軍事的雑学

共同交戦能力にリチウムイオン電池!新技術を採用した海自の護衛艦と潜水艦が就役間近

海上自衛隊は2020年3月、イージス・システムを搭載したまや型護衛艦1番艦「まや」と、世界で初めてリチウムイオンバッテリーを搭載したそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」が就役予定だ。

共同交戦能力を初めて備えた日本のイージス艦

イージス・システムを搭載したまや型護衛艦は、あたご型護衛艦をベースに設計されたが機関に「COGLAG方式」を採用したため約400トン(約5mほど全長が長くなっている)ほど大きくなっている。

COGLAG方式とは低速時や巡航時は発電用のガスタービンエンジンで発電した電気のみで推進し、高速時はLM2500IEC製のガスタービンエンジンによる機械駆動を併用することで、従来のCOGAG方式(複数のガスタービンエンジンを組み合わせた推進方式)よりも燃費の改善が見込めて、その結果、航続距離を伸ばすことができると言われている。

出典:海上自衛隊 まや型護衛艦1番艦「まや」の進水式

さらにまや型護衛艦が装備するイージス・システムは、最新のベースライン「9C」とBMDシステム「5.1」が統合されており、対空戦闘(航空機、巡航ミサイル、ドローン、ロケット弾などが含まれる)と弾道ミサイル迎撃をシームレスに対処するためIAMD(integrated air and missile defense)が搭載され、自艦のイルミネーター(誘導用電波を照射する装置)が届かない水平線下の目標に対してもリモートセンサー(E-2Dなど)による誘導で攻撃可能な共同交戦能力(CEC)を初めて備えている。

補足:因みに米国では、イージス・システムのベースライン「10」が2023年までに初期作戦能力(IOC)を獲得する予定だ。

ただし、この能力を発揮させるためには海軍統合火器管制-対空「NIFC-CA FTS」、艦対空ミサイル「SM-6」、早期警戒機E-2Dの組み合わせが必要で、NIFC-CA FTSはまや型護衛艦に装備され、空自によるE-2Dの取得も進んでいるが、SM-6だけは後日装備(今の所1発も保有していない)となっている。

世界初のリチウムイオンバッテリーを搭載した潜水艦「おうりゅう」

そうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう(SS-511)」は、10番艦「しょうりゅう(SS-510)」までが搭載していたAIP(非大気依存推進)システムと鉛蓄電池をリチウムイオンバッテリーに置き換えたことで、水中での巡航速度と高速航行が発揮できる時間の増大させることが出来ると言われている。

出典:海上自衛隊 そうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう(SS-511)」の進水式

本来ならば5番艦からリチウムイオンバッテリーに置き換える予定だったが、予算の問題(AIPシステム搭載艦に比べ約100億円以上も高価になる)で11番艦以降からとなったが、潜水艦の主蓄電池にリチウムイオンバッテリーを採用したのは世界初だ。

ただ世界的にはAIPシステムを搭載した潜水艦のほうが主流で、日本に次いで主蓄電池にリチウムイオンバッテリーの採用が確定した韓国の島山安昌浩型潜水艦Block2は、AIP+リチウムイオンバッテリーになると言われており、水中での動力源をリチウムイオンバッテリーのみにしたのは技術的に優れているからではなく、日本が採用したAIPシステムが海自の潜水艦艦長に不人気だったからだろう。

海自の潜水艦艦長にとって水中での活動時間の管理は非常に重要で、鉛蓄電池からAIP+鉛蓄電池への変更で水中での活動時間の管理が複雑になったと漏らしていた。

さらに日本が採用したスターリング機関のAIPシステムは開発元のスウェーデン、日本、中国くらいしか採用例がなく、世界的にはドイツが開発した燃料電池方式によるAIPシステムの方が主流で技術的にも発展を続けている。

補足:日本でも燃料電池の研究が行われたが水素吸蔵合金の開発で行き詰まった。

燃料電池方式によるAIPシステムの使用感などはよくわからないが、この方式による潜水艦の建造が続いているので、水中での活動時間の管理については日本ほど問題になっていないのかもしれない。そのため、今後AIP(燃料電池)+リチウムイオンバッテリーの組み合わせが主流になる可能性が高いと言える。

価格の問題さえ落ち着けば、リチウムイオンバッテリーに統一したほうが構造がシンプルなため保守面でも運用面でも優れているのは間違いなく、あとは実際に運用して信頼性を確立するだけだ。

どちらにしても、世界中がリチウムイオンバッテリーを採用した日本の潜水艦に注目していることだけは確実で、大きな問題が起こらなければ、世界中でリチウムイオンバッテリーを採用した潜水艦が普及するかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 まや型護衛艦1番艦「まや」の進水式

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コメント

    • oominoomi
    • 2020年 1月 05日

    「そうりゅう」型の場合、スターリング機関の搭載により「おやしお」型より居住区画が相当窮屈になったということで、その辺りも海自でAIPが敬遠された理由かと思います。
    その点、韓国海軍では行動日数の違いで問題にならないのではないでしょうか?
    韓国では水上戦闘艦も排水量に比して随分と重兵装で、居住環境はなかなか厳しそうですね。

    • 名無し
    • 2020年 1月 05日

    潜水艦に積める燃料の量は限られている、リチウムそうりゅうは鉛電池の代わりにリチウムに変えるだけだが、スターリング機関の場合はスターリング機関と酸素タンクの追加が必要になりトータルでのエネルギー量(重油量)が減るのでその分総航続距離が短くなる欠点がある、これは燃料電池でも同様でさらに扱いの厄介な水素を持たなければならない。
    全個体電池が実用化になれば通常型は他の動力システムは消えることになる

      • 名無しなの
      • 2020年 1月 05日

      フル電池化でデーゼルエンジンを積まない潜水艦が出てる話が出ているのでいずれそうなるでしょう。

    • 匿名
    • 2020年 1月 05日

    トヨタが全固体電池の開発に成功したらしいし、次級の中盤あたりから全固体電池搭載になるかもね~
    でも民生品だからどこでも買えるし世界中の通常型潜水艦が全固体電池になったら海自の優位性がピンチ

      • 匿名
      • 2020年 1月 06日

      そうりゅうと後継潜水艦のリチウムイオン電池はユアサ製で小銃弾を撃ち込んでも発火しない代物です
      リチウムイオン電池はスマホから宇宙まで色々グレードが有るので民間仕様をそのまま載せるわけではないのですよ

      1
    • 123
    • 2020年 1月 06日

    あさひ型まや型のCOGLAGは恐らく巡航に電気推進を使いませんよ。

    まず、あさひ型まや型の最大発電量では電気推進に全て回しても原速12kt程度が限界と思われます。
    つまり艦内電力の配分を考慮すると、大規模な電力を要する武器システムと電気推進とを併用するのは困難となります。
    (5-8ktぐらいまで落とせばギリギリ可能かもしれませんが)

    ここで防衛基盤整備協会にある以下の資料「護衛艦におけるCOGLAG推進プラントの搭載技術の確立」を見てほしいのですが、
    リンク
    <推進モード「COGLAG」においてガスタービン主機単独で要求された速力に追従できる場合、すなわちガスタービン主機の出力が100%未満の場合は、推進電動機の出力はゼロとし>とあります。

    よってまとめると、
    ・電気推進は港湾内など武器システムをオフまたは省電力常態にしてるとき原速程度で可能で、
    ・ガスタービンのみが基本的な巡航機関として動作し、
    ・COGLAGモードは緊急加速のような使い方・・・・だと思われます。

    このような形式なのは資料にあるようにブラックアウトを強く警戒しているためと考えられ、
    実際にイギリスの45型駆逐艦が重大な欠陥を抱えるなどの事例も発生していますし。
    また日本海や太平洋の波浪(消費電力が大きく変動)を考慮すれば、発電量のマージンをかなり多めに取らなければ電気推進は成立し得ないかと。
    マージンを多めに取るという場合は、余剰電力を無駄にするので燃料削減どころか悪化しますから。

    • 匿名
    • 2020年 1月 07日

    潜水艦の技術は動力だけじゃないですからね
    耐圧殻など建造の根幹から越えなくてはならない難問がいっぱい

    1
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