米政府高官は9日の記者会見で「クリミア大橋への攻撃にHIMARSを使用することは可能で、ウクライナ人が自国の主権が及ぶ範囲でロシア軍と戦うことに何の制約もない」と明かした。
参考:U.S. Says Russia’s Prized Kerch Bridge Is A Fair Target For Ukrainian Forces
ウクライナがクリミア大橋破壊のためスタンド・オフ・ミサイルを撃ち込んでも米国は反対しない、ただクリミア大橋に届く武器を持っていないだけ
ウクライナ南部のヘルソン州やザポリージャ州に展開するロシア軍の兵站を支えているのはクリミア大橋経由の鉄道輸送で、ウクライナ側は再三「この橋の運命は決まっており必ず破壊する」と主張しているが、プーチン大統領は「ロシア領クリミアに対する攻撃は我々の主権を侵害するため容認できない」と述べて本格的な戦争移行への引き金になると脅している。

出典:Rosavtodor.ru / CC BY 4.0
ただウクライナはロシアが一方的に併合したクリミアに対する主権を放棄しておらず、米政府高官も9日の記者会見で「HIMARSを使用して特定のターゲットを攻撃するのに何らかの制約があるのか?」という記者の質問に「ウクライナ国内に存在するロシア軍の兵站拠点は絶対に公平な標的だ」と回答、さらに「クリミア大橋を破壊するためHIMARS使用は可能なのか?」という質問にも「私が知る限り、ウクライナ人が自国の主権が及ぶ範囲でロシア軍と戦うことに何の制約もない」と述べため注目を集めている。
この高官の発言に基づき米ディフェンスメディアは「主権が及ぶ範囲でのHIMARS使用はウクライナ人の裁量に任されており、ウクライナがクリミア大橋破壊のためスタンド・オフ・ミサイルを撃ち込んでも米国は反対しない。ただウクライナはクリミア大橋に届く武器を持っていないだけ」と報じているのが興味深い。

出典:GoogleMap
仮にウクライナがザポリージャ州のロシア軍を追い払ってアゾフ海沿岸に到達してもクリミア大橋まで150kmも離れているため、ウクライナに供給されているHIMARSの弾薬やハープーンでは届かず、仮に届いたとしても構造上最も脆弱部分を高精度で狙うか、大量の火力を投射しない限りクリミア大橋にダメージを与えるのは難しいと指摘しており、アゾフ海沿岸からクリミア大橋に届く可能性があるのはトーチカUだけだが、現状の戦線を押し上げない限り実行不可能だ。
あと可能性があるとすればS-400が配備されているクリミア空域での航空作戦だが、非常にリスクが高いので「ウクライナ人が自国の主権が及ぶ範囲でロシア軍と戦うことに何の制約もない」と言及するならHIMARSで使用できる地対地ミサイル「MGM-140 ATACMS(射程300km)」を提供すべきだろう。

出典:U.S. Army Acquisition Support Center HIMARSから発射されたATACMS
因みに米上院では民主党が「ロシア本土への攻撃に使用しないことを条件にATACMSの提供を行うべきだ」と主張しているため、今回の政府高官の発言と合わせて米ディフェンスメディアは「クリミア大橋破壊という選択肢が完全に排除されている訳ではないことを確認するものだ」と述べており、米国がATACMSの提供に踏み切るタイミングが反攻開始の合図なのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Photo by John Hamilton M270から発射されたATACMS
ウクライナがこういう何かを自主開発って可能性はあるんでしょうか?工場破壊されてるかな…
ウクライナ版イスカンデルとか作ってましたよね。
兵站を叩かないといつまでも補充が来てしまうから、橋を破壊したいウクライナの意図はわかります。
でも橋を落としても、海上輸送はまだできると思うので、なんならかの形で黒海の制海権を崩さないと根本的に封殺できないと思います。
黒海の制海権をロシア海軍の黒海艦隊が完全に掌握している以上、クリミア大橋などを破壊したところで、せいぜいクリミアの一般市民に日常生活が不便になるくらいで、軍事的には全く無意味でしょう。
瀬戸大橋が通行止めになったからと言って、四国の人の生活がすぐに危機的状態になるわけでもない。
別に今のクリミア半島が戦闘の最前線になっているわけでもなく、マリウポリがすでに制圧されている現状では、ヘルソン州やザポロジェ州への輸送は、アゾフ海の北岸の道路や鉄道を通って行えばいいし、船や輸送機を使ってもいい。いくらでも迂回路や、代替輸送の手段はある。
ウクライナ軍が包囲されていたセヴェロドネツクのドネツ川に架かる橋が爆破されるのとは意味が違う。
そもそもアメリカ民主党の議員も、ウクライナ政府も、現状とは合わないまったくどうでもいい的外れの議論をしているようにしか思えない。
やっぱりある程度自前の矛を持っておくべきなんだよな
こういうことを公表して、クリミア大橋周辺の防空能力を上げられると困るね。
あるいは他を手薄にする意図か?
アメリカは「出来ないことが分かってるから」言ってるんですよ。
ATACMSの供与を仄めかしてロシア軍の継戦意思を削ぎたいのではないだろうか。おそらくウクライナが不利になるごとに武器支援のギアを上げていく約束となっているはず(セベロドネツク方面失陥後に本格稼働したHIMARSのように)。ロシア軍がこれ以上の損害を覚悟してウクライナ奥地に入り込むか、それとも攻勢を断念するか見守らなくては。
PRSMを開発中だが、ATACMSってまだ在庫あんだな
少し意外だ
このはし
ねらうべからず
じゃあド真ん中に当てればよい。
さあプーチン和尚、このわたしがネオナチを退治してやるから屏風から出してください!
プーチンは好き勝手にネオナチ認定するのでノーダメージ
届くだけならば、ウクライナ軍はSRBMを持っているはずです。
命中させる為には、精密な終末誘導が必要なのでしょうか。
GPS誘導では外す可能性があるのかな。
となると、終末誘導は、レーザーを使うのでしょうかね。
そうすれば、仮に空中投下の爆弾ならば、CEPは1m程度と聞いています。
UAVで誘導用レーザーを照射するのかな。
2000lbと言わず、昔のトールボーイ爆弾(12000lb)みたいのはないでしょうか。
いずれにせよ、ロシアを負かすには”あの橋” を落とすのは絶対必要でしょう。
上手く落とせば、アゾフ海を閉塞することもできますね。
この記事の最後に民主党はatacmsを提供するべきだと主張していると書いていますが民主党の上院議員の1人が主張しているだけで党としてはそのようなこと全く言ってませんよ。あと、そのことを言っている議員はあまり影響力のある議員ではありません。
ただ、主張としては正しいことを言っているので取り上げられる可能性も大いにあるかと。自分もクリミア大橋は速めに壊すべきだと思いますがね。なんなら義勇兵という名のデルタフォースに監視させるっていうのもありだと思いますが。
どっちにせよ南東部戦線をアゾフ海まで打通するか。黒海南部の通商路は生きているので民間船に紛れこんで撃ちこむとか、ただ、オデーサ沖に待機してるであろうキロ級をどうにかしないといけない。穀物の緊急輸送船団に紛れ込むか?
なんにせよ無茶しないとケルチ海峡はどうにもならん…
こういう話が出たという事は、既にATACMSをウクライナ軍が手に入れたと考えます。
前回の空港攻撃にも使われたのではないでしょうか。
そうでなければ、かなり無理のある攻撃だったと思います。
ただ、その程度の火力では、あの巨大な橋を完全に破壊するのは難しいのでは。
今のところは脅し以上の効果は無いと思います。
ウクライナにはATACMSの類似兵器としてグロム2という独自の立派な地対地ミサイルがあります(実態はおそらくイスカンデルのパクリですが)
もちろん精密性はATACMSに劣りますが、射程は十分、数も20両と言われる程度にあり、国産で融通も効き、一説には北朝鮮に技術提供されて日本を狙うミサイルの1つの原型になったとも言われている、大変すばらしい兵器です
精密性は数でカバーしてしまえばいいわけで、数発のATACMSで壊せる橋なら手持ちのグロム2で十分壊せるでしょう
しかしウクライナはこれを使わず、まるでクリミア大橋を壊すために絶対必要と言わんばかりにATACMSを要求していますが、その裏にはどういった事情があるのでしょうね
そりゃ当然西側から提供されたATCAMSで橋を破壊できたら西側との結束が鮮明になるからだろう
西側をいかに引きずり込むかがウクライナの生命線なんだから、在庫も大してない国産兵器で大橋落としてロシアの理不尽な怒りを買って後続が続かないのが一番まずい
米にも書かれている通り大橋は確かに重要な兵站拠点だが黒海経由でいくらでも輸送できるので、是が非でも今すぐ破壊しなければならないものでもない
そんなに難しい話ですかね、問題は何で、ではなくいつ、それだけでしょう
予測しがたい戦局の変化に対応するには、予めあらゆる選択肢を増やしておくのは誰でもやることですよ
フリム2とかグリム2とか言われているミサイルの現状ってアクディブなの?
製造企業の予算不足や活動状況が思わしくないし、元々22年に採用するような兵器で現状どうなのか、製造工場も破壊されているとかの話もあるしそんなに数があるとは思えない。
某試作兵器すら実戦投入してロシア撃退に一役買っているんだからフリム2を出し惜しみする理由なんて無くて、そもそも実戦に使えるレベルに無い可能性の方が高いと思う。
マリウポリが陥落した現在、クリミア半島からの増援を阻害するクリミア大橋破壊の意味は薄いと考えます。
今の時点で通行不能にするなら、短期には再建困難なほどに破壊するか補修の試みを無にする継続攻撃ができないと、一時的戦意高揚の効果しかありません。現時点のウクライナ軍装備ではいずれも不可能に近いでしょう。
クリミア大橋を使用不能にするタイミングは南部戦線で大規模反抗戦に出るときと思います。
ウクライナ政府が公言しているのは侵攻開始以前までの領土奪還です。南部戦線のロシア軍をクリミア半島に後退させるには、東部南部間の陸上補給線を遮断(マリウポリ奪還)すると同時に、クリミア方面からの継続的増援を少なからず阻害する必要があります。
米政府がATACMS等の長距離精密破壊兵器を提供すると仮定すれば恐らくその段階で、使用目的を制限するとともに必要最小限の数量に留めるのではないかと愚考します。
(訂正)
下から5行目:
侵攻開始以前までの領土奪還です。→侵攻開始以前までの軍事的領土奪還です。
射程150km確保出来るならある程度形になっているGLSDB提供を求めれば良い。退避壕へのある程度の貫通力有るんだし。
ただ自分が知る限りミサイルで落ちたクリミア大橋レベルの橋なんてないと思うし、穴を開けて通行妨害する以外の結果は得られないと思う。大抵の橋が落ちたって話は全部航空機によるエアストライク何だよね。