3月5日、三菱重工業神戸造船所でそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう(SS-511)」が海上自衛隊に引き渡され、第1潜水隊群第3潜水隊(呉基地)に編入された。
11番艦「おうりゅう」はディーゼル式潜水艦の発展におけるマイルストーンになる
そうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう(SS-511)」は10番艦「しょうりゅう(SS-510)」までが搭載していたAIP(非大気依存推進)システムと鉛蓄電池を廃止して、世界で初めてリチウムイオンバッテリーを主蓄電池に採用した潜水艦だ。

出典:海上自衛隊 潜水艦「おうりゅう」の引渡式・自衛艦旗授与式
リチウムイオンバッテリーは従来の鉛蓄電池に比べてエネルギー密度は2倍以上、繰り返し充放電の回数は1.5倍以上、さらに充電時間が短く放電による電気容量の低下が少ないなど優れた特性を有しているが、リチウムイオンバッテリーの価格が非常に高価なため「おうりゅう」の調達価格は約643億円となり、AIPシステム搭載最終艦「しょうりゅう」に比べて100億円以上も高価になってしまった。
ここまで高価になったのは単純に鉛蓄電池をリチウムイオンバッテリーに置き換えるのではなく、大きな性能向上が見込める鉛蓄電池+AIPシステムを全てリチウムイオンバッテリーに置き換える案を採用したためだ。その結果、11番艦「おうりゅう」はAIP搭載型に比べ海中での活動時間を飛躍的に伸ばすことが出来たと言われている。
特に主蓄電池に鉛蓄電池を採用していたおやしお型潜水艦からAIPを搭載したそうりゅう型潜水艦に乗り換えた艦長にとって、AIPと鉛蓄電池の残量を別々に管理するのは複雑だと漏らしていたことがあり、潜航時の動力源がリチウムイオンバッテリーに一本化されたことは性能向上と合わせて嬉しい変更点だろう。
ただ世界的にはAIPシステムを搭載した潜水艦の方が主流であり、日本に次いで主蓄電池にリチウムイオンバッテリー採用が確定した韓国の島山安昌浩型潜水艦Block2は燃料電池方式のAIPを残す仕様で、未だにリチウムイオンバッテリーのみで動作する潜水艦は日本以外では計画されていない。
ドイツが開発した燃料電池方式のAIPは採用例も多く改良や技術発展も続いているため、当面、世界的には燃料電池方式AIP+リチウムイオンバッテリーの混載方式が主流となるが、価格と信頼性の問題さえクリアできれば構造的にシンプルで保守・運用面でも混載方式より優れているリチウムイオンバッテリーに一本化する流れになるはずだ。
3月5日、三菱重工業株式会社 神戸造船所で行われた潜水艦「おうりゅう」の引渡式・自衛艦旗授与式の動画です。 pic.twitter.com/zvtkThega5
— 防衛省 海上自衛隊 (@JMSDF_PAO) March 6, 2020
そのため世界の潜水艦建造国や運用国は、世界で初めてリチウムイオンバッテリーを主蓄電池に採用したそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」に注目しているはずで、海外メディアは「おうりゅう」就役を大きく報じている。
参考:Japan Commissions First Soryu-Class Attack Sub Fitted With Lithium-Ion Batteries
参考:Japan Inducts First Lithium-Powered Soryu Submarine
恐らく技術的なトラブルや運用面で問題さえ起こさなければ、11番艦「おうりゅう」はディーゼル式潜水艦の発展におけるマイルストーンになることは間違いないだろう。
※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 潜水艦「おうりゅう」の引渡式・自衛艦旗授与式
以前はリチウムの性能は鉛電池の数倍って喧伝されてたけど、
実際はこんなもんなのか
本職さんのサイトによると
リンク
体積エネルギー密度は、鉛蓄電池の82Wh/Lに対してリチウムイオン520Wh/Lで、約6.3倍。
重量エネルギー密度は、鉛蓄電池の40Wh/kgに対してリチウムイオンの201Wh/kgで、約5倍。
「エネルギー密度は2倍以上」は間違えではないけど、「数倍」との表現の方が適しているかな。
余最高性能を目指すと発火する可能性があるから、十分余裕をもって2倍で使えば安全と言うことかな。
そうりゅう型は期待されてきた反面用兵者からの落胆も大きいですからね
スターリング機関は扱いにくく危険な燃料が必要で人員も掛かる、おうりゅうではそれは解消されたがやはりそうりゅう型は在来潜の限界か静粛性装備が米英原潜に比べると見劣りする問題も
ソナー等センサー類も大型な原潜には大きく劣りますし
今の海自潜水艦隊幹部は水上艦の空母導入を見てゴネれば原潜手に入るかも!と思ってるフシがあるからな
結構ディーゼル潜水艦sageする幹部見るね
潜水艦の事は疎いので、初歩的な疑問かも知れませんが、
静粛性で原潜の方が在来潜より有利なのですか?
原潜の発電部分起因﹙雑音源が余計に付いて且つ常時動いている﹚で、静粛性にハンデを抱えていると思っていました。
本邦潜水艦は、米海軍の代行で対象国の近海まで行ってSIGINT情報収集をしてる、との話しも目にしたことがあるので、余計に。
ソナー等センサー類は、大型な原潜の方が優位なのは、何となく感覚的に理解できますが。
元潜水艦隊司令官が言うには大型の船体はそれだけ防音設備に割ける排水量分が多く低速のエネルギー効率が悪い反面高速が出せて静粛性の高いジェット推進を採用出来る原潜は有利らしい
まぁアパマンのペラペラ壁と高級マンションの防音室では厚みが全く違うようなもん
あと米英原潜は装備してるが海自潜水艦では装備してないフローティングフロア等の技術を投入してるがこれはデカさ故に用意に組み込めるからでもある
解説ありがとうございます
フローティング・デッキは、海自潜水艦でも29SSから導入されますね。
静粛性については、本当のとこは部外者には分かりませんが…
理屈から言えば、水上航行時にはディーゼルエンジンを回す通常動力型の方が当然うるさいでしょう。
しかし潜水航行では、モーターやスターリング機関の方が、米英原潜のギアードタービンより騒音が大きいとは考えにくいです。
ただし仏原潜はターボ・エレクトリックで静かだと思います。
>スターリング機関は扱いにくく危険な燃料が必要で人員も掛かる
危険な燃料って、ケロシンや液体酸素がそんなに危険ですか?
少なくとも燃料電池の水素よりは、遥かに扱いが容易で安全でしょう。
「はるしお」型最終艦にSE搭載した「あさしお」は、原型よりも乗員数が少ない(75名→71名)だし、「そうりゅう」型は非AIPの「おやしお」型よりも少ない(70名→65名)ですが。
細菌の電動ラジコン機は100%リチウムになっている、リチウムならエンジン機に負けない機動ができる。
鉛バッテリーでは飛ばないしニッケル水素ならヒーヒー言いながら飛ぶことはできるが飛行時間が10分以下、そのくらい発揮できる性能に違いがある。
100%充電も早いし時間が経過してもバッテリー残量の減りが少ない、これらの特徴も潜水艦に最適な理由。
十分な試験をしたはずだから船体寿命まで電池交換は必要ない設計のはず。
スターリング機関を搭載したのは、「そうりゅう」級が世界初ではないですよね。
既に1996年からゴトランド級での運用実績があり、海自でも「あさしお」を改造して2003年から試験を行うという、極めて慎重な手順を踏んでいます。
2009年に「そうりゅう」が出来てから、「スターリング機関、期待してたのに…」という声が上がった、などという間抜けな話はあり得ません。
先にも書きましたが、「そうりゅう」は「おやしお」よりも乗員数が減っており、「人手がかかって困る」のも嘘。
全体に全く無知な方が想像で書いた、としか考えられません。
15年頃に世艦に投稿された元海自幹部小林の記事が最も痛烈に批判した記事なんで文句は小林に言っといてね
と言うかスターリング機関は専用の技術研修を受けた人員が必要でスターリング機関を省き人員的に省力化、空いたスペースへのバッテリー搭載は世艦でも軍事研究でも散々低減された話題なのにあまりに無知
少し勉強してから出直して来なさい、よろしいですね?
充電にかかる時間はこれまで通りなのかどうかって点が気になるかな。
バッテリーが大容量化してるってことはそれだけ満充電までに必要な電力も増えてる訳で。
浮上してる時間が長いと発見されるリスクも大きくなるし、
発電用ディーゼルに手を入れても良さそうだけど今回はそこまでやってるのかな?
他記事によれば、リチウム充電池は充電電流も大きくできるので発電容量も増加 だったはず
倍以上の時間海面近くに浮上しシュノーケルを突きだしているのではシャレになりませんからね……
充電電流を十分確保出来るとの前提でだけど、
リチウムイオン電池は、定電流定電圧(CVCC)方式で充電し、満充電の90%辺りまでは1CAの定電流﹙CC﹚で充電する。
鉛蓄電池だと初期充電電流は0.2CA。
定電圧充電(CV)方式だと0.2CA→終了時0.06CAと反比例な感じで充電電流が変化、
CVCC方式だと、ある程度溜まる0.2CAでCC充電するが、内部抵抗が高いため、同じ充電電流値ならばより低い充電率でCVに切り替わる。
0.2CAと充電電流が低いので、ある程度相殺されるけど。
なお、高い内部抵抗は放電にも災いし、[ 放電電流 x 内部抵抗 ] の分だけ電力を浪費する。
ついでに、仮にCCだけで満充電まで充電出来た場合
﹙最大充電電圧を越えるから出来ないけど﹚、充電電流1CAだと1時間、0.2CAだと5時間が所要時間。
CV方式のように、徐々に充電電流が小さいなる場合は、もっと掛かる。
ディーゼル潜は艦内環境が原潜に比べて過酷だから乗員の能力維持でも不利
じゃあ、お前の資産で原潜作って海自に寄付したら?
碌に知りもしないことに口出しすると恥を掻くだけだぞw
これでも原潜よりは建造費、維持費共に安上がりだもんな
原潜にこだわると予算の関係で22隻体制など無理、原潜でも通常型との稼働率に大きな開きはないんだから、米海軍との棲み分け的にも原潜不要ってのが海自幹部の見解
ファーストムーバーになった分これまでより開発より運用が難しい艦になる
アップデートも遅れずに施行し一流の潜水艦を目指して欲しい。
中国は実験艦の漢級から実用初期段階の商級を経て20年代にはロス級相当以上のSSN開発をすると言うに我が国はディーゼルズンドコ潜水艦ですか…
中華鍋がそんなにご自慢ですか
ディーゼルで何が悪い。ディーゼルと原潜でどんだけ予算差があると思ってるんだ。限られた予算で最大の効果を得るには捨てなきゃならないものもあるんだよ。
それでも原潜がいいなら自分が政治家になって日本を変えてください
悪くないよな
豪華絢爛極める人民解放軍には原潜を持ち発展させる力があるが我が国と自衛隊にそんな余力は無い
自衛隊にディーゼル潜水艦は身の丈にあった慎ましい装備ですね
豪華絢爛な中華鍋ですか
日本の場合は主に政治要因なので欲しければ議員になればいいという話
潜水艦の電池は銀電池だったような
呉の鉄のくじら館に展示してあるのを見て、小型冷蔵庫ぐらいの大きさで
電圧は2Vだが大電流が流せて、+-を工具でショートさせると工具が溶ける
と解説してもらった記憶があるんだが
酸化銀電池は一次電池なので、充電は不可。
銀亜鉛電池だと、二次電池でエネルギー密度も高く、過去には使用してた潜水艦もある様ですが、
充放電サイクルの回数が少ない﹙充電時の副産物の影響で内部ショートし易い﹚ためか廃れた様ですね。
スターリング機関は用兵者に余計な負担を掛ける上に出力特性が独特で海自幹部からも不評だったからな
元潜水艦長で防大の教官も務めた中村秀樹氏はそうりゅう型に一定の評価を付ける一方不完全な潜望鏡とスターリング機関は批判していた
それが解消されるのは喜ばしい限り
スターリング機関での潜水時間の伸延には同機関での発電量と蓄電量の平衡運転が必要。
その出力では最大4kt程度しか速力が出せない。海流中では前進もおぼつかない場合がある。
つまり、それ以上の速力で航行する敵性潜水艦の持続的追跡等には効果が無い。
排水量が同大なら6~8ktでの持続的作戦能力はリチウムイオン蓄電池専用艦のほうが高い。
運用上、海自はスターリング機関艦よりリチウムイオン蓄電池艦のほうが作戦能力が高いと
結論したのだろう。