米国、ロシア、欧州が占めていたアジア諸国への武器輸出に食い込もうとするイスラエルとトルコ、技術移転をテコにイスラエルはフィリピンで、トルコはマレーシアで存在感を高めている。
フィリピン空軍は発注済みの防空システム「SPYDER」が2022年中に引き渡されると発表
フィリピン陸軍は近代的な防空システムを保有しておらず、20mm機関砲「M39」を転用した対空砲やMANPADSに頼っているが、フィリピン空軍は2018年に短・中距離をカバーする近代的な防空システムの調達計画を発表、イスラエルのSPYDER、ドイツのIRIS-TSLM、ロシアのBuk-M1-2、インドのAkash、韓国のKM-SAMが受注を争った結果、イスラエルのラファエルがフィリピン空軍からの契約(1億4,100万ドル以上)を受注した。
参考:Philippine Air Force to get Israeli SPYDER air defense system by end of year
ラファエルが開発したSPYDERは航空機、ヘリコプター、無人航空機、ドローン、精密誘導兵器を低空で迎撃するための防空システムで、迎撃弾には空対空ミサイルPython5とDerbyを使用するが、レーダーは短距離をカバーするSPYDER-SR構成ならEL/M-2106ATAR、中距離をカバーするSPYDER-MR構成ならEL/M-2084MMRが統合されており、フィリピン空軍は明確にどちらを選択したのか明かしていないもののSPYDER-MRを調達したと噂されている。
さらにラファエルは技術移転を実施して現地に迎撃弾(Python5とDerby)のメンテナンス施設も開設する予定で、イスラエル企業は技術移転を武器に軽戦車、自走砲、レーダー、防空システムなどフィリピンから次々と契約を受注している格好だ。
防衛分野に関する協力と引き換えにマレーシアの安全保障分野で存在感を高めるトルコ
トルコとマレーシアは5日、防衛分野に関する非常に広範囲な協力を約束する協定に署名した。
参考:Malaysia, Turkiye sign 7 MoUs to strengthen cooperation
この協定に従いトルコ航空宇宙産業などは航空分野の技術移転を実施、MRO(メンテナンス、修理、オーバーホール)レベルに留まるマレーシア航空産業の能力を航空機製造レベルにまで引き上げ、マレーシアをトルコのOEM国に成長させる=つまりトルコ航空産業界にマレーシア産業界を組み込むことで安全保障分野における影響力を高める狙いだ。
さらにトルコが得意とする無人航空機(UAV)、無人水上艦(USV)、水中無人機(UUV)、無人地上車両(UGV)の製造拠点もマレーシア企業と合弁で設立、155mm自走砲「Yavuz」や105mm榴弾砲「Boran」の製造に関してもマレーシア企業の参入を認める内容が協定に盛り込まれており、この様な協力関係が深化すればマレーシア軍の装備調達でトルコは優位な地位を占めるはずで、開発を進めている第5世代戦闘機TF-Xなどの売り込みに繋げるつもりなのかもしれない。
関連記事:潜在的輸出先はイスラム圏? トルコ、マレーシアに第5世代戦闘機「TFX」計画への参加を要請
この激しい競争の中で日本の防衛産業はどのように生き残りは図っていくのだろうか?
勿論、アジア諸国への武器輸出拡大を狙っているのはイスラエルやトルコだけではない。
アジアに拠点を置く韓国のハンファディフェンス、シンガポールのSTエンジニアリング、インドのヒンドスタン航空機も積極的に売り込みを行っており、これまでのシェアを守ろうとする米国、ロシア、欧州と激しい競争を演じている。
恐らくウクライナ侵攻の影響でロシアはシェアを落とす可能性が高く、この辺りを上手く拾える国がアジア諸国への武器輸出で成功を収めるのかもしれない。
果たして日本の防衛産業は激しい競争の中でどのように生き残りを図っていくのだろうか?
関連記事:海外市場では当たり前、切っても来れない武器の海外輸出とオフセットの関係
※アイキャッチ画像の出典:TURKISH AEROSPACE トルコが開発中のTFX
無理だろう。
顧客サービス、今は昔。
駄目すぎる。
総合商社が上手くやれればいいが、無理だろう。
輸出専用兵器でも作る根性があればいいが。
日本の場合、次期戦闘機の開発が一番分かり易いのですが、兵器に限らずあらゆる分野のシステム開発が苦手(日本語に「システム」に相当する翻訳語が無いのがそれを象徴する)ですので、今後は兵器だけで無く全ての商品開発で海外企業との連携を強めるか、ボーイング製旅客機の部品製造請負の様に商品全体を作るのでは無く一部の部品製造に特化するしかサバイバルの道が無さそうですね(某・軍事ライターの様に「国産を止めて輸入にすれば良い」と言われたくなければ)。
一方、トルコは契約してくれるならどんな国にでも原則武器を売っている様に見えるので今後も売れそうですが、イスラエルはロシアのウクライナ侵攻でウクライナから武器供与を要請されたのにそれを拒否しただけでなく、イスラエル製の武器を導入している国が出した「ウクライナへ我が国が持っているイスラエル製武器を移転したい」との要請まで拒否した為、今後の武器市場で存在感を示せなくなるかも知れません(勿論、イスラエルとしてもロシアとウクライナに住むユダヤ人の事を考慮すると片方に肩入れ出来なかったのも事実ですが)。
そう考えると、武器輸出国というのは、「捨てるものが無い」「どっかの陣営への肩入れ度」の2要素で武器輸出国としての適合度がありますよね。
国際的地位が低く、捨てるものが無い国はどこにでも輸出できますので適合度が高いです
また、一匹狼とまでは行きませんが、どこの国際的グループにもあんまり深く参画していない国ほどしがらみが無いので適合度が高いですね。
そう考えると、日本はG7という「大切な捨てられない地位」がありますし、日米同盟でがっつりとアメリカ陣営の国で、そのしがらみがありますのでそもそも武器輸出国としてあんまり適合度が高くない国ですよね。
買い手からしたら日本から武器を買うという事は「アメリカ陣営に参画する」という覚悟は言い過ぎでも、少なくとも「アメリカ陣営と敵対出来ない」という覚悟が必要ですし、戦闘でも日本から買った兵器で非人道的行為は出来ないという縛りが入ります。
買いにくいわw
だから日本が武器輸出国になりたければ、ターゲット顧客はインドネシアとかの新興国ではなく、同じアメリカ陣営のアメリカ、オーストラリア、NATO諸国にしないとダメでしょうね
逆に韓国製兵器が売れてるのは、アメリカ陣営で外様のランクに落ちてるからでしょうね。
買い手からしたら変な縛りを言われる心配が無いから買いやすく映るんでしょう
外交的な失敗が武器輸出にプラスに働いています
>同じアメリカ陣営のアメリカ、オーストラリア、NATO諸国にしないとダメでしょうね
その上で米国に競合機がいない、一種の隙間市場狙いも。
非常に良いご指摘だと思います。
特に、武器輸出国としての適合度を測る条件として「捨てるものが無い」「どっかの陣営への肩入れ度」の2要素が重要であると言う点については、その通りだと思います。
ですので、今後日本が防衛産業の生き残りを図るなら、米・豪・NATO諸国の防衛産業との協業や共同開発を指向するしかないと思います。
これらの国々の多くは自国でも有力な防衛産業を持っている為、ターゲット顧客にしようとしたら逆に自分が顧客にされてしまう恐れが有るからです。
後、これもご指摘通りですが、兵器輸出国の中には外交上割と仲間外れにされがちの国が目立ちますね。
韓国もそうですが、G7のメンバーにしてNATO加盟国であるフランスもこの条件に当てはまりますね。
日本都合から行くとそうなんだろうけど、日本を武器開発に入れると当該装備の輸出で足枷になるから共同研究止まりだろうね。
SM-3みたいに輸出を考えてない装備ぐらいじゃない?
防衛装備移転三原則の見直しが年度末を目途に進められる予定ですから、日本政府もその辺は考えているのかも知れないですね。
オーストラリアにK9が売れてて、英国にもK9提案中で、米国の次期歩兵戦闘車にレッドバックを売り込んでる最中なのに?
実績のない日本製をいきなりNATO加盟国が買うわけないじゃん。
実績の話がよく出ますが、例に挙げられている韓国製とて最初実績は無かったわけで。
それに潜水艦は採用されませんでしたが、不採用理由は実績とは無関係でしたよね。
実績というものに縛られすぎてると個別の案件の反省点を見逃しますよ。
ドローンや無人機とか普通に遅れを取ってますよね。領空とか考えるとUCAVとかもっと力入れてもいいのに
トルコはあとはジェットエンジンかなと思ったら、先月国産ターボファンエンジンの「TEI-TF6000」を発表してたんですね。
出力的には台湾のF125くらいで、ヒュルジェットのF404、TF-XのF110を代替するにはまだまだですが、今後の発展に期待か。
マレーシアのマハディール元首相もアメリカ製兵器は性能は良いが、運用制約が多すぎて使い勝手が悪すぎるとインタビューで述べていただけに、同じイスラム圏で細かいことは言わないトルコとの付き合いは良いのでしょうね。
日本の防衛産業は、まずは独自性を打ち出すよりは、財布と部品目当てでいいから欧米メーカーと積極的に組めるように政府に働きかけるのが先決かな。
民間企業に政府が肩入れするのもどうかとは思うが、軍事という政治に関わる分野だし、何より外国は官民ガッチリでやっているから(不特定多数の人が大好きな)国際常識に則っていると言えなくもない。
>財布と部品目当てでいいから欧米メーカーと積極的に組めるように政府に働きかけるのが先決かな。
MHIのニンジャサスが、M2 ブラッドレーに取り付けられて米国で評価されたと聞いた時は歓迎したけど、その後どうなったのだろう?
まずは武器輸出三原則の改正、そして防衛産業の統合と再編、そして佐藤正久議員が言っていたように防衛研究費の1兆円程まで増額、この3つが出来てから可能性が生まれるでしょう(多分)
国民への説明は別にしなくてもいいと思いますね、かなり意識は変わったと思いますし、必要ならば輸出出来るようにならないと税金突っ込んで延命する羽目になるとか言っとけば大丈夫でしょう
そうやって安全保障問題を真剣に議論しないから、国防政策や防衛産業に対する偏見が蔓延ってるんだよ。
>必要ならば輸出出来るようにならないと税金突っ込んで延命する羽目になるとか言っとけば大丈夫でしょう。
こんな小手先の方法で問題を先送りをして本当に国民の意識が変わると思いますか?
本当に日本の安全保障問題を改善したいなら正面から堂々と議論しないとダメだよ。
安全保障問題に興味のない奴に黙って進めるのを是正する人こそ意識を改めるべきだよ。
まともに輸出出来ない状態が続くと税金で延命する羽目になるのは事実だと思いますがね
まぁ正面から議論すべきというのはごもっともです。
すみませんでした
我が国が輸出したいのならば工作資金を財務省が負担し防衛省が相手軍組織へ接触し、政府高官には外務省が工作しなければならない。露見しても担当官はお咎めなしで再度チャンスを与える
何でメーカー社員が解雇のリスクを背負ってまで売らなイカんのよ