ゼレンスキー大統領とメルツ首相は5月末「長距離攻撃兵器の共同購入を行う」と発表、数週間以内に配備される可能性に言及していたが、射程3,000kmの巡航ミサイルが量産・運用段階に入ったことを示す画像と映像が登場し、ロシア人は「英国製だと嘲笑するのは間違い」「これは本物の脅威だ」と警告した。
参考:З’явились фото української ракети “Фламінго” з дальністю 3000 км
参考:«Фламінго» від FirePoint: ексклюзивні відео випробувань та бойових запусків крилатої ракети
参考:MILANION FP-5
これまでのような長距離ドローンの破壊力とは次元が異なるため、今後も戦争が継続すればロシア産業界は大きなリスクに直面するだろう
ドイツのメルツ首相はWDR Europaforumで「我々は軍事的支援を含めてウクライナ支援継続に全力尽くす」「もうウクライナに供給されている英国、フランス、ドイツ、米国の武器に射程制限はない」「ウクライナは供給された武器を使用してロシアの軍事目標をどこでも攻撃可能だ」「ロシアは容赦なく民間人を攻撃し、都市を爆撃しているがウクライナはそんなことをしていなし、今後もそうあるべきだ」「しかし、自国領内でしか侵略者に対抗できない国は十分な自衛ができない」と発言。

出典:Ukrainian Air Force
この射程制限解除発言の真意についてメルツ首相は5月27日「射程制限の問題は数年前から問題になっていた。昨日も申し上げたように射程制限を課していた国々は既に本要件を放棄している。この点に関して言えば昨日の発言は『ここ数ヶ月間に起こっていること』について述べた、つまりウクライナは国境を越えてロシア連邦領内の軍事目標に対し、受け取った武器を使用する権利を持っているいうことだ」と説明し、これを額面通り受け取れば「ここ最近のウクライナに対する大規模攻撃に基づく新たな措置」ではなく「過去の取り組みに言及しただけ」という意味なる。
但し、メルツ首相は首相就任直後「もう個別の兵器提供について公には議論しない」「国民への情報公開を中止するわけではないがロシアに情報を与えたくない」と述べ、これはマクロン大統領の「戦略的曖昧さ」を真似たものと見られており、ドイツのワーデフール外相もKEPD350のウクライナ提供について「個別の兵器システムについて何も発言しない」「我々はロシアに何を行うのか知る機会を与えない」「ドイツはウクライナを軍事的に支援し続け、ウクライナが自国を防衛し、ロシアが侵略戦争を継続できなくするようにする」と述べていたが、5月末にドイツは具体的な行動を起こした。

出典:Президент України
ゼレンスキー大統領は5月28日にベルリンを訪問してメルツ首相と会談、両者は会談後の記者会見で「両国はウクライナ企業が製造した長距離攻撃兵器の共同購入に関する覚書に署名する予定だ」と発表、さらにメルツ首相は再び「もう長距離攻撃兵器に制限はなく、ウクライナは自国を完全に防衛できるようになり、ウクライナ領外の軍事目標も攻撃できるようになる」と述べ、ドイツ国防省も「両国の国防相が長距離攻撃兵器への資金援助に関する協定に署名した」と発表。
ドイツ国防省は協定の詳細について「ウクライナにおける長距離攻撃兵器の製造に資金を提供する」「この合意はドイツがウクライナの兵器生産に直接投資するという約束に基づいたもの」「資金を提供するウクライナ企業には活用されていない生産能力と最新システムを製造できる技術的知識がある」「最初の長距離攻撃兵器は数週間以内に配備される可能性がある」「2025年中に相当数の長距離攻撃兵器が生産される予定だ」「これは既にウクライナ軍に導入されているため追加の訓練は必要ない」と述べている。

出典:Efrem Lukatsky
発表内容をバカ正直に受け取れば「ドイツはウクライナ企業が開発した長距離攻撃兵器=弾道ミサイル、ネプチューン、パリャヌィツャ、トレンビタなどの製造に資金を投入する」と解釈できるが、ドイツが何に資金を投資したのか遂に判明し、ウクライナ人ジャーナリストのエフレム・ルカツキー氏が17日「国内の極秘工場で量産中のフラミンゴミサイル」を移した画像を公開、ウクライナメディアのДзеркало тижня(ZN.UA)も18日「フラミンゴミサイルの実弾試射と発射訓練の映像を独占的に入手した」と報じた。
“ウクライナのFIRE POINT製巡航ミサイル=フラミンゴミサイルが世界に公開された。最初の映像はロシア連邦領内の標的に対する実弾試射、次の映像は実戦状態でのミサイル発射が成功する様子で、同社はカルパティア山脈の森林保護区内に工場を構え、数ヶ月前にフラミンゴミサイルのテストを成功させて量産に取り掛かった。フラミンゴミサイルは国産巡航ミサイルにとって重要な3要素、つまり射程距離、弾頭重量、迅速な展開と発射能力に重点を置いて開発され、この3要素はフラミンゴミサイルによって完全に実現された”
“フラミンゴミサイルの射程距離3,000km、弾頭重量1,150kgで、これまでウクライナ製長距離ドローンで到達できなかった目標を破壊できるようになる。このミサイルのナビゲーションシステムもロシアの電子戦システムから保護されており、テストでロシア連邦領内の目標を攻撃するのに成功した”
恐らくフラミンゴミサイルはFIRE POINT製のオリジナルではなく、英国のMILANIONが2025年2月にIDEX2025で発表した「FP-5」のライセンス生産もしくは「FP-5のカスタムバージョン」で、オリジナルのFP-5は射程距離3,000km、弾頭重量1,000kg、発射重量6トン、固定翼幅6m、巡航速度850~900km/h、飛行時間最大4時間、ナビゲーションシステムは慣性航法システムと妨害耐性を備えたGPS航法システムを備えており、FP-5の特徴は低コスト巡航ミサイルに類似し「限りなくシンプルに設計され量産性に優れている」という点だろう。
運用方法は車輌に搭載した地上発射方式、しかもコンテナ方式ではなくむき出し搭載で、発射準備を迅速に完了させるための支援機器も最低限しかないため、FP-5の発射準備には20分~40分ほどかかるため高度な巡航ミサイルと比べた場合の即応性は酷いものだが、これは設計のシンプルさ、構造の簡略化、取得コストの引き下げ、量産の容易さを追求した結果であり、地上発射のみしか考慮していないウクライナにとってFP-5のデメリットは大きな問題にはならず、このシンプルさは逆に国内量産を立ち上げて軌道にのせるに好都合だ。
個人的な予想に過ぎないが、ウクライナは2月に発表されたFP-5の国内生産とテストに取り掛かっていたものの、ドイツがFP-5の生産ラインの立ち上げや量産に必要な資金を供給した可能性が高く、ドイツ国防省の言及内容(最初の長距離攻撃兵器は数週間以内に配備される可能性がある)とフラミンゴミサイルの登場時期も概ね一致するため、ゼレンスキー大統領とメルツ首相が署名した「ウクライナ企業が製造した長距離攻撃兵器の共同購入に関する覚書」はフラミンゴミサイルの購入のことだったのだろう。

出典:Президент України
因みにMILANIONは「FP-5は月50発以上生産できる」と紹介しており、もしFIRE POINTの生産ラインがMILANIONの言及に類似したものなら「2025年末までに200発近いフラミンゴミサイルを生産できる」「1年で600発近くのフラミンゴミサイルを生産できる」という意味になり、フラミンゴミサイルの弾頭重量=破壊力もトマホークの2倍以上なので、これまでのような長距離ドローンの破壊力とは次元が異なるため、今後も戦争が継続すればロシア産業界は大きなリスクに直面するはずだ。
RYBARも「ストームシャドウやタウルスは危険な巡航ミサイルだが非常に高価だった。新たに登場したフラミンゴミサイルは大量生産が可能な安価な攻撃手段であり、しかも空中プラットフォームではなく地上プラットフォームからの発射に対応している。ウクライナがFP-5を自国製と称していることを嘲笑するのは間違いで、このミサイルは確実に我々を攻撃することができるものだ」と指摘。
АРХАНГЕЛ СПЕЦНАЗАも「ロシアはウクライナ製弾道ミサイルの生産基盤を攻撃することに成功した」「ウクライナはフラミンゴミサイルの量産風景を公開することで長距離攻撃兵器の生産基盤が健在であるとアピールしている」「我々にとって重要なのはフラミンゴミサイルの量産が我々を欺く嘘かどうかではない」「これは単なる情報戦ではなくフラミンゴミサイルの実戦投入が間近に迫っている兆候だ」「我々はフラミンゴミサイルによる攻撃に備えなければならない」「公表された射程3,000kmはブラフかもしれないが1,000km~2,000kmであっても我々の後方に深刻なリスクをもたらす」と警告している。
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※アイキャッチ画像の出典:Дзеркало тижня





















