日本関連

防衛省、戦闘機F-2をリンク16や対艦ミサイル「ASM-3改」に対応させる能力向上を実施

F-35Bの調達やF-15の改修などに隠れて目立たないが、国産戦闘機F-2の能力向上が2020年度予算に計上されており、中々興味深い改修が行われようとしている。

リンク16や対艦ミサイル「ASM-3改」に対応するため戦闘機F-2の改修を実施

新たにSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)タイプのステルス戦闘機F-35Bの調達費用や、F-15(J-MSIPのみ)の能力向上のため「Japanese Super Interceptor(JSI)」への改修費用などが盛り込まれた2020年度予算案が衆議院を通過したため事実上、来年度の予算が成立したことになる。

F-35BやF-15JSIなどに隠れ目立たないが、実は2020年度予算案には国産戦闘機F-2の能力向上費用(2機分26億円)も計上されており、主に「ネットワーク機能の強化」や「新型対艦ミサイルの統合」に重点が置かれた改修を実施することになっている。

より具体的に言えば、ネットワーク機能の強化とは「リンク16/TADIL J」搭載を指し、 新型対艦ミサイルの統合とは対艦ミサイルASM-3の射程延長型「ASM-3改」の運用能力付与を指しており、このような能力向上は後継機の次期戦闘機「F-3(仮称)」配備が始まる2030年代半ばまでF-2の戦闘能力を維持するための措置だ。

出典:航空自衛隊 戦闘機F-2

F-2は2015年度から「自衛隊デジタル通信システム(戦闘機搭載用)」の搭載を進めており、これまでに20機のF-2に搭載が完了した。この自衛隊デジタル通信システムはリンク16搭載機と戦術情報の共有できるのだが、自衛隊デジタル通信システムとリンク16は直接情報の共有は出来ず、自動警戒管制システム(JADGE)を経由して情報の共有を行う必要がある。

これを、わざわざリンク16に切り替えるのは何故か?

恐らく対艦ミサイル「ASM-3改」の性能を最大限に活かすためかもしれない。

防衛省は中国海軍の防空能力が飛躍的向上し、2018年に開発が完了したばかりの対艦ミサイル「ASM-3」では中国海軍が使用する対空ミサイルの射程外から攻撃を行うのが難しいと判断、ASM-3の射程を400km以上に延長した「ASM-3改」の開発を2020年度から始め2025年度までに開発を完了させる予定だ。

出典:Hunini / CC BY-SA 4.0  対艦ミサイル「ASM-3」のプロトタイプ

ASM-3改の射程が400km+αになると、F-2に搭載されたJ/APG-2レーダーだけの情報だけでは不足するため、E-767早期警戒管制機や導入が予定されているグローバルホークが収集した戦術情報の共有が欠かせないため、JADGEを経由しなくても直接情報が共有できるリンク16に切り替えるのだろう。

これまでに20機のF-2へ自衛隊デジタル通信システムの搭載が行われたが、リンク16を搭載したE-767早期警戒管制機やF-15(J-MSIPのみ)と直接情報の共有ができるようF-2にも切り替えるのだろう。

さらにLJDAMの性能を最大限引き出すための最適管制技術(味方誘導要員のセーフティーゾーン表示機能やLJDAMを適時投下するのに必要な情報表示機能)提供や、度重なる機能追加によって処理能力が限界に達しているミッションコンピュターの能力向上も合わせて行われる予定だ。

ただし保有する全てのF-2を改修するのかは未知数だが、恐らくF-2に施される能力向上はこれが最後になるのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:航空自衛隊 戦闘機F-2

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    現状でロシアや中国の艦隊を相手にした場合、出撃したF-2の半分が未帰還になると何かで読んだ記憶がある

    1
      • 匿名
      • 2020年 3月 02日

      性能云々より、法の問題ではないですか?

      いくら最強の武器あっても
      先制攻撃出来なければ
      被害はさけられないですからね。。

      1
      • 匿名
      • 2020年 3月 02日

      日本単独でやれば、そうなるね。
      F-15JSIならどうだろう。

      • 匿名
      • 2020年 3月 02日

      仮にそうなったとしてもロシア艦隊と中国艦隊は全滅しているから

      • 匿名
      • 2020年 3月 03日

      根拠は? ソースを示してよ。

    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    TADIL J

    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    JDCS(F)はリンク 16用のMIDS-LVT端末の搭載が能力的、スペース的、改修費用的に困難な機種用に開発された事になってますが、
    結局F-2は、上記要因の内どの項目がネックだったのですかね?
    国内開発するための単なる口実だったのか、それともミッションコンピュター換装とかで条件をクリアしたのか。

    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    見栄えの良い正面装備を揃えるのは大好きだが補給整備及び改修がお粗末極まるのが自衛隊の冷戦期からの悪習

    尾上元空将曰く
    最も予算が優先されるF-15Jですら共食いだらけ、早期警戒機はFMS部品が何年も届かず地獄の稼働率、練習機輸送機は死屍累々、ですから
    F-2も何処まで改修出来るのやら…

    2
      • 匿名
      • 2020年 3月 02日

      尾上元空将の発言はそれなりに重視すべきだし、FMS輸入の装備品の部品(早期警戒機だけではない)がなかなか来ないのも事実だが、もしも本当にF-15Jが共食いだらけならば、航空雑誌に毎月写真投稿している投稿者達のカメラが絶対それを見逃すはずは無いし、航空雑誌の編集者もそれをネタに記事を書くはずなんだがなあ……
      あと、T-4練習機のエンジン問題は徐々に解決に向かっているし、T-7は後継機の検討が始まっているし、C-2輸送機の配備も進んでいるから、死屍累々とは程遠い状況なんだが。

      3
      • 匿名
      • 2020年 3月 02日

      前々から自衛隊の共食い整備や稼働率は指摘されてましたが尾上氏の告発で完全に流れ変わりましたね
      告発前までは共食いしてるとか稼働率悪いなんて言ったら愛国者様(笑)に袋叩きにされましたがw

      1
      • 匿名
      • 2020年 3月 03日

      >尾上元空将曰く

      元自衛隊幹部で評論家というと、文谷 数重のような方なんですかね。

      • 匿名
      • 2020年 3月 04日

      >最も予算が優先されるF-15Jですら共食いだらけ

      F-15Jの内、共食いしているのはPre-MSIPとJ-MSIPのどちらが対象で、何を共食いしてるのだろう?
      Pre-MSIPの固有部品なら、共食いも仕方ないと思いますし。

      3
    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    良いか悪いかは別にして、これもまた、長寿命の機体になりそうだ。

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