ウクライナ戦況

最も戦闘が激しいアウディーイウカ方面、ロシア軍がポクロウシク方向に前進

ウクライナ軍参謀本部は「最も戦闘が激しいのはオチェレティネ付近(アウディーイウカ方面からポクロウシク方向への前進)だ」と報告していたが、DEEP STATEも30日に更新した戦況マップの中で「ロシア軍がポクロウシクに向けて複数方向で前進した」と報告した。

参考:Мапу оновлено!

ロシア軍がオチェレティネから線路沿いに西へ進んでいる

DEEP STATEはホルリウカ方面について「ロシア軍がアルテーモヴェ市内に侵入した」と報告していたが、RYBARは「ロシア軍が運河方向に支配地域を拡大させてポンプ場付近を確保した」「ロシア軍が溜池跡陣地を確保した」「墓場付近で両軍が交戦している」「要塞化されたテリコンを巡って両軍が交戦している」と報告し、ロシア軍がアルテーモヴェ市内に侵入したかどうかには触れておらず「ほとんど客観的な現地映像がなく、ネット上に投稿された数少ない資料も1週間前の出来事を記録したものなので、この方面での成功は最も大きなものかもしれない」と指摘。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

但し、ウクライナ軍参謀本部は「最も戦闘が激しいのはオチェレティネ付近(アウディーイウカ方面からポクロウシク方向への前進)だ」と報告しており、ロシア軍の戦力が最も集中しているのはチャシブ・ヤールやトレツクではなく「ノヴォオレクサンドリヴカから幹線道路に抜ける方向」なのだろう。

DEEP STATEもアウディーイウカ方面について30日「ロシア軍がノヴォレクサンドリヴカの南で前進した」「ロシア軍がエヴヘニフカ方向に前進した」「ロシア軍がソキルの南で前進してグレーゾーンが大きく広がった」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

DEEP STATEが更新した戦況マップは「ロシア軍がオチェレティネから線路沿いに西へ進んでいる」「ロシア軍は既にエヴヘニフカ集落の約1/3を支配している」「ボスホート集落の西側はグレーゾーンになった」と示しており、次はソキル~ウマンスキー間を押し上げて凸凹した戦線を水平にしてくる可能性が高い。

因みに露独立系メディアのASTRAは30日「ルハンシクの司令部は病院から負傷が完治していないロシア軍兵士を前線に連れ出している」と報じ、松葉杖をついた兵士など負傷が完治していないロシア人らは集団で「我々が病院で受け取った診断書には『負傷のため休暇を与える必要がある』『負傷から完治後にリハビリを受ける必要がある』と書かれているのに履行されていない」「司令部は病院から我々を連れ出して戦闘任務に向かわせた」「ここにいる全員が手術と入院治療が必要だ」「同じ様な状況に50人以上の負傷者が直面している」と訴えた。

さらにロシア人兵士らは「このビデオメッセージが軍検察庁、国防相、大統領を通じて司令部に状況を訴える最後のチャンスだ」「我々は祖国を守り国に奉仕することを続けたいが、そのためには負傷した体を治す必要がある」「また除隊(退役)証明書も発行されていないため、全員が給与と負傷手当を受け取れていない」と述べて注目を集めている。

追記:Ukraine Front Lineというウクライナメディアが「既にF-16はウクライナにある」「最初の一撃は既に加えられている」「この情報は海外の退役軍人によって確認されている」と報じたが、この記事はСергій Нещадимという人物の投稿が元になっており、この投稿はXavier Tytelman(Air&Cosmosというデジタルメディアの記者か編集者)という人物の投稿から来ているが、今のところウクライナの主要メディアは取り上げていない。

最初の投稿者は情報源を明かしておらず、Ukraine Front Line、Сергій Нещадим、Xavier Tytelman、Air&Cosmosというメディアや人物にどれだけの信憑性があるのか不明で、この情報に飛びつくのは止めておいた方が無難だろう。

関連記事:侵攻858日目、ロシア軍がチャシブ・ヤール方向とトレツク方向で成功を収める
関連記事:侵攻856日目、ロシア軍がトレツク方向のアルテーモヴェ市内に侵入
関連記事:侵攻855日目、ウクライナ軍がロシア軍を押し戻しリマン方面の支配地域を回復
関連記事:侵攻852日目、ロシア軍がシヴェルシク方面とドネツク西郊外方面で前進
関連記事:侵攻851日目、ロシア軍がノヴォオレクサンドリヴカを占領し幹線道路に接近
関連記事:侵攻850日目、ロシア軍がホルリウカ方面とドネツク西郊外方面で前進

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

侵攻858日目、ロシア軍がチャシブ・ヤール方向とトレツク方向で成功を収める前のページ

ボルチャンスクで戦うロシア軍兵士、軍検察や大統領に助けを求める次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ロシア軍のバフムート制圧方針に変更はなく、新たに空挺部隊を市内に投入

    ウクライナ軍の反撃がバフムート周辺で成功したにも関わらず「市内のロシア…

  2. ウクライナ戦況

    ロシア軍がバフムートで攻勢再開、アウディーイウカも危機的状況が続く

    ウクライナ人が運営するDEEP STATEは10日、バフムート方面につ…

  3. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍の反攻、キーウ近郊のロシア軍をほぼ一掃することに成功

    ウクライナ軍はキーウ近郊のボロディアンカを奪還したと報じられており、ウ…

  4. ウクライナ戦況

    ヘルソンでキノコ雲、ウクライナ軍がロシア軍の車輌修理拠点を破壊か

    ヘルソン近郊でキノコ雲の発生を確認、どうやらロシア軍の車輌修理拠点が装…

  5. ウクライナ戦況

    クラスター砲弾の到着で戦場の様子が変化、ロシア軍の火力支援量が低下

    ニューヨーク・タイムズ紙は20日「ウクライナ軍は膨大な死傷者と装備の損…

  6. ウクライナ戦況

    バフムートを巡る戦い、ロシア軍は包囲網を閉じるのではなく市街戦で攻勢に出る

    バフムート包囲に向けたロシア軍(ワグナー)の前進は鈍っているように見え…

コメント

    • 外弁慶
    • 2024年 7月 01日

    先日、ウクライナ軍からの司令官告発があったばかりですが、今回はロシア軍からの告発ですか…。
    どちらもドロ沼の塹壕戦で膠着状態ですから、前線や野戦病院では悲惨な状況何でしょうね。
    戦況報道以外のこのような記事は、気が滅入りますね。ウクライナの報道を観て、俺たちも。になったんでしょうか…。

    2024.06.24 アゾフ旅団がウクライナ統合軍司令官を告発、何千人もの味方を殺した 航空万能論GF

    13
      • NHG
      • 2024年 7月 01日

      ロシア軍からは開戦この方コンスタントに聞こえてましたよ(その最たるものがワグネルのプリゴジン)
      で、そういうネガティブ情報を過剰に評価しロシア軍崩壊論に走ったのが犬の飯さんのようなネット急進派

      *もっともウクライナ側からも不満の声は漏れてたものの、指揮系統がごちゃごちゃなうえ態勢が整わないまま攻勢に出てたロシア側からの声のほうが大きかった(両論併記)

      18
        • 2024年 7月 01日

        プリゴジンの告発もアゾフの告発も政争絡みなので100パーセント真に受けないほうがいいよ。
        彼らは軍や政治の主流派でなくこの戦争を利用して成り上がろうとしてる勢力なのだから。

        20
      • kitty
      • 2024年 7月 01日

      「ロシア軍の方はちゃんとローテート出来ている」が全くの嘘か一部の激戦地だけ例外の話なのかは真実はその間にあるのでしょうけど。
      ウクライナ軍ができていないというのはなぜか信用できるのですが。

      12
        • 理想はこの翼では届かない
        • 2024年 7月 01日

        もしくは「今まではローテーションが出来ていたが、負傷兵が多くなり過ぎてできなくなってきた」可能性もありますね
        アウディーイカ陥落までの激戦と、そこからの進軍で大きな損耗が出たと考えれば辻褄は合うかと
        別記事で志願兵の徴募状況の悪化という話もありますし

        16
      • baka
      • 2024年 7月 01日

      何処の軍でもネガティブな事は言われてます
      ウクライナであるとロシアでも不思議と湧いてきて
      微々たる物が大袈裟になる事が多く感じます
      ハリコフでロシア軍が有利かウクライナ軍が有利かで
      外国の戦況図を書いてくれてる方の意見が分かれてますね
      ウェブさんはロシア軍は危険でディマさんはウクライナ軍が撤退してると
      ボルチャンスク市内の戦況図は何方も北部はロシア軍が盛り返し
      南部はウクライナ軍の猛攻でロシア軍が後退してると言ってるんですが

      4
      • 名無しさん
      • 2024年 7月 01日

      当方も戦況記事をどちらが有利・不利、進んだ・退いた、あの兵器・この兵器と興味本位で眺めている様な者です。
      当然、生身の人間同士が戦闘してるので、どうなるかは理解しているつもりですが、プロパガンダの要素があるとはいえ、改めて記事として目の当たりにすると沈痛に駆られてしまいますね。

      10
    • つぐみ
    • 2024年 7月 01日

    ウクラナ戦争を通じて学んだことは、人間は無意識のうちに確証バイアスに陥ってネガ要因を過小評価、ポジ要因を過小評価するクセがあるから、ロシアとウクライナのどちらか一方に肩入れるすると実態を見誤ってしまうのではないかと

    アウディーイウカ陥落後のロシア軍の快進撃も永続的ではなく、ウクライナ軍と同様に疲弊していると認識すべきと思い知らされる

    44
      • NHG
      • 2024年 7月 01日

      ウクライナ侵攻に限らず、言ってるやつが気に入らないから認めないって層は結構いる(なぜ気に入らないかと言えば「自分の考えと違う(自分が認めてない結論を言う)から」というバイアスなんだけど)
      ここのコメントの「youtubeのコメントでは~」なんかも似たようなもので、わざわざ低質なものを見にいって「これが事実なわけない」と過小評価するパターンは結構ある

      15
      • 事実
      • 2024年 7月 01日

      旧Twitterのコミュニティノートのように「対立する意見の持ち主の間で意見が一致した情報」ってのが、現状ニュートラルに近づける唯一の方法かな?と思っている
      その意味においても、最低限DEEP STATEとRYBARの情報を比べるココは中立に近いと思っている

      34
    • 暇な人
    • 2024年 7月 01日

    流石に防衛戦ならまだしも侵攻戦で松葉杖をついた負傷兵を前線に送り返す必要性がよくわからないから胡散臭いなあ。
    ASTRAは前からロシアが戦線復帰を拒否した兵士を地下室に全裸で隔離して拷問しているとかセンセーショナルな記事を挙げているところではあるのだが
    結局あの続報とかどうなったのだろうか

    19
      • nachteule
      • 2024年 7月 01日

       マニュアルトランスミッションじゃ無ければ両手が無事で片足だけダメな人でも運転は出来る。平時と有事の違いがあると言われたらそれまでだけど、身の回りに骨折しても運転とかしている人見たことない?

       人命軽視でやっているようなロシアだとそれやっても不思議じゃない

      1
        • センツァノーメ
        • 2024年 7月 01日

        ロシア軍の車両って大半がマニュアル車なんですよね…

        12
          • 匿名
          • 2024年 7月 02日

          ロシアはじめヨーロッパは殆どの国がMT車が主流よ。つか、AT車の方が主流の国は世界でも日本やアメリカぐらい。

          1
        •  
        • 2024年 7月 01日

        ふつうに考えて松葉杖ついてる負傷者なんか戻って来たら部隊にとって足手まといのいい迷惑でしょうが

        21
          • nachteule
          • 2024年 7月 01日

           まともだろうがまともじゃなかろうが突撃させて死なせるなら、変わらないと思うけどね。普通に考えてが通じるならロシアはとっくの昔に戦争やめてるよ。

          1
            • 名無し
            • 2024年 7月 01日

            無理がある、確証バイアスなってやしないかい?

            4
    • ラプラプ
    • 2024年 7月 01日

    戦況図と併せて、そこがウクライナのどこなのか分かるように
    全体図があると助かります。
    航空万能さんの記事をフェイスブックでたまに紹介してるんですが、全体図があれば説明し易いです。
    私のような素人は地名を覚えるも大変で、示された戦況図
    がどこに位置するのか分からずちんぷんかんぷんです。
    ご検討よろしくお願いします。

    2
      • 774
      • 2024年 7月 01日

      UkraineControlMapが便利ですよ

      8
        • ラプラプ
        • 2024年 7月 01日

        ありがとうございます^ ^

        2
      • nachteule
      • 2024年 7月 01日

       流石にここの管理人にこれ以上の事を求めるのはどうかと思うけどな。それならツベで各方面ごとの戦況とか出している人も居るし、そこ見ても良いのでは中には過度にウクライナに傾倒しすぎてなるべくいいデータばかり採用するクズもいるけど。

       少なくとも自分で地図を見て地形とか標高とかどこにどんな拠点があるのとか見た方がためにはなると思うけどな。

      12
    • .
    • 2024年 7月 01日

    ソキル要塞を取ったことで晴れてオチェレティネから延びる線路沿いのルートが進めるようになった感じですね
    T504道路を最短で狙う部隊も同時に進みだしてますからソキルで一仕事終えた部隊が合流してきてるんでしょうか

    7
    • ななし
    • 2024年 7月 01日

    クソ雑魚ロシアはわずかな前進しかできない。
    戦況図だとジワジワロシアが前進している?そんなの関係ねえ!
    キエフまでロシアが占領できなければ我々(誰?)の勝利である。

    ロシアは兵器をどんどんアップデートし、経験豊富な司令官・兵隊が
    どんどん増産されているが、そんなの関係ねえ!
    スラブ人同士がタヒネテくれてるから我々(誰?)の勝利なのだ。

    10
    •  
    • 2024年 7月 01日

    ロシア軍が西に進んでどうするんだかさっぱりわからない
    確かにT0504を遮断すれば補給に多少の負担は与えられるだろうけどそれで輸送量が増えそうなコンスタンチノフカに至るルートはT0514にH20に鉄道路線にとだいぶキャパシティの余裕があるんじゃないか
    そこまでして遮断を目指すべきものとは思えない

    1
      • 匿名
      • 2024年 7月 01日

      地図見りゃ分かる筈だけど、その道路のすぐ西にポクロフスクというそこそこ大きな街があって、そこがドネツク州におけるウクライナ軍の補給拠点になっているから。地図上でも複数の鉄道や幹線道路が交差していて、素人でもすぐに要衝だと分かる。

      4
    • ak
    • 2024年 7月 01日

    F-16のウクライナへの実戦投入については、米軍その他のパイロットを乗せて参加させれば即座に出来る。
    と、ネットではずいぶん前から素人軍師殿たちの口に上っておりましたが。
    「海外の退役軍人によって確認されている」の言葉から、どうもその辺りを匂わせているような節が有りますけれど。

    ・露見した時に、他国による戦争行為だとして外交上の重大な事になり、事実上の参戦事項になる。
    ・そもそも整備その他を出撃可能なウクライナの基地で行うだけの訓練はまだ充分にはされていない(国外基地からの越境侵入は、上記同様に戦争行為そのものとなる)
    の二点からガセだろうと思います。

    今でも退役したことになっている他国の兵士が、訓練や指導目的でウクライナに多数入り込んでいるのは承知の事実ですが、攻撃機による「直接戦闘行為」とは次元が違いますから。

    13
      • jimama
      • 2024年 7月 01日

      加えてあんなデカくて目立つものが電子、光学的な一切の証拠もなく国境を越えてウクライナ国内に運び込めるかという問題もありますし
      飛んで来ればロシアのレーダーに捕捉されるだろうし、地上輸送ならウクライナ側のスマホ等々で撮られてtelegramあたりに投稿されるかで速バレするだろうし
      それこそ一旦バラして再度ウクライナ内の人目に触れない場所で組み立てとかでもしない限り必ずなにがしかの『目』に触れますから、そういう点でも疑問だなあと

      11
        • 無名
        • 2024年 7月 01日

        配備されてるパトリオットを撮影して公開した女性が拘束された例があるのでF16が運ばれるのを見ても誰もスマホを向けたりはしないと思います。

        2
    • たむごん
    • 2024年 7月 01日

    ウクライナ=ロシア、両国ともに末端の兵士には、本当に戦争のメリットがないなと感じます。

    >因みに露独立系メディアのASTRAは30日「ルハンシクの司令部は病院から負傷が完治していないロシア軍兵士を前線に連れ出している」

    2
    • 匿名
    • 2024年 7月 01日

    ASTRAだのMEDUZAだの、その手の独立系メディア()って大抵はロシア国外から発信してるから。それを日本で産経新聞や東スポあたりが流すのがお約束。

    4
      •  
      • 2024年 7月 02日

      なんでそんなに必死なのか理解できない
      ロシアがどれだけ凄惨な状況にあるか見ようともしないんだろうな

      1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP