ウクライナ戦況

今月15日に次ぐ規模、ロシア軍が70発の巡航ミサイルでウクライナを攻撃

ロシア軍は23日に約70発(Kalibr、Kh-101、Kh-555)の巡航ミサイルを発射、ウクライナ軍は約51発(これは別に徘徊型弾薬を5機撃墜)を撃墜したたものの防空シールドをすり抜けたミサイルがウクライナの電力供給をノックアウトした。

参考:В среду РФ выпустила по Украине 7 десятков ракет, ПВО сбила 51
参考:Кличко: 80% киевлян без электро- и водоснабжения

インフラを破壊するロシア軍の手段が先に尽きるか、インフラを守るウクライナ軍の手段が先に音を上げるかの勝負

ロシア軍は今月15日に100発以上という過去最大規模の攻撃を実施(内計77発の巡航ミサイルと10機のShahed-136を撃墜)したばかりだが、23日にも約70発(Kalibr、Kh-101、Kh-555)の巡航ミサイルを発射、ウクライナ軍は約51発(これは別に徘徊型弾薬を5機撃墜)を撃墜したたものの防空シールドをすり抜けた巡航ミサイルが各地のインフラ設備を破壊、ウクライナ全土の電力供給を完全にノックアウトした。

出典:Повітряні Сили ЗС України

ウクライナ大統領府は国民にパニックになる必要ないと呼びかけ「電力は数日や数ヶ月ではなく数時間以内に回復する」と主張、キーウ州では重要施設への電力供給が回復しているものの住民への供給は止まったままで、被害を受けたチェルニヒウ州、スームィ州、ジトーミル州、ポルタバ州、リヴィウ州、ヴォルィンシカ州、ハルキウ州、オデーサ州、ムィコラーイウ州、ザポリージャ州、ドニプロ州でも電力供給の回復は一部の地域に限られている。

ロシア軍の攻撃効果の判定に利用されるだけなのでウクライナは23日の被害を伏せているが、ロシア軍は先の攻撃で破壊したインフラ設備の復旧が進んだタイミングで今回の攻撃を仕掛けており、巡航ミサイルを撃墜するため「1発の目標に2発の迎撃弾を発射している」とウクライナ軍が明かしているため15日と23日の迎撃で300発以上の迎撃弾を消耗した格好だ。

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ

ロシア軍のインフラ攻撃にはウクライナ人から「明かり」「暖房」「通信」を奪うという側面と、ウクライナ軍が使用する防空システムの迎撃弾を消耗させ空の支配(MANPADSや近距離防空システムが届かない高度をロシア軍機が飛べるようになるという意味)を獲得するという側面があり、この両方でじわじわと圧力をかけ「交渉に応じさせる」というのがロシアの狙いだと言われている。

ウクライナのレズニコフ国防相は22日に「ロシア軍の弾道ミサイルや精密誘導ミサイルの備蓄量」と「ロシアが2月23日以降に生産したミサイルの量」を公開して西側諸国にさらなる制裁を要請したが、これに反応したメドヴェージェフ元大統領は「ミサイル備蓄の量を敵は注意深く計算して枯渇することを願っているが我々には十分な量のミサイルがある」と明かしており、まもなくイランから追加の無人機がロシアに持ち込まれる可能性が高い。

出典:Дмитрий Медведев

要するにインフラを破壊するロシア軍の手段が先に尽きるか、インフラを守るウクライナ軍の手段が先に音を上げるかの勝負で、西側諸国からIRIS-TSL、NASAMS、HAWKが順次引き渡されているものの広域防空の主体は依然として補充が難しいS-300なので、こんなハイペースで攻撃が続けばウクライナ軍が保有するS-300の迎撃弾が尽きてしまうのではないかと心配される。

追記:ウクライナではロシア軍の攻撃精度を高めるため目標位置や状態を報告していた協力者が逮捕されている。

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※アイキャッチ画像の出典:BREAKING NEWS: UKRAINE

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コメント

    • 無無
    • 2022年 11月 24日

    長期距離誘導兵器はこういう風に使うものだと
    我らも建前としては敵基地のみを叩くと説明だけしておけばいい、
    逆に、すでに同じミサイルを運用している敵性勢力が自衛隊や米軍の基地だけを叩くわけが無いだろうがと、呑気なお花畑頭脳を笑うのみ

    30
    • じぇね
    • 2022年 11月 24日

    先にこれやってたら夏には終わってただろうに。
    台湾にこれやられたらと思うと、、、

    18
    • TKT
    • 2022年 11月 24日

    そもそもS-300迎撃弾が尽きる前から、ウクライナ全土の電力供給がノックアウトされているのが今の現状です。

    どれだけ迎撃に成功しているかもよくわからない部分がありますが、当然これは飽和攻撃の戦術でしょうから、多くのミサイルは最初から囮の役目で発射されていると考えるべきでしょう。

    それでも、S-300が完全に尽きれば、ロシア空軍の方は半導体のいらない普通の爆弾でもウクライナを爆撃できるようになります。

    ウクライナ市民の方としては、もはや電力の復旧は完全にあきらめて、まったく電気に頼らない生活を当分続ける以外にないのかもしれません。

    9
    • 月虹
    • 2022年 11月 24日

    >広域防空の主体は依然として補充が難しいS-300

    西側諸国だとギリシャが1連隊分(4システム・ミサイル175発、キプロスが購入予定だったものを取得したもの)、エジプトも4システム分のS-300を保有しているのでアメリカがパトリオットミサイルをこれらの国に供与する代わりにウクライナへ提供させるか、S-400の技術を用いて開発され円柱型発射筒・コールドローンチ方式を採用して外見がS-300にそっくりな韓国のKM-SAMをアメリカが取得して供与するくらいしか方法がないですね。

    9
    • けい2020
    • 2022年 11月 24日

    今のウクライナのは、専守防衛を掲げてる日本に完全に当てはまります

    日本の防衛体制+西側からの支援を受けられたと想定しても
    近隣国からミサイル攻撃だけ受けて、反撃できなければ同じようになる上に、
    石油備蓄基地などを狙われてしまえば更に悪化するでしょう

    37
      • abs
      • 2022年 11月 24日

      相手が恥も外聞もなく、民間インフラばかりを狙い撃ちする外道なら、たしかにそうですね。
      ロシア軍はもはや軍ではなく、もはや野盗や犯罪者集団かと思います。

      13
        • 成層圏
        • 2022年 11月 24日

        日本の仮想敵国(あるいは敵性国家)は恥も外聞もない外道国家です、残念ながら。

        32
    • XYZ
    • 2022年 11月 24日

    ここまでくると迎撃のみでは持たない。

    どこから発射されているかは監視しているから判明しているはずなので、発射元を同じく巡航ミサイルで叩かない限り厳しいだろう。

    10
    • daishi
    • 2022年 11月 24日

    弾道ミサイル、巡航ミサイル共に移動式ランチャーですから発射位置は特定できても攻撃時にはすでにその位置から退避済みですし、S-300のようにランチャーのデコイもありますから、ロシア領土内に攻撃ができても「運が良ければ」数カ所潰せるレベルでしょうね。
    2014年以前からのロシア領内への攻撃はNATOとしても望まないし、ウクライナも乾坤一擲でロシア領土を攻撃してもその成果に見合わない報復が来るので手を出せないのが現状でしょう。
    ロシアに航空優勢を取らせないためにもNATOからの防空システム供与が待たれます。

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