欧州関連

ポーランド陸軍、憂慮すべき事態が発生すれば躊躇なく武器を使用する

ポーランド陸軍のソコロフスキー少将は「ベラルーシ国境で憂慮すべき事態が発生すれば躊躇なく武器を使用するだろう」と、ラトビア国境警備隊のプジャッツ司令官も「国境地域の状況は侵略の兆候を示している」と述べており、NATOの東側地域では急速に緊張が高まっている。

参考:Wojsko przemieściło śmigłowce na Podlasie. Gen. Sokołowski: Piloci nie zawahają się otworzyć ognia
参考:Łotewska straż graniczna: Możliwa agresja z Białorusi
参考:Robežsardze novēro agresijas risku, bet dienesti gatavi aizsargāt austrumu robežu

参考:Baltkrievijā ir 4000 “vāgneriešu”, uzskata Lietuva un Polija

ベラルーシと国境を接するポーランド、リトアニア、ラトビアは即応体制に入ったと言っても過言ではない

ポーランドのモラヴィエツキ首相は先週「約100人のワグネル兵士がベラルーシ西部のグロドノを経由してスヴァウキ回廊に向かっており、この兵士が移民を装って国境を越えてくるかもしれない」と発表、ヤブロンスキー外務次官も現地メディアに対して「ベラルーシ軍とロシア軍による挑発行為が今後増えるかもしれない」と述べていたが、1日にベラルーシ軍のMi-24とMi-8がポーランド領空を侵犯したため緊張が一気に高まっている。

スヴァウキ回廊とはポーランド、リトアニア、ベラルーシ、カリーニングラード(バルト海に面したロシア領の飛び地)が国境を接する地域のことを指し、領空侵犯(ベラルーシ側は事前に訓練を行うと通告したものの超低空で国境に接近してきたらしい)が発生したのはスヴァウキ回廊から約140km離れたポドラシェ県ビャウォビエジャ付近なので、この2つの事例に関連性があるのかは不明だが、3日にリトアニアのナウセーダ大統領と会談したモラヴィエツキ首相は「4,000人を超えるワグネル兵士がベラルーシ国内にいる」と明かした。

モラヴィエツキ首相はナウセーダ大統領との会談後「両国が入手した情報は非常に似通っており、ベラルーシ国内に存在するワグネルの数は4,000人を超えている。その内の何人かは国境近くまでやって来てグロドノ地域に陣地を構えている。我々にとってワグネルは特別な脅威でNATOの東側地域を不安定にさせるためやって来たのだ。これは本物の脅威でNATOも確認している。プーチン大統領はポーランドとリトアニアに混乱を引き起こして情勢不安を作り出そうと狙っている」と指摘。

ナウセーダ大統領も「グロドノはリトアニアとポーランドに挑発行為を仕掛けるのに都合のいい場所だ」と付け加えているが、ラトビア国境警備隊のプジャッツ司令官も現地メディアに「国境地域で示された状況は侵略の兆候を示しているものの、我々は国境を守る準備が出来ている」と明かし、国境地域の情報を全て開示することは出来ないものの「向こう側にいるのはベラルーシの国境警備隊だけではない」と警告して注目を集めている。

ポーランド陸軍も領空侵犯を受けて第1空挺旅団と第25空挺旅団のヘリコプター部隊をベラルーシ国境地域に配備、ソコロフスキー少将は「(国境地域に配備された)部隊は武装しており戦闘準備は整っている。ここには実戦で武器を使用した経験をもつパイロットが揃っている。彼らは非常に経験豊富で憂慮すべき事態が発生すれば躊躇なく武器を使用するだろう」と述べており、ベラルーシと国境を接するポーランド、リトアニア、ラトビアは即応体制に入ったと言っても過言ではない。

一般論で言えば「ウクライナと戦争中のロシアが今直ぐNATO加盟国に手を出すわけがない」という結論になるが、もはや常識が通用しないかもしれないので「何も起こらない」と断言しにくくなっている。

関連記事:ベラルーシの核兵器配備、ポーランドがNATOに核兵器の国内配備を要請
関連記事:ポーランド、ロシア領カリーニングラードを封鎖するための壁建設を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Mariusz Błaszczak

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コメント

    • パセリ
    • 2023年 8月 04日

    死者が出るよう事態になるならNATOとして大手を振ってベラルーシを爆撃するだろうし、むしろベラルーシ軍が止めそうだけどね
    開戦前の”強いロシア”なら兎も角、今のボロボロなロシアが後ろ盾じゃあ火遊びなんかしてられんだろ

    29
      • 七面鳥
      • 2023年 8月 07日

      常識では全くの同意なのですが、その「まさか」が起きた時に戦争が勃発するのが世の常かと愚考する次第。
      油断は、禁物でありましょう。

    • 廉価
    • 2023年 8月 04日

    嫌な世の中になった。
    独裁者は理性や理屈を持っていないので、何一つ予想することができない。
    本当に行くところまで行くのではないかと不安になる。
    使い古された第三次世界大戦というのも完全には否定できないのだろうか。

    39
    • 2023年 8月 04日

    常識的に考えると無いんだけど
    プ帝があくまでソヴィエト帝国の復活を夢想し
    バルト3国の併合を絶対条件と見据えているのなら
    NATOの大軍拡が軌道に乗る前に事を起こすのは
    全く有り得ない選択肢でもない

    いや、まあ。普通に考えたら無いんだけど

    30
    • ajem
    • 2023年 8月 04日

    NATOとの緊張状態を高めて和平交渉でもやりたいのかね?
    緊張緩和の代償にウクライナ支援やめろとか

    まあ弱小ベラルーシ軍とワグネルのみでは全く脅威にならないし
    核恫喝も、これに屈した前例を作る訳にはいかないので無駄っすな
    穀物焼いたり世界から顰蹙買うだけの結果になりそ

    7
    • sage
    • 2023年 8月 04日

    国防に真剣なポーランドは対応に安心感あるな。これがドイツや我が国ならどんな反応をするやら。毅然と対処する事で侵攻を防ぐ良い事例となる事を期待してます

    23
    • 58式素人
    • 2023年 8月 04日

    ”プーチン大統領はポーランドとリトアニアに混乱を引き起こして情勢不安を作り出そうと狙っている”
    これにモラヴィアを加えておいた方が良いと思います。
    正規軍ではなく非正規軍(ワグナーetc)を使い、内戦を演出しようとするように思えます。

    5
      • 58式素人
      • 2023年 8月 04日

      ごめんなさいです。
      モラヴィアではなく、モルドバでした。
      訂正します。

      7
    • ぷー
    • 2023年 8月 04日

    イギリスやらで数ヶ月の訓練受けて西側兵器を多用する疑似NATO軍の反攻を撃退して自信つけたのかな?

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