まあ新型巡航ミサイルにウクライナが絶対の信頼を置いているならロシアと停戦する事は無いでしょう
後はロシアが新型巡航ミサイルで国内産業に大きな被害が出た後どう対応してくるのかでしょうね
ミサイル防衛は、生産コストと生産量で負けてしまうことが、はっきりしました。
結局、迎撃だけではダメで、十分な報復能力を持つのが現実的ということですか。
またロシアは少々のミサイル攻撃を撃ち込まれた程度では、核兵器は使わないという相場観ができましたね。
>「英国製だと嘲笑するのは間違い」
兵器開発に関する英国面って世界共通の認識なんだな・・・
リビウ(ウクライナ西部)~モスクワに余裕で届きますし。
リビウ(ウクライナ西部)~ロシア領で軌道変更~サンクトペテルブルクも届く射程になりますね。
外交面で効果を見込める射程なわけですが、近々の紛争で重要性が指摘されている、『生産コスト・量産性』がどの程度になるのか気になりますね。
それに加えて攻撃精度もどの程度あるかも重要かと思われます
巡航ミサイルは当たらなければ弾頭重量に対して効率が悪いシステムですしトマホークの倍と言っても1tでは工場の破壊には直撃されなければ効果がありません
また中間誘導システムとして言及されている慣性航法とGPS航法のみで1000km以上の長距離を飛行するのはいまいち頼り無い印象を受け高確率で目標に到達出来るのかは疑問です
自爆ドローンみたく数撃てば何割かは目標に到達するみたいな運用が想定されているのでしょうかね?
仰る通りですね。
攻撃精度によって運用が変わるでしょうし、どういった運用を想定しているのか興味深いですね。
ロシアが公開するイスカンデルMによる攻撃動画では無人機のカメラで撮影されていることが多いので従来の誘導システムに加えて無人機も活用しているのでしょうね
「我々はロシア領土を攻撃することを認めない」
ヨーロッパは最初こう言ってましたね
まともな着地点を考えもせず、ゴールポストを延々と
ずらし続ける。いつも楽観的な妄想に浸っている
ロシアを経済制裁と膨大な軍事支援で打ち負かすはずが
強烈な反撃を受け、慌てふためき軍拡に走り、市井の市民は
物価高騰と軍事費の税負担増額を強要される
欧米市民は地獄絵図ですね。不満も高まっているようですが
しばらくはこんな状況でしょう。我が国はまだマシですな
イギリスとドイツは戦争をする覚悟を決めたのかもしれませんし、ウクライナという盾が擦り切れるまで使い潰すのかもしれません
もう好きにしろとしか言いようがない
3,000kmといえば、ウラル以西のロシアの工業地帯ほぼ全てを狙える射程ですから、事実であればロシアにとってかなりの脅威ですね。
今の時期だと、示威行為として工業地帯へ集中的に撃ち込み、停戦交渉を有利にっていうアプローチも個人的にはあり得ると思うのですが、プーチンやTACOちゃんがどんな反応するかが全く読めません…。
とっととケリ付けてウクライナへの支援を止めたい米国・トランプと、再軍備が済むまでウクライナには肉壁をやって欲しい欧州の温度差よ。
とっととケリをつけたいなら米帝の物量でさっさと潰しておくのが一番だろう
理想を言えばイラクみたいにするのが一番いいだろうがな
フライングタイガースみたいな義勇航空隊を作るのもいいだろう
どうなんでしょうね。トランプは徹底して戦争をコストと捉えていると思いますよ。
それにトランプがいなくても、アメリカにとって戦争にかかる費用が著しく高くなってしまったこと、さらに国内で不満・分断が進み従前の価値観の共有もなく、自軍の兵士が死ぬような状況に政権が耐えられないという現実のなかで、今までのような戦争はもうできないのは自明なので
>米帝の物量でさっさと潰して
という夢は夢として、そういう時代はもう終わったと思うのが正解だと思います。
やっぱり有限のミサイル防衛だけじゃ矛がないとダメですね
これはV1飛行だn……いや、実にシンプルで洗練されたデザインですね。12式ERの弾頭重量が推定200kgとかだったはずで、弾頭重量1.2トンは相当に重いミサイルですな。
大真面目に、ロシアの戦争継続能力への最もコスパの良い対処法はこれでしょうね。ロシアはその国土の広さ故に高射部隊への投資が相対的に不十分で(規模で言えば世界有数ですが)、満足な防空能力が提供されているのは西側正面に属する南部軍管区とモスクワ地域、あとは個別の軍事インフラがあるコラ半島や極東に限るそうです。防空とは免疫のようなもので、たとえ防げる攻撃でも継続的にストレスをかけ続ければ徐々に消耗しやがて穴が空いたり機能不全に陥ります。「飽和」を狙うほどではなくとも、遠隔地にある化学プラントや鉄工所といった重要拠点に継続的に経空攻撃の圧をかけていく意義は今までの全ての支援と釣り合うくらい価値のあるものに見えます。
このフラミンゴミサイルを1日に500発ほどロシアに発射出来る様になれば、かなりの戦果が期待できそう‥
戦略目標もそうだけど、飛行場や大規模なドローン発射拠点も叩ければなおよし。『命中すれば』橋とかも壊せそうですよね
そういう国民性だ。しゃーない。
だから東欧で国家主権を持っていられる