欧州関連

トルコとの戦争も辞さないギリシャ、来週中にも領海拡張法案の採決を実施

ギリシャ議会は14日、政府が今月中にフランスと締結する予定のラファール導入契約(総額25億ユーロ)を正式に承認した。

参考:Greek parliament approves purchase of Rafale fighters from France
参考:Greece approves purchase of 18 French-made Rafale fighter planes amid tensions with Turkey

今年も東地中海周辺は世界屈指のホットスポットになる可能性が非常に高い

東地中海の排他的経済水域(EEZ)問題でトルコと深刻な軍事対立に直面しているギリシャは紆余曲折の末、フランスから18機の第4.5世代戦闘機「ラファール」導入を決定した。

現地メディアによればギリシャは来年6月からフランス空軍が使用した中古のラファール(F3仕様にアップグレードされるらしい)の受け取りが始まり、2022年中に新規に製造されたF3仕様機を6機受け取る予定で搭載兵器や関連費用を含めた取引総額は25億ユーロ(約3,150億円)になると報じている。

出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

さらにギリシャは2027年までに空軍が保有するF-16C/Dを最新型のV仕様(Block72)相当にアップグレードを行う契約を締結済みで、米空軍が使用済みのF-35Aを18~24機導入する計画も水面下で進めていると言われており、ギリシャ空軍の航空戦力は2030年までに大幅な近代化と戦力増強が実施される見込みだ。

補足:全ての近代化と戦力増強が実施されると2030年代のギリシャ空軍のF-16V×84機、F-16C/D block50/52+×38機、ラファール F3×18機、F-35A×18~24機で構成されることになる。

ただトルコとの武力衝突や本格的な戦争に発展する可能性を秘めた火種は順調に大きくなっており、特に注目されるのはイオニア海(ギリシャとイタリアの間にある海)の領海を6海里から12海里に拡張する法案の行方だろう。

一般的には基本線から12海里(約22.2km)の領海を設定している国が大半だが、ギリシャやトルコ等の国は隣国との関係上12海里ではなく6海里までの領海しか主張していない。仮にギリシャが12海里の領海を採用するとエーゲ海上のギリシャ領の島々が12海里の領海を持つことになりトルコの「ボスポラス海峡」がもつ戦略的価値が低下することにつながる。

出典:w:en:User:Future Perfect at Sunrise / CC BY-SA 3.0左:トルコが主張する6海里 右:ギリシャが将来的に主張する12海里

上の図を見れば一目瞭然だが、ギリシャの領海が6海里までなら黒海~ボスポラス海峡~エーゲ海~地中海までの航路上で要所となるのはトルコ領海に含まれるボスポラス海峡だけだが、ギリシャの領海が一般的な12海里になるとエーゲ海の大半はギリシャ領海になるため、ロシアの黒海艦隊が地中海に出てくるためにはギリシャ領海を通過(無害通航)する必要がありギリシャの規則を遵守しなかったと認めれば、領海から直ちに退去するよう要求することも可能だ。

この法案はイオニア海に限定したものなのでトルコと関連のあるエーゲ海方面には全く関係のない話なのだが、トルコは「同法案が可決されれば他の海域に設定された6海里の領海も将来的に12海里へ拡張することが可能と誇示するようなものなので、トルコとの全面戦争を引き起こす可能性がある」とギリシャ側に警告しているが、ギリシャ議会は来週中にも政府が提出したイオニア海の領海を12海里に拡張する法案を採決する見込みで十中八九、可決されるだろうと見られている。

要するに東地中海の排他的経済水域(EEZ)問題で昨年対立したギリシャとトルコは領海の拡張を巡って再び対立する可能性が高く、しかも対立の起点となる法案を採決は来週中にも実行されるため今年も東地中海周辺は世界屈指のホットスポットになるだろう。

関連記事:トルコ、ギリシャの挑発行為に「戦争も辞さない」と強く警告
関連記事:ギリシャが前年比3割増しの国防予算を可決、来年6月にラファール受け取り?
関連記事:ギリシャがF-35A購入を米国に正式要請、2021年引き渡しを要求

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain ラファールB

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    去年ギリシャはEEZの問題でトルコに良い様にあしらわれたから、今度は本気でトルコとタイマンを張るつもりらしいな
    去年NATO諸国の支援が得られなかった教訓から、米国とギリシャ寄りのフランスから武器を買い付けて当面の戦力を確保しつつ、領海拡張法案を通してトルコを挑発するつもりかな?

    4
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      ギリシアが領海拡張を画策しているなら、ある程度の航空戦力を増強してから、トルコに挑戦するでしょう。フランスは、東地中海での影響力を確保する思惑もあるし、東地中海の埋蔵油田・ガス田開発に一枚噛みたいのでは。

      5
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        つか、トルコのこの数年の新オスマン主義()がロシアだけでなくフランスの権益にも喧嘩売りまくっているのも一因

        10
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      問題は、戦闘機の購入に予算を割いているのはいいけれど、ギリシャがトルコのドローン対策をしっかりとできているかどうかですね。

      4
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        あの手のドローンはまずは有人戦闘機による制空権ありき

        20
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    トルコとギリシャが戦争してくれたらコロナで不況の欧州には恵みの雨ですな。

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      トルコへの売上で潤うかもしれんけどこの状況で借金増やす方がやばいやろ。ギリシャも仕入先は多分アメリカだし、ドイツの兵器でギリシャ人が死ぬことになったらEU完全崩壊やで。

      5
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        なんだかんだエルドアンに甘かったメルケルもトランプも今年で退任するし、トルコの最大の「資金源」だったカタールもアラブ諸国と国交回復した(アラブ諸国に断交されたからトルコにすり寄ってた)し、今年以降はどうなるんだかな。

        ナゴルノ紛争でトルコと共にアゼルバイジャン支持したイスラエル(こちらはドローン売った程度だが)も東地中海権益に関してはトルコとは険悪。

        9
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      トルコが難民通過を認めて、えらいことになる。

      7
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        有効な脅しも多用される側はそのうち堪忍袋の緒が切れる。

        2
          • 匿名
          • 2021年 1月 16日

          どうだろうなぁ、うちも北に色々言われてるけど対話するって言ってるだけできれる気配なないからね。フランスならやるんだろうがドイツは無理だろ、ロシアにライフライン握らせるぐらいだし。

          2
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        ギリシャのことよりも、この件でトルコの将来が見えてくるかもよ
        ギリシャと紛争までいってからNATO残留やEU加盟はもう成り立たないというか、必要ないって腹を決めてエルドアンが一本立ちを始めるのか、
        それは安全保障、軍事的にも世界的な影響を及ぼすよ

        9
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      ギリシャもトルコも経済がヤバイ状態じゃなかったっけ、その経済を立て直すために領海を増やすことを狙っているのはわかるが、危険すぎる賭け。
      負けた方はアルゼンチンみたいになるぞ。

        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        経済やばいくらいでは国防や領土問題の矛は下がらないものですね。
        むしろもっと加熱する可能性すらあります。

        2
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        勘違いしてる人多いけど、今のトルコは経済状況いいですよ

          • 匿名
          • 2021年 1月 17日

          国営企業ガンガン倒産していて、国中の広範囲で停電や爆発事故が相次いでも自称プラス成長()なお隣の国の例があるので、あまり信じていないw

          1
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    すみません、本記事とは関係ないんですけど、漫画の広告どうにかなりませんかね‥‥
    ルイビトンとかのメーカーや個人の履歴に基づく広告に統一できないのでしょうか

      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      ブラウザの設定で消すなりアプリで対策するなりしてから文句は言いましょうね。
      因みに私の閲覧環境(設定)ではおかしな広告は一切表示されていません。
      漫画の広告が表示されるのはブラウザに残っている貴方の閲覧情報が参照されて
      貴方に対してそれが適切だと判断されたのでしょう。

      9
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        よく見たらここの広告×ボタンありました、さーせん

    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    たとえ軍艦でも非戦闘状態ならどの領海でも通行する権利(無害通航権)があるから、領海を広げたからって仮想敵に圧力がかけられるわけじゃないんだけどな
    もし証拠もなく勝手に通行拒否すれば国際裁判所行きなんだが・・そこんとこ大丈夫だろうか
    ギリシャが自分ルールでエーゲ海を仕切り始めたら、トルコだけではなく黒海沿岸の各国の反感を買うことになる
    なんかトルコにつられてギリシャまで狂犬化しはじめてる気がするな

    4
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      近代ギリシャの歴史も、虐殺やらクーデターやら、トルコと大差の無い黒歴史ですから。
      似た者同士だからこそ争いになる
      あっ、これを東洋に当てはめないでねw

      3
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      >軍艦でも非戦闘状態ならどの領海でも通行する権利(無害通航権)がある

      海洋資源の取り合いでは?=以前の記事参照してください。

      2
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        2020.08.31
        トルコ、ギリシャの挑発行為に「戦争も辞さない」と強く警告

        が当該記事だと思う。

        管理人さんは領空問題だと認識してるね。

      • 匿名
      • 2021年 1月 18日

      ギリシャなんて前から狂犬だったような気がします。
      あとキプロス紛争を調べておくと、今後の成り行きの参考になるかと思います。

    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    国連海洋法条約と国際習慣法の両方の観点においても12海里は問題なし。
    しかし、ギリシャが外交上の齟齬を無視してまで強行するかどうかは別の話です。

    トルコも戦争も辞さないだとかいくらなんでも前のめりすぎで、外交交渉をちゃんとやってるのかは甚だ疑問。
    とはいえ、ギリシャもトルコを挑発しないようエーゲ海の利用についてジブラルタル海峡のような国際海峡を定めるなど、衝突しないよう外交交渉を進めることは可能です。
    また、カステロリゾ島からのギリシャ軍を撤退は必須でしょう。
    いくらなんでも2km先の島に兵を置くなどギリシャは挑発しすぎ。
    12海里の正当性はわかりますがもっとやり方はないのかと。

    こいつら常に頭に血昇りすぎだろ…と思うばかりで個人的にはどちらにも肩入れしたくないです。
    日本人からするとどちらも中国にしか見えないのが本音。

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 26日

      2km先だから挑発ってw対岸のトルコ領にもトルコ軍いるのだが?
      てかそんなこと言ったら陸上国境接してる国が国境に兵力置いてるのはどうなるのって話
      日本の近くだと金門島に馬祖島にそれなりの兵力を展開している台湾は中国を挑発しすぎてるって事かなw

    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    一回財政破綻したギリシャに戦争する体力なんてあるの?

      • 匿名
      • 2021年 1月 18日

      政治と経済うまくいってれば戦争なんてしません。

    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    領海は12海里で200海里までの排他的経済水域で妥協した国家が多数だけれども、
    つまりはトルコが分が悪いですよね。
    分が悪いほうは確定させるより係争し続けた方がお得ですから解決はまだまだ長ーい時間がかかりそうですね…

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    Top Risks 2021 Japanese.pdf

    イアン・ブレマー氏(米政治学者)、2021年の重大リスクの一つにエルドアンのトルコが米中対立やコロナ禍と並ぶ問題扱いされてやんの。

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 17日

      トルコ単独の国力はさほどでもないにしろ、欧州近隣の不安定要素が増えることで、虎視眈々と現状打破を狙うロシア、中国、イランという価値観の異なる反民主主義勢力のつけ入る隙が生まれますから

      トルコを軽くみている声は、その背後にうごめく悪質な連中に気がついてない

      1
        • 匿名
        • 2021年 1月 17日

        そう考えると、スルタン気取りのエルドアンなんて只の道化か

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