ウクライナ企業のドローン開発・製造能力は急速に向上し、Anduril、Skydio、AeroVironmentといった米ドローン企業も「海外製ドローンに対するウクライナの需要が低下している」と気づいており、DefenseNewsは「ウクライナの成功に米企業は適応を迫られている」と指摘した。
参考:As Ukraine builds better drones, do American firms still have a role?
関与の形態を変化させないとロシアとの戦いから教訓を得てシステムを改良するのが困難になる恐れがある
9月上旬にロシア領トヴェリ州のトロペツにある弾薬庫が爆発して数十万発相当の弾薬損失を引き起こしたが、DefenseNewsは17日「この成果と同じぐらい重要なのは攻撃方法だ。トロペツはウクライナ国境から300マイル以上離れており、キーウが求めている西側製兵器の射程外にある。トロペツの成果はウクライナが独自のドローン開発・製造能力に自信を深めていると示唆し、国防総省の高官も『ウクライナ製ドローンは非常に上手く機能している』と述べたが、この成功により米企業は適応を迫られている」と報じた。

出典:President of Ukraine
ゼレンスキー大統領は10月1日「ウクライナのドローン製造能力は年間400万機台に達し、既に150万機以上の契約を締結している」と明かし、海軍分析センターのサム・ベンデット氏は「ウクライナが生産するドローンの大半はFPVドローンで市販されているものと能力的の大きな違いはない。それでもトロペツ攻撃が示すように大胆な攻撃が可能なシステムも開発している」と述べ、米政府高官も「ウクライナはロシアの重要な収入源を奪うためドローンで油田を攻撃し始めたが、これらの標的は民間施設で周囲に強力な妨害電波は飛んでいなかった。しかし現在は保護された軍事施設を攻撃して能力が向上したことを示している」と指摘。
国防総省の高官も「ウクライナの能力向上が急速に進んでいるのは確かだ。さらにドローンを使用した攻撃戦術、技術、手順もより洗練されてきた」と述べ、この成功は「海外製ドローンに対するウクライナの需要が低下している」と示唆し、米国のドローン開発・製造企業もその事実に気づき始めている。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
Andurilのクリス・ブローズ最高戦略責任者も「ウクライナ人は海外企業がやるよりも自国のニーズを上手く満たすことが出来るだろう」「Andurilのような企業はウクライナ製ドローンの有効性を長く持続させる補完的な立場で支援に関わるのが適している」と語ったが、Andurilが関わっているシステムが何なのかは明かさず「ロシアのEWシステムからドローンを保護するのに役立つ」と付け加えた。
米陸軍にドローンを供給しているSkydioも「過去2年間で数千機のドローンをウクライナに提供した」「これを前線に近い場所でサポートするためウクライナで従業員を雇用して小規模チームを編成し、自社システムの調整を行っている」と明かしたが、Andurilと同様に「ウクライナは海外製の小型ドローンや大型ドローンをあまり必要としなくなっていることに気がついた」と明かしたものの、ドローンに統合されたマイクロエレクトロニクスや一部のAI機能は現地で大規模に再現されていないと指摘し「ここがスイートスポットだと思う」と述べている。

出典:President of Ukraine
DefenseNewsは「バイデン政権が秋に承認した長期支援パッケージには『ウクライナのドローン能力に対する多額の投資』が含まれており、国防総省の高官は『これがウクライナ独自のドローン製造と構成部品の供給に役立つだろう』と述べた。この支援は国防総省と米企業の新たな姿勢を反映しており、ウクライナのドローン設計・製造を支援する方向にシフトしているのだ」と報じ、AeroVironmentも「ウクライナのドローン企業は様々な分野で世界的なプレーヤーになるだろう」「我々もウクライナ企業と提携してドローンを共同設計・製造する取り組みを進めている」と明かした。
要するにウクライナが独自の開発・製造能力を確立すればするほど米国製ドローンの需要が低下し、バイデン政権もウクライナの取り組みを後押ししているため、関与の形態を変化させないとロシアとの戦いから教訓を得てシステムを改良するのが困難になる恐れがあり、米国のドローン開発・製造企業は新しい支援に適応して「ウクライナ企業のドローン開発や製造に関与して実戦データへのアクセスを確保しつづけなければならない」という意味だ。
ここから得られる教訓は米国製ドローンの有効性改善に役立ち、海外市場においても競合に対する優位性となるため、Anduril、Skydio、AeroVironmentといった米企業にとってはウクライナに関与し続けることが至上命題で、同じようにロシア企業もウクライナとの戦いを通じて膨大な実戦データを収集しており、これも中国、イラン、北朝鮮といった国がロシアを支援する動機の1つと言えるだろう。
因みにウクライナは防衛産業の成長に欠かせない資金を獲得するため武器輸出解禁を検討中で、実戦で鍛えられたウクライナ製ドローンやEWシステムに関心が集まっている。
関連記事:米国防長官が表明した画期的な軍事支援、ウクライナ防衛産業界への直接投資
関連記事:米国防長官、ウクライナと共同でS-300とR-27の代替品を開発中と言及
※アイキャッチ画像の出典:117 окрема механізована бригада
モジュール化して、中国などからの安い民生品・コンポーネントを活用しているのでしょうね。
アメリカ=ウクライナでは、人件費に圧倒的な差がありますから、アメリカが安価な軍需品を大量に作るのは難しいと思います。
ウクライナがドローン実戦活用で、電波妨害対策・GPS活用・ターゲッティングといったものを、どのように進化させているのかは日本も支援の見返りとして要求すべきでしょうね(日本が、ウクライナに要求してる気配を感じませんが要求してますよね…?)。
アメリカすら
ウクライナ企業のドローン開発や製造に関与して実戦データへのアクセスを確保しつづけなければならない
という状態なら日本はどのレベルでのアクセスがウクライナから許されるんですかね
仰る通り、かなり深刻な問題ですよね。
日本人の中には、『ウクライナ支援は、実戦データ取得により日本の防衛力向上に繋がる!』なんて意見を見かけましたが、それ本当なの?と感じています。
(自分が見落としてるかもですが)日本のマスコミでさえも、ウクライナから実戦データ取得できた・戦訓の情報取得について協定締結した…こういった内容1つも見かけませんね。
直接だと国民ウケが悪いんで米軍から間接的にとかが精一杯では?直接分かるのはせいぜい日本が提供した装備に関してまででしょう。民間の優れたものはともかく軍事レベルだと周回遅れや性能は低いと思いますしお寒い限りだと思いますが。
少し嫌な予感がするのだけど、これ、戦争の結果次第で、けっこうなテロ支援国家になりうるのではないか?だいたいだが、アメリカがこういう感じで支援した国って、順路としては、親米→反米→テロ支援国家(或いは組織)って感じが多いんだよなぁ。。まぁ、恨まれる要素も多分にあるといえばあるし。手を噛まれる可能性は否定できないかな。
ウクライナからの武器流出、仰る通り、充分有り得ると思います。
北朝鮮・中国だけでなく、南スーダンなどへも武器売却に関与してますから、戦後どうなるのかリスクは充分にあります。
(2008年10月8日 海賊乗っ取りのウクライナ貨物船、積載兵器は南スーダン向け BBC報じる AFP)
(2017年9月26日 英国:南スーダンへ巨額の武器供給を仲介 アムネスティ)
以前から、兵器販売に力を入れていたからね。
国家としてのテロはともかく、自爆ベストの次は、ドローン操縦技能に長けた元ウクライナ軍人傭兵によるテロとか来そう。
記事の内容を素直に、現代戦に適応したウクライナのドローンは先進的なレベルに上がっていると受け取ればいいんだろうか。それとも簡単に3年でトップレベルまでいけるほどドローンの分野で西欧の軍事的イニシアチブはなかったと見るべきか。はたまた、いつものポジショントークなのか。
ドローンの数は足りているのにロシア軍にドローンで頭を抑えられているのは数でなくて、電子戦で負けているからなんですかね?
1,事実の誤認:現実には、ウクライナもロシアに対してドローンを効果的に運用しており、双方がそれぞれドローン戦を展開しています。ロシアが電子戦で完全に勝っているという認識は誤りです。実際に、ウクライナは自国製ドローンでロシアの補給線や戦術的要所を攻撃する成功事例を多数生み出しています。
2,制空権のような状況:戦場で「押し込まれている」からといって、何もできないというわけではありません。例えば、制空権の争いでは、どちらか一方が完全に制空権を握ることは少なく、双方がある程度の航空戦力を展開し続けます。同様に、ドローン戦においても、ロシア軍が優位に立っている部分はあるものの、ウクライナが自由にドローンを運用できていないというわけではありません。両国は、お互いにドローンの運用を制限し合いながらも、それぞれの戦術を続けているのです。
3,戦場環境の複雑さ:ドローン戦は、地上戦や電子戦だけでなく、地形、戦術、さらには外部からの技術支援など、複数の要素が絡み合っています。数の優位や電子戦だけでは戦争の勝敗を決定づけるには至りません。どちらの側も、攻防を繰り返す中で技術的に適応しているのです。
この視点から見ると、単に「電子戦で負けているからロシアに抑え込まれている」という仮定は、戦場のリアリティを単純化しすぎています。
双方とも対応の応酬してるからとしか言えないわな。少し前までならロシア製のシャヘド系ドローンだと鉄壁の防御に近い対応出来ていたがロシアもドローンに新機能盛り込んだ結果撃墜率が6割ぐらいになっていたように思う。
誘導技術の進歩や低空飛行可能なセンサーとか迎撃してくる相手に対して突っ込むようにしたとか誘導の周波数が違うとか複数の要因がある。
前向きに受け止めるなら、ウクライナのドローン能力と運用方法、生産力が向上しているという事
後ろ向きに受け止めるなら、支援国の握る手綱がますます解けてしまっている事
今後のワーストケースは、停戦もしくはウクライナの敗戦になった時にウクライナ軍のデータに支援国がアクセスできなくなり、中露だけがウクライナ紛争で高度化したドローン運用方法を手にしてしまう事
しかしロシアはそれ以上の技術と資本をもっていますからね。結局、国力から言っても同じステージで争う以上、劣勢なのは変えられそうにない
そしてちゃっかり美味しいところは取りにくるアメリカもやはり大国ですね。
>因みにウクライナは防衛産業の成長に欠かせない資金を獲得するため武器輸出解禁を検討中で、実戦で鍛えられたウクライナ製ドローンやEWシステムに関心が集まっている。
防衛省のイスラエル製ドローン導入構想は、パレスチナ・レバノン情勢の影響で批判がありますし
ウクライナ製ドローンも検討する価値はあるでしょうね
交戦中の同国に完成品を大規模に輸出する余裕など全くない以上、ライセンス生産させて貰える可能性も高いですし
一番大事なのはソフトウェアですが、さすがに中身にアクセスさせてはもらえないでしょうからねえ。とはいえ実際に訓練で動かしてみて詰め込まれたノウハウを実感することに大きな意義はありそうです
ウクライナの急速なドローン技術の発展は、戦場での実戦経験に基づいたものです。アメリカの大手ドローン企業(Anduril、Skydio、AeroVironmentなど)も、ウクライナでの成果に適応し、彼らの技術開発に影響を受けています。これは単なる兵器の供給ではなく、ドローン戦術の進化を推進する重要なデータ源となっています。特に、ロシアとの戦いにおいてウクライナが得た技術や戦術の実戦データは、電子戦(EW)や補給線の破壊、さらには長距離攻撃技術に関するものが含まれており、これらは今後の国際的な防衛戦略にとって極めて貴重です。
ウクライナはこの戦争を通じて、独自に開発したドローンでロシア領深くに攻撃を加え、補給線や兵站の破壊に成功しています。アメリカ企業は、これに対応するため、ウクライナと提携し、実戦データのフィードバックを受けてシステムを改善し続けています。例えば、トヴェリ州の弾薬庫攻撃のように、ウクライナは独自開発したドローンを使ってロシアの重要拠点を攻撃し、ロシア軍の継戦能力に大きな打撃を与えています。このようなデータは、米国企業だけでなく、日本の防衛産業にも大いに役立つものです。
日本も、米国と同様に、ウクライナの実戦経験を共有するために協力し、ウクライナへの投資を検討すべきです。特に、日本が直面する島嶼防衛やミサイル防衛において、ウクライナで実践されているドローン技術や戦術は非常に参考になります。例えば、ウクライナのドローン開発は、ロシアの電子戦技術に対する効果的な対策を生み出しており、この技術は将来的に日本の防衛能力を強化する鍵となり得ます。
さらに、ウクライナは現在、戦場で得た技術を基に防衛産業を成長させようとしており、武器輸出解禁の動きも見られます。この機会を捉え、日本はウクライナと連携してドローン技術や防衛システムを共同開発することで、自国の防衛力を強化するだけでなく、グローバルな防衛市場における競争力も高めることができます。
1枚目の写真のドローンの別角度写真を見ても、このドローンの魅力が募りますな。
あのスプリング状の部品の意味はなんなのか、ストラップでの補強固定とか、むき出しのコネクタとか、たまらん。
西側企業のプレゼンのドローンのカウリングなどが洗練された綺麗な玩具感に対して、むき出しの殺意を感じます。
>>スプリング状の部品の意味はなんなのか
単純に起爆スイッチだと推測されます
スプリングと中央の棒が接触すると通電して砲弾が爆発する仕組みではないでしょうか?
なるほど!
流用しているだろう弾頭(重迫?)の信管も使っているんでしょうけど確実性を増すために並列で電気信管を接続していると。シンプルで確実そうです。
想像が捗ります。
信管にしてはデカすぎ重すぎな気が・・・
しかも左右対称に2個というのも不自然
妨害電波を受信してホーミングするアンテナとか?
ドローン対策で防護ネット等に引っ掛けて体当たりを防ぐというのがありますが
この接触スイッチを使えば、真ん中の針金に何かがぶつかって曲がるとスプリングに接触して通電します
なぜスプリングを使うかというと、どの方向に曲がっても確実に接触するからです。
二つあるのは一つだと偶然隙間に入って曲がらず起爆しない可能性を排除するためでしょう。
低コストで確実に動作するので、よく考えられてると思います。
欠点を言えば操作をミスって木の枝等にぶつかったら爆発してしまう所でしょうか。
なので何もない広い場所で使用する必要がありますね。
なるほど…非常に参考になります。完全に専門外な分野で全く発想が湧きませんでしたが、こうして説明されるとはっとする素晴らしい設計ですね。
本当にどうせ使い捨てのものとして、余計な装甲をつけるよりも攻撃の確実性を追究しているのがとても好ましいです。
宮崎の不発弾の話題でWW2時代の信管についてのポスト読んだけど、嫌がらせみたいな(被害を大きくするための)信管をよく考えるものと感心するわ
狙われたり処理する人には悪夢だけど
余計な装飾を剝ぎ取ったこの武骨な感じは嫌いじゃない
ただ、そこまで程度高い技術で作られたモンでもないとは思うし、何よりウクライナでの戦場に最適化されているから、そこも考慮しないとなぁ
ロシアと比べてドローンの数が桁外れに少ないはずじゃなかったのか
ロシア側は電子妨害も発達しているし
いくらでも空きはあるように思うが
抱えてるのはRPGの弾頭?迫撃砲の弾とはちょっと形が違うような
一機いくらだろう
米軍の上層部と米国系軍事企業はちょっとなんというか…政商だとか関係がズブズブだとか営利的にラインナップが決まるとかそういうのもあるからね。
だから廉価なのを作るとなると高級モデルよりも大幅にあれこれ削られたりだとか、それしか出来ないみたいなオミットが激しくなったりもする。
ウクライナの報告でも米製ドローンの一部は最初から運用範囲や通用する環境などが限定的過ぎて使い勝手がよくないという話もあったりしたからね。
更に言えばロシア軍の拠点の真上で通用するドローンというのはものすごい勢いで進歩していってるので…従来の開発速度では考えられない事にもなってるんだね。
コア技術や部品レベルではそりゃ欧米は凄まじいんだけど、そこらを製品化する段階ではどうも緩慢なとこあるので…従って、実戦でこんなものが出現したぞこれに対応するべきだみたいな必要性や新しい世代概念なんかをベースに全てを見直すという必要が頻発してるという事かな。
すぐには無理だが、数年スパンでは追いつく&その追いつく流れの中にロシアとウクライナの急激な開発競争が絡んでくるという話なんだろうね。
まあ、そもそもドローンなんか大したことないって思ってた机上の空論家が多すぎたので、本腰を入れた開発はこっから始まるみたいなもんがあるよね。