米国関連

故障続きの米強襲揚陸艦ボクサー、乾ドックに空きがなく水中修理を選択

オーバーホールを終えたボクサーは故障続きで、何らかの改善を行って4月に出港したものの再び故障に見舞われ、USNI Newsは30日「右舷側の舵とベアリングに問題が生じている」「乾ドックに空きがないので水中修理を選択した」「復帰は夏頃だ」と報じている。

参考:Navy Elects to Fix USS Boxer Rudder with Divers, Repair Could Take 2 Months

恐らくボクサーが修理を終え、訓練と準備を整えて太平洋を渡るのは秋以降になるだろう

オーバーホールを終えたワスプ級強襲揚陸艦4番艦「ボクサー」についてMilitary.comは3月「3つの異なる工学的故障、手続き厳守の欠如、監督不十分、乗組員の怠慢でボクサーは運用できない状況にある」と報じて注目を集めたことがある。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Roland Ardon

海軍海洋システムコマンドはオーバーホールのスケジュールとコストを圧縮するため「請負業者の作業チェック」を省略し、取り付け位置を間違った蒸気タービンエンジンの強制通風ファンが2022年11月8日に故障、乗組員が定められた手順を厳守しなかったため2023年5月14日にボイラーが故障、2023年7月11日には潤滑油がないまま作動させた減速機が故障、さらに海上試験を行うため8月11日に出港した直後「何らかの工学的な故障が発生した」と宣言して港に戻ることになった。

この件を調査した報告書は「機関部の上級士官は減速機の事故を24時間以上も艦長に報告せず、全ての事故に立ち会っていた勤続27年以上の技術士官も何も出来ず、技術部門を取りまとめる下士官も配属されておらず、機関部では下士官が関与した暴行事件も発生していた」と指摘していたが、ボクサーは展開準備のため4月1日に出港してカリフォルニア沖でMV-22Bの受け入れを行っている最中に再び故障。

出典:U.S. Navy Petty Officer 2nd Class Connor Burns

USNI Newsは「ボクサーは追加のメンテナンスを受けるためサンディエゴに戻ったと海軍は説明した」「ボクサーの故障は舵に関連したものだ」と報じ、匿名の国防当局者も「(ボクサー配備が遅れているため)予定されていた作戦や演習が台無しになり、インド太平洋地域の作戦担当者はフラストレーションが溜まっている。国防総省の誰かがクビになるまで壊滅的な保守管理を海軍は受け入れ続けるのだろうか?」と述べていたが、どうやらボクサーの故障は直ぐに治らないらしい。

USNI Newsは30日「右舷側の舵とベアリングに問題が生じている」「海軍はボクサーの乾ドック入渠を検討したもののBAEのサンディエゴ造船所には空きがなく、ポートランドにあるVigorの造船所にボクサーを移動させるにはウィラメット川にかかる橋が障害となった」「そのためダイバーによる水中での修理を選択した」「この修理には最大2ヶ月ほどかかる見込み」「海軍は今回の故障原因が材料、部品、施工の欠陥にあるのか調査を行っている」と報じ、今回の故障が2023年7月の減速機故障と関連があるのかは不明だと付け加えている。

修理を終えたボクサーがインド太平洋地域への展開準備に復帰するのは夏頃の話で、恐らく訓練と準備を整えて太平洋を渡るのは秋以降になるだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class James Finney

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コメント

    • うほ
    • 2024年 5月 02日

    ボクサーだけにノックダウンされちゃったか

    25
    • たむごん
    • 2024年 5月 02日

    アメリカ海軍、本当に落ちぶれましたね…
    海上で原因を特定しても、クレーンなどがないわけですから、設備入れ替えどうしようもなく時間がかかるだろうなと。

    米海軍、同盟国との提携に活路見出そうとしているようですが、不況期に人員や設備を押さえていなければ難しい面が多々ありそうな気がします。

    日本の造船所も、円安・シーレーンの破壊による貨物滞留により、フル稼働ですからね(おそらく韓国も)。

    > 受注を伸ばしたことで手持ち工事量も2年半程度に拡大。「26年納期分が確定しつつあるほか、一部は27年に入っている」(灘社長)。

    >2023年は世界の船主の新造船発注が盛んだった一方、韓国と日本の生産能力はすでに飽和状態だった。韓国の主要造船会社では、新規に受注した船舶の竣工は2027年以降になる見通しだ。

    (2023年12月12日 JMU、新造船受注30隻規模。今期。船価改善、4500億円超 日本海事新聞)
    (2024/02/01 中国造船業界、新造船受注量で世界の3分の2獲得 竣工量も世界シェア5割、「新エネ船」でも躍進 東洋経済)

    19
    • 塞翁が馬
    • 2024年 5月 02日

    ダイバーによる水中修理なんて対処療法にとどまり品質保証できるレベルになら無いのでは。
    修理で溶接してもその健全性も検査できない。漏れも検査できない。
    見た目には治ったはずでした…ってなる可能性が高いのでは。
    もっとちゃんと直すこと考える方が良さそう…

    26
    • マイク
    • 2024年 5月 02日

    オーバーホールのスケジュールとコストを圧縮させたかったので請負業者の作業チェックを省略しました!

    いや、どういう思考をしたらそこを省略するという発想が出てくるのか…

    「機関部の上級士官は減速機の事故を24時間以上も艦長に報告せず、全ての事故に立ち会っていた勤続27年以上の技術士官も何も出来ず、技術部門を取りまとめる下士官も配属されておらず、機関部では下士官が関与した暴行事件も発生していた」

    OK、理解したよ
    アメリカ海軍は今後は世界の警察ではなくコメディアンとして覇権をとるつもりだな

    19
      •   
      • 2024年 5月 02日

      バケツで作業の東海村jco臨界事故並みの惨さだけど。
      原子力が正常に動いているのは、、、、まぁ大丈夫でしょう。

      5
      • 朴秀
      • 2024年 5月 02日

      人民解放軍を笑い死にさせるつもりなのかもしれない

      中国「また俺何かやっちゃいました?」

      10
        • jimama
        • 2024年 5月 03日

        ここまでひどいと中国海軍も頭抱えるんじゃないですかね
        せっかく米海軍に対抗するためにという名目で予算増やしてもらってたのに
        「ここまで米海軍が弱体化してるならそんなに船いらないよね。おニューの空母もこれっきりで我慢しなさい。予算減らすから」
        とかなんとか財布握ってるところから飛んでくるかも

        9
      • kitty
      • 2024年 5月 03日

      世界の警察でも「ポリスアカデミー」だったでござる。

      7
    • 海軍スキー
    • 2024年 5月 02日

    乾ドックと水中じゃ検査出来る項目が違いすぎるでしょう
    そもそも充分な検査/修理能力と経験を持ちつつ、ダイバーとしての資格を持ってる技術者なんていう激レア人材が用意出来るのか疑問

    再配備の遅れを受け入れてでも乾ドックの空きを待つべきだと思いますね。この方針で修理したとしても直ぐにドック入りするはめになるのが目に見えます

    8
    • 黒丸
    • 2024年 5月 02日

    西海岸がダメなら東でと思ったが、今パナマ運河を通行するには
    渇水の影響で莫大なコストか待機時間のどちらかが必要なので
    潜水で仮修理してからパールハーバーまでもっていくのかな?

    いっそのこと横須賀か佐世保で修理したほうがいいかもしれない。

    8
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