インド太平洋関連

JF-17に手を焼くミャンマー空軍、新たに導入したSu-30SMEを公開

ミャンマー空軍が導入したSu-30SMEを初めて公開して注目を集めているが、JF-17の戦力化に手こずっているミャンマー空軍に扱えるのか、ウクライナとの戦争に忙しいロシアにスペアパーツや消耗品の供給能力があるのかなど謎が多い。

参考:Myanmar Military Air Base in Yangon Attacked by Resistance for Second Time

数年前の決定を今更蒸し返しても意味がないのでSu-30SMEをものにするない

ミャンマーとロシアは2018年にSu-30SME×6機の売却(推定4億ドル)で合意、2019年にミャンマー空軍向けの機体が完成していたものの支払い条件で揉めたため引き渡しが遅れていたが、Su-30SMEが既にミャンマー空軍に引き渡されていることが視覚的に確認(2022年3月に引き渡しを受けたという報告もある)され注目を集めている。

2016年のシンガポール航空ショーで発表された「Su-30SME」はロシア空軍が採用するSu-30SM(Su-30MKIで採用された西側製アビオニクスをロシア製に交換したモデル)の輸出バージョンで、搭載するレーダーや火器管制システムなどのオリジナルよりダウングレードされているらしいが、この問題はミャンマー空軍にとって些細な問題に過ぎず、最大の焦点はJF-17の戦力化に手こずっているミャンマー空軍にSu-30SMEが扱えるのかだ。

ミャンマー空軍は複雑なJF-17のシステムを操作できるパイロットや技術者の育成に失敗、さらに西側諸国の制裁でアビオニクスに使用されているスペアパーツ=欧米企業製の部品が入手できず、JF-17で使用する武器も中国やパキスタンが制裁下のミャンマーに輸出してくれないため同機の安定した運用体制が未だに確立されておらず、複雑なSu-30SMEをミャンマー空軍が扱えるのか、ウクライナとの戦争に忙しいロシアにスペアパーツや消耗品の供給能力があるのか疑問が多い。

出典:Public domain パキスタン空軍のJF-17

さらにミャンマーの軍事政権は民主派の国民統一政府と内戦中で、国民防衛隊(PDF)は軍事政権側の空爆を阻止するため前線から遠く離れたヤンゴン周辺の空軍基地も攻撃(17日にロケット弾を撃ち込んでいる)しており、大金を投じて導入したSu-30SMEが地上で破壊されれば軍事政権側にとっては大惨事だろう。

因みにミャンマー軍はJF-17が戦力にならないため「扱いの簡単なYak-130、JL-8、MiG-29に益々頼っている」と反ミャンマー政府系新聞のIrrawaddy紙が指摘しており、扱いが簡単なUCAVの方が国民統一政府との内戦に役立つ可能性があるが、数年前の決定を今更蒸し返しても意味がないのでSu-30SMEをものにするない。

追記:ナイジェリアとイタリアがM-346FA(M-346LFFAとも呼ばれている)の24機導入で合意したという報告があり、これが事実なら戦闘攻撃タイプのM-346FAが初めて売れたことになる。

関連記事:ミャンマー軍、技術的な問題と西側諸国の制裁で導入したJF-17が飛行停止

 

※アイキャッチ画像の出典:Twitter経由

ドイツがPumaの発注を停止、NATO即応部隊には旧型のMarderを派遣前のページ

戦術UAVを探していた英陸軍、ロッキード・マーティン製のストーカーを採用次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    豪州、韓国の軽空母は虚栄心を満たすだけで「税金の無駄」と過激に批判

    豪州のシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」は韓国が…

  2. インド太平洋関連

    中国はクアッド同盟成立を黙認? インドと14時間話し合うも成果なし

    インドと中国は21日、カシミール州ラダック地域での軍事的緊張を解消する…

  3. インド太平洋関連

    台湾が次期戦闘機開発を中断、限られた予算内で非対称戦の強化を優先

    台湾の蔡総統は非対称戦の強化を目指す国防方針など複数の要因を理由に、2…

  4. インド太平洋関連

    韓国、トランプと約束した米国製「早期警戒管制機」購入は嘘? サーブ社が技術移転を提案

    韓国メディアによれば、スウェーデンの防衛産業企業「サーブ」は、同社の早…

  5. インド太平洋関連

    F-22の設計に携わった天才韓国人、米軍事技術を不正流出させた罪で起訴

    米国の第5世代戦闘機F-22Aの武器制御システムの設計責任者を務め「天…

  6. インド太平洋関連

    韓国、KF-21の開発分担金をインドネシア側が全額支払うことで最終合意

    韓国防衛事業庁は11日、インドネシアが共同で開発を進めているKF-21…

コメント

    • 戦略眼
    • 2022年 12月 20日

    JF-17もSu-30も返して、返金してもらった方がいい。
    その金で簡単な無人機をイランからでも買うしかない。
    何やっているのか?
    そもそも、6機って運用出来る数じゃない。

    8
      • HAi
      • 2022年 12月 20日

      中「契約違反です。違約金を」
      露「現物の収容を確認してからの返金になります」

      15
      • kitty
      • 2022年 12月 20日

      今なら、ウクライナに売れるかもw。
      モンキーモデルでもありがたいでしょう。

      9
      • きっど
      • 2022年 12月 20日

      >そもそも、6機って運用出来る数じゃない
      そんなこと言い出したら、4機しか導入出来てないアルメニアのSu-30の立場は……

      2
    • 折口
    • 2022年 12月 20日

    あの極貧国でもSu-30を導入できるのだから、軍事政権の金脈とも言われる黄金の三角地帯利権とはさぞ凄いんでしょうね。

    17
    • クローム
    • 2022年 12月 20日

    実働機1機と完璧な状態の部品取り機5機があると考えれば、たまに飛ばして見栄を張るには最適。

    5
    • りんりん
    • 2022年 12月 20日

    やっぱMig21って必要なんだなあ。

    6
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP