米原潜に使用されていた高強度鋼のデータを32年間も偽造して納品し続けたと起訴されていた人物が起訴内容を認め、データを改ざんした動機について「テストの要求が馬鹿げていると感じたからだ」と証言した。
参考:Metallurgist admits faking steel-test results for Navy subs
ブラッケンが32年間に渡り海軍へ納品した高強度鋼の約半分がデータを改ざんされたものに該当する
本題に入る前に事件の内容を簡単に説明すると豪企業のブラッケンは2008年、米潜水艦向け高強度鋼の主要サプライヤーである「アメリカスト・テクノロジーズ(ワシントン州タコマ)」を買収して米国進出を果たしたのだが、同社で鋳造部門の責任者を務めていたエレイン・トーマスは1985年から退職する間際の2017年まで米海軍が要求する基準を満たしていない製品(高強度鋼のHY-80とHY-100)のデータを改ざんして納入を続けていたことが発覚。
ブラッケンの経営陣はこの事実を直ぐに海軍へ報告したのだが改ざんされた製品の範囲を誤魔化しデータ改ざんの理由についても誤解を与える内容を報告、このような対応に司法省は「ブラッケンも意図的にデータ改ざんの証拠を隠した」と判断してトーマス氏と共にブラッケンを偽証罪などの罪で起訴したが、政府の調査と品質管理の改善を行い和解金(1,090万ドル)の支払いに応じたブラッケンとの和解は成立している。
後はデータの改ざんを行ったトーマス氏の裁判を残すのみで、米海軍はデータが改ざんされた高強度鋼を使用したため潜水艦の維持やメンテンナンスコストの増加を招いたと主張(影響を受けた範囲については機密に該当するため公表されていない)していたが、同氏は起訴内容を全面的に認めたらしい。
トーマス氏によるとデータの改ざんを行った動機は「海軍が要求するテスト内容(例えば-100度の環境でテストを行うことを要求している点など)が馬鹿げていると感じたからで、このようなテストをスキップして合格の判定を与えた」と説明しており、ブラッケンが32年間に渡り海軍へ納品した高強度鋼の約半分がデータを改ざんされたものに該当する。
同氏の弁護士は「この犯罪は個人的な利益を追求することが動機でなかった点がユニークで現在彼女は自身の判断を後悔している」と述べおり、米海軍も「今回の件で原潜は構造的に如何なる損傷も発生していない」と語っているので、データ改ざんの影響は維持やメンテンナンスコストの増加だけで済んでいるのだろう。
どちらにしてもトーマス氏は最高で懲役10年と罰金100万ドルの両方が科される可能性があるのだが、同氏は司法取引に応じているため司法省は裁判所が懲役刑だけを科すことを推奨している。
因みにブラッケンは2016年に日立グループの日立建機が買収して子会社化しているため、今回のニュースを「日立建機の子会社であるブラッケンが~」と伝える米メディアもあるが、日立建機が今回のデータ改ざん事件に直接関係しているわけではない。
関連記事:米潜水艦に使用された高強度鋼データ改ざん事件、日本企業の子会社と和解
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain バージニア級攻撃型原潜「カリフォルニア」
文末の情報助かる
関係なくても買収して親会社になったせいで色々言われるのは仕方ない事なのかな。
ちなみに暴いたのは日立が親会社になってからだし。
-100度(元記事読むと華氏-100度なので摂氏-73.3度)のテストが馬鹿らしいと言ってますが、リンクの「改善された溶接性を有する潜水艦船体用鋼」(フランス海軍HLES規格の話)を読むと、-60℃でシャルピー試験(靭性)する旨記述があるので、全くもって馬鹿げた試験項目とも思えないのですが…
これってリバティ船の前例を考えても全く馬鹿らしくない内容だと思います。特に北極海の厚い氷を突き破る運用が想定される米原潜なら、低温脆性は避けて通れない問題ですから「テストが馬鹿らしい」では済まない問題です。
北極圏での運用を考慮しても海中ではそんなに低温にならないので氷を割って浮上する時の船体はそこまで低温になっておらず、しぱらく浮上し続けて艦が冷えたとしても潜水艦は浮上状態で氷を割りながら航行し続けることを想定しているわけではないので実戦とはかけ離れた過剰要求だと思われます
もし仮に交戦により北極圏で浮上せざるを得ず、潜水航行できなくなった場合は的になって沈められるだけですし、万が一相打ちで敵艦を沈め生き残ることができたとしてもそれほどのダメージを負っている状態では氷を割りながら航行できるとは思えませんし
強度的耐用年数を設定する人工構造物は運用負荷による経年の強度低下を見込んで設計するものです。
建造時に-73.3℃での強度試験を要求するということは、耐用末期には低温耐性が相応に低下することを見込んで安全率を設定しているわけです。
安全率の取り方にもよりますが一概に過剰要求とは言えないと思いますよ。
低温環境試験と経年劣化試験は全くの別物では?
>低温環境試験と経年劣化試験は全くの別物では?
ええ、別物です。経年劣化試験は通常それ専用の設備を設けて試験環境の負荷をかけて文字通り「経年劣化」させます。つまり『製品自体の安全性』というより『製品規格の信頼性』を検証する試験であり、実際に納品する製品に実施する事が不可能な試験です。
今回言われている低温環境試験は設計・生産当時の『製品規格の信頼性』を考慮して内容が決定されるので、無関係というわけにはいきません。
華氏-100度の試験がバカげてるかどうかは意見の分かれる所かもしらんし個人的にはどちらかと言えばバカげてる様な気がするけど、
バカげてると思うならテスト項目を見直させるべきで、担当者が勝手に無視していいもんじゃないだろ、という当たり前の感想にしかならん…
プロが定めた基準に素人の妄想で対抗しようとするのってすげえな。無知の知って言葉を教えてあげたい
軍は兵器運用のプロではあっても材料工学やソフトウェアといった建造関係のプロではないでしょ
軍がそれらのプロで要求スペックは理にかなったものばかりというのなら、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦みたいな失敗作は生まれてないよ
何十年かかかる経年劣化を僅かな期間で検証しようとする為には加速劣化試験を行います。
これは現実の環境で受けるストレスよりも、ずっと過酷な条件下に置き、意図的に劣化を
進めて製品寿命を検証する試験です。
ですから、現実の環境と同じ条件でやっては意味が無いのです。
こんな事は基礎中の基礎な筈ですが、それに対する被告の弁明を聞いてみたいものです。
出荷試験と開発検証時の加速試験を同一視する方がおかしいと思うぞ。
劣化させた鋼材を納入などしないわ。
全数検査だったらね
ロット内での抜き取り検査だったら、試験サンプルは廃棄で納品なんてしないでしょ
そのへんはテストの項目しだいじゃないかな
今回の話だと-60℃での常用テストのほかに-73.3度環境下での負荷テストがあっての「んなもん過剰品質だろ、馬鹿げてる」なのか、甘々な自社基準低温テストのみですましたかで事態の深刻さはかなり変わりそう
米海軍の仕様的に低温での特性要求はわかりますが、それを全数検査するかどうか?となると意味が異なります。
例えば、「この高強度鋼が溶ける温度を全数検査しろ」と言われれば、
成分が正常なら溶ける温度は同じなので全数検査なんて馬鹿げているとなります。
検査担当の人は、常温での検査結果が正常であれば、低温での検査のみ異常になるはずがないという意味で「低温試験をするのは馬鹿げている」という考えをしたのではないかと。そもそも、低温のみ脆性があるなら材料の選定が間違ってます。
まぁ決められた検査をやらなかったのは問題ですが・・・こういう時こそ報連相デスネ
>-100度の環境でテスト
個人的に潜水艦用原原材料に求める性能じゃないから馬鹿らしく思えてテストスキップする気持ちはわからなくもない
というかそんな低温で強度低下しない物質なんてほぼ皆無だろうに
北極でも最低気温は-70度程度ですから、-100度までは不要でしょうね
海水中ですと、塩水故に氷点下を下回る事が有るとはいえ、それでも-100度なんてことは尚更有り得ませんし
記事ソースを読むと華氏マイナス100度(摂氏マイナス73.3度)を想定した試験なので、どの程度改竄したかにもよりますが、北極の最低気温に耐えれない可能性も出てきそうですね。
