、任務の特性上、低高度を低速で飛行するため被弾しやすいがA-10は非常に頑丈で、エンジンや垂直尾翼を1基(枚)、主翼の一部分を失っても飛行を継続することができ、陸軍からは非常に人気機が高い機種だ。

出典:Paul Nelhams / CC BY-SA 2.0

しかし空軍上層部からは、無骨で近接航空支援にしか使用できないA-10をあまり好ましく思っておらず、これまで何度も廃止の危機にあっているが、その都度、実戦でA-10の有効性を実証してきた。

最近、A-10は主翼の交換を行い、機体寿命を2040年まで延長したばかりだ。

A-10を2023年までに全機を廃止することで、米空軍は約67億ドル(約7,100億円)を節約することが出来る。

もし実行すれば米空軍は航空戦力の弱体化が避けられない

上記以外にも戦略国際問題研究所は、米空軍が対地版早期警戒管制機E-8(約27億ドル)、情報収集機RC-135(約35億ドル)、早期警戒管制機E-3(約50億ドル)、偵察機U-2(約22億ドル)を廃止候補に挙げていると指摘し、この全てを廃止することで、米空軍は約134億ドル(1兆4,600億ドル)を節約することが出来る。

しかし、このような航空機を短期間で廃止すれば戦力の空白が生じるのは誰の目にも明らかで、特にB-1やB-2を2023年までに全機廃止すれば、2025年に初期作戦能力を獲得する予定のB-21が間に合わず、一時的とは言え米国の戦略爆撃機はB-52Hだけになってしまう。

出典:Public Domain 早期警戒管制機 E-3

米空軍は現在、F-35に搭載されたセンサーや、無人機のセンサーを統合することで擬似的な大型レーダー網を構築し、後方から航空管制を行う実験を実施しているが、まだまだ実験的なレベルを脱しておらず、とても実用的段階とは言えない。

そのため早期警戒管制機E-3を短期間で全機廃止すれば、米空軍は前線の航空管制能力を失うことなる。

米空軍のゴールドフェイン参謀総長は、将来の新しいプログラムへ優先的に資金を捻出するため、5年間で約300億ドルを削減すると言っているが、戦略国際問題研究所はB-1やB-2、E-3などのレガシーな航空機を2023年までに廃止すれば、米空軍は航空戦力の弱体化が避けられないだろうと警告している。

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    KC-46AではKC-10の搭載燃料の半分程度しか空輸できないのでKC-10の代替をするならB-777クラスの機体を空中給油機化しないと2機以上のKC-46Aで1機のKC-10の役割を行うことになり効率が悪くなります。
    A-10はアメリカ陸軍や海兵隊の支持があるのでまた不死鳥のように復活しそうですが、アフガン、イラク、シリアから撤退が本格化しアメリカ引きこもり政策が継続すればA-10が活躍する戦場がなくなるので、「F-35シリーズに25mmガンポッドでええやん」が確定するでしょうね。

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    トランプ「同盟国に金を出させたら良いじゃん!!」

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    空軍より海軍の無駄の方が…

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    記事通りであれば、数字だけでマネジメントして大失敗する例になりそうですね。

      • 匿名
      • 2019年 11月 14日

      この手の数字だけ見たマネジメントは毎年恒例ですので、実施される事は無いと思いますがね

      最近も、燃料棒交換に入るニミッツ級を交換せずに早期退役させるとか言うハナシが出ましたし
      フォード級が戦力化されていないのに、無謀が過ぎるハナシですが、まあ米軍内での空母不要論派の策謀か、財務省が数字だけを見たかのどちらかでしょうがね

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    どの機体も重要そうですね
    簡単には廃止できないと思いますが、運用も含めてどんどん刷新される世界でもあるし注目しています

      • 匿名
      • 2019年 11月 14日

      この中で、現状一番危ないのはA-10かな。イラクやシリアからは撤退したし、中国相手ではマトモな対空装備の無いゲリラ共相手とは違って危なすぎて出せないだろうし
      機体寿命を使い切って大規模改装が必要なB-1も危険かな

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    A-10神は削除されそうになると出番作るから……

      • 匿名
      • 2019年 11月 15日

      来年あたりに北朝鮮で出番出来たりしてね

        • 匿名
        • 2019年 11月 15日

        退役→砂漠で塩漬けよりは韓国、フィリピン、スリランカあたりに安価で売ってくれないかな。A-10は機体寿命つきるまで飛んでいて欲しい

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    A10だけは絶対廃止されないだろう
    なんなら陸軍か海兵隊に移管してでも使い続けると思う

    • 匿名
    • 2019年 11月 15日

    記事だけみるとせいばーいや、ランサーは代替した方が良さそう? 20年本来の任務に使ってないってどんなやねん。それとも本来の目的の為に最低限必要という判断なんやろか?。

    • 匿名
    • 2019年 11月 15日

    A-10ちゃんまた死んじゃうん?

      • 匿名
      • 2019年 11月 15日

      まだちょっとだけ続くんじゃ。

    • 匿名
    • 2019年 11月 17日

    E-3廃止はさすがにあり得ないでしょう?

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