欧州関連

感染者600人超えの仏空母、3月時点で報告されていた乗組員の新型コロナ感染を放置か?

乗組員50人が新型コロナウイルス(COVID-19)に感染していることが確認され緊急帰国したフランス海軍の空母「シャルル・ド・ゴール(R 91)」だが、帰国後の検査で新たに618人の乗組員が新型コロナウイルスに感染している判明した。

参考:UPDATED: At Least 668 Sailors in French Charles de Gaulle Carrier Strike Group Test Positive for COVID-19; Hundreds More Still Pending

仏空母「シャルル・ド・ゴール」での新型コロナウイルス蔓延は初期段階で防げていた可能性が高い

フランス海軍は緊急帰国した空母「シャルル・ド・ゴール(R 91)」と駆逐艦「シュバリエ・ポール(D 621)」、駆逐艦「ラ・モット=ピケ(D 645)」に乗っていた全乗組員1,950人(内1,750人は空母の乗組員)を検査した結果、新たに618人が新型コロナウイルスに感染していることが判明した。すでに新型コロナウイルスに感染していると確認されている50人を加えると感染者は計668人になり、空母打撃群で勤務していた1/3強が新型コロナウイルスに感染してしまった計算になる。

但し、乗組員530人分の検査結果はまだ明らかになっていないため、最悪感染者の数は1,000人を超えるかもしれない。

フランス海軍の説明によれば、感染者の大部分は空母「シャルル・ド・ゴール」で勤務していた乗組員らしいのだが、見方を変えれば駆逐艦で勤務していた乗組員も新型コロナウイルスに感染していたと受け取ることが出来るため、物理的な距離を跨いで艦隊全体に新型コロナウイルスが蔓延していたことを意味している。

現時点で31人の乗組員が入院、その内1名は集中治療室で治療を受けている。さらに感染者668人の中には空母「シャルル・ド・ゴール」に派遣されていた米海軍関係者2人も含まれているらしい。

出典:Public Domain 空母シャルル・ド・ゴール

現地仏メディアは、今回の惨劇を招いたのはフランス国防省だと強烈に批判している。

仏メディアによれば空母「シャルル・ド・ゴール」はブレスト港に停泊していた3月15日段階で何人かの乗組員が新型コロナウイルスの初期症状を示し、空母打撃群の司令官はフランス国防省に対して任務の中断を要請したが同省はこの要請を無視したらしい。

現在、フランス国防省は空母「シャルル・ド・ゴール」でなぜ新型コロナウイルスが蔓延したのか解明するため調査を命じたと発表しており、事と次第によって米海軍の空母「ルーズベルト」と同じように大きな問題に発展する可能性を秘めている。

数日前まで、空母「シャルル・ド・ゴール」で新型コロナウイルスの症状を示し始めたのは4月に入ってからなので潜伏期間を考えるとブレスト停泊時に新型コロナウイルスが持ち込まれた可能性は低いので、一体どこから侵入したのかミステリーだと言われていたが、結局は3月15日のブレスト港停泊時には艦内へ新型コロナウイルスが持ち込まれており、それを認識していたにも関わらず任務を続行する決定を下したフランス国防省の責任は重い。

恐らくフランス国防省としては、NATO加盟国の海軍が集まって北海で行われる演習参加をキャンセルすれば空母「シャルル・ド・ゴール」を中心に据えた演習シナリオが破綻するため無理を承知で行かせたのかもしれないが、その代償はあまりにも大きかったと言わざるを得ない。

※追記:4月22日 仏メディアによれば空母「シャルル・ド・ゴール」はブレスト港に停泊していた3月15日段階で何人かの乗組員が新型コロナウイルスの初期症状を示し、空母打撃群の司令官はフランス国防省に対して任務の中断を要請したが同省はこの要請を無視したらしい。これはデマである可能性が高い。

 

※アイキャッチ画像の出典:Rama / CC BY-SA 3.0 空母「シャルル・ド・ゴール(R 91)」

1機180億円のF-15QAが初飛行に成功、ほぼ同一仕様のF-15EXは約95億円前のページ

韓国製戦闘システムは信頼できない? フィリピン海軍、韓国に米国政府発行の証明証を要求次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ウクライナへの戦車提供に関する合意形成、これを阻止したのは誰?

    20日に開催されたラムシュタイン会議は「ドイツ製戦車のウクライナ提供に…

  2. 欧州関連

    F-35導入を否定していたスペイン国防省、F-35A/Bに関する情報提供を米国に要請

    F-35導入を否定していたスペイン国防省だが、AV-8BハリアーIIと…

  3. 欧州関連

    トルコとの戦争も辞さないギリシャ、来週中にも領海拡張法案の採決を実施

    ギリシャ議会は14日、政府が今月中にフランスと締結する予定のラファール…

  4. 欧州関連

    エストニアがロシアを嘲笑する西側メディアに警告、動員は戦線を安定させた

    エストニアの国防次官は「プロセスの欠点がどうであれ動員は効果を発揮して…

  5. 欧州関連

    潜在的輸出先はイスラム圏? トルコ、マレーシアに第5世代戦闘機「TFX」計画への参加を要請

    トルコの第5世代戦闘機「TFX」を開発しているトルコ航空宇宙産業は、マ…

  6. 欧州関連

    SM-3を戦闘機に搭載? 英宇宙軍が戦闘機タイフーンで衛星攻撃を検討中

    英宇宙軍(RAF Space Command)は敵対勢力の衛星を破壊す…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 16日

    艦船と艦船の距離で飛沫感染してたら凄いですね(すっとぼけ)

    フランス海軍ではハグやキスの習慣でもあるのか…?

    •  
    • 2020年 4月 16日

    艦内における濃厚接触の実態調査をしなければなりませんね(意味深)

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP