ウクライナ戦況

バフムート方面の戦い、ロシア軍がチャシブ・ヤール市内に取り付いた可能性

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「1ヶ月半に及ぶ砲撃後、ロシア軍はチャシブ・ヤール東地区の高層建築物や家屋に取り付いた」「チャシブ・ヤール南側の森林地帯も制圧した」と報告、さらにクリシェイフカ集落内でウクライナ軍陣地を掃討する様子も登場した。

参考:Мапу оновлено!
参考:Битва за Часов Яр: продвижение ВС РФ в микрорайоне Канал обстановка по состоянию на 17:00 20 мая 2024 года
参考:Слобожанское направление: взятие агрегатного завода в Волчанске и бои под Липцами обстановка к 19:00 20 мая 2024 года

ウクライナ軍はクリシェイフカの支配を失いかけているかもしれない

ハルキウ州のセメヌハ軍事行政副長官は20日「ロシア軍がボルチャンスク市中心部からウクライナ軍を追い出そうとしている。我が軍が支配している市内の割合は約60%だ」と明かし、ウクライナ人が運営するDEEP STATEも21日「ロシア軍がボルチャンスク北市内の多くを支配している」「ロシア軍がボルチャンスク周辺で支配地域を広げた」「ロシア軍がスタリツァ集落内に侵入した」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも「ロシア軍がボルチャンスク市内の工場を制圧した」「ロシア軍が支配する市内の割合は約50%だ」と報告し、ハルキウ方面ボルチャンスク方向におけるDEEP STATEとRYBARの食い違いは小さくなった。

DEEP STATEはハルキウ方面リプシ方向について「ロシア軍が2km前進して高台の森林地帯を占領した」と報告していたが、RYBARも20日夜「ロシア軍が高台の森林地帯を占領した」「まだ支配的な高台の占領は不可能だ」と報告し、ウクライナ軍はロシア軍の前進を阻む要塞を保持している。

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これよりも興味深いのはバフムート方面の動きだ。

ウクライナ軍は18日「20輌の以上の敵車輌を破壊してチャシブ・ヤールへの攻撃を阻止した」「チャシブ・ヤール市内に敵はいない」と発表していたが、RYBARは20日夜「1ヶ月半に及ぶ砲撃後、ロシア軍はチャシブ・ヤール東地区の高層建築物や家屋に取り付いた」「装甲車両を失ったものの空挺部隊を送り込むことに成功した」「ロシア軍はダーチャ付近で支配地域を拡大させ、修理工場の東側地域も掃討した」「チャシブ・ヤール南側の森林地帯も制圧した」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

視覚的にもロシア軍が侵入した建造物=をウクライナ軍が砲撃する様子、ロシア軍の装甲車両が東地区=に兵士を送り込む様子、ウクライナ軍の反撃でロシア軍の装甲車両=が破壊される様子が登場、ロシア軍がチャシブ・ヤール市内に足場を築いたのか、チャシブ・ヤール市内から追い出されたのかは何とも言えないが、DEEP STATEはチャシブ・ヤールについて特に言及していない。

因みに、一部のロシア人ミルブロガーは「ウクライナ軍はクリシェイフカ集落内から撤退した」と主張していたが、クリシェイフカ集落内の南西=でロシア軍がウクライナ軍陣地を掃討する様子が登場、もしかするとウクライナ軍はクリシェイフカの支配を失いかけているのかもしれない。

関連記事:ロシア軍がボルチャンスク市内の40%を支配、街の南側でも地上戦が発生
関連記事:止まらないウクライナ軍の後退、ハルキウ、ドネツク、ザポリージャでロシア軍が前進

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    •  
    • 2024年 5月 21日

    クリシェイフカからの撤退は驚くに値しませんね
    以前のコメントでも指摘した通り、T0504沿いにロシア軍支配地域が拡大したことでバフムト南の補給線がほとんど寸断されていたからです
    この地域の部隊は遊兵と化していましたし、補給面でも脅かされたとなれば、撤退は正しい判断です