塩水ってもせいぜい-2℃かそこらですしね。
海の中なんだからねぇ
確かに馬鹿げてるわな
強度より熱膨張関連のテストじゃないか。
-60℃ぐらいの環境は普通にあるわけで、安全マージン得る為に-100℃が耐久試験項目にあるのはストレステストとして当然だと思うぞ。
元記事や他のコメントにもあるように、-100度は華氏での値、-100°F ﹙-73.3℃﹚です。
その-60℃の環境を考慮してなら、約-73℃のストレステストはアリな感じですね。
いまいち良くわからんが、極地での潜航に必要なテストなんだろうか
北極海で氷を割って浮上した潜水艦っていうのをtubeで見たけど、
米露どちらも穏やか気象条件なんですよね
極悪条件で寒風吹き付けられるなかでは艦体表面は何℃くらいになるのでしょうかね
氷に塩を混ぜるとよくひえ~る(-20℃程度前後)でも驚異的なんですがw
水中なら温度は必ずプラスだし極地で浮上したとして外気は最低でもマイナス60度程、マイナス100度なんて場所は地球上に存在しない・・・けどこの手の物はオーバースペックを要求されるだろうからこんなもんなのかもとも思う。
うん、安全率、安全係数ってのがあるからね
塩水だからマイナスにもなるよ。
海水だと-2℃かそこらみたいだから話の大筋は変わらないけどね。
>ブラッケンの経営陣はこの事実を直ぐに海軍へ報告したのだが改ざんされた製品の範囲を誤魔化しデータ改ざんの理由についても誤解を与える内容を報告
事実を把握して直ちに報告したのはいいのに、なんでそこで妙なことをするかな。
中途半端な対応だなぁ…
テスト内容考える方も大変なんだろうな
事故ってから「想定外でした」なんて目も当てられんしなぁ
日本も気をつけなきゃな
気を抜けば何処でも起きる事だ
ただ日本の機関銃の様にクリティカルに問題のある偽装じゃなくて良かったよ
装輪装甲車 (改)もこれだったりするのかな
装輪車なのに過度に防護力求められて小松がさじを投げたとか
某竹○さんの書いた記事によると、表向き言われている防弾板の防御性能不足以外に、不整地踏破性能の不足も理由にあったみたいですよ。
要求された車内スペースの確保という条件を満たしつつ、限られた予算と道路交通法の車幅制限をクリアするため、舗装路での運用が基本のNBC偵察車をベースとした車高の高い車両となったことで不整地踏破性能の不足を招いた、と書かれています。
要は潤沢な予算と法改正が必要だ、ということです。
装輪でも先進国の常識的なレベルなら全周STANAG 4569 防弾レベル4はある。全周防弾レベル5とかの無茶振りならコマツは投げても仕方ないと思うが流石にあり得ない。
実戦経験のフィードバック無し、低予算や道交法制限とか国内での試験のやりにくさを考えたら、正直コマツは可哀想だとは思うけどな。
いや直接その低温環境に晒される、という話よりシャルピー衝撃試験の遷移温度曲線をどこまで低温側に伸ばすかって話では。
リンク
-100℉(-73℃)なら低温試験としては普通。ただそれらしいデータを外挿されても分からないな。
> -100℉(-73℃)なら低温試験としては普通。
リンク先見ても-50℃までしか試験してなくて
-50〜60℃はまさしくそれらしい線を引いてあるだけだよな?
しかも-70℃〜では試験方法からして変わる、ってのも載ってますよね?
この資料を提示しつつ-73℃での試験を普通と評する根拠がお聞きしたい。
>0℃~-70℃ アルコールとドライアイス
>-70℃~-155℃ イソペンタンと液体窒素
この手の段階的に試験方法が変わるケースでは、
試験方法が変われば試験コストは跳ね上がるし
範囲内でも下限付近ではコストが跳ね上がる事が多い。
例えばドライアイスの昇華温度(-78℃)を見ても
エタノール水溶液の凝固温度(80%で-67℃)を見ても
-60℃と-70℃では試験コストが段違いなのは確実だし
-73℃の試験はドライアイスでは不可能か
更にコストが跳ね上がるのは間違い無いだろう。
とはいえ勝手にテストを端折る理由にはならないけどね。
まあ、そりゃコストは上がるよね。でも別に液体窒素で冷却可能だし、-73℃なら実験が困難な温度ではないね
下でCTODの話が出てるけど、どんな試験でもばらつきを考慮して遷移曲線をプロットするには脆性破壊する温度での実験も必要。
鋼材が高靭性で例えば遷移温度が-60℃なら、-100℃だってシャルピー試験はする。
リンク
本当に「困難」なのは液体窒素温度以下からだね。
俺「困難」なんて一言も言ってないよ?
話ねじ曲げないでもらえるかな。
ねじ曲げて無い。少なくとも現代の高靭性の鋼材を評価するなら、液体窒素冷却が必要な温度の試験も「普通」って言っているだけ。
ねじ曲がってるんだよ。
俺はコストが跳ね上がる、としか言ってない。困難とも特殊とも言ってないんだわ。
簡単だろうが普通だろうが、例えばただの目視検査でも、必要性とコストを天秤に掛けて無駄だと思えば(もちろん必要なら顧客の了承を得て)削るのが製造の現場だよ。
今回の問題はその顧客の了承を得てない事に尽きる。
神戸製鋼の時は日本企業独特の隠す文化がーとか言われてたよなw
どこでも同じやん
事件の性質というか経緯が違うよ
クリーンディーゼルに比べりゃ屁みたいなもんやろ
下でCTODの話も出ているけれど、延性破壊と脆性破壊の遷移温度を見る場合、確実に脆性破壊するであろう温度のデータもプロットする。
-73℃だとドライアイスでは(不可能ではないが)難しいので、液体窒素+イソペンタンだと確かにコストはかかる。
ただまあ、最近の高靭性の鋼材だと破壊遷移温度がドライアイス温度より下だったりするからねえ。-100℃でシャルピー試験やっているグラフも普通にあるよ。
はいはい
また、中国の陰謀ねw
-73.3℃そんな温度とかあり得ないから不要だとか素人の意見なんてどうでも良い話。納品先がそれを求めて契約が成されているなら提供メーカーとして粛々とやれば良くて、試験費用が掛かるならばそれを請求するなり、必要性の有無を相談すれば済む話。
すっ飛ばした試験はCTOD(Crack Tip Opening Displacement)だろうと思う。別に-73.3℃でも問題ない事を証明しろではなくて、その温度ではどうなるかを知りたかっただけの話しではないか。-73.3℃で試験した時にはHY-80とHY-100共に脆性破壊されました。-50℃ならば延性破壊で-55℃なら脆性破壊となり、-50℃までなら問題なく性能発揮しますよ位の話しなのではないか。
後、潜水艦みたいな水圧の影響を受ける艦は当然経年劣化で安全深度減っていく訳だから、そこらも含めての試験でしょ。この艦は脆性が起きるレベルの寒冷地で長く艦体を海上に晒していたから安全深度がこれくらいで寿命がこれくらいとか計算しているだろうし。
恐らくですが、米海軍は所定の品質保証を義務付けることで省略している「潜水艦の維持やメンテンナンスコスト」があるんでしょうね。
その品質保証に不正があったから余分に「維持やメンテコスト」が発生したと。
32年間分の和解金が約12億円てことだから検査確認の費用なんでしょうか。
>海軍が要求するテスト内容(例えば-100度の環境でテストを行うことを要求している点など)
温度表記について、米国は華氏、日本は摂氏と単位が異なります。
コメントを見ても、-100°F﹙-73.3℃﹚を-100℃と誤認する人がいるので、
「例えば-100度」→「例えば華氏-100度」
といった感じで、どちらの温度表記なのかも明記して欲しい。