日本関連

日本の空母「いずも」で米F-35B運用?米国が推進する日英空母「クロスデッキ」化

米海兵隊「F-35B」が、空母化された「いずも型護衛艦」を使用することについて、海外では日米が正式に「クロスデッキ」関係を結んだと報じられている。

参考:US confirms plans to cross-deck F-35B with Japan

日本だけではなく英国空母へもF-35Bを派遣し、クロスデッキ化を進める米国

日本は、空母化された「いずも型護衛艦」で運用するためのSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)型戦闘機として、ステルス戦闘機「F-35B」の導入を決定したが、これから米国政府を通じFMS(対外有償軍事援助)方式で調達した場合、5年程度の時間がかかると見られており、いずも型護衛艦の空母化の方が先行することになる。

いずも型護衛艦の空母化は、5年に1度実施される艦艇の定期検査時を活用して行われる予定で、いずもは2020年度に、かがは2022年度に空母化工事が行われる予定だが、工事が完了しても肝心のF-35Bは、日本にまだ納入されていない。

そのため日本は、空母化された「いずも型護衛艦」でF-35Bを運用するためのノウハウ習得を、米国に協力を要請した格好だ。

要するに、航空自衛隊がF-35Bを取得して国内に持ち込む前に、米海兵隊所属のF-35Bを、海上自衛隊の「いずも型護衛艦」で運用しノウハウを習得することで、受け入れ体制を整えておくという意味だ。

しかし、もう一歩踏み込んで考察すると、新たな側面が見てくる。

出典:public domain 垂直着陸中のF-35B

米海兵隊のスティーブン・R・ラダー中将は今年5月、メリーランド州で開催された会議の場で「海兵隊のF-35Bと、英海軍空母との組み合わせによる共同軍事作戦は、素晴らしい方法になる」と発言した。

この発言は、2021年から英空母「クイーン・エリザベス」へ、米海兵隊のF-35B分遣隊を派遣する予定になっており、これに基づいた発言だと見られる。

英国は、約140程度のF-35Bを導入予定で、空母「クイーン・エリザベス」や、同型艦の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」に搭載するF-35Bが不足しているわけではないも関わらず、米海兵隊所属のF-35B分遣隊を受け入れると言うのは、軍事的にも、政治的にも英国にメリットがあると言う意味だろう。

例えば現在、南シナ海で行われている「航行の自由作戦」などに、米空母と、英空母を別々に派遣するよりも、英空母「クイーン・エリザベス」に米海兵隊のF-35Bを搭載して「航行の自由作戦」に参加させれば、米国と英国の政治的・軍事的意思を同時に、中国に対して示すことが出来る。

英国にとっては、米英両国の緊密感を世界にアピールすることで、EU離脱問題で低下する英国の存在感を示す事ができる。

米国にとっては「航行の自由作戦」のために派遣される英海軍の空母「クイーン・エリザベス」に、米海兵隊のF-35B分遣隊を相乗りさせれば、米国の存在感を低下させることなく、空母の派遣回数を減らせるかもしれない。

Attribution: Dave Jenkins – InfoGibraltar, File:HMS Queen Elizabeth in Gibraltar – 2018 / Dave Jenkins / CC BY 2.0

このような空母の共同使用は「Cross Deck(クロスデッキ)」といわれ、米海兵隊「F-35B」が、いずも型護衛艦を使用することについて、海外では日米が正式に「クロスデッキ」関係を結んだと報じられている。

確かに当初の狙いは、日本が空母でF-35Bを運用するためのノウハウ習得かもしれないが、将来的には、日本の自衛隊と米軍の一体運用が今以上に密接になる可能性を示していると言える。

当然、このような状態に対し、日本が無用な争いに巻き込まれる、日本の自主性(主に外交や軍事面)が損なわれるなど批判も出てくるだろうが、日米は当面、中国という共通の問題を抱えており、これに対処するためには大筋で「協力」をしたほうが効率的だ。

もし野党あたりが「米国に追従するのをやめろ」と叫ぶなら、日本が主体となって日本の安全をまもれるだけの防衛力=防衛費増額を、合わせて主張しない限り説得力がない。

現在、世界は「対話」の時代ではなく、強烈な「力」の時代に突入しているということを認識できなければ、対話のテーブルにすらつけないだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 護衛艦いずも

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 25日

    F35Bは兵器はスペックではないを体現する機体になるかもですね

    • がさらき
    • 2019年 8月 26日

    米英相乗り、米日相乗りか❗

    • 匿名
    • 2019年 8月 26日

    いる事が脅威ってのは同意。
    しかし性能がいいに越した事はないんですよねー。
    Fー3は最初から艦載機として作ってもいいかもしれませんねー。どうせ第六世代が迷走するなら整備性とか剛性を重視した機体は使いでがあるでしょう。
    小型軽量は日本のお家芸ですし。

    1
      • 匿名
      • 2019年 8月 26日

      流石にいきなり艦載機として開発するのは、技術的にも政治的にも無理でしょ
      XF9エンジンの規模からすると、F-3はF-22クラスの大型双発機になるでしょうし、それをマトモに運用しようとすれば最低限キティホーク級のカタパルト空母じゃなきゃ無理が有る
      米国と同じく、本土から離れた同盟国にまで守る気の防衛戦略に全面変更し改憲しなきゃ、覚悟が足らん
      当然、各自衛隊の体制も根本的変更が必要。陸自も本土決戦前提から外征陸軍に脱皮させる必要が有る

      1
    • 名無し
    • 2019年 8月 26日

    47機のF-35B購入といずもの改修は別と考えるべき。いずもを常設空母として運用する気など海自には全く無い。大体F-35Bは空自所属になるわけで海自のいずもに載らない。

    • 金無し
    • 2019年 8月 26日

    実際、ライトニング空母として運用するには、いずも型でもいろいろとキャパ不足
    運用ノウハウもないし今のところ洋上給油ポイント以上の運用はできないだろうな

    • 匿名
    • 2019年 8月 26日

    メリーゴランド州とは…アメリカはいつの間に新しい州がデキたんだw

    • 匿名
    • 2019年 8月 26日

    かがも改修対象なのは決定なのでしょうか? いずもクラスの設計ではライトニング空母として用いるにも、F-35を少数機載せてピケット艦の如く用いるにもサイズ的に中途半端に見えます。(格納庫が狭い)
    いずものみ改修し、来るべき本格揚陸艦のテストベッドとして運用、ノウハウ習得するんだと思い込んでいました。

      • oominoomi
      • 2019年 8月 27日

      私もそう思ってたんですが、その本格的な強襲揚陸艦の調査も今のところ立ち消えになっています。
      次期防で復活しても就役は10年以上先の事なので、当面は「いずも」型が唯一のライトニング・キャリアーということになるでしょう。
      「かが」についてですが、防衛省の資料でも「いずも」型となっているので、改修を受けることになるのでしょう。

    • 匿名
    • 2019年 8月 26日

    今のところ日本は航行の自由作戦に艦船を派遣していませんが、クロスデッキで一定のノウハウを得たら派遣もありえる、ということでしょう。
    いずもとかがの改修が完了して数年は日本の領海、EEZ、米国内で訓練でしょうから、2025年以降の話になりそうです。
    ただ、いずも型は防衛兵装しか保有していないので、DDGが最低1隻、DDが2隻くらいは必要なので、海自としても派遣は大仕事になりそうですね。

    • 匿名
    • 2019年 8月 27日

    「アメリカと同盟を結んで緊密な協力関係を築く」という方針そのものが日本の自主性を持って決められたものであり、その中に含まれる個別案件を持ってして自主性云々言うのはなにか違う意図がある批判としか思えない。
    属国と揶揄する声もよく聞くが、そうではない、同盟国だと言い返すのも馬鹿らしいものだ。
    アメリカは日本の防衛力増強を求め、ロシアは自主国防・等距離外交を勧め、中国や北朝鮮は武力解除を望んでいる。
    どれを選ぶのかは言うまでもなく、アメリカ一択だろう。

    1
    • 匿名
    • 2022年 6月 19日

    今更VTOLのF35B買って何がしたいのかわからん。
    日本の仮想敵は人民解放軍だが、VTOLで対抗できると思うなら中華を舐め過ぎ。20世紀の中国軍のイメージでやってるのだろうか?
    最低でもF35A、出来れば米軍のF22の支援も欲しいところ。F35Bの使い道は不明。

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