インド太平洋関連

潜水艦を建造中の台湾、米国が戦闘システムやソナー等の輸出を承認したと発表

台湾メディアは17日、建造中の国産潜水艦に必要なレッドゾーンと呼ばれる機器について米国のバイデン政権が台湾への輸出を承認したと報じている。

参考:US approves ‘red zone’ tech for local submarines
参考:US-Taiwan relations: Biden administration gives green light to exports of key submarine technology

台湾は潜水艦建造に必要なレッドゾーンと呼ばれる機器の輸出承認を米国から取得

台湾海軍の潜水艦戦力は1980年代にオランダのズヴァールトフィス級潜水艦をベースに建造された海龍級潜水艦(2,300トン)2隻と、第2次大戦中に米国で建造されたテンチ級潜水艦(2,420トン)2隻を合わせて計4隻だが、あまりに古すぎるため後継艦調達を何度も計画したが中国の圧力によってことごとく潰されしまう。

しかし2017年にトランプ政権が誕生したことで米国側の対応に変化が起こり台湾の次期潜水艦建造が本格的に始動、紆余曲折の末に国産潜水艦の1番艦建造が始まったばかりだ。

出典:public domain 海龍級潜水艦

台湾の潜水艦建造プログラムの特徴は潜水艦建造の経験やノウハウが欠けているため複数の西側諸国が協力しているという点で、中国側の圧力をかわすために台湾は国産潜水艦に関する情報を完全にブロックしている。

飽くまで噂だが台湾が募集した次期潜水艦の設計案には欧州企業2社、米国企業2社、日本企業、インド企業の6社が応募、一時はそうりゅう型をベースにした日本の設計案が採用されたと報道されていたが台湾国防部はこれを否定、欧州企業が提案していた設計案を採用したと言われており、現地メディアはフランスのDCNS案(スコルペヌ型潜水艦ベースの設計)を選択したと主張しているが台湾国防部は否定も肯定もしてない。

この潜水艦建造プログラムで最も重要なのが台湾側が「レッドゾーン」と呼んでいる機器の調達だ。

出典:public domain ロサンゼルス級潜水艦の魚雷発射管室内制御装置

レッドゾーンとは台湾が自主的に開発することが不可能で機密性が高いことから技術移転を受けることも難しい=つまり海外から輸入してくる以外入手が不可能な機器のことを指しており、このレッドゾーンに該当するのが潜水艦の戦闘管理システム、デジタル・ソナーアレイシステム、ペリスコープ、魚雷発射管、ディーゼルエンジンで、この全ての機器を米国からの供給に頼っている。

台湾は潜水艦の建造に協力的なトランプ前政権時に戦闘管理システム、デジタル・ソナーアレイシステム、魚雷発射管の輸出承認を取り付けることに成功していたが、ペリスコープとディーゼルエンジンの輸出承認に関する協議中に政権が交代してしまったため本件に関する協議は膠着状態に陥っていた。

しかし台湾海軍が立法院(日本の国会に相当)に提出した報告書によると、潜水艦建造に必要なレッドゾーンと呼ばれる機器の輸出承認を全て取得したらしいので台湾にとっては一安心といったことろだろう。

補足:バイデン政権が輸出を承認=法的な許可を取得しただけで実際の契約交渉はこれから始まるらしい。

香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は台湾が潜水艦建造に必要な機器の確保に成功したことについて「バイデン政権は台湾への武器輸出に積極的だったトランプ前政権のアプローチを維持している」と指摘しており、このようなアプローチは中国との軍事的対立に直面している米国にとって負担(中国の周辺国が軍事力を強化すれば米軍の負担が減るという意味)を軽減することに繋がるため米国と台湾の双方に利益があると言っている。

因みに台湾が初めて建造する国産潜水艦1番艦の建造コストは17.2億ドル(約1,800億円)と言われており、2024年までに進水を行い2025年までに海上公試を行うことが予定されているが、通常動力型潜水艦のゴールドスタンダードと言えるAIP機関の搭載は予定されておらず、一体何隻の潜水艦を台湾海軍が調達するのかも明かされていない。

関連記事:国産潜水艦の建造準備が整った台湾、今月中にも1番艦建造を開始
関連記事:日本も協力する台湾の次期潜水艦建造に韓国人技術者も大勢参加か?

 

※アイキャッチ画像の出典:台湾国防部 国産潜水艦の模型

フランス製潜水艦導入が濃厚?フィリピン海軍の潜水艦部隊創設に仏海軍が協力前のページ

削減額は10兆円以上、民主党議員が10%以上の国防予算削減を大統領に要請次のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    また一歩前進てとこか、模型はいかにもスコルペヌ由来だが、AIPがいきなりリチウム採用って可能性もあるかな
    バイデンを危惧するのは杞憂で終わるか。個人的にはトランプのほうがよほど信用ならんかったけどな

    17
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      少なくとも今の所はまともそうで一安心です。
      ところで、トランプが復帰してバイデン逮捕とか信じてる人まだ居るのかな?

      16
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    ここでもフランスの潜水艦か
    ドイツが採用されないのは歴史的にドイツが親中国だからかな?

    13
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      単純に209型じゃ古すぎるし214型はゴミだからでは…?

      13
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      ディーゼルやAIPがドイツ製の可能性もある
      そうなると関わりがフランス、スペイン、アメリカ、ドイツ、そして日本人技術者も?
      台湾の潜水艦はオール西側という設定になる

      6
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    オーストラリアと違って順調そうで何より。しかし1800億かぁ。日本の調達価格からすると高いなと思うけど製造ノウハウ込みだとこんなもんか。

    27
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      設備とかもほぼ1からだろうからね。

      16
        • 匿名
        • 2021年 3月 17日

        そだねぇ。
        ゼロからのスタートだから、設計・生産管理・部材調達・冶具工具・人材教育等々ありとあらゆるもモノを揃えないとならないから潜水艦本体以外の部分のお金がどれぐらい含まれているのか?ってところじゃないかな。おまけに部品といえども輸入品は高いからね。

        13
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    1972年に、台湾は国連に加盟しイケイケだったのをチャイナで牽制するようになり、去年あたりから、台湾でチャイナを牽制程度にしか聞こえないな。
    言うことを聞かない地域は、ナンバー2で牽制戦略?

    1
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      普通に中国ってコメントしたらいいのに

      11
        • 匿名
        • 2021年 3月 17日

        普通にシナって言えばいいのに

        9
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      何が言いたいのかさっぱりわからない文章だな。

      31
        • 匿名
        • 2021年 3月 17日

        中国を牽制しチャイナと言うことじゃね(適当)

        7
      • 勧進帳
      • 2021年 3月 18日

      意味が通じない日本語だな

      2
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    ネタで対抗馬スコルペヌベースと書いたらその後でこの記事きてビックリしたんだが、でもまだ確定じゃないから続報待ちだな。

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    台湾ひと安心の巻
    あとは船としての船体だ、これは支援ありとはいえ自力で頑張るしかないぞ

    6
    • ソソソナス
    • 2021年 3月 17日

    米国は原潜しか保有していないはずだが潜水艦用のディーゼルエンジンをどうやって調達したのだろう。

    3
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      原潜は非常用のディーゼル発電を備えてますよ

      4
        • 匿名
        • 2021年 3月 17日

        原潜の非常用ディーゼルって確かに積んではいるけど、潜水艦が常用するもんじゃないから出力も連続稼働時間も何もかも違うがな・・・
        複数の国が協力とあるのでドイツかどっかから機関を米が調達して納入とかじゃないのかな。

        20
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      アメリカの製造でなくて、アメリカ経由で調達したという筋書きだろう
      直接関わると中国相手に差し障りのある国が多いから

      16
        • 匿名
        • 2021年 3月 18日

        やはりどの国にも文句を言わせない国というのは必要だ。

        2
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    色々と手伝ってあげたいのは山々だけど台湾って対中国の防諜が日本よりもザルな所が有るから不安なんだよね…。それに日本のラインナップは通常潜としては最高級・最大の尖ったタイプしか無いからね。恐らくは沿岸潜で行く台湾には習得・運用コスト的にも乗組員的にもオーバースペックなのかも。

    10
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      台湾の潜水艦は、沿岸部を遊弋するのに必要十分な連続潜航能力と動力があれば
      いいわけだから、現代の通常動力型であれば、その要求は満たされていますね。

      8
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    台湾の位置からするとそこまで大型化する必要もないけど、少しでも早く複数の艦が欲しいところだろうね。

    10
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      ぶっちゃけ、性能は二の次でも安心して潜航出来る潜水艦が一刻も早く欲しいのが本音かと

      10
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    台湾がまともな潜水艦部隊を保有し
    海自の潜水艦の負担が少しでも減らせるなら嬉しいが
    簡単にはいかないだろな

    7
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    そもそも何故今までまともな潜水艦が無かったのだろう。台湾の国防政策において、潜水艦戦力の増強は最も重視すべき分野だろうに。台湾の国防費がGDP比2%前後ということも併せて考えると、今までの台湾の国防政策は中国を刺激しないことを第一目標に掲げ、抑止力強化は二の次だったのではないだろうか。

    1
      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      オランダからの追加購入は中国の横やりで差し止め、国産化したくとも、米国はひとつの中国の建前から台湾への支援を意図的に滞らせていた。
      つまり米国は潜水艦こそが台湾防衛のカギだと知っていた、だから追加保有させなかった。
      中国の強大化という現実で、いまは台湾政策の変更を余儀なくされたからといって、これが従来の台中バランス政策の延長に過ぎないのかは不明

      15
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    台湾の新型潜水艦は完成しそうで安心した
    本当に台湾の潜水艦部隊の老朽化は本当にヤバい
    台湾の潜水艦隊が実力をつけてくれるのは日本にとっても嬉しい

    6
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    もし台湾が潜水艦の自国製造に成功したら。
    オーストラリア「ぐぬぬぬ・・・・」

    7
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    台湾海峡の水深って大半が100m未満なんだよな。
    潜水艦を運用するには凄い不向きな海域ではあるが…。
    台湾の防衛に直接貢献できるのだろうか。

      • 匿名
      • 2021年 3月 17日

      台湾を中国が武力制圧するには、大陸と反対側の台湾島の東側からも圧力をかける必要がある。
      それは中国の台湾進攻時に中国機動艦隊の重要な役目になる
      もし台湾の潜水艦が12ノットで探知されず浮上せずに1週間航海できるなら
      最低でも12ノット×72時間分の1500㎞程度は台湾から離れた太平洋上に
      中国側は空母部隊を配置する必要がある。
      台湾の潜水艦の数や中国側の潜水艦の能力にもよるが、台湾の潜水艦は
      台湾へ東から中国空母艦隊が接近する可能性に対して有効性があると考えます。

      9
        • 匿名
        • 2021年 3月 17日

        中共が尖閣侵入してる遠因もこれだよね……だからこそ只の揚陸艦じゃなくて近接航空支援も可能な強襲揚陸艦を大量に建造してるわけで

        意外と軍オタにもこの辺の事情は認知されてないのかね

        4
        • 匿名
        • 2021年 3月 17日

        通常動力潜水艦で潜航12ノット72時間ってかなりの超性能じゃないの?

        1
        • 匿名
        • 2021年 3月 19日

        太平洋までは行かなくて大陸棚のある南シナ海より南下する場合にはそれなりのプレッシャーをかけられるようになるのは台湾にとっては大きいよな

      • 匿名
      • 2021年 3月 18日

      周辺海域だとそれなりに深い海もあること
      それなりの潜水艦が台湾にあるとなると大陸側もそれなりの対潜部隊を割く必要がでてくる&迂闊に接近できなくなる。
      自軍対潜部隊の訓練相手
      とまぁ色々必要性はあったわけで、今までの老朽艦を更新できそうで何よりです。

      1
    • 匿名
    • 2021年 3月 17日

    大型空母ですら撃沈することができる潜水艦が一隻でも海中に潜んでいるだけで相手国にとって自軍の動きを大きく制限する恐るべき脅威となる。

    本記事の件は中国に対して圧倒的劣勢な立場に置かれている台湾にとって非常に大きな一歩であるだけでなく記事でも述べられているように極東の防衛を担っているアメリカ、そして日本にとっても負担軽減の観点から観て嬉しいニュース。

    4
    • 匿名
    • 2021年 3月 18日

    台湾も安心して使える潜水艦が欲しいのだろうな、これまで中国の圧力で外国から買えなかったがいよいよ自国の技術進歩で潜水艦建造が出来るようになる可能性が出てきた。
    潜水艦は潜航浮上を繰り返すことで応力疲労が蓄積し、それに経年劣化が加われば安全深度がどんどん減ってくる、最後には少し前のアルゼンチンの潜水艦のようにちょっとのトラブルで沈没してしまうことになる。
    ソナーシステム、エンジン、発電機、モーター、バッテリー、耐圧殻、など必要な技術は山のようにあるし、特に高性能魚雷はミサイルより機密密性が高くて自国開発するにしても日米などは遥かに先を行っているので開発するのも大変だろうが頑張ってほしい。
    中国を抑えるためにも、日本も古い型の潜水艦をベースにした輸出専門の会社を作るべきだろうそうすれば最新技術の流出は防げるし、乗員を二交代制にして短期運用の近海型とすれば乗員スペースも大きくできるはず。

    2
      • 匿名
      • 2021年 3月 18日

      ライバル多いのに明らかに劣ったもの売りますじゃ売れるのかね。仮に流出前提で売るとしたら現役のそうりゅう型に繋がらないティアドロップ船体の潜水艦だろうけど、今の時代そんなもの有り難がって買う国があるのか。

      3
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