ウクライナ戦況

ロシア領攻撃に米国製兵器の使用は不可、ウクライナは標的情報の提供を要請

ウクライナを訪問したブリンケン国務長官は「ロシア連邦領内への攻撃に反対しない」と述べたが、これは「米国製兵器を国外攻撃に使用しても良い」という意味ではなく、国防総省のシン報道官も「我々の立場は変わっていない」と発言した。

参考:Ukraine Asks U.S. to Provide More Intelligence on Targets in Russia

米国の立場に変化が起こるのか、従来の立場を維持するのかは検討結果が出るまで誰にも分からない

ウクライナは国産の自爆型無人機でロシア連邦領の製油所を攻撃しているが、バイデン政権は「エネルギー価格の上昇」が欧州のウクライナ支持を弱める可能性を危惧し、ハリス副大統領はゼレンスキー大統領と会談して「ロシア連邦領にある製油所への攻撃を控えてほしい」と要請したが、ブリンケン国務長官は14日「我々はウクライナ国外への攻撃を奨励したり、その能力を提供したりしないが、この戦争をどのように戦うかはウクライナが決めることだ」と述べた。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

ブリンケン国務長官は「米国製兵器によるロシア連邦領内への攻撃を認めるのか」という質問への回答を控えたが「ウクライナがロシア連邦領内を攻撃することに原則反対してない」と述べたため、ウクライナメディアは「米国が従来の立場を変更した」と報じたものの、国防総省のシン報道官は17日「ウクライナ領内でのみ米国製兵器を使用できるという方針を変更したのか」という質問に「我々の立場は変わっていない」と述べ、ウクライナが米国兵器を使用してロシア連邦領内を攻撃すること許可していないと示唆。

New York Timesも17日「ウクライナはバイデン政権に対してロシア軍の位置やロシア連邦領内の軍事目標についてより多くの情報提供を要請した」「米議会の議員と会談した最高議会の議員グループは米国兵器によるロシア連邦領内への攻撃を許可してほしいと要請した」と報じており、ブラウン統合参謀本部議長も「ウクライナはロシアへの攻撃を可能にする支援を求めている」「この支援要求は広範囲に及ぶ内容で特定の兵器システムに関するものではない」と述べたが、同時に「今のところウクライナによるロシア連邦領内への攻撃に何の支援も提供していない」と付け加えた。

出典:U.S. Air National Guard photo by Technical Sgt. Luke R Sturm

バイデン政権はウクライナの要請(標的に関する追加の情報提供)を検討し始めているが、New York Timesは「過去に同様の要請が却下された」と報じており、米国の立場に変化が起こるのか、従来の立場を維持するのかは検討結果が出るまで誰にも分からない。

追記:ブリンケン国務長官が言及した「ウクライナがロシア連邦領内を攻撃することに原則反対してない」という言葉の意味は「ウクライナが国産兵器(ロシア領内への攻撃を許可された他の国の兵器も含む)でロシア連邦領内を攻撃すること反対しない」で、米国が従来の立場を変更したという部分は「ロシア連邦領の製油所を攻撃するのはウクライナの自由」という意味だ。

関連記事:ハルキウ方面の戦い、ロシア軍は複数方向からリプシに迫っている可能性
関連記事:ゼレンスキー大統領、ロシア軍のハルキウ方面における突破は最大10km
関連記事:ウクライナ人ジャーナリスト、敵はリプシから2kmの地点に迫っている
関連記事:ロシア軍の優位性が消滅する条件、欧米の武器供給とウクライナ人の追加動員

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S Army Photo by John Hamilton

ハルキウ方面の戦い、ロシア軍は複数方向からリプシに迫っている可能性前のページ

ザポリージャ方面の戦い、ロシア軍がロボーティネの大半を占領した可能性次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ロシア軍がヘルソン州の拠点を放棄して後退、噂されていた撤退の予兆?

    ウクライナ軍参謀本部は22日「ロシア軍がヘルソン州のチカラブとシャリー…

  2. ウクライナ戦況

    クラファンでウクライナ軍支援、ポーランド人もTB2購入資金の調達を開始

    リトアニア人やウクライナ人に続きポーランド人もロシア軍と戦うウクライナ…

  3. ウクライナ戦況

    ハンガリーが方針転換、自国領を通過するウクライナへの武器輸送を容認

    ウクライナのリヴィウを訪問したハンガリーのマディアル外務次官は19日、…

  4. ウクライナ戦況

    ロシア国防省がクピャンスク方面のタバイフカ解放を発表、ウクライナは否定

    ウクライナ軍やDEEP STATEはクピャンスク方面について「ロシア軍…

  5. ウクライナ戦況

    破壊されるウクライナ経済、ロシア軍の攻撃で500万人が職を失う

    ウクライナのベレズナ経済副大臣は「現在も1,000万人の労働者が雇用さ…

コメント

    • チョコ
    • 2024年 5月 18日

    こういうことはグレーにしておくほうが抑止力として機能するのに、ブリがウクライナに「ウクライナがロシア連邦領内を攻撃することに原則反対してない」というリップサービスをするから、話が大きくなり結局「我々の立場は変わっていない」と釈明せねばならなくなる。

    37
      • F-117A
      • 2024年 5月 18日

      我々の立場は変わっていないと、グレーにしているような。

      11
    • ホテルラウンジ
    • 2024年 5月 18日

    この戦争をどのように終わらせるかになりますよって攻撃対象変わりますよね
    1.ロシアの収入源を絶つ⇒石油・ガス採掘精製施設
    2.ロシアのプーチン支持層の国民を困窮させてプーチン政権崩壊を狙う(ロシアによるウクライナ側の発電施設攻撃を辞めさせる)⇒モスクワ等大都市に電力を供給してる発電所、変電所
    3.ロシア軍を破壊する⇒ロシア軍の兵站・部隊・軍需工場
    中高生の恋愛じゃないねんから、こんな「何をするのもウクライナの自由ですよ、でも私のせいになるような事はちょっと」みたいなモゴモゴした物言いを言ってるようであればウクライナ側はこの3つを示して「お前はどのパターンで戦争を終わらせるアプローチが良い?」と尋ねたら良いと思いますわ
    こう3つ出したらバイデンハリスコンビは3だけであればロシア領内でも使っていいよみたいな話もあり得なくはないんじゃないでしょうか
    ウクライナ領内に入ってきたロシア兵だけに使っていいという縛りであれば入ってきたものを片っ端から叩けるだけの物量をアメリカは提供できんの?という話になりますからね。
    出せるとなった場合でもそれって中国戦の為に積み上げないといけない弾薬貯蓄の増加ペース鈍りますよねという話でもありますしね。
    ただ今アメリカは別で中国に圧力をかける形でロシアに軍事転用可能な物品がロシアに流れないように動いていますから、これが成立すればロシアは一気に武器弾薬の製造ペースが鈍って弱体化します。
    そっちの方向での手応えがありそうであれば、ロシア領内への直接攻撃というリスクを取る必要は無いでしょうからね。
    モゴモゴ言ってるのが中国への圧力が効きそうになってるからリスク取る必要が無くモゴモゴしてるのであれば良いですけど

    11
      • 幽霊
      • 2024年 5月 18日

      ある意味ロシアにとってはウクライナによる国内に対する全面攻撃は歓迎するかもしれませんね
      攻撃を受ければ当然プーチン大統領に対する不平不満も高まるでしょうが、それ以上にウクライナに対する反発も高まるでしょうから現状の限定的な動員では無くより大規模に戦力の増員などが行いやすくなるかもしれません。

      36
        • たむごん
        • 2024年 5月 18日

        まさに仰る通りです。

        モスクワ3月のテロにより、志願兵が大幅に増えたという指摘もあり、同様のリスクは極めて高いでしょうね。

        (2024年04月04日 銃乱射テロ2週間で「志願兵増」 ウクライナ黒幕説信用か―ロシア 時事通信)
        (2024/5/9 ロシア志願兵「年初から10万人増」 3月のテロで“復讐心”形成か 毎日新聞)

        21
      • 名無しの悪夢
      • 2024年 5月 18日

      ウクライナ支援の人そこまで考えてないと思うよ

      8
    • 阿呆
    • 2024年 5月 18日

    ロシア領に対する攻撃は10倍返しとなって返ってくる事を学習しないんだな。現状、発電所の破壊やハリコフ再侵攻と最悪な事態の引鉄になっているね。

    48
      • M
      • 2024年 5月 18日

      このままでは負けるからアメリカ巻き込みたいんだろうな

      26
      • F-117A
      • 2024年 5月 18日

      10倍返ししてくれたら、他のところの被害が1/10になるんじゃね?

      3
        • cosine
        • 2024年 5月 18日

        その10倍返しってのは遮二無二になってやるようなものでは全くなく「あっそうじゃあもう自重せんわ」でさもなくやることが結果的にウクライナの10倍規模になるというだけなんよ

        46
      • なな
      • 2024年 5月 18日

      ロシアの石油施設破壊!インフラ攻撃でロシア崩壊寸前!からの
      報復攻撃で数日で火力発電所の殆ど全てを破壊されるは流石に酷すぎましたね…。
      今回の攻勢も自由ロシア軍の無意味な越境テロ攻撃の結果ですし、
      場当たり的なロシア本土攻撃が全てウクライナへの破滅的結果を招いています。

      55
        • たむごん
        • 2024年 5月 18日

        仰る通りです。
        ウクライナの発電所が破壊されすぎて、計画停電ではない停電が発生していますね。

        電力需給バランスが崩れて、どうしようもくなっているように見えます。

        26
      • jimama
      • 2024年 5月 18日

      あいつら約束全然守らんから手ぇ引くわ
      ここやばいから守れ、引けって言っても人の忠告全然聞かんし
      援助してもらってるのに態度悪いし
      何よりうちら(NATO)最初っからこの戦争に反対してたけどあいつ(ゼ)がやりたがっただけで、キエフ包囲されたとき降伏するはずだったの土壇場でひっくり返したのもあいつ(ゼ)だったし

      (真偽は別として)こう、なる可能性もあるってことをもう少しウクライナ政府関係者は考える必要あると思う

      37
        • 名無し
        • 2024年 5月 18日

        ウクライナが2021年にドローン空爆を東部ロシア人地域への攻撃に取り入れて、ロシアが国境に兵を並べた後も、自制が利かず、砲弾撃ち込んだ結果、自滅している現状を見る限り、ゼレンスキー政権が勝手に戦争やりたがった感は否めない。

        ロシアも欧米も過激な東部弾圧政策に巻き込まれた印象はある。

        17
      • 樺太
      • 2024年 5月 20日

      そもそもロシアは全面侵略戦争を仕掛けている側であって核兵器の使用以外は何でもやっているに等しい

      マクロン仏大統領の言う通り「ロシアに勝利させないためには、何ごとも除外するべきではない。何故なら何ごとも除外していない相手だからだ」ということである

        • 飯田
        • 2024年 5月 20日

        今時ロシアが全面侵略者ウクライナは被害者なんてハリウッドを謳いあげているのはヤフゴミとマスゴミぐらいなもん。
        のび太を執拗に虐めたスネ夫がドラえもんの道具で仕返しされて泣いてるようなもん。
        自業自得でしょうが。

    • たむごん
    • 2024年 5月 18日

    アメリカは、海外基地や大使館が、世界中にありますからね。
    特に中東は、ガザ紛争をきっかけにして、米軍基地への攻撃が多発しています。

    ロシアが、ロシア製の武器を同じように使用許可することに繋がるため、安易にOKは出せないのでしょう。
    ウクライナ戦争後、ロシア製の武器が大量に余剰になる事は、軍需生産の大増産により既に確定しているからです。

    25
      • あるまじろ
      • 2024年 5月 18日

      ロシア兵器が対米戦(非正規込)に使用されるって
      いまもそうじゃ?

      6
        • 2024年 5月 18日

        ランセット等の安価なドローンをイランや北朝鮮に大量輸出したら厄介な事になるだろうね。
        ウクライナの水上ドローンも研究しているだろうから中東の米艦隊には脅威になるのでは?

        27
          • たむごん
          • 2024年 5月 18日

          仰る通りです。

          日本なんか、宗谷海峡・津軽海峡・大隅海峡・対馬海峡は、さらに狭い設定ですから最悪ですよ…
          水上ドローンが、領海ギリギリを走り回ってるとか嫌ですよね。

          フーシ派が、シーレーンを破壊しましたが、世界で似たような事が発生するリスクが高まってしまいます。
          アメリカ軍は、弱体化が止まらないですが、その負担をさらに増やす事に繋がってしまいますね。

          24
    • cosine
    • 2024年 5月 18日

    アメリカがウクライナに10年以上絡み続ける「約束」を違えることは基本的に無いと思いますよ。 ウクライナ人が反乱しない限りは。
    ただし、民主体制の防衛としてではなく「アメリカの敵」への破壊工作要員などの下僕扱いとしてでしょうが。

    「借金」を返済する術を失った者が逃れさせてもらえるはずなどないのであり、最後は身体と生命まで絞り取られるしかありません。
    ブリンケンは、ゼレンスキーの任期が切れる前に「ウクライナ大統領」の署名がなされた血判でも押させに行ったのでしょう。
    血判押した人間は、その後脱出成功さえすれば何故か取り立て側にしれっと連なってるでしょうけど。

    19
      • マミー
      • 2024年 5月 18日

      アメリカが支援した国って大抵反米になってね?

      31
        • F-117A
        • 2024年 5月 18日

        ロシア、中国、イランはアメリカがかつて支援した国で反米だな。

        19
          • 2024年 5月 18日

          アフガンもね

          18
            • イーロンマスク
            • 2024年 5月 18日

            イラクもだな

            10
              • 犬の〆
              • 2024年 5月 20日

              ベトナム、キューバもね。

    • 黒丸
    • 2024年 5月 18日

    兵器の国産化は本当に大切ですね。
    こんなロシアに聖域を提供するようなハンデを受けてしまうとは。
    日英伊で共同開発のF-3は大丈夫でしょうか?

    7
      •  
      • 2024年 5月 18日

      聖域を提供するのではなく、無制限戦をやれば国力で大幅に劣るウクライナの方が圧倒的に不利なんだから限定戦争の構図を崩す要素を与えるなと言っているんだよ
      戦場をドンバスに限定すれば互いに投入出来る戦力が限られる
      ウクライナが総動員体制を取りながらロシアに総動員体制を取らせなければ戦力の均衡が成り立つ
      なのにウクライナは自らその構図を崩しにいった、結果今の状況を作り出した

      2
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 5月 18日

    ブリンケンの勇み足だったのか、表向きは「許可していない」けど裏側では許可済みなのか
    大っぴらにやりだしたら倍返しされるのは目に見えてますが、やらないとドローンでしか奥地への攻撃ができない
    さてはてどうなることやら

    9
    • たぶ
    • 2024年 5月 18日

    ウクライナがロシアの都市部のインフラ破壊できれば情勢は一気に変わるのにね
    中距離ミサイルでもアメリカは支援できないものか

    2
    • nk
    • 2024年 5月 18日

    1.無条件降伏。2.領土割譲して停戦。3.衛星国化で停戦。4.現在の領域で停戦。5.完全膠着で継戦。
    ウクライナ側は現実的に上記のどれかではと思うが、まあ朝鮮半島みたいな感じでもいいなら4か5目指して頑張って欲しい。
    私は未来のこと考えるなら、2で手打ちするのが良いとは思うが間違っても、全土奪還めざすのは諦めるべき。
    ロシアは最悪、核戦争の覚悟も固めていると思うし西側はとてもそんな覚悟無いのだから、ウクライナには悪いが支援すら辞めるべきだと思ってる。
    力による領土変更うんぬんは所詮、戯言に過ぎずない理想論。
    イスラエルとのダブルスタンダードが醜くて仕方無い。

    33
      • hoge
      • 2024年 5月 18日

      散々既出だけれども、ウクライナには何の決定権もない。
      ロシア側の「ウクライナの非ナチ化が目的」という点は全く変わっておらず、停戦だの何だのは、それこそウクライナに都合の良い想定にすぎないし、停戦は簡単に破られるので、準備が整ったロシアが再侵攻するだろうと言われている。
      つまり、1.か5.しか選択肢がなく、1.を避けようとすると5.に持ち込むしかない。
      5.も難しいとなるとジリジリと後退を続けながら戦い続けるしかなく、つまり八方塞がりで詰んでいる。

      9
        • 名無し
        • 2024年 5月 18日

        アメリカ様がどっかでタオル投げてくれるやろ

        2
          • 名無し
          • 2024年 5月 18日

          投げるのは匙の可能性も。。。

          14
    • あかんて
    • 2024年 5月 18日

    ブリンケン発言を聞く限りは
    「アメリカは許可も賛成もしてない」
    「仮にあってもウクライナが勝手にやってる」
    としか聞こえませんでした

    あれをどう解釈したら許可になるのか
    私の足りない頭ではわかりませんでした
    超賢いマスコミの方の解釈は違うようですが
    火消ししてるから私の理解が正しかったのかな

    29
    • 暇な人
    • 2024年 5月 19日

    メディアの報道と違うなというかメディアの報道が勇み足すぎるんだよなあ。
    もしそんなの認めたら、世界中の米軍基地にロシア製兵器で攻撃が多発するようになる。
    ロシアは兵器をどう使うかは自由だと言い張るだけでよくなる

    6
    • ひまじん
    • 2024年 5月 19日

    ロシア領攻撃を認めないともう負けると思う

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP