インド太平洋関連

台湾が次期戦闘機開発を中断、限られた予算内で非対称戦の強化を優先

台湾の蔡総統は非対称戦の強化を目指す国防方針など複数の要因を理由に、2023年から本格開発を開始する予定だった次期戦闘機プログラムを優先リストから除外=開発を中断することになったと報じられている。

参考:空軍下一代主力戰機研製案 不符現階段戰備需求+關鍵技術未克服暫喊卡

台湾は試作機1号機に搭載するF414の発注をキャンセルした

空軍は今年4月に立法院へ提出した報告書の中で「次世代戦闘機の開発計画」に言及、エンジンを含む24のキーテクノロジーについては2019年から研究が始まっており、台湾海峡の緊迫した軍事対立に対応するため計画を前倒して2023年に本格的な開発を開始すると明かした。

出典:U.S. Navy photo by Petty Officer 3rd Class Will Tyndall

但し開発期間を圧縮するためエンジンの国産化は断念、F/A-18E/FやKF-21に採用されているGE製のF414とロールス・ロイス製のエンジンがリストアップされており、射出座席はマーチンベーカー製、アビオニクス関係の機器はBAE製、コックピット内部のディスプレイ装置やAESAレーダーは今月末までに採用機器の選定を終える予定で、空軍は蔡総統が退任する2024年5月までに次世代戦闘機の試作機を完成させデモンストレーションを行う計画だったが、政府は開発中断を指示したと報じられている。

中国軍の急速な軍拡と発展に台湾は「限られた予算で正面から対抗するのは不可能」という結論に至り「非対称戦の強化」を優先する国防方針を採用したが、次期戦闘機プログラムは現方針に即しておらず、重要なキーテクノロジーの中に米国からの技術移転を必要とするものあり「台湾への移転に同意するか未知数な状態」でプログラムを性急に進めるのはリスクが高く、国家の優先リストから除外=開発を中断することになったらしい。

出典:Korea Aerospace Industries Ltd.

この決定に関連して「台湾は試作機1号機に搭載するF414の発注をキャンセルした」と報じられており、別の見方をすれば「次期戦闘機の実用化が中国軍の侵攻に間に合わない=米大統領選挙と台湾総統選挙が実施される2024年頃が危険だという指摘もある」という要素が今回の決定に影響を及ぼした可能性もあるので、中々興味深い動きと言えるだろう。

因みに開発を主導するはずだった国家中山科学研究院の関係者は次期戦闘機について「詳細設計が前倒しで進められている最中でモックアップも完成している。F-35を参考にした次世代戦闘機の構成は韓国のKF-21に良く似た仕上がりだ」と述べていた。

関連記事:台湾、ステルス性能を備えた次世代戦闘機の開発を2023年に開始
関連記事:台湾の次世代戦闘機は2024年5月までに登場、KF-21に良く似た仕上がり
関連記事:元米政府関係者、中国の台湾侵攻は18ヶ月以内に発生する可能性がある

 

※アイキャッチ画像の出典:Republic of Korea Armed Forces

グリペンが売れない理由、優れた品質や価格が決め手と勘違いしているため前のページ

韓国製戦車の欧州上陸が確定、ポーランドがK2とK9A1の本契約に署名次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    韓国、大型空母に搭載する艦載機「KFX NAVY」開発を検討中

    韓国メディアは19日、国内の防衛産業界が開発中の韓国型戦闘機「KFX」…

  2. インド太平洋関連

    費用負担が問題、韓国にロッキード・マーティンがF-35整備権限取得を提案

    日本のF-35国際整備拠点「MRO&U」運用が始まったことに関連して、…

  3. インド太平洋関連

    いずも空母化に対抗? 韓国、F-35B搭載「4万トン級韓国型空母」建造計画を承認

    最近、朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長と3軍の参謀総長による合同…

  4. インド太平洋関連

    海外の潜水艦専門家、韓国初の原子力潜水艦導入が実現に近づいている

    潜水艦分野の専門家であるサットン氏は15日、船舶向けに設計された小型モ…

  5. インド太平洋関連

    フィリピンとスウェーデンが防衛装備品協定を締結、グリペン輸出に弾み

    高度なマルチロール機の導入を進めているフィリピンは3日、スウェーデンと…

  6. インド太平洋関連

    韓国の尹大統領、カナダ経由でウクライナへの155mm砲弾提供を承認か

    ロイターは30日、カナダが要請した155mm砲弾の供給に韓国が応じて「…

コメント

    • 折口
    • 2022年 8月 27日

    まぁF-16Vありますからね。
    しかし中華民国軍、ウクライナ型の徹底抗戦で行く方向で固まっちゃったんですね。乏しい人的資源とや(ウクライナと違い)拮抗するところが殆どない空軍力差で同じ戦いができるのか、NATOがロシアに対して張っている圧力と同等のものを日米は中国に形勢できるのかとか、色々考えちゃいますね。

    40
      • 鳥刺
      • 2022年 8月 27日

      有利な点を挙げるとすれば、「渡洋侵攻」の困難さは見逃せませんね。渡航できる兵数・兵站ににどうやっても制約がある条件で、対する台湾は現役陸上兵力21万、予備役165万、少ないとは言い切れません。

      ウクライナ的な、台湾本土での徹底抗戦を目指す場合、やはり高性能広域防空システムの調達は急務でしょうね。それと射程数100km級から対舟艇まで各種の対艦ミサイル。後、ドローン/対ドローン兵器、電子戦での優位。

      正直、直接の着上陸よりも、直近のペロシ危機で中国がそれなりに有効な海上封鎖能力を誇示して見せた事はかなり問題ではあります。

      日米が、戦争勃発後に武器弾薬の提供まで含めた台湾支援を実施できるかとなると
      ・国際関係上の設定としての台湾の地位、それを変更する決意とリスク
      ・武器・物資供与の為の法的な整備(主に日本)
      ・封鎖をかけてくる中国とチキンレースをやる決意の有無

      「未承認国家(?)に中国との交戦リスク覚悟で支援を搬入」は、なかなかに高いハードルですね。

      25
        • くらうん
        • 2022年 8月 27日

        かなり単純化した試算ですが、2024年をXデーとして、中国海軍の輸送戦力は
        071LPD(800人×8隻=6400人) 075LHD(1600人×5隻=8000人) 一度で最大約14000人
        これに小型艦・民間の輸送能力を加えれば一度の輸送で最大3万人はいけるでしょうか。
        現実にはこれに1未満の係数を掛けないといけない。

        対して台湾陸軍の兵力は10万。そのうち水際防御で正面にまわせるのは1.5~2万でしょうか。
        ざっくりですが、これはどう考えても中国は戦力不足です。
        破壊工作やそのたハイブリッド戦で先手を打てたとしても、この戦力では第1陣が大打撃を受けるし、橋頭保の確保に成功したとしても、全土制圧のための戦力を送るのにどれほどかかるか。
        加えて台湾は徴兵を廃してますが、軍事教練はあって国民の防衛意識も非常に高い。対して中国軍人の士気と能力は低い(舐めプとかじゃなく、売官が横行したため急速に弱体化してしまった)。

        また欧米はリスクを負ってでも台湾有事に介入すると思っています。宣戦布告はしないでしょうが、中国艦が謎の沈没するくらいはやるんじゃないですか。
        理由は台湾の価値がウクライナの比じゃないくらい高い事。台湾は国を挙げて先進半導体の開発・生産拠点を作り上げて供給シェアの9割をにぎり、今後もそれを維持・強化する見通しです。先進半導体がどれほど重要であるかは周知のとおり。これを中国に渡すことは、先進国にとって国の命運を握られるのと同じです。最近の欧米が中国の神経逆なで上等で台湾にやたら接近するのも、一番の理由はそれです(民主主義を守るというお題目で動いているなんてありえない)。
        過去、一つの工業品の為に世界が動くということは無かったため気後れしがちですが、現にそうなっています。
        先端半導体と縁のない国はまだ日和るでしょうが、台湾有事になれば米はもちろん欧州の多くもガチで潰しにくると思います。軍事非軍事問わずあらゆる方法で。

        19
          • 匿名さん
          • 2022年 8月 27日

          先端半導体技術といっても、中核はオランダASMLのEUV装置でしょう。
          それを用いた製造技術は高いのでしょうが、それらは技術者を抑えておけば、日本やアメリカで再現できると思いますよ。

          それに、先端半導体技術は台湾だけが持っているわけではない。
          半導体製造開発技術では、アメリカのインテルがいますし、ファウンドリーでは、韓国のサムスンもいます。
          あと、日米欧は半導体業界支援を打ち出しています。これも台湾有事を見越した動きです。

          1
            • くらうん
            • 2022年 8月 27日

            インテルはパッケージングテクノロジーでTSMCの後塵を拝してますし、これまでも大規模投資をしてきましたが実を結んでいません。TSMCへ製造委託は事実上の敗北を意味しています(インンテル株価ェ・・)。サムスンの技術レベルも調べればわかるはずです。何より製造の安定性が足元に及ばない。

            >それらは技術者を抑えておけば、日本やアメリカで再現できると思いますよ。
            優れた技術者の確保ができないからこその現状では?台湾は国を挙げて技術者の囲い込みを始めています。
            EUVまでご存じなら、TSMCの設計の失敗の少なさと前工程の妙も御存じではないですか?
            世界が5nmレベルを作るのに四苦八苦している中、TSMCは3nmの実用段階にまで入っている。他国が10年かかってもマネできるかわかりません(中国は15年以上)。
            これが無くなるどころか、中国が独占する。15年以上の差を中国が一気に奪う。
            ファーウェイを潰すために国防権限法を発動したアメリカが、先端半導体のテクノロジーが丸ごと奪われる事態を座視しないでしょう。

            18
              • 匿名さん
              • 2022年 8月 27日

              >TSMCの設計の失敗の少なさと前工程の妙も御存じではないですか?

              高い品質と効率性を、全く違う環境(他国)で真似するのは容易ではないでしょうね。

              >インテルはパッケージングテクノロジーでTSMCの後塵を拝してますし、これまでも大規模投資をしてきましたが実を結んでいません。TSMCへ製造委託は事実上の敗北を意味しています(インンテル株価ェ・・)。

              インテルは自社開発の3nmプロセスの製造が軌道に乗るまでのつなぎとして、TSMCに外部委託したとの認識です。もちろん、詳しく内情までは知りませんので、あまり勝手なことを言うのは控えます。

              >これが無くなるどころか、中国が独占する。15年以上の差を中国が一気に奪う。

              中国が仮に武力で台湾を奪ったときには、先端技術部分(ASMLのEUVなど)は破壊されて残されてないでしょうから、一気に差が縮まりはしないのではないでしょうか。

              4
          • hiroさん
          • 2022年 8月 27日

          当然、中国は上陸に先立って陸海空からのミサイル攻撃を徹底すると思うんですが。
          ウクライナ侵攻当初、ロシアの砲撃·ミサイル攻撃の不徹底が苦戦の原因の一つであることは中国も認識しているでしょう。
          軍事拠点·兵力をボロボロにしてから上陸が定石でしょうし、対する台湾は地下基地·疎開拠点を活用した反撃能力の維持ができるかがポイントでしょう。

            • くらうん
            • 2022年 8月 27日

            準備砲撃・ミサイル攻撃はできる限りやるでしょう。
            それでも地上の移動目標撃破の困難さは、湾岸戦争からウクライナ侵略までで明らかですし、十分に秘匿・防護された沿岸拠点は完全な制空権を確保してもボロボロにはできません。奇襲しようにも上記のような戦力を移動させた時点で不可能ですしね。
            そしてウクライナ戦争で明らかになったように、双方が優れた防空システムを用意している状況では、お互いに航空優勢が確保できずに膠着し、戦いも先祖返りする。これは海を隔てて守る側にとっては有利なはずです。パトリオットの導入も決まり、雄風Ⅲも蓄えている。
            無論米国の支援が無ければ守り切るのは厳しいですが、台湾単独でも輸送戦力に的を絞ればかなり持ちこたえられると思います。
            むしろ中国が81年前の某国のように、やるなら今しか勝てないと勘違いして暴挙にでないかを心配しています。

            8
    • 灰色の猫
    • 2022年 8月 27日

    それだけ迫ってるという危機感の表れなんでしょうね。冒険してる場合じゃないと。

    18
    • さめ
    • 2022年 8月 27日

    戦闘機好きとしては残念な面もあるが、現実をしっかり見つめた英断と言えるだろうね

    29
    • 似非市民
    • 2022年 8月 27日

     一飛行機好きとしては残念無念やで。
     ちゅうても、米国・欧州・露で戦闘機メーカーが統合されている中での新規参入のハードルの高さが露になった感があるよな。
     
     戦闘機メーカーがもっと増えて欲しいんやけど、最悪は米国・欧州が2社で露・中共・印が各1社となってあとは経済的に淘汰されてまうんとちゃうかという嫌な予感がして堪らんわ。

    4
    • バーナーキング
    • 2022年 8月 27日

    当座の危機に備えるための英断と言えば英断だけど、2024年を乗り切ってもすぐまた次の危機が来るからなぁ。
    中国の第五世代機、空母、原潜、各種ミサイル、爆撃機がどんどん充実していく中、国産正面装備を断念して非対称戦で対抗、ってジリ貧にならないかな?
    …国産戦闘機向けの全技術と1割の予算・人員をテンペストに注ぎ込むってのはどーだろう。

    1
      • utk
      • 2022年 8月 27日

      台湾は中国軍がMLRSで砲撃できるくらい中国本土に近いし面積も小さい。
      正面装備を整えても開戦直後の中国軍の砲爆撃で大半が損耗することを想定したら、台湾は非対称戦で対抗せざるを得ない状態ですね。

      11
      • ヤゾフ
      • 2022年 8月 27日

      台湾海峡自体は水深が浅く潜水艦の行動も困難&上で指摘あるように上陸侵攻するには兵力が足りないからこの決定は英断だと思う。
      戦闘機や空母は落とされた時の影響が大きいから本土防衛に限るならA2ADでの針ネズミがベスト。

      7
        • バーナーキング
        • 2022年 8月 27日

        当面そっちを優先するのが正しい(≒英断)と言った上でその先の話をしてるんだけどね。
        現状既に数で上回り、今後もどんどん差を開いてく中国が狭く浅い台湾海峡での戦闘に固執する必要がどこにあるのかと。

    • 名無し2
    • 2022年 8月 27日

    台湾の次期戦闘機はどうなるのだろうか。中共はF-35は脅威だからダメF-16Vなら良いというが随時アップデートされるF-35が脅威でなくなる日は当分来そうにないため供与は無理だろう。技術進歩について来れない中共が100%悪い。

    • 猫ちゃん
    • 2022年 8月 27日

    日本が新型作って提供してあげないとな

    2
    • TA
    • 2022年 8月 27日

    F16V以外にも輸入の算段がついた可能性

      • 匿名希望
      • 2022年 8月 27日

      F-15かF/A-18ですかね。
      SIに投資してアメリカの砂漠においてあるF-15A~Dのレストア近代化改修してうんようとかしたりして

      • 山中あそぶ
      • 2022年 8月 27日

      F-35がベスト
      →政治的・納期的に無理
      →セカンドベスト・政治的に可能・短納期
      →中古ラファール

      1
        • 山中あそぶ
        • 2022年 8月 28日

        台湾は2008年にラファールを導入しようとしたが、政争によって潰れてしまったそうで。
        ミラージュ2000を操縦していたパイロットは「ラファールを持てなかったのは惜しい。F-35は実際に我々が持てる第5世代戦闘機かも知れない。しかし私が選ぶなら再びフランス戦闘機に票を投じる」

        スイス空軍の審査でラファールには5項目全てで「Best Pilot Impression」と注記されており、イスラエルのエース ギオラ・イプシュタインも「ミラージュで飛んでいた時は楽しかった。F-16は高性能だがあの感覚がない」 先の台湾パイロットも、F-16より人間工学に優れシステムとして良く統合されていると指摘。

        フランス機にはカタログスペックに現れにくいが、飛ばしたパイロットには響く何かが有る気がする。

    • yp2k
    • 2022年 8月 27日

    有事に台湾に来航する日米英の艦船、航空機を中国軍は攻撃できるのだろうか?
    すれば日米英と全面戦争、しなければ軍事支援だ。
    長期戦になることは間違いなく、膨大な人が死ぬ。

    1
    • ああああ
    • 2022年 8月 27日

    ちょっと残念と思うけど
    台湾有事に間に合わない=起こりうると言うことか…
    これが本邦含めて他国への次期戦闘機開発に
    どれ位の影響を与えるのだろうか?

    • zerotester
    • 2022年 8月 27日

    2024年までが危ないという理由はいくつかあるのでしょう。一つは台湾の総統選挙と米大統領選挙があることですが、軍事面で言えば現状中国軍と米軍が戦えば米軍が負けるというシミュレーションが米軍でもなされており、米国はそのギャップを埋めようとしています。例えば2024年までに戦力を大幅にアジアにシフトすると発表しており、仕掛けるなら早い方が有利と中国は考えるでしょう。

    経済面で言えば、TSMCは米国内に工場を6か所作って中国の依存度を下げると発表しています。日本でもホンダがサプライチェーンから中国を外す動きをしているなど、中国有事に備えて依存度を下げる方向に動いており、うかうかしているとそれがさらに進みます。中国はロシアのようにガスの元栓を押させているわけではなく、経済制裁で切り離しても欧米にとって死活問題にはならないと思われ、そのハードルは下がり続けています。「やるなら早いほうがいい」という理由はいくつもあるので、危機感が盛り上がっているのでしょう。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP