ウクライナ戦況

ウクライナ軍がヘルソンのロシア軍拠点を攻撃、敵の上級将校12名が死亡か

ウクライナ大統領府顧問のオレクシー・アレストビッチ氏は10日、ヘルソン州チョルノバイエフカへの攻撃でロシア軍上級将校(将官及び佐官クラス)が12名死亡したと明かした。

参考:Олексій Арестович

この辺りでロシアに傾いた戦況バランスを修正して膠着状態に持ち込み、ウクライナ軍の本格的な反攻に繋げて欲しいところだ

ウクライナ軍参謀本部は10日朝、チョルノバイエフカ(ヘルソン国際空港やチョルノバイエフカ空軍基地がある地区)への攻撃で敵司令部、弾薬庫、数十の装備類を破壊したと発表していたが、大統領府顧問のオレクシー・アレストビッチ氏は11日に「チョルノバイエフカに対する9日の攻撃で12人のロシア軍上級将校(将官及び佐官クラス)が死亡した」と明かして注目を集めている。

さらにアレストビッチ氏はノーバ・カホフカへの攻撃で「第49諸兵科連合軍の司令部、防空システム、防空システムで使用されるミサイルを保管していた弾薬庫を破壊、100人以上のロシア軍兵士が死亡して約200人が負傷した」とも明かしており、HIMARSを使用した10日の攻撃でロシア軍の拠点を10ヶ所破壊したらしい。

HIMARSを使用して攻撃した場所はドネツィク州のマリウポリ、シャフチョルスク、キーロフスク、ハルツイスク、トレーズ、ズーレス、プリドロジノエ、イロヴァイスク、ドネツィクのレーニンスキー地区、ルハーンシク州のコムナルスクで、7月に入ってHIMARSで攻撃したロシア軍の拠点は30ヶ所以上になる。

出典:GoogleMap 10日にHIMARSを使用して攻撃した地点/管理人加工(クリックで拡大可能)

これまで手が届かなかった拠点をHIMARSで破壊することで「ロシア軍の前進を鈍らせることが出来るのか?」は未知数だが、米国は榴弾砲で使用できるGPS誘導のエクスカリバー砲弾提供に踏み切ったので、ロシア軍の指揮系統や兵站に掛かる負担は今後も増加するはずだ。

この辺りでロシア軍に傾いた戦場状況を修正して膠着状態に持ち込み、ウクライナ軍の本格的な反攻に繋げて欲しいところだ。

関連記事:バイデン大統領がウクライナ支援パッケージに署名、エクスカリバー砲弾を提供か

 

出典:Сухопутні війська ЗС України

米国、ウクライナ軍がクリミア大橋攻撃にHIMARSを使用してもOK前のページ

ウクライナ軍公開のM49A2榴弾に漢字の印字、日本提供という指摘も次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    欧州の壁になると主張するウクライナ、潜水艦提供についてドイツと協議

    ウクライナ最高議会のステファンチュク議長はドイツのランブレヒト国防相と…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍兵士788人がクリンキーで行方不明、埋葬できた戦死者は262人

    政府の汚職や重大犯罪の調査を行うウクライナの独立機関=Слідство…

  3. ウクライナ戦況

    シルスキー総司令官、アウディーイウカとクピャンスクに予備戦力を投入

    シルスキー総司令官はウメロフ国防相と共にアウディーイウカとクピャンスク…

  4. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍部隊の訓練が完了、遂にスターストリークの運用が始まる

    ウォレス国防相は26日、英メディアに「訓練を終えたウクライナ軍部隊とも…

  5. ウクライナ戦況

    ヘルソン州の戦い、ドニエプル川左岸のオレシキー郊外にウクライナ軍が到達

    ドニエプル川を挟んでウクライナ軍とロシア軍が睨み合うヘルソン戦線は前線…

  6. ウクライナ戦況

    ウクライナ世論、独立維持のため領土譲歩に応じる回答者が30%を越える

    キーウ国際社会学研究所は「戦争終結に向けた領土譲歩や和平合意の可能性」…

コメント

    • 折口
    • 2022年 7月 11日

    弾薬庫への攻撃ができるのは良いですね。航空戦力や巡航ミサイルなどの長距離精密打撃火力を出し惜しみしているロシアがウクライナで発揮できる数少ない優位性が機甲と砲火力で、このうち機甲に関してはウ軍のATM普及で劇的な効果は出せなくなっています。然るに野砲や地対地ロケットの火力優位が攻勢を担保していると言って差し支えない訳ですが、これらはいずれも兵站に大きな負担をかけます。ロシア本国とウクライナ間の補給線の確保は当然として、必要とされている場所(ロシア軍砲兵陣地)に必要とされる量の弾薬を迅速に配送するには高度な物流管理が必要ですが、その過程では物資集積拠点がどうしても前線近郊に必要になってきます。
    物資の集積拠点を攻撃するというのは、そこに置いてあった物資を破壊するというだけではなく物流システムを短期的は激しく、長期的にも一定レベルで妨害する訳ですから、ロシアからすれば頭の痛い問題でしょう。

    46
      • ダヴー
      • 2022年 7月 11日

      前線近郊といってもある程度、戦線後方ですからパルチザン等による位置情報の提供などが活発に行われているのでしょうね。

      1
    • きっど
    • 2022年 7月 11日

    >「チョルノバイエフカに対する9日の攻撃で12人のロシア軍上級将校(将官及び佐官クラス)が死亡した」
    まーたウクライナの首狩りリストが長くなったのかね?
    本当に将官を仕留めたのならば、近い内に答え合わせが出来るでしょう

    12
      • 暇人28万号
      • 2022年 7月 11日

      なんか、いくら倒してもいくらでもわいてくる。本当に畑でとれるって感じなんですかね。

      4
    • 眠い
    • 2022年 7月 11日

    昔から変わらず、強力な兵器ってのは高機動長射程か
    現代ならふつう航空機がその役割を担うんだろうが、防空網を互いに制圧できないとこういう兵器に活躍の出番が来るのかな
    うちの国がこの状況になる可能性は低そうだけど、長距離打撃手段を複数用意しておくに越したことはないね

    25
      • KNOB CREEK
      • 2022年 7月 11日

      そういう面を考えてもやっぱり自衛隊のM270は維持して置いて欲しいですよね。
      地味に90両以上保有してますし、それこそ高機動化を意図してるならハイマースに置き換えるなりしてほしいものです。

      4
        • G
        • 2022年 7月 11日

        それ以上に長距離対艦ミサイルや対空ミサイルの充実化が望ましいですね
        抑止力としてある程度保持するにしても、可能な限り日本本土内でロケット砲や自走砲がその射程分の都市を巻き込んで打ち合う状況は避けてほしいですし

        2
          • バクー油田
          • 2022年 7月 12日

          まあ日本はその路線で海空に重点を振ってきたので今の充実ぶりが限界充実レベルと思いますよ。
          ただ、今回のロシアによるウクライナ侵略で見えてきたのが陸戦の重要性ですね。
          これまでは、「陸自が出張らないといけない段階で日本は終わり」で陸戦の話は終わっていましたので
          陸自の存在価値というのは、上陸作戦にコストがかかる事を敵に自覚させる為の「見せ装備」というものでした。
          しかし、ウクライナの占領地で行われている事から、中露に侵略されるという事は、米軍に占領された70年前と異なり、そこの住民はどこか僻地に連れていかれて侵略した側の人間が占領地に入植してくるというわけです。
          だから海空が破られても降伏という選択肢はないんです。陸自は海空が負けても戦う必要があるんです。
          中国の場合沖縄が近いですが、沖縄が占領された場合、沖縄には沖縄人はいなくなり、中国人の島になるんです。北海道の場合は、ロシア人の入植地になるわけです。
          また、ゼレンスキー大統領が実証しましたが、勝ち目のないように見える陸戦で寝技に持って行って戦い続けると周囲から支援が入る時代なんですね。
          だから、もし海空が破られても戦い続ける為に有効な長距離射程の陸戦用の武器を充実させるのは、
          海空が破られても、陸戦で相手を撃退する為の武力とそのノウハウを溜める必要があり、陸戦で粘って米を中心とした周囲の国の様子見の態度を変えて積極的支援が入るように持ってかせる手順と装備も必要と思います。

          1
            • G
            • 2022年 7月 12日

            昔の中国軍でしたら戦闘艦の数は限られており、陸上戦を考慮した抑止力として陸上兵器は実戦での使用も考えられたと思いますが、現在の中国軍の戦闘艦の数は年々勢いよく増えているため、必ずしも急いで上陸して陸上戦闘に持ち込んでくるとは限らないと考えられます

            広大な面積をほこる陸国のウクライナとは異なり日本は細長い島国であるため、空海が破られた場合は陸上兵器同士の戦いではなく、巡航ミサイルなど射程の長い艦載兵器を持つ戦闘艦や艦載機を抱える空母などに全方位囲まれた状態で相手にする可能性が高いように思われますが、それらはMLRSなどでどの程度粘れるのでしょうか

            4
    • もり
    • 2022年 7月 11日

    破壊したのは分かるが誰を何人殺したかなんてロシアが発表しない限り分かりようがないんだからプロパガンダでしかないだろ
    それとも米英など第三国が発表したのか?アメリカの知らない事をウクライナが知ってるとは思えない

    9
      • もり
      • 2022年 7月 11日

      成りすましはやめなー?
      管理人さんは分かってるよ

      33
        • ido
        • 2022年 7月 11日

        自分もこの前に同じことあったわ。別に人がやらかした場合自分に責任が降りかかるからマジでやめてほしい

        4
      • おや
      • 2022年 7月 11日

      傍受して把握してるんでしょう
      それだけ電子・情報戦でロシアは負けてるって事では?
      というかそんな事戦は争初期からですよね、今更疑問に思う事ですか?

      17
      • 匿名
      • 2022年 7月 11日

      いやその開戦時期からして把握されてたので。。。
      しかも初戦で電子戦指揮車両が鹵獲されてるので、ロシア軍の情報はなおさら筒抜け状態になってるんじゃないのかなっと。

      2
      • 名無しさん
      • 2022年 7月 12日

      無名の兵士ならロシアは行方不明扱いにして隠ぺいすることができますが
      上級将校ともなると、そんな扱いにするわけにもいかず、最終的にロシア国内で葬儀が行われます。
      「答え合わせ」と言ってるのはまさにそのことで、ロシアからの情報で上級将校が打ち取られたことが公になるのです。
      最近は死亡地点を隠ぺいして撃たれた事実をごまかそうとしてますが、その人が所属した部隊が死の直前まで派遣されていた地域は明らかになっているので、結局隠し切れないんですよね。

      1
    •     
    • 2022年 7月 11日

    アメリカ軍はこの手の阻止攻撃がww2の頃から大得意で、ロシア軍も当初はこの手の手法をとってくるのではないかと思ったが、何の分析もしてこなかったのだな

    航空戦力や巡航ミサイルをこういう攻撃に注ぎ込まず、市民殺戮など戦術的に効果の低いハラスメント攻撃に費やしている
    現状、ミサイル攻撃の精度を欠いてしまい手遅れだな

    12
      • 鳥刺
      • 2022年 7月 11日

      独ソ戦時にはソ連軍も、ドイツ軍の後方連絡線へのパルチザン攻撃、攻勢時の、空軍による集中的な後方補給拠点への攻撃で一定以上の効果を挙げてはいるんですが、どうなんでしょうね? 侵略戦争で、敵の後方に勝手にパルチザンが湧くはずも無く、空軍は、敵奥地への本格的な阻止攻撃を実施しようともしない。

      やはりこの辺は、それを担当する戦力が無いということでしょうか。奥地への航空阻止攻撃は、損害抑えたいなら攻撃機以外の支援機多数によるストライクパッケージになりますし。

      アメリカなら、今頃ドニエプル川の橋全部落してますわな。

      2
    • makumaku
    • 2022年 7月 11日

    ロシア軍は国内各地からウクライナへ続々と部隊を送り込んでいるようです。
    ロシア・ウクライナ戦争はいまや持久戦に突入したと見てよいと思います。
    今後、ロシア対米欧の場外戦も激しくなっていくでしょう。

    9
    • ななし
    • 2022年 7月 11日

    HIMARSによる輸送拠点攻撃はかなり効いてるようですね。昨日もドネツクのshakhterskで弾薬庫が大爆発を起こしていました。一連の攻撃に対して、イゴール・ガーキンは、かなりの被害が出ていてトーチカUやウラガンによる攻撃に比べ、HIMARSには防空網が機能していないとして、ロシア軍にHIMARS(+その他の西側兵器)の輸送網を早く破壊しろと呼びかけています。

    13
    • TKT
    • 2022年 7月 11日

    この話は、何日か前に出たS-300の話とセットで考えるとわかりやすいと思う。

    ロシア軍は、対地攻撃にも使える地対地誘導弾S-300で、ウクライナ軍を攻撃しているわけで、ウクライナ軍の方がハイマースでロシア軍の防空隊、高射砲隊、それらの弾薬庫を攻撃したのは、地対地誘導弾S-300によるウクライナ軍に対する対地攻撃を阻止する、軽減するためではないだろうか?

    ただロシア軍の方が長距離精密打撃火力を出し惜しみしているというような話は、地対空誘導弾であるS-300を対地攻撃に使っているという話と矛盾するわけで、ロシア軍の方も、もともと対地攻撃に使えるように設計されたS-300を使って、ウクライナ軍の地上部隊を盛んに攻撃しているわけだ。

    ロシア軍がハイマースを破壊したとか、しないとかいうのは、真偽はわからないが、とにかくロシア軍の方もハイマースを探して狙っているのは間違いないだろう。

    この話は、兵站拠点や輸送拠点、集積拠点を狙うという話ではなく、対地攻撃を行うS-300とハイマースという地対地誘導弾同士の砲撃戦、つぶし合いという話かもしれない。

    S-300にしろ、ハイマースにしろ、撃てば確実に発射位置は探知されるわけで、発射後の移動はどちらもするだろうが、ドローンなどで追跡探知、先読みされる可能性もあり、どちらもやられないという保証は決してない。

    もちろん地対地誘導弾同士の戦いに終始するとも限らず、特にロシア軍は地対空誘導弾で対地攻撃を行ってくるかもしれず、また黒海の海中にいる潜水艦や、爆撃機でハイマースを狙って撃ってくることも考えられ、油断をすればいつどこから撃たれるかわからないだろう。

    3
    • ぷっちん
    • 2022年 7月 11日

    これじゃヘルソンじゃなくて、Hell損やないか!

    3
    • 鳥刺
    • 2022年 7月 11日

    「ヘルソンの俎板」再び。ロシア側の再集積に期待。

    第49諸兵科連合軍司令部攻撃といい、各地の弾薬集積の爆破といい、単弾頭弾のHIMARSでも、戦場支援ロケット(誘導可能)としてすこぶる有能ですね。敵の攻撃を回避する機動力もありますし。

    ロシア軍の攻撃再興時にはクラスター弾頭弾の供与解禁に期待したい所ですが。

    3
    • Formula750
    • 2022年 7月 11日

    ウクライナに弾薬が滞りなく補給されるといいですね。

    5
    • 暇人28万号
    • 2022年 7月 11日

    よし、ハイマース増やそう(小並

    3
    • 匿名
    • 2022年 7月 11日

    ウクライナも消耗してるけどロシアも相応に消耗してるんでしょうね
    消耗した結果、前線に訓練を十分に受けた優秀な人材が不足していくのはウクライナだけでなくロシアも同じなはず

    1
    • 通りすがりのななし犬
    • 2022年 7月 12日

    HIMARSって、たった4輛でこんなにも目に見える戦果が挙げられるものなの? 凄いなあ。車輛も補給車輛もミサイルも弾頭も、今の10倍以上支援してあげて欲しいなあ。

    敵から距離を置いて一方的に叩ける武器って、とてもいいよね。頼りになるし。

    2
    • 平八郎
    • 2022年 7月 12日

    図らずも「百発百中の一砲能く百発一中の敵砲百門に対抗し得る」か?みたいな対決になっていて
    とても興味深いですね。
    百発百中側が割と対抗できてて面白い。
    HIMARSは自在に動き所在を秘匿出来ますが、露軍のロケット砲はどうやら固定陣地中心らしいというのもありますが。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP