エストニアの国防次官は「プロセスの欠点がどうであれ動員は効果を発揮して戦線を安定させた。西側諸国に5週間で30万人を前線に動員するのは不可能だ」と語り、西側メディアにロシアの軍事力や動員計画を嘲笑して過小評価するなと警告した。
参考:The West is losing weapons production race to Russia, NATO ally says
参考:Avoiding a Long War U.S. Policy and the Trajectory of the Russia-Ukraine Conflict
この評価は西側の効率とロシア軍の無能さを強調するメディアの図式を複雑にすると米メディアは報じている
NATO加盟国の中でロシアと国境を接するエストニアのクスティ・サルム国防次官は「露産業界の弾薬生産は侵攻前と比較してほぼ倍に増加し、ウクライナ軍は1日1万発もの152mm砲弾を浴びる可能性がある。我々の弾薬備蓄はどんどん減少しているにもかかわらず(西側諸国の)防衛産業は『契約を結んで初めて朝を迎える』という姿勢のままだ。このままでは弾薬備蓄は増加に転じるどころか、ますます減少していく一方なので状況を逆転させる必要がある」とワシントンで語り注目を集めている。
侵攻初期の1日6万発に比べれば1日1万発という数字は非常にささやかなものに見えるが、このペースで152mm砲弾を発射できる可能性とは「(最大で)露防衛産業界の製造能力が月30万発=年360万発まで引き上げられている」ということを示唆しており、米国の月9万発=年108万発(2025年までに達成する155mm砲弾の製造能力)と比較すると如何に巨大な数字かが実感できるだろう。
さらにロシアの軍事力や動員計画を嘲笑する西側メディアについても「数週間で30万人を路上から動員し、たった5週間で前線の塹壕に届けることが我々にも出来ると思うか?西側諸国に同じことが出来るとは思えないし、プロセスの欠点がどうであれ動員は戦線を安定させた」と、10万人を大幅に超える人的被害についても「動員予備が3,000万人もいるロシアにとって大した数字ではなく、装備を沢山失っても戦車のストックを1万輌も持っているなら十分耐えられる。1/3の戦車を動かせるようにすればNATOが保有する戦車を超える」と指摘した。
特に興味深いのは「動員されたほぼ全員の兵士がデジタル迷彩のユニホームを着用しており、第二次大戦スタイルのユニホームで戦場に現れることない。つまりロシアは何をしているのか自覚して準備万端なのだ」と言及している点で、米ワシントン・エグザミナー誌は「この評価は西側の効率とロシア軍の無能さを強調するメディアの図式を複雑にする」と報じており、動員された兵士で構成されるロシア軍部隊の有効性や欠点が何であれ、ロシア軍の人的被害が10万人超だったと仮定しても「ロシアの戦力増強能力にNATOが追いつくのは並大抵のことではない」と言及した。
因みにサルム国防次官は「この戦争が長期化することNATO加盟国は認識しつつあり、戦争にかかるコストも莫大なものになるだろう。恐らく欧米諸国が議会に提出した予算案を遥かに超える額の資金が必要で、これには最終的なゴールの設定と政治的意思が必要になる」とも述べており、米ランド研究所は「ウクライナもロシアも時間の経過と共に軍事力が改善して相手を凌駕できると信じているが、絶対的勝利を達成するための意図と能力を欠いているため、この戦争は何らかの政治交渉で終結(休戦もしくは政治決着)する可能性が高い」と予想した。
関連記事:ウクライナ空軍の報道官、全域の空をカバーするには180機の戦闘機が必要
関連記事:ウクライナ提供で激減したスティンガー、生産量を2025年までに50%増
関連記事:米陸軍は155mm砲弾の生産量を朝鮮戦争の水準に戻す、2年以内に月産9万発
※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru/CC BY 4.0
>動員されたほぼ全員の兵士がデジタル迷彩のユニホームを着用しており、第二次大戦スタイルのユニホームで戦場に現れることない。
ロシアの動員兵を巡っては「戦闘服など個人装備は自前で準備しなければいけなく準備の為に日本円で約10万円くらいの出費を強いられた」、「戦場での止血帯としてタンポンを使う様、上官から言われた」などがSNS上に投稿されていますが、それは全体から見ると少数だったというのがエストニアの見解なのでしょうか?
小数だったということだね。
出征する動員兵の個人装備は各共和国や州の予算でやるようでバラつきが大きい。
予算があって首長が元軍人の州なんかだと至れり尽くせりの待遇だが、ケチな首長の所だとボロボロでSNSで炎上して首長が叩かれて渋々用意する。
出征してからの補給は国防省になるから平均的に行き渡るようになると言う感じかな。
NHKによるとウクライナはアメリカの広告代理店と契約を結んでいるのでSNSやメディア上のそういう話はあまり信用しないほうがいいかと思います。ただ旧ソ連諸国(というかスラブ民族)は話を一からでっち上げるよりもボヤを大火事にして誇大に話を大きくする傾向があるのでそういうことがあったのは間違いないだろうとは思ってます。
> 話を一からでっち上げるよりも
なぜそう言う認識になるのか不思議。
ハイマースを配備数の3倍撃破してみたり、配備もされてないエイブラハムスを撃破したとか軍が発表してる。
ハイマースについてアメリカは1機も失ってないと言う。
どちらがウソなんだろう。
真実が出てくる事はないでしょうけど、ただの一つも失っていないというのは非現実的ですね
私があくまであの辺りの人々の倫理的な性格傾向についてそういう印象を持っているってだけなのでそう思わないならそれで好いですよ。
もし戦闘服を自前で用意することが強いられているならデジタルフローラだけでなく旧フローラやブタン、VSR迷彩など2000年代〜2010年頃まで使われていた迷彩の兵士が見られるはずですが、今のところDPRなどの非正規兵を除けばデジタルフローラ、A-TACS FG、マルチカム以外の迷彩を着用した兵士はほとんど確認されていないですね。
VKBO以前の旧式デジタルフローラ戦闘服も含めれば相当数ストックがあるでしょうし、大半の兵士は支給されているものと思います。
どうですかね。
動員兵の末端にまでデジタル明細ユニフォームが行き渡っているものなら、着用して悦に入っている写真が母親を通じて拡散されそうなものですが。
ああ、別に「開戦後にロシアの製造能力が飛躍的に拡大し、実用化されたばかりの新型個人装備が動員兵にも行き渡るほど新規に大量生産された」という話ではないですね。これは勘違いでした。
確かに侮って良い相手ではない。
戦車を新造していないNATO諸国は、ウクライナでの損耗に耐えられるのか?
自由のない国は徴兵も徴用も、志願だろうと強要だろうと、迅速に体制転換できるの、ホント強みよね…
「体制転換」は容易にできないでしょ。自由がなくてまともな選挙もない独裁国家なんだから。
redditやテレグラムなどで見れる範囲でも動員初期よりかなり装備はしっかりしてるのがわかる。そもそも前線で囮にする人員に適当な装備で突撃させてる間に装備を整えてるつもりだったのだはずなのだから、ある程度予定通りなのだろう。少なくとも西側もプロパガンダを撒きすぎていまだにウクライナとロシアの損害が10倍差があると本当に思ってる奴もいるし、ロシア側が損害を出しつつも物量を生かして戦術を最適化しつつあるのも無視されがち。
例えば軍服だと、中国が軍服生地をイランやミャンマーに売却
そこで軍服に仕立ててロシアに売却しているのかな?
ロシアだけというよりも国際分業体制で兵器以外の軍需物資を用意しているような。
ユーラシア大陸内部で物流完結できるから、海上保険料値上げも効かず厄介ですね。
近年のロシア軍は現行のVKBOにすっかり入れ替わっていたので、使われなくなった2010年型の戦闘服が大量に余っているのだと個人的には推測している。
実際動員された人々の写真を見ていると、ベルクロの無い2010年型の着用が非常に多いので。
現状だと戦闘服に限って言えば他国に頼る必要はなさそう
西側の軍事力は人的損失を極力減らせる空軍力と質的優勢を重視して
人的損失が多くなりがちな陸軍戦力は縮小されてきたけど
重視してきた空軍力や質的優勢の兵器はエスカレーション防止や軍事機密の関係で供与不可能
陸軍による人的損失を無視した物量作戦はロシアや中国の戦い方だから
縮小してきた西側の陸軍戦力から供与しても枯渇するのは時間の問題
ベトナムやアフガニスタンで大国を撤退に追い込んだ便衣兵やテロという違法な手段に関しても支援してる西側が許容しないし
ロシアにとって都合のいい陸軍の物量作戦で戦い続けてるんですよね
この戦い方だとウクライナ側が先に枯渇するのは確定的だけどその時どうするのか考えなきゃいけない
アメリカ陸軍のM1エイブラムスが2389両
フランス陸軍のルクレールが400両
イタリア陸軍のレオパルト1が120両 アリエテが200両
イギリス陸軍のチャレンジャー2が227両
ドイツ陸軍のレオパルト2が225両
それぞれ半分ずつ供与っていう絶対有り得ない想定でもロシアのほうが数は勝る
質で上回るっていっても戦車は戦闘機と違って質で一騎当千できるようなものではないから厳しいだろう
中国陸軍の戦車も5000両以上あるからそれにも備えなきゃいけないし西側は陸軍を軍縮しすぎたね
ドイツは本来なら5倍の1000両くらい必要なんじゃないかね
空と海に偏りがちな陸自ですら合計で500両近くあるのにどうなってるんだか
>質で上回るっていっても戦車は戦闘機と違って質で一騎当千できるようなものではないから厳しいだろう
西側戦車はもともとこの想定で作られている。
具体的にはセンサーとFCSの優位性、単に厚いだけではなく、複数回被弾しても耐えられるマルチヒット能力のある装甲、優れた機動性もそうだし、ハルダウンで車体を隠せるよう俯角が大きい、ハルダウンしつつ、素早く隠れるための後退速度の早さも。
乗員が一人多いのも、タスクを割り振ることで一人あたりの負担の軽減をねらっているようだし。
いつの時代も兵士や兵器の質が高がろうが結局のところ数で勝る国が勝つという事なんでしょうかね?
しかもロシアはありとあらゆる核兵器(恐らく化学兵器も)を大量に保有、資源が豊富な上に西側諸国みたいに複雑で面倒な手続きを踏んで戦いに備える事は無くプーチンというお上の一声さえあれば手続きやら順序を超越して大抵の事は可能になる。
おまけに人命の損失に細かく気を使うという事も無いから余計に厄介極まりないですよね。
個人的な意見ですが、終戦ないし停戦は朝鮮戦争、ベトナム戦争の時と同じように政治指導者の死によってのみ可能ではないかと予測します。スターリンの死亡によってソ連の北朝鮮への軍事介入の停止。毛沢東の死亡によるベトナムへの軍事援助の停止。今回もプーチンの死によってのみ平和が訪れると思います。
プーチンと側近の暗殺が最も犠牲が少ない方法でありそうですが、民主主義国家には出来ない選択なのだろうなと理解はしています。
ロシアが総力戦に舵を切ったからには、応じざるを得ないでしょう。とにかく弾薬無しでは生き残れない。
そうだろうか?成功はしてないが連合軍によるヒトラー暗殺計画、アメリカによるカストロ暗殺計画、後者は戦争中でなくとも実行までしている事実はあります、
ただ、諜報大国ロシアの、ましてやKGB上がりのプーチン政権に通用するかどうか、その検討の段階と思いますよ
ベルリン空爆などヒットラー暗殺計画は失敗に終わりベルリン陥落により、ヒットラーは自殺。カストロ暗殺計画も特殊部隊による暗殺失敗によるカストロ生存でキューバ危機まで発展したと考えることに一理ある。
戦争決断を行った最高政治指導者の死亡による国内の熾烈な権力闘争が、停戦ないし終戦のきっかけになる。ただし、最高政治指導者の席を狙った権力闘争がクレムリンで起こればプーチンが死亡せずとも起こり得るが、プーチンは諜報機関出身で粛清等によって権力基盤固めており崩すのは難しい。よって内部変化を期待するのは難しい。何らかのタイミングで爆殺されるか、毒殺されるのではないかと個人的に予測しています。
フセイン、カダフィ、ビンラディンなど逃げきれなかったように。
戦争コストと暗殺のコスト、政治的利害を天秤にかけて決断するのではと考えます。
西側メディアがロシア軍を嘲笑してるのはウクライナ政府発表に寄り添う為だと思っているのだが・・・
3.11の原発事故の時を思い出して欲しい。あの時日本は大混乱し政府は情報を隠しているのでは?との憶測が出回った。
危機的状況においては自国メディアは信用されないのである。
同じように戦時下にあるウクライナ人がウクライナメディアを信用してるとは思えず西側メディアの報道がウクライナ人に与える影響は大きいと考えられる。
我々がロシア軍を嘲笑するニュースを流すからこそウクライナ人は戦場に行けるのですよ。実態がどうであれ・・・ね?
ウクライナ政府は常々、「ロシアは強敵だ。支援が足りない。」と訴え続けてるでしょう。
どちらかと言えば英米の研究機関の方がロシアを軽んじている傾向にあると思いますね。
ウクライナ当局によると損失比は10:1らしいですよ。
エアソフトアーミーでも銃弾や砲破片は鉄板で防げるならスポール無視でなら確かに。戦車も主力がT62になろうが数が工面できるなら継戦は可能だろう。BMPで戦争成立してる時点でここの質は割りとどうでもいいのか。確かにハリボテに近い。
これらハリボテで前線を形成したら圧倒的な砲弾量で地ならしをして、人海突撃で制圧してけば負けはしない。これらは枯渇の兆しが無い。西側で絶対無理な人員無尽蔵チートの威力は得体が知れない。
これらをまたしても無尽蔵な中華市場のドローン部品で内製化される自爆無人機の戦略攻撃で支援する。一方でウクライナ側は費用で10倍やら30倍の西側製で対抗するのみ。シャヘドをAAMの流用で迎撃とかレオ2A6とかその典型ですかね。だが2A6でも対戦車地雷を抱えた自爆兵の波状攻撃を受ければそれまでです。
ここまで来ると後はウクライナの人的リソースと継戦意思の問題ではないか。
死にもの狂いの独裁国家を侮るなということですね、心しましょう。対岸に同様の国家を抱える我が国としては特に。
だからこそ、ここで彼らの野心をくじき、同様の国家に教訓を与える必要があるのです。
動員当初にドタバタして炎上してた段階はとっくに終わっているんでしょうね。
たった4ヶ月前とみるべきか、もう4ヶ月も前とみるべきか…
この記事の内容は真実だと思いますが、支援を引き出すための駆け引きとしての側面も多少はあるかと。ロシア舐めてたらヤバイという認識が広まったほうがウクライナは得です。
それはあると思いますよ。
西欧諸国の中には「(3か月後に)戦車を送るからそれで十分だろう」と認識している国も少なからずいると思います。
エストニアはウクライナが敗北すれば高確率で(直接、侵攻するのではなく大規模なハッキング等、目立ちにくい形で)お礼参りされる可能性が高いと思ってるから、NATOが中途半端な支援で満足してしまう事を恐れてるのでしょうね。
もうすぐ1年ですし、諸々の増産は追い付いてはいるのでしょうね
今回送る型落ち戦車を損耗したらもう身を切らずに送れる戦車のストック無いよな
どれほどのペースで損耗するかはわからんけど、大方が予想してるよりは早いんだろうな
そっから危機感持って生産したところで手遅れだろうし、戦車を送る決断をした時点で一気にギアを上げて動き始めてると思いたい
ミサイルも戦闘機も出し惜しみしてる場合ではない気がする
エスカレートさせるスピードを調整して、その間に戦時生産体制を作るなら分かるが、
西側もロシアも一切引くつもりが無い以上、楽観的な予想を超えてエスカレートしていくと考えるのが自然
エストニアの国防次官の言う通り西側はロシアの持久力に対して楽観論に依存しすぎてたと思う
悲観し過ぎる必要はないけど、プーチンも失敗したら政権終わるわけだから、少なくとも楽観論の類は優に超えてくる
ソ連時代の記憶と地理的な位置関係から、バルト三国とポーランド、フィンランドの人たちは、UKを除く西ヨーロッパの悠長さに焦りを感じていることでしょう。
第二次世界大戦のときのドイツも日本も,やるわけがないと思われていて二正面での大規模作戦を展開したんですよねえ。3年後の日本はどうなっているのやら・・・。