フィリピン国防省は4日、同国の空軍近代化の一貫として日本から固定式警戒管制レーダー装置「J/FPS-3ME」と車両に搭載された移動式レーダー「J/TPS-P14ME」を取得することを発表した。
参考:Philippines to order 4 long range air defense radars from Japanese company
フィリピンが日本のレーダーを採用したことで国産防衛装備品の海外輸出が実現
フィリピン空軍近代化のため最大5基の地上設置型空中警戒レーダー調達を検討していたフィリピンに対し日本・イスラエル・米国の3ヶ国が自国製レーダーを提案していたが、フィリピン国防省は4日、日本の三菱電機製レーダーを調達することに決めたと発表した。
フィリピンが調達を決めたのは三菱電機製の固定式警戒管制レーダー装置「J/FPS-3ME」3基、移動式レーダー「J/TPS-P14ME」1基で、契約総額は約52億6,000万ペソ(約110億円)と言われており、今後60日以内に正式な契約を締結する予定と報じられている。
J/FPS-3MEは防衛庁技術研究本部(現在は防衛省)が開発した固定式のアクティブ・フェーズドアレイ・レーダー「J/FPS-3」の能力向上型「J/FPS-3改」をベースにした輸出型で、移動式レーダーの「J/TPS-P14ME」は陸自の73式大型トラックに搭載して任意の地点へ移動可能な小型のフェイズド・アレイ・レーダー「JTPS-P14」をベースにした輸出型だ。
補足:日本が提案した「J/FPS-3ME」は過去、タイのレーダー選定事業に参加したが競合したスペインのインドラ・システマス製レーダー「3D LANZA」に敗れた過去がある。
因みにフィリピンに対しイスラエルはエルタシステムズは艦艇搭載用レーダー「EL/M-2238 STAR」と移動式レーダー「ELM-2288 AD-STAR」を提案し、米国はロッキード・マーティンの「AN/FPS-117」を移動式に改良した「AN/TPS-77」を提案していたと言われている。
2014年に防衛装備移転三原則を閣議決定してから今年で6年目だが、これまで移転(輸出)条件を緩和したにも関わらず国産防衛装備品の輸出実績はゼロだとメディア等に批判されてきたが、フィリピンが日本製レーダーを採用したことでようやく国産防衛装備品の海外輸出が実現した格好だ。
数日前にも三菱重工業の子会社である三菱造船が、フィリピン沿岸警備隊向けの多目的パトロール船2隻を2022年まで建造し引き渡す契約をフィリピン政府と締結したが、これは日本の円借款(約165億円)を利用した調達であったため競合はすべて日本企業(ジャパンマリンユナイテッドと三井造船が参加)とだったが、今回は正真正銘、イスラエルや米国と競合するなかで獲得した受注であり意味が異なる。
関連記事:水中ドローンまで装備!日本、フィリピン政府と沿岸警備隊向け巡視船の建造契約を締結
恐らく今回の事例は日本の防衛産業界にとって海外輸出の「マイルストーン」になるだろう。
※アイキャッチ画像の出典:J/FPS-3警戒監視レーダー 防衛省
これが本決まりなら素晴らしいことです。
でもK国あたりがちゃちゃ入れてきてご破算にならないといいのですが。
そこはもうドゥテルテ大統領を信じるしかないですね。
入札に参加してない国がどうやって妨害できるのかと
むしろ韓国は局地防空レーダー以外イスラエルとかから輸入してたはず
ひょっとして戦後初か。喜ばしいね
商売敵となるとアメリカが圧力を掛けてくるだろうから用心しないとな
このレーダーもアメリカが根本を抑えてる西側兵器と対応できるからこそ売れるのだろうし。
性能面で選ばれたのか、日本と仲が良いから買ってくれたのか気になるところ
昭和30年頃台湾に魚雷を輸出してるよ
価格と性能を考慮しての決定だろう
日本の場合、完成品を売り込むよりもこういったミドルウェア的な物に力を入れた方が
輸出の実績は上がるような気がしますね。
ともあれ、めでたい事だと思います。
フィリピンだとすべて中国に筒抜けになるような気が
実際、電力供給網は中国の管理下に置かれているし、そのあたりの対策はできていて当然なのか、
それとも対電波妨害能力等を省いたそこまで高度なシステムでなくてもいいのか
どっちなんだろうか
FPS-3は程々に枯れていて、日本側的には余り神経質にならずに済む代物とか。
フィリピン側のニーズとも合って商談が成立したら、輸出実績を得たい﹙だろうと思われる﹚日本とWinWinですね。
ところで、多目的パトロール船に続きまたもフィリピンですが、この手の取引先でフィリピンがあがる下地って何か在るのでしょうか?
タイなら、戦前とは言え兵器輸出の実績あり、何となくイメージし易いのですが。
対中外交
あ~、成る程。
単なる製品ではなく、政治的な側面のある分野ですからね。
失念していました。
その昔インドネシアにラムダロケットを数機売ったんですよね。
軍事転用を懸念したマレーシアからクレーム来たのは、ラムダロケットではなくカッパロケット。
ユーゴスラビアで軍事転用されたのも同じくカッパロケット。
ラムダではなくカッパだったんですね。
しかもユーゴにまで。
指摘・訂正ありがとうございました。
実を言うと、日本は1958~59年にかけてフィリピンへの戦時賠償として、当時富士重工(現・スバル)がライセンス生産していたT-34Aメンター練習機を36機輸出した実績があるんですよ。
そのような事例が在るとは、知りませんでした。
そう言えば、武器輸出三原則の動きって1960年代からみたいですね。
1950年代なら、戦後賠償の物納って如何にも在りそうだし。
色々絡まっての実績なのでしょうね。
US-2!とかそうりゅう!みたいなのは額も話題性も大きいけど、そも完成品を輸出できる企業なんてのは世界的にも少ないわけだし、こういう一装備とかからまずは実績を積まなくては
特に日本は自衛隊以外の運用実績がなく、しかも実戦経験がないからその運用実績も実績と言えるか怪しい面もあるので、こういうところから進めていかないとね
三菱重工もMSJがあの有り様で、自衛隊向け装備が赤字垂れ流しとなればこの辺に活路を見出だす必要があるし
システムで見れば富士通がイギリス国防省やオーストラリア国防省からの案件を獲得してるぞ
技術先進国からお買い上げ頂くまではまだ本物じゃないよ
がんばろうね
ミサイルに関しては、米や英と共同開発してるから、ある意味十分のような。
今回はアメリカ、イスラエル、日本の入札があって
日本が落札出来たのだから結構な実績だよ
円借款で日本が作ってあげて供与するのとは訳が違うし
レーダーは日本のお家芸だし、製作時間も戦車・戦闘機・護衛艦と比較すれば少ないだろうし、海外に売り込みやすいだろうね。
記事にある通り、競争入札で勝ち取ったのは大きい。しかもイスラエルと米国を相手にだ
物件としては決して大きいものではないが、実績としては小さくも大きな一歩だと思う。
過去の巡視船10隻の貸与、沿岸警備隊向けの船2隻の受注を勝ち得ている事もそれなりに影響あったのかな…?
わずか6年で100億の結果を出すとかそうあることじゃない
社会経験のない奴は2年も経たないうちから実績が上がらないので無意味と盛んに息巻いていたが
巡視船は昔から海保が東南アジアの海洋警察を教育し共同訓練を主催していたことが大きい
つまりアフターサービスが中韓のような競合メーカーよりも遥かに充実していた(売る前から)ということ
ODAとは言え無償ではなく低金利融資なので住宅ローン程度には購入先も負担を覚悟しないとならん
それでも他国を弾いて日本企業に優先権を与える融資に飛びついたのはそれだけ日本のソフトとハードが
東南アジア諸国から信頼を得ていたことが大きい