ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はインドを訪問してジャイシャンカル外相と会談、より多くのロシア製防衛装備品をインド国内で製造するたの交渉が進んでいると共同記者会見で明かして注目を集めている。
参考:Russia says in talks to make more military equipment in India
参考:Russia, India non-committal on S-400 missile system delivery timeline
露防衛産業の弱体化狙うバイデン政権を苛立たせる可能性があるロシアとインドの会談内容
ロシアとインドは今回の会談で安全保障問題や新型コロナウイルス対策について協議を行い1億回分のロシア製ワクチン「スプートニクV」やより多くのロシア製防衛装備品をインド国内で製造すると発表して注目を集めており日本メディアはロシアによるクアッド牽制だと報じている。
クアッドを構成する米日豪印の首脳は今年3月にテレビ電話方式による会談を実施、4ヶ国の強力関係を強化する取り組みの一貫として米国製の新型コロナウイルスワクチンをアジア諸国に供給するため米国がワクチン製造技術を、日米がワクチンを製造するための資金を、オーストラリアが物流技術をインドに提供して10億回分のワクチン製造を製造してアジア諸国に輸出する計画を発表したが、ロシアとインドは「スプートニクV」の生産について昨年から着々と協議を進めていた。

出典:Mos.ru / CC BY 4.0 スプートニクV
さらにロシアとインドは以前から戦闘機Su-30MKIのライセンス生産や超音速対艦ミサイル「ブラモス」の共同開発等で密接な協力関係にあるので、今回の発表はロシアによるクアッド牽制ではなく以前から協議が進められていた協力内容を正式発表したに過ぎずクアッドの動きの方がロシアを意識したものだと言える。
因みにロシア製ワクチン「スプートニクV」のインド生産分はクアッドのワクチン製造と同様に海外輸出用=ワクチン外交用なのでロシアもクワッドも狙いは一緒だ。
インドを取り巻く状況説明はこれ位にして今回の本題である新たなロシア製防衛装備品の現地製造についてだが、両外相は何を生産するのかについて詳細は明かさなかったが現地メディアは数年前から協議が進められていた軍用ヘリの製造が最も可能性が高いと報じており露防衛産業の弱体化を狙う米国を更に苛つかせるかもしれない。
米国はインド太平洋戦略の要としてインドを重要視しているが、同時に露防衛産業の弱体化を狙った米国の政策に従わずロシア製兵器を購入し続けるインドに「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」発動をトランプ政権時からチラつかせて圧力を加えてきた。
特にロシア製防空システム「S-400」は年内にもインドに引き渡される予定なので、後任のバイデン政権も毎月のようにインドに対してCAATSAを警告し続けているがインドは「独自の外交政策と独自のニーズに基づいて安全保障上の決定を下す」と主張して米国の圧力には屈しないという姿勢を鮮明に打ち出している。
さらにインドはS-400以外にもMiG-35を新たに100機以上調達することに関連した協議をロシア側と開始しており、今回の会談で新たなロシア製防衛装備品の現地生産を発表したため露防衛産業の弱体化狙うバイデン政権にとっては苦々しい思いだろう。

出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0 MiG-35
そもそも米国の国内法「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」によって第三国の安全保障上の選択を罰するという趣旨は傲慢だと受け取られており、制裁をテコに友好国や友好関係を築いていきたい国にロシア製兵器の購入を断念させて米国製兵器(もしくは西側製兵器)購入を強要するやり方は対米関係の悪化を招くだけでロシアではなく米国の影響力を自ら弱めるだけだと米国でも効果を疑問視する声が多いが、すでにS-400を導入したトルコにCAATSAに基づく制裁を課しているのでクアッドの一員であるインドだけ特別扱いするというのは不可能だ。
もしインドだけ特別扱いすれば発動基準が不透明だと批判されてきたCAATSAが形骸化するためトルコのS-400導入を容認しなければならくなり、そうなればCAATSA発動を恐れていた国が一斉にS-400導入に流れることことになるのは目に見えている。

出典:Gage Skidmore / CC BY-SA 2.0
飽くまで噂だがS-400のインド引き渡しは12月に設定されているらしいので、直ぐにCAATSA発動ということにはならないがロシア製兵器を購入し続けるインドをクワッドに取り込むためには敵対者に対する制裁措置法をどうにかする必要があり、これを堅持するならインド太平洋戦略を見直す必要があるのかもしれない。
どちらにしてもインドはクワッドに傾向したり依存するつもりは毛頭もなく、伝統的なロシアとの協力関係を維持していくつもりなのでクアッド自体を安全保障体制に格上げするのは相当難しいだろう。
関連記事:米国がインド制裁に言及、英国が参加を示唆したクアッドは崩壊の危機
関連記事:インド、S-400導入中止を要求する米国の圧力に屈することはない
関連記事:新たに米国制裁を招く恐れがある案件、インドがMiG-35調達に向けて一歩前進
※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru / CC BY 4.0 Ka-52
インドは核実験で制裁されたのを忘れてないんでしょう
アメリカに都合悪いことすれば制裁してくるというのをわかってるからアメリカに依存したくない
アメリカに依存しすぎてると制裁されたら折れるしかなくなるけど依存してなければ好き勝手できる
真の独立性を得るために必要な選択
核実験より前の冷戦中(1960年代)に、インドはアメリカの指導に従って国政改革を行ったら、失敗したあげくアメリカにも梯子を外された経験があるので、その頃からインドはロシア(ソ連)と関係を深めるようになった。
他に、インドは中国との関係を決定的に悪化させたくないという考えもある。
違うね
印パ戦争で西側諸国から制裁受けたからだね
パキスタンと共に制裁を受けたので、インドはロシア、パキスタンは中国に接近した流れ
そもそも、現在進行形で中国に対して制裁しまくってるのを真横で見てる国がわざわざ西側兵器一択に切り替えると思ってるのか?
もしそうなら、アメリカ政府上層部の頭の中にはチューリップかなんかがいっぱい咲いてるんだろうな。
これトランプ政権だったらどう対処できてたかなあw
いずれにしろ、インドには中国とは敵対しても反ロシア連合に与するメリットは無いから
誰が考えても、第三世界のインドをアメリカが縛るのは無理
協力できるところ以外までは縛らないほうがいい
ロシア製兵器のインフラが完全に出来上がってる国に対してあれこれ言ってもなあ
文句つけるならせめて整備運用面でのサポートや統合作業のサポート、運用体制の構築を無償でイチからやりますよーくらいの気構えでいかないと厳しいんじゃないだろうか
CAATSAを改正して、制裁要件に「米国の安全を危険に晒す場合」など書き加えれば、トルコはNATOの情報が漏れるからダメ、インドは米国の安全に影響ないのでOK、と言い張れるのでは?まあ、ロシア防衛産業の弱体化目的は果たせないけど。
>まあ、ロシア防衛産業の弱体化目的は果たせないけど。
CAATSAの骨子は「ロシア防衛産業の弱体化」なので、逃げ道を作ったらCAATSAは有名無実になりますね。
なぜ「ロシア防衛産業の弱体化」をしたいかというと米国の安全を守るためなわけだから
もし見逃すのが総合的に見て米国の安全保障にプラスになるならしゃーない
面子と対中包囲網を維持できればやむを得ん。
その法律、名前が悪いな
ネットワーク連接が前提の現代戦(現代兵器)では仮想敵陣営の兵器を繋げて欲しくないって主張は例えタテマエでも理解できるんだけど名前が強すぎる
あと欲しいモンがお宅の陣営になかったり高くて買えなかったら別陣営から買うしかないよね
結局中国に利するという皮肉な話
クワッド構想w
日本は何が何でもこの構想に対して固着するだろうが
インドは自分の理に叶う時だけ利用する程度で
自国の政策に対して気にいらなければ別に構想から排除されてもいい
という考えなんだろう
日本はこういう場合いい意味でなぁなぁで付き合うんだけど
アメリカが石頭過ぎるんだよ
なんでもかんでも自分たちのやり方押し付けて従うわけ無いだろうにそれが分からない
対中強硬路線で頼りになるのもアメリカだけどアジア政策の足引っ張るのもアメリカだと思う
アメリカは失わないで、インドの要人の資産を凍結するだけだから。問題はロシアと中国のどちらが脅威かというとこだけ。ま、中国も法案に入ってるが。
これで、S-400の代わりに、パトリオットとイージスアショアを買ったらでかい。
と言ってもアメリカ兵器は高すぎるんよね
いやまぁアメリカの兵器開発の視点で見ればむしろ格安で外国に売ってやってる、ってのは分かるんだけど
インド的にはTHAADレベルの物じゃないとS400の代替案としては検討に値しないでしょ
> クアッド自体を安全保障体制に格上げするのは相当難しいだろう
これは同感ですね。
米ソ対立の裏で力を蓄えた中国が米国に挑んでいるように、米中の対立が終わるころにはインドが力をつけてアメリカの秩序に挑戦する立場になるのではないかなと思っています。
中国のように軍事的に対立することはなくても
1970年代から1980年代の日本のように経済的に対立して貿易摩擦になる可能性は高いだろうね
前例があるのだからそこから学習して回避しようとするでしょう
日本も中国もアメリカに依存しすぎてたからアメリカからの制裁が効きすぎてるんだよね
インドに敵対するパキスタンの存在があるからなんだが
パキスタンはアメリカの事実上の同盟国であり、パキスタンと戦争になった場合に西側兵器を当てにできないのでロシアからも供給を受けるようになった
パキスタンも同じく印パ戦争で西側から供給停止されたので中国から供給を受けている
インドがアメリカの秩序に挑戦?
根拠なき妄想やね
ロシア製兵器は、そんなにメリットがあるのか?
1つの国に武器の供給を依存していると独自の外交や安全保障上の決定を行う際に供給国の意向を無視できなくなるが、インドのようにロシア、フランス、米国、イスラエルと武器の供給を分散しておくと全ての武器供給が止まることが無くなるので独自の外交や安全保障上の決定を下しやすい。
エジプトなんかも同じ理由でロシア、欧州、米国と広く武器供給先を分散させている。
当然、複数種類の武器を扱うので余計なコストはかかるが独自性を維持するための必要経費とみるか、全くの無駄と見るかはその国が置かれた状況によるので米国に依存する日本から見れば後者に見えてしまう。
大国1国に首根っこを押さえられたくないだけだと思いますけどね。
日本もミサイルを始めとして割と自分たちで作ってますし理由はもちろん同じです。
インドの場合は選択肢にロシアもあるということだけでしょう。
しかもS-400に代わる提案なんてアメリカか中国くらいしかできないですからね。
というか、PAC-2系の大型大射程ミサイルの改良が終了している以上、パトリオットシステムではS-400のような長射程での接近拒否用途では使えないでしょう
早急にSM-6を陸棲化しないと、S-400への対抗は不可能かと
中国は成立から敵だったパキスタンの同盟国で不可、アメリカ含む西側は使い道に口出しする(フランス辺りは割と適当かな)から「全面的」には頼れない、となってくると各種装備のセカンドソースとしてはロシア位しかないと言うのも理由の一つになるのでは。
どっかの国は、ゴラン高原あたりでアメリカの意に沿わない独自発言して、ミサイルの供給に支障をきたしたし、日本も米兵が守ってる半島で、米兵を孤立させかねない事態を招くため、竹島関連はあまり触れない。(ミサイル輸入等に響く)
そして、南もロッテの中国追放を招くと予想しつつTHAADミサイル配備をしたし。
革新部分は逆らえなくなる。
インドが米国に同意するなんてことは、よほどの懸案でなければないだろう。
いまのところインドが同意できそうな懸案は、対中国・対パク牽制くらいだ。
インドがいつか第二の中国になりませんように
パキスタンやスリランカにとってのインドはとっくに中国
しかし敵の敵は味方理論で、日本とインドは問題ないわけだ
アメリカ人って「北風と太陽」知らんのかね?
欧州の寓話だから毛嫌いしてるとかかな?
米国は自国が優先されないと勝手に制裁とか言って、自国を無理やり優先させるヤクザ国家。インドは中国ベッタリだったのでロシアから武器を調達するしか無く、米国よりはずっと信頼できる。インドは日本みたいな属国では無いので、米国のゴリ押しに妥協する必要は全く無い。