軍事的報道

コストと性能面でF-35Aに対抗不可? 米空軍が採用してもF-15EXの海外輸出は困難

米空軍が採用を決めた戦闘機F-15EXについて米国メディアは、コストや競合機との比較に晒されれば海外輸出に関する見通しは明るくないと指摘した。

参考:F-15EX is a boon to Boeing, but it might not break the international fighter market

米空軍のF-15EX採用は、ボーイングにとって恵みの雨になるだろうか?

ボーイングが製造している戦闘機F-15は米空軍が最新型のF-15EXを採用したことで再び黄金期を迎えるかもしれないが、競争の激しい海外市場でF-15EXが生き残れるかは未知数だ。

米議会は昨年、F-15EXを8機調達するため9億8600万ドル(約1,066億円)の予算を米空軍に与えたが、空軍長官が報告書を提出するまでF-15EXの調達を2機までに制限しており、報告書の内容次第ではF-15EXの調達が打ち切られる可能性は残っているが、米空軍が採用したという事実はボーイングのF-15に新しい商品価値を与えることになる。

出典:ボーイング

つまり、競合機種に押されて不振が続くF-15の海外輸出を再活性化させることに繋がるという意味だ。

補足:米空軍は2020会計年度予算案にF-15EX導入費用を滑り込ませるため、F-35AとF-15EXの組み合わせによる効果や空軍全体の戦力構成に関するプラン、F-15EX取得に関する計画やリスクに関する問題を議会に報告せず、無理やり議会に認めさせたため報告書を提出するまで承認した予算を全額使わせないと議会は言っている。

しかし多くの軍事アナリスト達はF-15EXの海外輸出は「依然として厳しい」との見方を崩していない。

確かに米空軍が採用したという事実はボーイングにとってF-15EXを売り込む際の武器になるが、双発機のF-15は第4.5世代機の中で価格が高く、これを購入できる国は非常に限定される上、F-15EXを導入可能な国は第5世代戦闘機F-35Aと必ず天秤にかけるため分が悪いと指摘している。

出典:Public Domain

ボーイングはF-15EXの機体価格は約8,000万ドルだと明らかにしているが、F-35Aの機体価格はロット13以降7,000万ドル台に設定されているため世代が古いF-15EXにとっては分が悪く、時間あたりの運用コストについてもF-15EXは約2万9,000ドルと見積もられているが、2025年頃までにF-35Aの運用コストを2万5,000ドルまでに削減する方針を掲げているため、時間が経てば経つほど不利になっていく。

確かにF-15EXにはF-35Aには不可能な大きな兵器搭載量や幾つかのユニークな特徴を持っているが、F-35AもF-15EXには到底真似できないステルス性能を備えているため、ボーイングがF-15EXを売り込むには「用途の違い」を訴えるしかない。

この違いを理解してF-15EXを購入する国は今の所イスラエルしかなく、あとはF-35を政治的な理由で購入することができないサウジアラビアやカタールがF-15EXに興味を示すかもしれないと結論づけた。

逆に日本や韓国といったF-35A導入国は、導入済みのF-15をF-15EX仕様にアップグレードすることに興味を示しており、日本は保有するF-15Jの一部をF-15EXに近い仕様「Japanese Super Interceptor(JSI)」へアップグレードする予定だ。韓国はF-15Eの派生型F-15Kを導入済みで、搭載レーダーをF-15EXと同じ「AN/APG-82(V)1」への換装を希望している。

因みに、ボーイングの戦闘機部門にとって命綱である米海軍向けのF/A-18E/Fの新規受注は2021年の24機受注が最後になる可能性が浮上してきた。

出典:ボーイング

米海軍は2021会計年度予算で24機のF/A-18E/F BlockⅢを調達する資金を要求しているが、2021年以降のF/A-18E/F新規調達を中止して次世代戦闘機「F/A-XX」の開発に予算を回すことを計画しており、ボーイングの戦闘機部門にとって状況は悪くなるばかりだ。

ボーイング戦闘機部門に残されたバックオーダーは、F-15EXとF/A-18E/Fを合わせても約200機程度(未確定分を含む)しかなく残りは既存機のアップグレード作業のみとなり、現在提案中のカナダ、フィンランド、ドイツ、スペイン、スイス、インド、マレーシアからF/A-18E/Fを受注できなければ生産ラインの維持が難しくなるだろう。

一応、ボーイング戦闘機部門は米空軍向けの訓練機T-7Aレッドホーク生産(サーブとの共同生産)を獲得しているため食うことに困ることは無いだろうが、7,000万ドルのF-35生産で黄金期を迎えつつあるロッキード・マーティンの戦闘機部門と比較すると寂しいものがある。

果たして、F-15EXはどこまで販売実績を積上げることができるだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:ボーイング

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    スホーイがおすすめ

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    F-35のステルス機能が破られたら、復活の目があるかも知れない。
    それより、f-3計画に加わって、これを米軍に採用させた方が良いかも。

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    莫大な研究開発費と設備投資が必要なわりに市場が限られていている軍用機部門なんて、ボーイングに必要なのかね
    軍用機に重きを置いていた航空機メーカーの統廃合が進んだ理由を思うと

      • 匿名
      • 2020年 2月 13日

      個人的にはF15EX売れてほしいなぁ
      なんかステルスってのは重要だけど今の技術じゃ非ステルス機も必要だと思うんだけどな

      • 匿名
      • 2020年 2月 13日

      国家主導の東側と違って、西側は競争が活力と進歩の源泉だからねー。今のところ欧州は競争相手にならないし。

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    ボーイングは宇宙分野で頑張るしかないのか?

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    F-15はほぼ確定して、インフレ率ぐらいしか価格は上がらいが、F-35の金の計算は全部予想なだけで、いざ蓋をあけると、インフレ率以上にかかったと言うのはよくあるはななし。

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    一番怖いのはF-15EXが何年使えるのかが判らないことなんじゃなかろうか。
    F-35は米国が意地でも使い続けるんでアップグレードが途切れることはないだろうけど10年後にF-15EXは果たして何機飛んでいる事やら。

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    イニシャルもランニングも最新鋭に負ける旧世代の最新機かあ
    なんかいい使い道ないかなあ

      • 匿名
      • 2020年 2月 13日

      ミサイルキャリアーの用途も、何れ無人機が台頭してきそうなので、尚更ですね。

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    誰が何と言おうとも、

    「究極機」へと進化した
    F-15EXスーパーイーグルを
    自分は出迎えてあげたい!!

    20世紀最強の空の覇者よ再び!!

    • 匿名
    • 2020年 2月 13日

    そういえばボーイングの開発した戦闘機ってどこまで遡るのかな。
    量産機だと複葉機辺り?

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