    27
      • たむごん
      • 2024年 5月 21日

      仰る通りですね。

      周囲に集落がなく、地形を考えれば、早期撤退は重要と思います。

      15
    • たむごん
    • 2024年 5月 21日

    チャシブ・ヤールは、市内への爆撃・砲撃の映像とされるものを、よく見かけるようになりましたね。
    ドローン用の電波塔破壊などを指摘されていましたが、現在は建物攻撃を行っているように見えます。

    ボルチャンスクは、南側の侵入が、かなり早かったですね。

    ボルチャンスク東部から、迂回する可能性の指摘もありましたので、前線の動きに注目したいと思います。

    13
    • M
    • 2024年 5月 21日

    ジリ貧だな
    ドンバス戦争の頃のウクライナ軍に戻ってる

    22
      • 阿呆
      • 2024年 5月 21日

      ネットではロシア軍がボコボコにされ来月F-16が到着すればスホーイを無双するそうだからトップガンマーベリックか何かの話かと思った。

      30
    • ポンポコ
    • 2024年 5月 21日

    チャシフ・ヤール市街にとりついとは、思ったより早い。

    チャシフ・ヤールは、バフムトの近くで正面で、バフムト戦後に、有力な旅団が多く送られているし、周辺も準備がされているから、もっと時間がかかると思っていた。

    市街にとりついても、市街はミニのバフムトのように、要塞化や陣地化されているだろうから、すんなりとは行かないと思うが・・・。

    ロシア軍側は、既に街の包囲は進んだのだろうか?それとも、ウクライナ軍は滑空爆弾で弱ったのだろうか?市街には地下室や建物も残っていると思うが。

    10
    • 名無し
    • 2024年 5月 21日

    あれだけ空爆、砲弾、ロケット弾の雨降らされて陣地を維持しなきゃいけないって地獄としか言いようがないな

    26
      • 2024年 5月 21日

      地獄の絵巻物を見ると四肢をもがれたりミンチになったりしていないのでウクライナの陣地の惨状は地獄を遥かに超えているのでは?

      9
    • kitty
    • 2024年 5月 21日

    しかし、別荘が戦術上の要衝になるとはお国柄だなあ。
    昔、日本が世界第2位の経済大国に躍り出たときに、日本人がウサギ小屋に住んでるのに、ソ連人は別荘を持ってウォッカ飲んでる。豊かさとは…。なんて言ってましたけど。
    核戦争になったらダーチャの地下に籠もってFalloutするつもりだったんでしょうねえ。

    18
    • 名無し
    • 2024年 5月 21日

    茶渋も放置されてたわけじゃないのね
    てっきり攻めあぐねて坑道戦術とかに切り替えたのかと思ってた

    6
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 5月 21日

    市街地に入られた+南側を確保されたのが事実なら高低差のメリットが無くなった事になるので、あとはもう時間の問題でしかない
    航空支援を得られる側が圧倒的有利なのでこれはもうどうしようもない
    以前のように損失覚悟でパトリオットの前進配備でもやらない限りは無理でしょこれ

    25
    • Easy
    • 2024年 5月 21日

    おかしいな。昨日Forbesを読んだら、全戦線でウクライナ軍の弾薬備蓄が回復して砲撃戦でロシアを圧倒、チャシブヤールのロシア軍は壊滅、と書いてあったのだが・・・
    我々は別の世界線にいるのですかね。するとこのサイトは世界線が交わる特異点?SF的な夢が広がりますね!

    31
    • 名無し
    • 2024年 5月 21日

    バフムート方面完全にメリーさん状態なんだけど…

    7
    • カニカマ
    • 2024年 5月 21日

    高台陣地の情報に踊らされるワレワレ。
    三方囲まれたので補給線FPVに切られそうですけど。

    7
    • らっく
    • 2024年 5月 21日

    それな
    そして、観測はいいとして、実際の火力を提供する自走砲がやられているところをみると、盤石とはとても言えないと思われ。

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